HMDに映し出された視界にはゲームのローディング画面が映る。
《対戦相手を選択しています。しばらくお待ちください》
このアーケードゲームは、徹底した物理演算機能と優秀なAIを備えたシューティングゲームであるという。
今の所、このアーケード以外の展開は行われておらず、しかしSNSを見るとかなり話題のゲームのようだった。
「…」
そしてプレイヤーである一〇人がすぐに集まるとゲームが始まる。
《貴方は一般兵となりました》
その文章と共に一般兵の役割の説明が行われる。
「なるほど…」
そして説明を終えた次に映ったのは一面の山岳地帯。時間は夜で見えにくいが、見た瞬間に恐ろしいくらいリアルだと思った。
「凄いなこれは」
そこで手元の機械と接続されたグローブを動かすとそれに合わせて視界も腕も手も繊細に動く。そして画面に風が吹き、足元に木の葉が転がっていく。
ゲームの設定としてはアンドロイド兵として敵の攻撃を退けながら敵を倒してくと言うモノだった。
ジャンプもゲームような少し誇張された動きでもなく、リアルに沿っており、事前情報によると落下ダメージを負うこともあるという。
『行くぞ』
『了解』
すると即座に隣にいた他のプレイヤーたちが一斉に片手に機関銃や自動小銃持っており、自動小銃を持った一般兵の中には赤十字を掲げる医療兵の姿もあった。
「…」
ゲーム側の説明曰く、このゲームは多数のマップが用意され、ただただリアリティに追求をしたゲームであるという。
『敵発見!』
『撃て!二階の窓!』
すると山岳地帯の建物から攻撃を受け、アンドロイドたちは一斉に伏せる。
「なるほど…」
そして攻撃をしてきたのは発火炎からすぐに確認ができた。
「支援兵!あの山間の家だ!」
『了解』
そこで機関銃を持った支援兵が一気に発砲をすると、そこで他の兵士たちも動く。動きが滑らかなので、スフェーンは個人的に傭兵のそれに近いとすぐに感じた。
『撃て!その間に行くぞ!』
『了解』
そこで隊長にランダムで選ばれた歩兵が指示を出すと、一斉に動いていく。
交戦距離はだいたい一〇〇メートルほどで、少し走るだけですぐに目的の建物に到着をしてしまう。
「…」
そして後方で機関銃手が支援をしている間にスフェーンは持っていた自動小銃を持って突入対象の家に窓にダイレクトに突入をする。
「っ!」
そしてそのまま建物の中の階段を駆け上がって中に控えていた数名のボットをすぐに制圧してしまうと、ゲームはクリア判定をもらった。
「…言ってもリアルではないか」
所詮ゲームはゲームかと内心で思った。リザルト画面でスコアが表示され、彼女は一ゲームを終えてHMDを外すと感想を口にする。
「交戦距離が長いし、歩く速度も早すぎるな…」
ゲームを終えてルシエルを少し待っていると、ゲームを終えた彼女がHMDを外してこちらにやって来た。
「終わりました」
「ん、オッケ」
ゲームは時間制限があり、その間にどれだけ敵を倒せたかをポイント制で競う内容だ。敵に命中した数によってポイントを競い合っていた。
「で、どうだった?」
「すごくリアリティがありましたね」
「へぇ…」
最初に出た感想にスフェーンは思わず驚いてしまう。基本的に彼女はこういうゲームに関しては辛口な感想を言うので、そんな彼女でも唸るほどリアリティあるゲームだったという。
「私は平原マップでしたので、そこで交戦をすると大体五〇〇メートルほど。向こうの動きも洗練されていて、私の場合は途中で体を対物ライフルで撃たれてしまったので制限時間より早く終わってしまったのですが…」
「あーそうなのね」
そこでスフェーンはルシエルとゲーセンの前でポイント数を競う。
「で、何点だった?」
「ふふっ、やられたとはいえ結構自信があるんですよ?」
そう言い胸を張るルシエル。
「私は五四〇〇ポイントでした。チームトップでしたよ」
「七二〇〇」
「うげっ」
点数を競ったが、スフェーンのポイントに顔を顰める。
「じゃあ賭けは私の勝ちってことで」
「チッ」
ルシエルはコインゲームでたかろうとしていたので軽く舌打ちをしてからゲームセンターを後にする。
「でもルシエルが唸るほどリアルだったのか…」
「ええ、結構交戦距離が離れてて狙撃鏡を使う必要がありましたからね」
「へぇ〜、そっちはそうなのね」
その時、スフェーンの反応を見てルシエルは首を傾げた。
「あれ?そちらは違うと?」
「うーん、『まあこんなもんか』って言うような感じだったのよね」
「そうなんですか?」
「これ見てみ?」
そこでスフェーンがルシエルに先ほどのゲームプレイ映像を見せる。
「…え?」
そしてそのプレイ映像を見たルシエルが驚いた。
「こんなの、スフェーンがやっているいつものゲームと変わらないじゃないですか」
「やぁ、だからわざわざ金払うってのはなぁ…」
「え?私のと全然違うじゃないですか」
「そうなの?」
「はい」
そこでルシエルが先ほどのプレイ映像をスフェーンに送る。
そのゲームプレイ映像はスフェーンのと違って一面の平原地帯が広がっており、先ほどと同じ一〇名の小隊で構成されたロボット兵が自動小銃を持っていた。時間は夜で、自分の山岳地帯と同じ時間帯であった。
『撃て!』
すると平原の中の建物から銃撃音が聞こえ、銃弾がルシエルの体に命中する。
『撃ぇえっ!』
すると誰かの指示で砲撃が平原の村に撃ち込まれる。
『突撃ぃ!』
すると隊長役のプレイヤーが号令を出し、一斉に他のプレイヤーたちは前進を初めて持っていた自動小銃を発砲する。
「…」
ルシエルのそれに合わせて自動小銃を発砲すると高解像度カメラが建物に潜んでいたプレイヤーに命中したことを伝える。
「(え?)」
それを見て思わずスフェーンは驚く。自分がやった時とは移速度や交戦距離云々がまるで違うように見えた。
「こんなにリアルなの?」
「ええ、スフェーンのも移動速度以外はかなりリアルではありませんか?」
「いやまぁ…それならゲームで良くねって思うけどさ」
ジャンプをした時の跳躍をしてみると、それは自分がゲームをした時とそれほど変わらない。
『っーーー!!』
そして村に接近をすると、次第に高解像度のカメラが敵を捕え、建物に隠れていたボットを捉える。
「うおっと」
そこで地雷で吹き飛んだ味方を見てその爆発に思わず驚くルシエル。持っていた自動小銃を建物に向かって発射する。
『っ!!』
すると命中をしたのか、一人の兵士が建物上から落ちてきた。
そしてそのまま映像を見ていると、何処かに隠れていたのであろう。敵兵の攻撃により、一発で体が破壊されたことで『GAME OVER』の文字が浮かんでリザルト画面に移行した。
「…」
その映像を見たスフェーンはゴーグルの奥で少し驚いた表情をしてしまう。
「凄いな…長距離だとここまでリアルなの?」
「ええ、むしろスフェーンのゲーム映像の方が違和感があるんですけど」
その普通なら気づかないような微妙な差異をスフェーン達は気がつき、同時に疑問に思った。
「地雷の爆発とか凄いな。あんなグラフィック、まるで本物同然だ」
「ですよね。スフェーンのにはありませんでしたが、弾道落下も見事ですし、物理演算にどんな処理プログラムを使っているのか…」
そんな事を話しながら大通りを歩いていると、視界の先に多数の警官隊が横断歩道を歩いているのを見た。
「ヒュ〜」
その物々しさといえば異質の一言である。思わず、話していた内容が途切れて話題が写ってしまうほどには強烈だった。
「ほぉ、全員が自動火器装備ですか」
そこでルシエルがその警官隊が持っていた武器が自動小銃であることに異質さを感じる。
「そりゃそうよ。ここは東衛臣民国の国境の街、世界屈指の夜警国家を謳う世界に誇る防犯都市だ」
「監視カメラの数も世界一…と言うわけですしね」
そこで街灯上に取り付けられた防犯カメラを一瞥する。街中に取り付けられたこの防犯カメラはありとあらゆる犯罪を抑止する役割を果たしている。
また警察もパトカーが多く走っており、予算が割り振られていることが伺えた。
「まあ、おかげでこの街の治安は世界有数に安全だ」
「だから世界的に著名な銀行や資産家、領事館が一気に集まっているわけですか…」
基本的に大使館というのは慣例的に国交を結んだ国々が首都と定めた場所に設置される。なので、この上港は首都ではないので基本的に総領事館が設置されている。
「しかし不気味ですね。元々は一つの国だったのがこうやっで分断国家になってしまったわけですから」
国名に東の名がある通り、この国には国境を接して西衛臣民国と言う国が存在している。かつてこの二つの国は一つであったが、現在の東衛臣民国が独立宣言を行ったことで現在の国家体制となった。
「当然、我が国の領事館も設置されている」
「駆け込むような事案はご勘弁被りますよ」
ルシエルは言うと、二人は夜になった街を歩く。
「凄いですね。夜でもこんなに治安がいいとは」
「街中ビカビカに照らされているからね。少なくとも銃を持つ必要がない」
そこで陽が落ちて、裏通ですら銃なしで歩けるほど治安の良いこの街。スフェーン達は事前にこの街の治安と、銃事情は聞いていたので珍しく拳銃を持ち歩かなかった。
「と言うより、この治安なら銃を持っているだけで職質案件ですよ」
「下手打って捕まりたくはないわな」
スフェーンは大いに頷くと、ちょうど隣をパトカーが走り去る。
「夜どうする?」
「これほど賑わっていますからね。どうしたもの…か…」
その時、二人の視界にティースタンドが入った。
「「…」」
それはタピオカミルクティーを販売しており、二人の好物であった。
そこで二人は無言で吸い寄せられるようにタピオカミルクティーを販売している店に並んだ。
「で、飲んだらどうする?」
並んでいる間、スフェーンはどうしたものかとルシエルと相談をする。
「そうですね…近場に美味しい小籠包のお店があると聞いています。そこに行くのはどうです?」
「えぇ、でも予約取れるかな?」
そんな事を話しながら次の予定を考えていた。
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