TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#417

参拝を終えたあと、腹ごしらえにスフェーンは参道近くの店に入った。

 

「骨付鳥を一つ」

「かしこまりました」

 

年寄りの婆さんが二人なので、注文を受けた店員も『食が細いんだな』と察して二品目を強要することなく席を後にする。

 

「一品を分けるの?」

「そうよ。この後もう一軒寄りたいお店があるから」

「ふーん…」

 

サラはこの後にスフェーンが連れてってくれる場所に少し期待をしながら先ほど注文した商品について想像する。

 

「頼んだのって焼き鳥?」

「んまぁ、似た感じじゃないかな。ぶっちゃけこの地域って私も初めてくる場所だし…」

 

スフェーンはそう言うと店員が戻ってきて片手に皿を持っていた。

 

「お待たせしました。骨付鳥お一つですね」

 

そうして提供されたのは鶏をぶつ切りにして香辛料をかけて焼き上げられたシンプルな料理だった。

 

「本当に鉄板焼きね」

「でも美味しそうよ?脂も出てるし」

 

スフェーンはそう言い提供されたナイフを使って骨と肉を切り分けていく。

 

「皮は?」

「あまり好みじゃないの知ってて聞いてる?」

「ははは、分かってるって」

 

軽く冗談混じりに言うと、スフェーンは丁寧に骨から鶏肉を取っていく。

 

「ほい。どうぞ」

「ありがたく頂くわ」

 

サラはスフェーンから切り分けられた鶏肉を貰うと、箸で掴んで一口。

 

「っ!」

 

鶏肉は脂と絡めて食べると、塩胡椒で味付けされたシンプルさがより脂の旨みを引き立てている。Simple is the best.と言う言葉がピッタリと当てはまるだろう料理。普段、こう言う物はあまり食べられなくなったサラは、この後の胃袋に謝りながら二口目に走る。

 

「んん〜…脂っこいから後々怖いけど、シンプルで美味しいわね」

「大丈夫、口直しでうどん屋に行こうかと思ってるから」

「なるほど、それは良いわね」

 

店内で黙々と食べていく二人。骨付鳥の骨の部分はスフェーンが全部持っていってくれたのでサラは楽に食べることができる。

しかし世の中、楽をすると必ず代償があるというもの。

 

「(骨邪魔すぎる)」

 

スフェーンは内心、骨のついた部分に文句を垂れながら食べている。別に鶏皮は焼き鳥屋で頼むほど好きなのだが、いかんせん本当に鶏を部位に切って焼いただけなので食べるので一苦労。前に食べた手羽先以上、半身揚げ未満の食べるのに苦労する鶏料理だと痛感する。

 

『でしたら一部そのまま渡せばよかったのでは?』

 

苦労しているスフェーンにルシエルが開かれた様子で聞くと、スフェーンは反論する。

 

「(阿呆、モノホンの婆さんにそんな面倒かけられるわけないでしょ?)」

『それは…まあ、確かに』

 

ルシエルはそこでおそらく気づいているだろうが、あえて聞いて来ていないであろうサラを一瞥してからスフェーンの言い分に納得する。

現在、サラは一世紀以上を生き抜いている長老である。歯は既に総入れ歯となって久しく、満足そうに食べてはいるものの、昔と比べて明らかに食が細くなっていた。

 

『あまり無理をさせられませんか』

「(そゆこと、まあこっちも美味しく食べられているからまあ我慢できるわね)」

 

スフェーンはそう言ってナイフで骨から肉を切り離して食べた。

 

 

 

そしてスフェーンが内心で少しヒヤヒヤしながらサラと共に骨付鳥を完食する。

 

「ありがとうございました」

 

その後、会計を済ませて店を出る二人。

 

「この後は?」

「取り敢えずうどん屋に寄り道をしながら目的地まで行こうかなって」

「りょうか〜い。道案内は頼んだわね」

「任されて」

 

完全に会話の雰囲気が若者のそれであるが、一〇〇年以上の付き合いともなるとあまり気にしないのかもしれない。

二人はお土産屋を通過しながらバイクを止めていた場所に戻る。

 

「うわっ、シート熱」

「なんて日陰に停めなかったのよ」

「停めた時は日陰だったの」

 

そこで太陽光で灼熱のシートと化したバイクに軽く触れてしくったと直感するスフェーンと、停めた場所に苦笑するサラ。

 

「悪いけど我慢して」

「え、行くの?このクソ熱いシートに座って?」

「婆ちゃんなら大丈夫でしょ」

「冗談じゃないわ。火傷しそうで怖いわよ」

 

サラはそう言って軽く革張りシートに触れると、感覚が鈍っていても感じられる温度に絶句する。

 

「馬鹿じゃないの?この手で感じれるくらい熱いじゃないのよ」

 

サラは文句を付けると、スフェーンは少し考えて近くの自販機で水を購入する。そして熱々になったシートに結露したペットポトルを置いた。

 

「これでど?」

「革痛めるからやめなさい?」

「どうせ今度張り替えるからいいって」

 

スフェーンはそう言うと熱々のシートを強制冷却して少し経ってから軽く触れて、サラにヘルメットを渡す。

 

「よし、行こうか」

「オッケー」

 

そしてサラが後ろに座ってタンデムでエンジンをかけて走り出す。するとインカムでサラが聞いてきた。

 

「この後のうどん屋ってどこにあるの?」

「軍警の駐屯地を抜けた先にあるんだって」

「へぇ」

 

先ほど降りた駅前を通過し、バイクはまっすぐ一本道を走っていく。

隣には鉄道路線が走っており、スフェーン達はやってくる本線級の鉄道の路線を見る。

 

「鉄道は来ないのね」

「まあこれはローカル線だからね。ここ幹線でもないし」

 

そう言うと踏切を超えて少し山間に近い道路を右に左に曲がって走る。

 

「なるほど、ここら辺は小麦が畑で取れるのね」

「だから色々とあるんじゃない?」

 

そんな調子で軽く山を越えて下り坂に入ると、視線の先に煉瓦造りの建物が見えてくる。

 

「あれが駐屯地ね」

「そそ、近くに資料館もあるらしいよ」

「行ってみましょうか。軍警の資料館なんて珍しいし」

「おけ」

 

そんな訳で少し寄り道で、二人は資料館に向かう。入り口で治安官に見学申請をしてから中に入ると、早速展示品がお出迎えしてくれる。

 

「ほぉ〜」

「元はここに駐屯している師団司令部だった場所らしいわね。今は資料館らしいけど」

 

すぐ隣には軍警察の陸軍駐屯地が設置されており、人気はイベントの類が何もないからか人がいなくてとても静かであった。

 

「すごいわね。これ全部無料で公開でしょう?」

 

近くにはかつて軍警察が使っていた装甲戦闘車両やヘリコプター、戦闘機が飾られており、丁寧に保全がされていると表面の塗装を見て思った。

 

「でも屋外かぁ、屋内展示の方が腐らなくて良いような気もするけど」

「お金があったらやってたんじゃないの?」

 

そう言い、旧式の105mm自走榴弾砲を見上げる二人。元々司令部があった場所は中に南北戦争時の資料が数多く残されていた。

 

「これ、昔の怪獣映画に出ていたやつじゃない?」

「あぁ、確かにそうね」

 

飾られている車両の中には戦車もあり、サラは見覚えがある戦車を指差して聞いてきた。スフェーンも映画鑑賞を趣味としているので、その戦車はすぐに見覚えがあるとわかる。

 

『過去の怪獣映画に登場した軍警察の車両ですね。映画ではミニチュア模型を使っていますが…』

「(あれ、最近のCGばっかの映画の中では最高だったわね)」

 

スフェーンはルシエルにそんな事を話しながら多連装ロケット車両や装甲車に小型ヘリコプター、輸送ヘリコプター、戦闘機を次々と眺めていく。

 

「軍警の古い装備とかもここにはあるのね」

「建物も建設時をそのまま残してるって」

 

サラはそう言い、どこで見つけたのかこの施設のパンフレットを持っていた。

 

「と言うか、空軍管轄なのに戦闘機も飾ってあるのね」

「まあ、本格的じゃないしなー」

 

空軍は空軍で博物館を持っているので、今度そっちにも行ってみようかななどと考えながらスフェーンは並木を抜けると、

 

「おお…」

 

そこには漆喰で塗られた瓦葺の二階建て、左右対称構造の西洋風建築物が現れる。和洋折衷された建物は司令部だった名残なのか、威厳や歴史を感じさせる雰囲気があった。建物の中には治安官のアンドロイドがおり、軽く案内をしてくれる。

中央階段はそのまま残されており、重厚感溢れる木造階段である。ウエディングの写真も飾られていたので『ここで結婚式かよ』と苦笑気味に写真を見ながら階段を上がる。

そして階段の誘導に合わせて二階に上がると、小部屋ごとに資料室となっており、南北戦争時のここに駐屯していた師団の資料や軍警察の装備品が展示されていた。

 

「珍しい。まだ薬莢式だった頃の銃だ」

 

今ではすっかりケースレス弾が当たり前となっており、スフェーンはいつも薬莢式の銃ばかり扱っていたので違和感なかったが、それもボルトアクション式の狙撃銃となるとまた珍しいと思った。

 

「また古い軍警の装備ね」

「ええ、まだ大災害直後とかの銃じゃないかな?」

 

隣で上がってきたサラが話しかけてきたのでスフェーンは展示されていた銃を見て推察をする。

 

「大災害?また古い時代の銃なことで」

 

サラはスフェーンの推察にすこし興味ありげに銃を眺めると、次に歴代の治安官の装備品を眺めて部屋を出る。

 

「次は?」

「師団長室だって」

 

そこで時間がないので手短に部屋を観察していくと、最後に師団長室に入る。部屋は比較的さっぱりとしており、机と椅子が飾られている。

 

「へぇ、師団長の部屋ね」

「まあ大抵の執務室なんてこんなもんでしょ」

 

そう言い、かなり時間が押していたので最後にお土産で来館証明書を貰って建物を後にする。

 

「そろそろお昼じゃなくておやつの時間になっちゃう」

「そこ気にしてたの?」

 

バイクに乗りながらサラはスフェーンに軽く驚くと、施設を後にして走り出す。隣が駐屯地で、先ほど見えた赤煉瓦の建物の横を通り過ぎていく。

 

「この赤煉瓦の建物は?」

「兵器倉庫、軍警発足の頃からあるって話」

「なるほどね」

 

そこで建物の横を通過すると、最新鋭の戦車や装輪戦車、装甲車や軍用トラックなどが駐屯地の柵を超えた先に並んでおり、駐屯地をぶった斬るように道路が敷かれていた。

 

「この先にお寺だって」

「あぁ、結構でかい寺院ね」

 

サラは軽く体をずらして前方の五重塔を見ると、バイクは明らかに裏口的な雰囲気のある門の前を左折する。

 

「有名なお寺なの?」

「多分ね。まあ私あまり知らないから分かんないけど」

 

治安の壁を沿うように走ると、再び山の麓近くの道路を曲がって目的地に到着する。




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