発射された対戦車ミサイルは、一度上空に飛翔してから弾頭部のシーカーとカメラが起動をしてロックオンしていたオートマトンに向かって飛翔する。
『敵のミサイルだ!』
『フレア出せ!』
襲撃を始めた野盗団はすぐにオートマトンからチャフを上空に発射をして熱源欺瞞を始めるが、ミサイルはその白煙の中をつっこんでオートマトンに天井からトップアタック攻撃を行う。
『がはっ!』
全ての兵器にとって言える弱点の天板。そこをタンデム弾頭は貫いてオートマトンを撃破する。
「一両撃破」
『おお、やるやん」
そして炭水車に設置されたCIWSから30mmガトリング銃が発射されると添乗員達も攻撃を始めていく。
「敵襲だ」
「迎撃しろ」
「馬鹿め。上空にヘリが飛んでいるんだぞ?」
彼らは持ち込んでいた
「突撃ぃ!」
「撃ぇっ!」
反撃を確認して一斉に隠れていた野盗達はオートマトンやピックアップトラックを飛ばして接近を開始する。
「敵集団視認。オートマトンとピックアップトラックの混成部隊です」
『よくある編成ね』
再度対戦車ミサイルを発射しながらルシエルが言うと、軍用ゴーグルを使ってCIWSを操作していたスフェーンが言う。
「しかし敵は相応に重装備で来るでしょう」
『でしょうね』
こんな重武装の現金輸送列車を襲撃に来ている時点で相応に装備を整えているだろうと察すると、その直後に荒野に飛んでいった対戦車ミサイルが着弾する。
ッ!
一旦上空で炸裂をすると、中から無数の小爆弾が展開されて一斉にオートマトンに向かって降り注いでいく。
『うわっ!』
『クラスター弾だ!』
炸裂したクラスター型対戦車ミサイルは容赦無く野盗団の歩兵達に降り注ぐと、乗っていたピックアップトラックは爆発を起こして停車する。
荒野に野盗が放り投げられると、その直後に30mmの焼夷榴弾が着弾して彼らをズタズタに引き裂いていく。
『HQ、こちらウィスパー01。これより攻撃を開始する』
『こちらHQ。ウィスパー隊、全兵装の無制限使用を許可する』
国連軍のパイロットは司令部からの命令を受信して操縦桿に備え付けられた赤いボタンを押すと、機首の30mmガトリング銃を発射して攻撃を行った。
この戦域を二機のジャイロダインが編隊を組んで現金輸送列車を護衛していた。
「…」
そこで重量級サイボーグは持っていた7.62mmガトリング銃を空に向かって放ち対空射撃を行う。
ッ!
その直後、先頭に連結されたロイカット装甲車の主砲の76.2mmの主砲が発射された。近接信管の取り付けられた榴弾が発射されると、目標の近くで着弾して無数の破片と爆炎が襲いかかった。
「目標命中」
『了解。次弾、榴弾装填』
スフェーンはルシエルからの着弾観測の報告を聞いて車内に搭載したロボットを操作して砲弾を装填する。
『発射!』
直後に響く砲声。CIWSは今も接近してきた敵に対して攻撃を行なっており、野盗団の攻撃を退けながら閉塞を通過していく。
『新しい閉塞入った』
「全く…これからもっと増えますよ。敵」
「現金だべさ。総額でいくら積んだのかって話だしね」
スフェーンはそう言い戦場と化した荒野を見つめていた。
今回の目的地は国際通貨銀行の支店がある都市に向かう。ウィール通貨は国連加盟国であれば使用可能な通貨であるため、一般にも多くが流通していた。
スフェーン達のような運び屋など、多くの国を移動することになるためにウィール通貨を使うのが基本的であった。
彼女達の国籍所在地である王国のスター・オンス通貨も国際的な信用は高く、準基軸通貨としての価値があった。しかし歴史と伝統のあるウィール通貨は基本的にどこでも使える通貨であると誰もが首肯する。少なくともスフェーンは使えなかった場所をほぼ知らない。
「しっかしなんでバレるんだろうね」
『さぁ?』
スフェーンは運転席でぼやくとルシエルは首を傾げた。最後尾に連結されている四両のマニ30の中にはウィール通貨や他国の外貨を積載していた。
この外貨は国際通貨銀行が保有している外貨準備の一部であるため、これが奪われると本気で国連軍による追跡を受けることとなる。そのため、襲撃を敢行した野盗側もこれに手を出すことはない。無論、それでも生きて帰れるかどうかはわかったものではないが…。
『熱心なオタクがいるんじゃないんですか?その中にカナリアは絶対にいると思いますし』
「そうよね…ずっと駅に張り付いていても儲かる仕事だものね」
最近の王国では滅多に出ないが、他国ともなるとまた別の話である。特にこの国は数年前まで内戦が勃発していたため、治安はそれなりに悪いままだ。
国内の経済復興に合わせて大量の外貨が国内に流入し、戦時中に発行した不換紙幣の回収に現政権は苦労していると聞いていた。
『貨物駅で積み込み作業をしていた際か、ターミナル駅で停車していた際か…いずれにせよ、カナリアがいたことは事実です』
そう言い彼女は再度ロケットランチャーの引き金を引いて対戦車ミサイルを発射する。そしてまたQRコードを読み取って接続を行うと、スマートフォンのカメラを使ってロックオンを行い、引き金を引いて発射される。
「最近は運輸ギルドも受注を見られないようにしているからね。まあ、それでも野盗の襲撃は終わんねぇだけどさ」
スフェーンはそう言いながら装甲車の主砲を発射する。
野盗の襲撃を探知してから車両に乗り込んでいた護衛兵の援助もあって次第に劣勢と察した様子で野盗団は逃亡を始め、それを上空で監視していたジャイロダインが追撃を開始していた。
すでに通報を受けて国連軍の重装歩兵を満載したティルトジェット機が離陸をしており、戦闘区域に接近していた。
『こちらロングタッチ隊。間も無く現着』
二機のクワッド・ティルトジェット機はチャフなどが発射されていた戦闘区域を確認すると、最初に翼下に装備していたガンポッドの37mm機関砲が発射され、地面に二発の土煙が上がった。
「ああ、もうこりゃいいか」
『そうですね』
そしてその様子を見てスフェーン達はこれ以上の攻撃はないと感じ取って持ち出していた武装を片付け始めた。
その後、野盗団の襲撃を退けてスフェーン達の列車は最初の目的地の旅客駅に到着をする。
「あぁ〜、疲れた〜」
到着早々にスフェーンはつけていたゴーグルを外して腕を伸ばす。駅に到着をして列車では郵便物の積卸作業を始めており、貨車の引き戸を開けて中の荷物を整理していた。
「お疲れ様です。スフェーン」
「お疲れ〜」
そこで機関助士席に座っていたルシエルが見て来る。二人とも今の身長は一四〇センチ半ばの昔ながらの少女スタイルで、双子のように見える彼女達の差異は頭上の角の有無と鏡写しのような双眸だ。
「はぁ、流石に初っ端から仕掛けて来るとは思わなかった」
「ええ、ですがまだ序の口だと思いますよ」
「でしょうね」
二人はそこで停車中に連結をしていた貨物列車の車掌室のドアをノックした。
「ん?おお、運転士か」
そこでドアが開けられると、そこで挨拶に来た双子の運転士を見た。
「どうした?」
「皆さんの調子を見に来たのですが…」
そこでスフェーンが言うと、護衛兵達は微笑んで答えた。
「おう、俺たちは全然大丈夫だぜ」
「心配しなくていいぜ」
彼は口々にそう言って挨拶に来た双子の運転士を見る。
この見た目で不老者であるためにこの屈強な護衛兵達よりも圧倒的長寿であるのだが、彼女達はその容姿を何かと気にかけてくる仕草から彼らも次第に微笑ましくなってしまう。
「これどうぞ、これくらいしか渡せるものがありませんが」
スフェーンはそう言い合造車にあった
「おお、悪いな」
「ありがとよ」
そして渡された駄菓子に護衛兵達はありがたく受け取ると、スフェーン達はそこで最後尾にも居る他の護衛兵達に同じ駄菓子を配りに消えていった。
「へへっ」
「良いもんだな」
「この命令受けて正解だったぜ」
そして彼らは思わぬ場所でもらった菓子や、くれた少女達に気分をよくしながらシガレットを咥えていく。
「でもあの二人ってゴールド免許なんだろう?」
「すげぇな。マジなのか?」
「今回だってほら、鉄道郵便局の仕事だろう?この仕事を受ける運び屋なんて限られるじゃねえか」
その兵士はそう言うと、部屋にいた全員が『あぁ…』と頷く。
現在、国際鉄道連盟が発行をしている鉄道運転免許証はそれぞれ等級が与えられ、細かい等級分けがなされていた。
主に
「じゃああれか?『依頼達成率七割越えを五年間維持した』ってことか」
「腕いいじゃねえか。違反歴もねえってことだ」
「不老者ってすげえなぁ…」
そして設定された運転免許証は緑・青・銅・銀・金と等級が設定されており、色に合わせて達成条件も厳しくなっていた。
「ああ見えて俺たちよりも長生きしているってことだろう?」
「年齢が参考にならねえよ」
「そういやぁ、前に不老者の奴とヤッたことあったな…」
流石にスフェーン達に手を出すほど愚か者ではないが、世の中にはいわゆる『合法ロリ』として子供に不老者化手術を行わせるといった行為もされていると言うのを彼らは噂で聞いていた。無論、本人の自己決定権ができない状態で行えないように多くの国で未成年の不老者化手術は禁止されていた。
「へぇ、どうだったよ」
「変わんねえよ。ただやっぱ上手いぜ?腰の使い方」
「でも中身ババアだろ?俺はちょっときついな…」
「あ、お前ダメな感じなのか?」
彼らはそんな事を言いながら列車の出発準備が整うまで、スフェーンから貰ったシガレットを齧っていた。
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