セコイアの木々に紛れて一戦を終えた後、駅にて警察の事情聴取と安全確認を行なっているスフェーン達。
彼女達は店の常連客と出会って機関車の前で話していた。
「これなら都市間交通でも十分ですな」
「ええ、どっちかっていうと私たちは運び屋やってた期間の方が長いし」
スフェーンは答えると、男はハッとなった。
「ああ、そういえばそうでしたな」
男はそこでスフェーンに思い出した様子で数回頷く。少なくとも自分も上司から教えられ、その上司もその先輩であったという人から紹介されたというのだから確実に長い。おまけにサダミはポロッとパシリコの話をしており、ざっと最低でも八世紀は昔の話をサラッと言ったので絶句したのは記憶に懐かしい。
「長く生きていると、オッペンハイマー伯のような人物とも知り合えるわけですか」
「まあ…そんなところかな」
スフェーンは少しだけ苦笑して男に答えると、サダミは巨大な動輪や台車にフラッシュライトを当てて確認を行なった。
時刻は午後八時を超えた頃。辺りはすっかり暗く、駅の街灯と列車の灯りが客車や機関車を照らしていた。
「ん、大きな損傷は無いわね」
「OK、流石に硬いわね」
「まあ『でしょうね』としか言えないけど」
サダミはそこで曲げていた膝を伸ばすと、こちらを見てくる。すると男はスフェーンを見て聞いた。
「先ほどは運転を?」
「ええ、依頼されてますからこっちは」
「なるほど」
スフェーンは男の質問に頷くと、次に二つ繋げられた炭水車を見る。
「片方はエーテル。片方は武器ね」
「水冷式では無いのですね」
炭水車が連結されているので真っ先に男はそう推察をしたが、スフェーンは頭上の鹿角を横に振ったのでやや驚いた。
彼女の鹿角には綺麗な瑠璃色の蕾を纏った林檎の花が数輪咲いており、一部は青々とした林檎の葉もあしらわれていた。流石に女性であるので触ることは色々と問題ではあるが、それにしてもよく出来た造花だと何度か気になったことがあった。
「まあね。空冷だけど、エンジンの性能は折り紙付きってところかなぁ」
彼女は男の質問にそう答えると、密閉式の運転室とコリドーテンダーである事に男は牽引車としては十分かなどと推察を重ねた。
少なくとも後ろに連結されている一号車と二号車の二階建て構造は、オートマトンの格納庫と従者達の休憩室を連結していることは想像でき、列車には展開式の機関銃座があることも把握した。少なくとも重武装に過ぎるほどには従者全員が武器の取り扱いに慣れていると、列車の近くで武器を持ったメイドを見ながら思った。
「さて、事情聴取が終わったら出発しますよ」
「まあこんなことが何度も起こると色々と疲れてしまいますな」
「全くもって同感ですね」
「出発する前に弾薬補給もしないと…」
そこで炭水車に装備されている複合型CIWSを見上げた。
先ほどスフェーン達の列車が走っていたセコイアの森林では、列車の自衛攻撃によって相応の被害を被った襲撃グループが頭を低くし、息を殺していた。
「くそっ、どうなっているんだ!?」
「上空にヘリ!増援だ!」
そう叫び、両手に自動小銃を持った構成員が叫ぶと、探照灯を照らした陸軍所属のティルトジェットが頭上を通過する。
「どうなってんだ!?」
「くそっ、軍のヘリだ!」
「何だと!?」
「何で軍が出てくるんだ!」
彼らが驚愕する中でその音に紛れるように黒一色に塗装され、闇夜に紛れる低視認性で、音にも気を遣って改修の施されたクアッド・ティルトジェットはホバリングに移行する。
ここはジャイアントセコイアが密集して植林され、その巨木は樹木もでかい上に高さもあることから飛び降りは不可能と判断され、ファストロープ降下が選ばれていた。
『目標上空。ホバリング移行』
主翼と尾翼の末端に装備された四基のジェットエンジンが垂直に推力を変更してホバリングを継続すると、側面のカーゴドアが開く。
「ロープ!」
そして機体からロープが落とされ、機内でとぐろを巻いていたローブが重力に従って落とされる。
「寄れ!」
そしてロープが落とされ、ピンと張ったのを確認をして暗視装置を起動した特殊部隊隊員が合図を送ると、中で待機していた隊員達が一斉に
軍用グローブを身につけ、完全武装をした彼らは貨物室にいたクルーチーフに肩を二回叩かれ、直後に赤色だった電灯が緑色に切り替わる。
「Green light。行け行け!」
そして飛び出すようにロープに登高器を引っ掛け、ロープに捕まって降下を行う。軽く四〇メートルはある高さからのファストロープ降下は、この高さをハーネスといった命綱なしに降りる。並外れた訓練を受けた者でなければ恐怖で震えている高さだ。
しかし彼らは恐怖を顔に映さず、フルフェイスヘルメットに表示される高度計の情報を参考に暗視装置で地上を視認して着地を素早く完了させる。
そして最新鋭の装備品を用いて森の中に残存しているテロリスト達の捕縛と無力化を行う。
「こちらコング。総員到着」
『カピテーン2、了解した』
時折、森からオートマトンの対空射撃が確認できる中でホバリングを解除したティルトジェットはそのまま隠れるように探照灯を燦々に照らしている陸軍のヘリコプターから距離を取る。
「うわぁあああっ!!」
すでに最初に現着をした国家憲兵隊のジャイロダインによる攻撃で敵性勢力は多くが撃破されていたが、それでもまだ生き残りの重量級サイボーグがガトリング銃を振り回してその閃光が暗視装置に映る。
腰を低くし、持っている三〇口径亜音速弾を使用する自動小銃の銃口を森の奥に向ける。森の中は足元が渇いた地面であり、そのために足音に警戒をしながら進み、部隊長の暗視装置に反応する矮小な反射材の光を確認すると、すぐにハンドサインが送られる。
「うごっ!?」
その直後、隊員の複数がガトリング銃を発射していた重量級サイボーグに向けて射撃。銃身に走る電力を調整して一時的に最大出力で発射された銃弾は音速を超えたことで銃声が響いたが、ガトリング銃の射撃音で揉み消された。
「ディックがやられた!」
「くそっ、暗視装置に映らねえ!」
すると隠れていたテロリストのぼやきが聞こえ、フルフェイスヘルメットに装備された音響追跡装置が声の元を辿って事前にジャイロダインから提供された地図と照合を行って敵の位置を予測したのが画面に映し出される。
「(電波妨害はされていないんだな)」
軽く周囲を確認すると、その度に視線と銃口を合わせ、一度銃口を下げて仲間に当たらないように配慮する。
ハンドガードを握ってしっかりと銃床を肩に当てて照準がずれないように固定する。
そしてこの音響追跡装置が機能していることを見て敵側の抵抗が低いことを確認する。
「総員、捕縛装備準備」
すると囁くように指示をされ、全員が小銃のアンダーバレルに拘束ロープを発射する低圧銃の確認を行うと、視線の先で銃を持って警戒をしているサイボーグを見た瞬間に発砲。
「ぎゃあっ!!」
身体中にワイヤーが一瞬で巻かれると、直後に電源が入って放言されてそのテロリストは気絶する。
「生命維持装置の起動を確認」
「拘束しろ」
すぐに指示を出すと、するりと森林の中で全身を光学迷彩に包まれた複合装甲を装備した強化外骨格を装備した兵士たちが現れる。
そして簡単に高速をしたテロリストの生命維持装置の電波を切ると、そのまま後続の部隊が男を担いで森を抜ける道を移動する。
すでに森は国家憲兵隊によって包囲され、陸軍の部隊も別に投入がされていた。
その中で彼らは破壊された多脚戦車に近寄って一人が残骸の中のコックピットを確認する。
「中は?」
聞くと、中を覗いた隊員は首を横に振った。その多脚戦車は横に抉られたような跡があり、五〇ミリ以上の砲弾で破壊された様子であった。
確認をした部隊は踵を返して新しい目標を探しに森の中を歩く。赤外線カメラで付近の確認を行なっていた兵士は、森の地面で倒れているいくつもの熱の残った死体を確認する。
電波を確認するとサイボーグとなった敵の生命維持装置起動を示す電波があらゆる場所で発信されており、耳が痛くなりそうな勢いであった。
そんな中で彼らはライトも無しに森の中を探索し、死体の一つずつを確認していると、
「接敵!」
一人が叫び、森の中から飛び出してきた数名のテロリストに向けて発砲。
「くそがぁっ!」
自棄になって撃ってきたテロリストに向けて、冷たい冷静な視線で対応した隊員達はセコイアの巨木に身を隠すと、直後。
「ぐほっ!?」
「っ?!」
一人が腹を撃たれて仰け反り、それに驚愕した隙に二発目が頭を撃ち抜いた。
「命中」
『了解』
撃ったのは部隊の
「任務続行。捜索を続ける」
「了解」
命令を聞くと、彼らはそのまま森の中を進む。すでに幾名かを拘束しており、時刻を確認すると、彼らはやや足取りを早める。
遠くでは国家憲兵隊と陸軍が次々と森林地区で襲撃者を拘束しており、その無線が彼らの耳にも入ってくる。
『B24 で三名拘束した。回収部隊をよこしてくれ』
『ベネディク2、オートマトンを確認。上空支援を乞う!』
『D8 区画の掃討完了。三名負傷した』
次々と報告が上がる中で彼らは
陸軍も出るほどの騒動となっているが、彼らはあらかじめに与えられた任務をこなすために秘密裏に行動していた。
『グリットA5、捜索完了』
「了解した。引き続きチャーリーはA6を捜索しろ」
『了解。オーバー』
無線でやり取りを行うと、彼らはそこで通り過ぎた後に微かに聞こえた草の揺れる音を聞いた。
「っ!」
その音を確かに聞いた隊長は長年の勘と経験で銃口を音のした方に向けると、非常に怯えた様子で震えている人影を暗視装置で見た。
「動くな!」
叫ぶと、他の隊員達も持っていたフラッシュライトで姿を照らすと、そこには所々が黒ずんだスーツに身を包んだ一人の男が映し出される。すると顔を見て隊長や他の隊員達も顔写真との照合を開始すると、すぐに結果が返ってきた。
「間違いありません」
「こ、降伏する!だからい、命だけは…!!」
冷たく答えた隊員にひどく怯えた様子で男は懇願すると、やや乱暴に後ろに回った隊員が頭から麻袋を被せる。異能者対策でよく使われる手で、視線を照準に使う異能者はこれで無力化ができた。
「連れて行け」
「はっ!」
そして後ろ手で拘束をすると隊長は無線で伝える。
「カピテーン2、こちらコング。対象を拘束した。信号は確認できるか?」
そこで
『カピテーン2、確認した。これより回収に向かう』
すると少し待ってから確保した着陸予定地点にティルトジェット機がホイストを垂らして再びホバリングを行った。
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