TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#385

祭日に街を訪れ、その中でひたすらに食事を続けるスフェーンとルシエル。

 

方やウルフカット、方や長髪。

 

背中も似通い、方や身長は一六〇半ば、方や身長一四〇半ば。

 

方や軍用ゴーグルで目元を多い、方や灰と螺鈿のような虹色の双眸。

 

少なくともこれで姉妹を連想しなければ余程の節穴であると推察できる。

 

「で、次はどうする?」

「わたあめ」

「えー、そこは月餅でしょう」

 

二人はデザートを探して大通りを歩いていると、

 

「ん?」

 

そこで店頭で販売されていた杏仁豆腐を見かける。

 

「お姉」

「?」

 

そこで肘をついてスフェーンが聞くと、ルシエルも同じ看板を見るとなるほどと目を少し輝かせる。

 

「杏仁豆腐…良いですね」

「じゃ、買ってくる」

 

そこでスフェーンは早速財布を片手に杏仁豆腐を購入する。

 

「ん?」

 

するとその店のメニューに『バケツ盛り』と書かれた桁が一個上がった杏仁豆腐を見る。

 

「すみません。これってどのくらいの量です?」

 

スフェーンが聞くと、店頭のおばちゃんはポリバケツを取り出した。

 

「これネ」

「へ?」

 

そのポリバケツは白いポリバケツに店名が印字されたもので、ご丁寧に取手までついているので洗って別のことに使えるようになっていた。

 

「これ、五リットルある」

「…」

 

おばちゃんは一瞬目が点になったスフェーン笑いながら言う。

 

「チャレンジ。十分以内に食べ切ったら割引するよ」

「…」

 

そこでスフェーンは隣でバケツを見つめるルシエルに聞く。

 

「食べる?」

「もちろん。十分で食い尽くしてくれますよ」

 

総合ごして胸をに手を当てると、スフェーンはおばちゃんに言う。

 

「じゃあ、これと普通のを一つずつ」

「オッケー」

 

おばちゃんは容姿の綺麗なルシエルにすこし良い気分になって注文を入れると、すぐに杏仁豆腐を提供してくれた。

 

「はい、これが普通の」

「おぉ…」

 

そして発泡スチロール容器の中に入っていた杏仁豆腐はイチゴとブルーベリー、レモンにサイダーと氷を入れた見るからに綺麗なものだった。

氷もブランデーなどに使う純水の透明氷で、水道水よりも溶けにくい氷だった。

 

「はい、特盛」

「おぉう…」

 

そしてドカンと提供されたバケツに思わず絶句する。

五リットルの蓋付ポリバケツにミッチミチに詰まった杏仁豆腐。軽く振ると、氷のガラガラという音が聞こえる。

 

「十分間。測って見てるから」

「分かりました」

 

そこでおばちゃんは十分チャレンジをするルシエルを見て微笑ましげにタイマーを準備する。

 

「レモンと氷はカウントしないから。じゃあ、よーい」

 

そして蓋を開けると、ルシエルは中に詰まった杏仁豆腐の山を見る。

 

「スタート」

 

合図とともにルシエルは一気にスプーンで菱形の杏仁豆腐を食していく。

 

「…」

 

そしてその隣でゆっくりと食べていくスフェーン。甘いものが無類で好きなルシエルは無我夢中になって凄まじい勢いで杏仁豆腐が消えていく。

元々杏仁豆腐というのは、杏の種であり漢方薬の原料ともなる杏仁の粉末を食べやすくするために生まれたという経緯がある。

この店の杏仁豆腐は寒天とゼラチンを使用しているため、程よい歯応えのある食感が満腹感を与えてくる。

 

「(だけど…)」

 

スフェーンはそこでルシエルを見る。彼女は自分と同じく、満腹中枢を刺激するレプチンを分泌させずに、空腹感を与えるグレリンばかり放出させる裏技が使えるので、彼女は常に空腹感満載で杏仁豆腐をがっつける。

 

「っ!っ!」

 

ガツガツと杏仁豆腐を食し、シロップ代わりのサイダーを吸引していく。もはや何らかの掃除機のように飲み込んでいくルシエル。

 

「…」

 

それを見て驚くおばちゃん。まだ始まって三分ほどだが、一リットルは行っただろう。

苺とブルーベリーは甘味があり、杏仁豆腐に入れるのは桃やパイナップル、キウイなどがイメージにあったスフェーンはアクセントのある色合いが気に入っていた。

 

「レモンが入っているからサイダーもより映えますね」

「だろう?うちのおすすめだよ」

 

おばちゃんはウインク混じりに応えると、隣でルシエルは二リットルを超えた。

 

「季節ごとに入れているフルーツを変えているんだ。この時期は苺だね」

「他の季節は?」

「桃・メロン・マンゴー。一時はスイカも入れたけど、あれは合わなかったね」

「なるほど〜」

 

そこでスフェーンの脳裏に杏仁豆腐のメニューが思い浮かぶ。

 

「うちはシロップの代わりにサイダーを入れるのが特徴なのさ」

「なるほど」

 

おばちゃんの説明を聞きながらスフェーンはサイダーを飲む。味的に一般のサイダーだろうが、レモンを切って入れてあることでフレッシュさを感じさせる。

 

「っーー!」

 

その横で夢中で食べるルシエル。少なくともこの状況で話しかけると殺させる目を向けられる。残り五分で、三リットルいく。

 

「しかし妹ちゃん、凄いね」

「え?あぁ…」

 

そこでおばちゃんに言われ、スフェーンはルシエルを見る。

 

「甘いものに目がなくてね」

「はははっ、なるほどね…」

 

おばちゃんはそこで掃除機の今日に吸引する少女の胃袋に少々萎縮しながら見る。

 

「良い食いっぷりだね。えぇ?」

「全くですよ」

 

そこでモリモリ食べるルシエルを見ておばちゃんが一言。

 

「うちの子もゲーセンに行ってゲームばっかりやらずにこのくらい食べて欲しいものだね」

「ゲームですか…」

「最近、ゲームセンターに新しい機体が入ったみたいでねぇ」

 

おばちゃんはそう言うと、最後にバケツを大きく傾けて最後に飲み干す。

 

「っ!はぁい!」

「はい、お疲れ」

 

おばちゃんはそこでタイマーを見ると、二分二八秒と表示していた。

 

「はっはっ!凄いね、嬢ちゃん」

 

そこでおばちゃんは割引として紙幣を渡して完食したルシエルを褒める。

 

「ゲフ〜」

 

そして約五リットルの杏仁豆腐を完食したルシエルは、流石に腹に手をふれて満足げに座り込んでしまう。

 

「おい、完食記念ね」

「あ、ありがとう、ございます…」

 

おばちゃんは完食したルシエルにお土産として店のマスコットなのかは知らないが、菱形の杏仁豆腐を模したぬいぐるみを手渡す。

 

「お疲れ〜」

 

そしておばちゃんが去ってからスフェーンはルシエルを労う。

 

「…流石に、食べすぎました」

「漫画だったら頬までリス見たくなっていたわね」

 

そこで氷の入ったバケツをひっくり返して道路の排水溝に捨てるスフェーン。

 

「後で洗って何かに使いましょうか」

「ですね…」

 

限界を超えて食したことで、下手をすれば道路にキラキラを出しそうな様子であった。

 

「ちょっと休憩してからで良いですか?」

「いいよ〜」

 

そこで彼女は煙草を取り出して火をつけた。

 

 

 

 

「しかし、中華料理というものは際限がありませんね」

 

ルシエルはそこで今まで食してきた中華料理を思い返しながら思った。

 

「『四つ足なら机以外、動くものは両親以外、飛ぶものは飛行機以外何でも食べる』それが中国人よ」

「…飛んだ研究肌ですね」

 

意欲的にしては倫理観を捨てて来ていそうな国民性にルシエルは苦笑すると、窓の外でチャイナドレスを纏った女性組を見る。

 

「先人たちが築き上げた偉大な歴史の結果よ」

 

あの後、スフェーンが一本吸い終えるくらいの間休憩をしてから移動をし、通り沿いのカフェで休憩をしていた。

 

「…」

 

色とりどりの服装に思わずルシエルの視線が向いてしまうと、それを見たスフェーンが聞いた。

 

「気になった?」

「…ええまぁ」

旗袍(チーパオ)でも着る?」

「購入するのはアリです」

 

言外に欲しいと言った彼女にスフェーンは笑うと、そこで中国茶を飲む。

 

「甘い香りですね…」

「中国茶はこの地域だと一ヶ月後くらいから新芽の収穫時期になる」

 

そこでスフェーンは休憩に入ったカフェの茶杯(チャーペイ)をじっくりと観察しながら話す。

 

「この時期なら烏龍茶、あるいはプーアール茶がおすすめかな」

 

そんな茶話をしながら二人は休憩を終えると、立ち上がって店を後にする。

店を後にし、そのまま祭日で盛り上がっているゲームセンターに入って中のクレーンゲームやらをみる。

 

「へぇ、古いな」

 

スフェーンはそこで珍しいアナログな機器ばかりを取り揃えているゲームセンターを見て少し感動していると、横でルシエルが言う。

 

「最近のブームですよ。レトロブーム」

「あぁね」

 

そこでさまざまな音を鳴らし、騒がしい店内でも一際人が並んでいるゲーム機を見る。

 

「ん?何だありゃ?」

「凄い人気ですね」

 

それは一〇台以上の機体が用意されているにも関わらず列が並んでいるほどの人気ぶりであり、バケットシートに乗り込んで子供も大人も熱中していた。

 

「…」

 

それは何かしらのシューティングゲームのようで、おひとり様一回のみのプレイ制限がされていた。

 

「人気なゲームなことだ」

「珍しいですね。アーケード式でこんな人気になるゲームが今の時代にあるなんて」

 

ルシエルの疑問にスフェーンも納得する。

今の時代、多くのゲームというのはVRMMOで五感全てをインターネットと接続して行うゲームが一般的である。どこでも手軽にゲームが可能なので、こういったアーケードゲームというのは廃れて久しいはずのゲーム形態であった。

 

「シューティングゲームのようですが」

「ポイント制らしい」

 

そしてゲーム内容を見てスフェーン達は互いに顔を見合わせる。

 

「やらないんですか?」

「え?なんで?」

 

スフェーンは首を傾げると、ルシエルは言う。

 

「だって、得意ジャンルじゃないんですか?」

「何、私に勝てるとでも?」

「「…」」

 

得意げにスフェーンはルシエルに返すと、無言で顔を見合わせる。

 

「じゃあ私が勝ったらクレーンゲーム一個奢りで」

「やってやろうじゃん」

 

スフェーンはルシエルの挑発に乗ると、二人は列に並んで前の人のプレイを見る。

列は長いが、用意されている機体も多かったので並ぶ時間はすんなりと進んでいた。

 

「アーケード型シューティングゲーム。ただリアリティを追求した戦争モノのゲームだそうで」

「ホーン…」

 

説明を受け、人気のアーケードゲームを見て二人はルール説明を確認する。

 

「HMD装備の操作型ゲームですか…」

「PvPではない、シューティングゲーム用ですが…」

「なるほど、さっきのおばちゃんの言ってたゲームはこれか」

 

そこで順番が来たのでスフェーン達は別々の機体に座ると、そこで硬貨を入れて頭のHMDを被った。




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