TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#445

誤ってコース外に侵入してしまった二人は、そこで元来た道を戻るためにスフェーンはスキー板を外して肩に担いだ。

 

「ふぅ、こういう時に板が短くて助かるわね」

 

ショートスキーを持ち込んでいた彼女はそう言いながら軍用ゴーグルで見える視界を見る。

 

「雪が酷い。もう滑ったの跡まで消えてしまった」

「大丈夫だと思う。コース外れてから時間経っていないし」

 

サダミは吹雪いていて滑っていた跡があっという間に風に曝されてかき消されてしまった事に驚きながら自分も片足を外して地面に足を付けてみる。

 

「うおっ」

「気をつけて。非圧雪だから沈むわよ」

 

スフェーンは軽く注意をして自分も膝下まで沈み込んでいる足を見る。時折馬鹿が森の中を滑ったようで、何度かリフトの上からも滑った跡を確認していた。まだこのスキー場の治安はいいからマシだったが、それでもいる時はいる。

 

「ああ畜生、こんなに吹雪くならやめとけば良かった」

「可笑しいわね。こんなに吹雪く予報なんてなかった気がするけど…」

 

彼女はそこでゴーグル越しに見える視界を見つめる。

 

「まあ山の天気なんて当てにならんからね」

「そりゃあそうだけれども…」

 

サダミもそこですっかり吹雪いてしまった景色を前に表情を引き攣らせる。

 

「あぁ〜、直ぐにでも温泉入りたい」

「入った後に夕食かね」

 

そんな事を言いながら二人は雪の中を歩く。

 

 

 

そして一〇分後。

 

「…あれ?スキー場って何処?」

「え?やめて、そんな怖いこと言わんでよ」

 

足元が一向に硬くならず、なんならゲレンデを仕切る柵すら見当たらない状況に首を傾げる。

 

「ルシエル?」

『お呼びですか?』

 

そこでスッとルシエルが出てきてスフェーンに話しかけた。

 

「現在地が分からない。一向にスキー場に付かないんだけど」

『ほぅ、スフェーンが道に迷うとは珍しいですね』

 

ルシエルはそこで珍しいと少し驚きながら現在位置を測定する。

 

『…?』

 

しかし彼女は首を傾げ、再度同じ事をする。

 

『…??』

 

再度同じ事をしたが、彼女は首を傾げた。

 

『???ちょっと失礼』

 

彼女はそこで同じようにスリープ状態だったシエロを起こすと、そこで彼女にも同じ事をさせる。

 

「どったの?」

 

そこで明らかに異常なことが起こっていることにスフェーンも首を傾げると、シエロが起こされた事でサダミも首を傾げる。

 

『いえ…その…』

「遭難確定?」

『いえ、そうではなく…いや、そうかも知れませんけど…』

 

そこでシエロが少し困惑した様子でサダミに答える。

 

『現在位置が取得できません』

「ほ…?」

「どう言うこと?」

 

彼女の反応に首を傾げてお互いの顔を見る両名。想定外の事態に二人は驚いてどういうことだとルシエル達に詰め寄る。

 

『説明不能。ですが電子装備全てに異常が出ています』

 

シエロはそう回答して全てに霧が掛かったように全ての通信回線や電波が受信できない状況に首を傾げた。

 

「え?吹雪いているだけよね?」

「誰かが電波妨害でも仕掛けた?」

『いえ、通信妨害の類は確認できません』

『GPS、救難信号。いずれも応答無し』

 

ルシエル達は次々と報告を入れていくと、その内容に二人は困惑する。

 

「どう言うこと?」

「通信妨害の類でもないのに連絡ができない?」

 

二人はそこで困惑していた。現在、一〇分ほど歩いたと言うのにも関わらずスキー場に戻ることができておらず、二人は自分たちが遭難したと言う前提で動いていた。あとで怒られる覚悟であるが、この吹雪の中なら仕方ないと二人は内心で結論づけていた。

懐中時計を取り出して時間を見てみると、時間はすでに夜も遅かった。これ以上の遅延はホテルに帰ってきていないことからフロントでも疑問に持たれる頃合いだろう。

 

「そもそも夕貼に通信妨害なんてする必要あるの?」

「炭田でも襲うんじゃないの?」

「鉱山を襲うよりも輸送中を狙った方が足もつかないでしょうに…」

『そもそも通信妨害ではありません』

 

シエロはそう言い、今の通信ができない状況に困惑しながら全周波数帯で救難信号を出していた。

 

『その通信も不通。外部と一切連絡が取れません』

「どうして?」

『回答不可能。現状の情報では満足な回答ができません』

 

情報がとにかく不足しており、現状の把握すらできないでいた。この吹雪の中、二人は食事なしでも生きていける肉体であるため、救援隊がいつ到着するのかを計算していた。

 

「ホテルの係員が気がつくのに多分二時間…」

「そこから救援隊の組織と捜索を考えると…」

『おおよそ四時間を計算した方がよろしいかよ』

「了解…四時間ね」

 

スフェーンはそう答えてそこまでここを動かないようにしようと考えて近くの木々を確認する。

 

「かまくら?」

「YES」

 

サダミはすぐに彼女が何を作ろうとしているのかを理解すると、次に彼女は服の下からエントレンチングツールを取り出した。

 

「え?持ち込んでいたの?」

「当然。身に付けられるものは身につけておりますとも」

 

彼女はそう言うが、サダミは確実に体内に隠していたんだなと理解した上でため息を吐いた。まあ自分の人の事は言えないのだが…。

 

ッー!

 

「「!?」」

 

するとその時、遠くから銃声が聞こえて二人は驚愕した。

 

ッー!ッー!

 

そして間を置いて二回、複数の銃声が一斉に鳴り響いたような音が響いて反射的に二人は身を伏せた。

 

「何!?」

「三回の間を置いた銃声…」

 

その銃声には聞き覚えがあった。

 

「弔銃…?」

 

傭兵時代からずっと、公的な武装組織でよく行われてきた行為だ。戦死した治安官を見送る際、墓に入れる際に三回の空砲を感覚を開けて放つ儀式。任務を全うした名誉ある死であることを示す証だ。

 

「何でこんなところで?」

「私に聞かれてもね」

 

スフェーンはそこで困惑しながら今の銃声を聞いて、危機感を感じ取って持っていた円匙を地面に突き刺して雪を掘り始める。

 

「ヘイよっと」

 

そして掘った雪を真ん中に積み上げていく。するとルシエルが注意をしてくる。

 

『お気をつけを。銃声が響いたと言うことは、近くで何かしらの武装組織が展開している恐れがあります』

「だから急いでかまくらを作っているんでしょう?」

 

彼女はそう言うと、地面を囲うように雪を掘って積み上げていく。

 

「どうする?流石に長くはいられないでしょ?」

「そんときゃそん時よ。流石に丸一日篭ってるなんてこともないでしょうし…」

 

サダミもそこで手伝い初めて雪を集めて積み上げていく。そして雪が降る中でまだ体力が残っているうちにさっさと鎌倉を作り上げてしまおうと二人はせっせと雪を積み上げていた。

 

「…?」

 

その時、サダミはその大きな耳からこの吹雪の中を歩いてくる雪を踏みつける音を聞いた。

 

「誰か来る」

「お、救助隊かな?」

 

そこでサダミの耳の良さに相変わらずだと思いながら随分と早い発見だと思いながら振り返ってみる。

するとそこでは、雪の中を歩いてくる一人の人影があった。その足取りは重そうにしており、スキーを履いていないのかと怪訝に思った。

 

「何方かそこにいるか!?」

 

するとその吹雪の奥から少々訛りのある共通語で叫んでくる一人の男の声。

 

「ええ、捜索隊ですか?」

 

スフェーンはそこで聞くと、その人影がこの吹雪の中でよく聞こえなかったのだろうか、声に近付くように足を一歩踏み出してきた。

すると次第にその姿がくっきりと見えた。

 

「…え?」

 

その姿を見た時、思わずスフェーンは小さく声に漏らして驚いた。するとその男はかまくらを作っている途中であった二人を見た。

 

「だ、誰ですか?」

「私ですか?」

 

恐る恐るサダミが雪まみれで元々の顔すらも判別が難しくなりつつあったその男に聞いた。すると古い小銃(三十年式歩兵銃)を背負っていた兵士は答えた。

 

「私は第八師団隷下、歩兵第五聯隊、第二大隊所属。佐藤一等卒であります!」

 

一人で歩いていたその歩兵は薄い外套を着た状態で凍えており、その姿を見たスフェーン達は困惑していた。

 

「(え?何?ここら辺ってリエナクトでもやってたの?)」

「(知らないよ。そんな話、初めて聞いたし)」

 

そこでサダミと共に見るからに薄っぺらい服を着ていたその雪まみれの彼に困惑気味に見ていた。

リエナクトとは今までの歴史上の、主に戦争を題材にした出来事の再現イベントであり、エアソフトガンを持ってその歴史の装備をそのまま再現して試合を行ったりする。故に全身雪まみれの服装や汚れている本物のフェルト生地などを多用した服装や装備に、見た目の随分と気合の入ったリエナクターだと思いながら二人は受け答えていく。

 

「お二方はここの地元の者か?」

「…い、いえ」

 

しかし二人の直感が、明らかに目の前に立つ男が異質な何かであると彷彿させてくる。

 

「では何者で?このような場所に地元の者以外が居られるのですか?」

 

その途端、彼は半分困惑、半分警戒をしてスフェーン達を見ていた。彼はその警戒から背中の銃に手を伸ばそうとしていた。

 

「…狩猟だ」

 

辛うじてサダミはそこで慌てて取り出した小銃(三八式騎銃)を取り出す。スフェーンと同様、体の中に埋め込んで隠していた物だ。流石に銃身長が長いため、一部は足にも食い込んでしまっていた事で彼女は背骨に沿うように銃を隠していた。

 

「遠くで呼ばれてこの近くで鹿を狩っていたのだが、この吹雪で隠れる場所を作ろうとしていた」

 

吹雪で見えなくなっている中を建設中のかまくらの影に隠れて彼女は小銃を取り出していると、その男はゆっくりと二人を見つめ合った後にこんな雪山で青と赤の服を着ているのが不思議では合ったが、敵意は感じられなかった。

 

「なるほど、マタギの方であったか」

「…そうだ」

 

マタギという言葉にスフェーンは聞き覚えがあった。確か古い猟師の呼び方だったはずだ。

 

「だから目立つ服を着てる。間違えて撃たれないように」

「おお、そういう事でしたか。これは失礼しました」

 

佐藤はそう答えて警戒を若干しつつも、概ね敵対心を取り除いた様子で受け答えていく。

 

「貴方はどうされたのですか?」

 

そこでサダミが聞くと、佐藤は答える。

 

「はっ、先ほどの銃声を聞いて本隊との合流を模索していたのです」

 

半ば意識が朦朧としていた彼は、目の前の者達が女であることに気が付かずに受け答えていた。




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  • 永遠の統治者
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