TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#390

『公安』

 

それは東衛臣民国において国民から恐れられている組織である。

現政権において、政策に反した行為を画策する民衆を監視し、逮捕する組織である。

主な仕事で言えば、再開発地区における立退拒否を行なった市民に対する調査を行い、立ち退きを拒否した市民の過去数年の資金の出入りを調査し、なぜ立ち退き拒否をするのかと言った理由を調査するのが一般的に知られている。

 

正直、これが一般的に知られている時点でどうかと思う話だが、ここでもし国外からの資金納入や怪しいと思ったことがあれば、すぐに逮捕されてしまう。

 

「あの後帰る途中でね、色々と聞かれたのよ」

 

スフェーンはそこでこうなった経緯を話した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ガラガラと音を立て、購入した食器を割らないように丁寧に走る車夫とスフェーン達。

 

「しかし珍しいね、こんな貨客専用の四輪人力車が用意されているなんて」

 

その車上でスフェーンが聞くと、車夫は言う。

 

「いやぁ、滅多に使う事はねえんですがね。速度も落ちるし、場所も取るしで」

 

貨客混載が可能なこの人力車はとても珍しく、昔の馬車を彷彿とさせる構造をしていた。

 

「でもたまに家具とかを運ぶんで、そう言う時に使うんでさ」

「人力車が宅配をしているのかい?」

「ええ、再開発で足元が抜かるんでバイクも滑る時があるからな」

「なるほど」

 

そう言う時、人の足というのは便利だ、足場が悪くとも滑る事はほぼない。

 

「でも普通の奴は荷物運べんでしょう?」

「そりゃあね」

 

人力車はあくまでも人を運ぶために作られたものであり、荷物を運ぶ事は考慮されていない。しかしこれなら荷物も人も運べる構造をしていた。

 

「そもそもこれ使うくらいなら軽トラックさ」

「はははっ、違いない」

 

そこで通りを渡っている途中、車夫は足を止めた。

 

「失礼。アンケートをとっているのですがよろしいですか?」

 

そこで人力車を停めたのは一人の男だった。彼はパーカーにジーンズを履いており、全体手によれた服装をしていた。

見た目も相待っておそらくどこかの学生なのだろう。彼はそこで店を出たスフェーンに聞いてきた。

 

「アンケート?」

「はい、五分ほどで終わるで…」

「はぁ、まあ良いですよ?」

 

そこでスフェーンはその男の聞き取り調査に答えていく。

 

「外国人ですか?」

「そうです」

「目的は?」

「観光と仕事」

「今は何を?」

「買い物」

「何を買われました?」

「食器」

「何か店で言われたことは?」

「割れやすいから慎重に運んでくれと」

「どうしてそのお店を?」

「街の人に聞いた」

「店の中にはどんな人が?」

「店主の人と、店員の一人の若い子が」

「他に人は?」

「知らんよ」

「ではその若い子というのはどんな雰囲気でしたか?」

「どんなって言われてもねえ…」

 

いくつかの質問に淡々と答えていくと、その男は全て持っていたスマホでメモをとってスフェーンにヘコヘコと頭を下げた。

 

「すみません、ありがとうございました」

 

男はそう言ったのでスフェーン達を見送った。

 

「すまんね」

「いやいや、さすが飛び出して止めるとは思わなんだ」

 

車夫はそう言い、走っている最中にスフェーンに言う。

 

「あの人、最近ここら辺を通る連中によく聞くんだ。なんでも学生で、交通量の調査のバイトとかで」

「なるほどね…」

 

スフェーンは頷いて首元を掻くと、そこで首元が裂けると中から瞳が現れる。

 

「…」

 

そして先ほどアンケートという名の質問追及をしてきた男を見ると、人力車はそのまま運輸ギルドまで戻って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「で、聞かれた質問の多くは君に関する質問だった」

「…」

 

空き家の二階、何もない元店舗で座り込んでスフェーンは少年に事情を話す。

 

「帰ってきてからあの天目茶碗に興味が湧いて、売ってもらえないか交渉に戻ってきたら」

「この有様ですよ」

 

ルシエルが両手を広げて呆れる。現在、外では複数の人が少年を探して走り回っていた。

 

「でも、なんでそれだけで公安って…」

 

少年はそこで疑問に思うと、彼女達は言う。

 

「普通、交通量の調査で君の店のことなんて聞かないし、私たちが観光客と聞いて色々と追求してくるなんておかしいの」

「恐らくバイトで雇った学生なのでしょう、それが仇に出たと言うべきか」

「後は昼間の君の対応、他人に見られていることを極端に怯えているようだった。私がこのゴーグルをしているにもかかわらず君は私の視線を気にしていた」

 

スフェーンは淡々と少年を見て話す。少年は目の前の人が昼間の客としてではなく、全てを見透かされたような奇妙な恐怖を感じた。

 

「それはつまり、誰かに見られているかもしれないと君は理由も含めて確信してる証拠だ。何を見たかは知らないが、少なくとも夜にこうやって店から出た君を尾行なんてしない」

「っ…」

 

少年は話を聞き、目の前の女性に怖くなる。

 

「…本当に、凄いですね。親…父の時もそうでしたが」

「あら、聞いてたの?」

 

そこですぐにスフェーンは店で店主と話していたことを聞いてきた。

 

「えぇ…お客さんと父の会話は聞こえていましたので…」

「なるほどね」

 

スフェーンは予測された行動に納得をすると、三人は座り込んで聞く。

 

「で、何やったの?」

 

スフェーンはそこで少年に聞いた。

 

「え?あっ。ゲ、ゲームで…」

「ゲーム?」

 

すると少年はハッとなって慌てて別のことを考える。

 

「あっ、えっ?!いや、その…」

 

言いづらそうにする彼を見てスフェーンは察した。

 

「…チートか」

「うっ…」

 

バシッと言い当てられ、少年は目を見開く。なんで分かるのかとか、そう言う疑問が丸ごとすっ飛んでしまった。

 

「呆れたものですね…チートをして楽しいんですか?」

「ちょ、ちょっとだけ…タスクをすぐに終わらせたかっただけだって…」

 

そしてジト目でルシエルに言われ、子供からも呆れられたことに少年の心は傷つく。それにスフェーンも同じゲーマーとして思うところはあったが、苦笑して少年に言う。

 

「で、なんのゲームでやろうとしたの?」

「最近話題の…」

「あぁ、あのシューティングゲーム?」

「そ、そう…知り合いに機体設置したのがいるから…」

 

彼は知り合いのゲームセンターに設置されたあの話題のシューティングゲームに対し、なぜそれが公安の監視と繋がってくるのか、ピースが足りなかった。

 

「…」

 

スフェーンはそこで軍用ゴーグルに触れ、受信アンテナを展開する。あらゆる周波数帯の電波を受信し、傍聴を行うことが可能な便利な機械である。

通信が傍受される可能性を考慮してインターネットも閉鎖しているので、ここにいる事はバレないようにしていた。

 

『くそっ、どこに行きやがった?』

『本部、こちら監視班。目標が何者かに連れ去られた模様。繰り返す、対象は裏路地から現れた何者かに誘拐された可能性有り』

 

そして骨伝導で受信した音声を聞く。短い距離でしか通信しないためだろう、盗聴対策も軽い程度にしか行っていないのですぐに看破できた。

彼らの通信を傍聴した限りでは、どうやら派手に腕を見せたことが功を奏したらしい、彼自身が余計に怪しまれる心配はまだ低そうである。

 

「それで、友人と集まってゲームをしてて。そこで友人がチートツールを持ってきてくれたので、それで入れたんですけど…効果がなくて」

「ロムかソースコードの問題では?」

 

ルシエルがそこで妥当と言うべきか、当たり前と言った質問をした。少年ももう、諦めてその時の事を話す。

 

「最初はそうだと思って…色々と弄って機体に合うようにしたんです。でもどのロムもソースコードでも使えなくって…」

 

その際、ゲーム機体の蓋を開けて作業をしていたという。

 

「そしたらいきなり店に警察官がやってきて…その、作業中だった友人を逮捕してしまって…」

「え…?」

 

唐突な逮捕話にやや困惑するスフェーン達。流石に予想外の展開すぎて驚いてしまう。

 

「しばらくしたら、その友人が器物損壊で半年の懲役刑になって…それで、そこから家に変な手紙が来るようになって…」

 

曰く、自分の名前と家の住所の書かれただけのまっさらな葉書が送り続けられているという。

 

「(おかしいですね、この国の法律では器物損壊罪は懲役刑にならないはずです)」

 

すぐにルシエルがこの国の国法を検索し、該当する罪状の刑罰を調べていた。この国の法律自体はWikiで調べられるので、通信を行っていても怪しまれる事はなかった。

 

「あの機体のカバーを取ってたの?」

「はい…そしたら警察が来て…」

 

少年の友人はチートをするために機体の中身を弄って警察に捕まった。それ自体がまず不可解であった。

 

「チートが使えなかった…全部試しましたか?」

「はい…あの機体に使われているコード自体はありふれたものですので…なんでチートが使えないのかが分からなくって」

「ハッキングで起訴されたわけじゃないのよね?」

「はい…抗議するために調べたので…」

 

少年は器物損壊罪で懲役刑を受けた友人に不満を持っており、色々と調べた様子だった。

 

「なるほどね…」

 

話を聞き、スフェーンは手に顎を当てて考える仕草をする。

 

「まあ、まず君は帰ったほうがいい」

 

スフェーンは最初に少年に結論付けると、ルシエルが追加で注意をする。

 

「くれぐれも裏口から帰ったりとか、そう言う事はしないでください」

「え?どうして…?」

 

ルシエルから言われ、疑問になる少年。

 

「理由は飛ばしますが、普段と違う行為をしたらかえって怪しまれるだけです」

「まぁ、私たちと出会った事は忘れるべきね」

「…」

 

スフェーンはそう言うと立ち上がって少年に言う。

 

「本当は君の持ってきてくれた禾目天目茶碗の話をしたかったんだけど…また明日か明後日に出直すわ」

「っ!詳しいんですね…」

 

少年の驚きに彼女は笑う。

 

「当たり前よ。天目茶碗は私の好物なんだから。何度か献上したこともあるくらいだし」

「献上…?」

「こちらの話ということで、今は関係ありませんので」

 

ルシエルがそう言うと、少年は困惑気味にその少女を見る。

少女というよりかは幼女というほうが正しいのかもしれない容姿をしているが、先ほどから口調が大人びていた、

 

「まあ、裏口から帰すから。今日のことは忘れてまっすぐ帰ってちょうだい」

 

スフェーンは少年をそう促すと、少年はそれに頷いて素直に帰った。

なんと言うか、この人の言う事を聞いていないと後で恐ろしいことになりそうな気がしたからだ。




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