TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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昨晩の強盗や今までの襲撃を考えてもつくづく思うのだが、金というのは実に恐ろしいものだなと思う。

金と愛だけが人を殺す動機になるとはとく言ったものだと過去の人物の言葉やセンスには感服させられる。やっぱり昔から同じことは続いてきたんだなと思う。

 

「弾薬は?」

「大丈夫です。満タンに補給してもらいましたので」

「じゃあ後で請求書送りつけてやる」

 

駅から進発する直前、スフェーンはルシエルに軽く確認を取ってから対戦車ライフルを背負って機関車の運転室に傾ける。ホームでは昨晩の事件が何もなかったように乗客達が列車に乗るために駅を訪れていた。

 

「やれやれ、呆れたものね」

 

スフェーンはそこで列車を安全に運行させるために強盗の一件をとっとと片付けてしまった国連軍の対応を思い出す。スフェーン達が拘束した二名はすぐにパトカーに押し込まれてドナドナされ、列車は始発で駅を出発する手続きが行われていた。

 

「もうすぐ進発許可がでます」

「了解」

 

運転台の窪みに懐中時計をはめ込み、時間を合わせた懐中時計の時刻を確認する。

 

「信号確認…良し」

 

そこでタブレットに信号を受信すると、列車は汽笛を鳴らして前進を始める。

 

「くあぁ…」

「もう出発かよ」

「始発列車だとさ」

 

動き出した列車の車内で護衛兵達が口々に言って昨晩の強盗騒ぎを思い出す。

 

「ったく、おかげで満足に寝れやしねえ」

「カフェインでも入れとけよ」

アイス(メタンフェタミン)でも打っとけよ」

「やめろ。俺はまだやってねえんだから」

 

次の交代を前に彼らは口をこぼしながら車内で休憩をしていく。元が車掌車なだけあり、彼らが活動できる範囲には一通りの生活空間があった。この列車に車掌は乗り込んでいないのは当たり前なのだが、早く交代が来ないかなと心底願いながら禁煙のマークを見た。

 

「あぁ〜、煙草吸てぇ」

「お前駅で吸ったばっかじゃねえか」

 

そこで一人の嫌煙家の兵士が嫌味な顔を浮かべて言った。

最近の国連軍は支給品の中に煙草を入れないため、酒保で買わなければならなくなっていた。そのため比較的喫煙率の高かった軍内ではこの方針に不満を持つ者もかなりいた。

 

「今度はゆっくり寝かせてくれ」

「ああ、そうなるように神にでも祈っとけ」

「へいよ」

 

やや適当に彼らは言い合うと、そのまま休憩する兵士はベッドに潜り込んで熟睡モードに切り替える。サイボーグ兵は大半が疲労を軽減可能なプログラムを仕込んでおり、そのおかげで一時間の睡眠で三倍程度の疲労回復が可能なシステムが構築されていた。

 

「おい、武器の確認しとけよ」

「ああ」

「分かってるさ」

 

隊長にそう答えて彼らは入念に武器の整備を始める。目を閉じていてもできるほど体に染み込まれたそれは、彼等の身の安全を守る相棒であると入隊直後から叩き込まれていた。

 

「しっかし敵も凝りねぇな」

「そりゃあこれだけ金を積んでたら誰だって襲いたくなるんだろう?」

 

そう言い、彼等はこの後の危険手当がどれほどの金額になるのかを考えていた。

 

「何度も撃退しているのにか?」

「ソウダヨ」

「やれやれ、五〇〇ウィールなんて何処で使うんだよ」

「俺、あの札束初めて見たわ」

 

彼等は口々にそう言いながら弾薬の確認を行う。補給された40mm擲弾や6.5mm小銃弾を確認する。

 

国連加盟国は国連軍が派遣される代わりに必ずウィール通貨の使用や分担金の支払いを要請される事となる。基軸通貨としての地位を長年維持してきたウィール通貨は、信用が他の国の通貨より圧倒的に高かった。国連非加盟国であっても、無法地帯と化した地域でもウィール通過は使えるほどであった。

安心して使える通貨というのは新興国にとっていれば自国通貨の流通が阻害されてしまう。その為、この国でウィール通貨は大都市以外では使えないように法律が制定されていた。

 

「しっかし、美味かったなぁ。フライドポテト」

 

すると一人の兵士が言った。すると別の兵士が反応する。

 

「あれマジ最高だったよな」

 

それは出発前にスフェーン達から貰ったフライドポテト。

 

「これがシンプル・イズ・ザ・ベストってやつかって思った」

「何使ったらあんな上手いんだろうな?」

 

そこで首を傾げる兵士。作りたてほど美味いものはないが、彼等は車内でありがたく食べていた。

 

「パトリシア行ったら買えるって話だぜ?」

「遠いって」

「移動にどんだけ時間かかると思ってんだよ」

 

そして彼女達の国籍がある場所を聞いて苦笑していた。少なくともその国は今いる場所から寝台列車でも一ヶ月はかかる場所にあるからだ。

 

「休暇とったって行けるかどうかわかんねぇな」

「退役しちまえよ」

「馬鹿、辞めたら仕事ねぇよ。俺ぁ、スラム生まれなんだぞ?」

「斡旋してもらえよ。軍曹なら仕事でもありそうなものだが?」

「嫌ぁ、この国に俺を雇ってくれる奴なんて国軍以外ねぇだろ」

 

国連軍は安定した衣食住が与えられる環境である為、多くの貧困層の者が応募していた。その為、一部の軍内での風紀は乱れていた。だが、十分な給金とウィールの支払いが規律を正していた。

まあ、余りにも態度が悪いと出世できないというのも理由の一つだろうが…。

 

「しかしパトリシアねぇ…」

「あの双子はそんな場所からここまで来たってのがな」

「仕事ねえのか?あの国」

「さぁな、まあ随分と鉄火場知ってる顔はしてたぜ」

「不老者ならそりゃあそうだろ」

 

護衛兵達はそう言って機関車を運転している二人の少女が過ぎる。少なくとも見た目で年齢を判断するのは昔から失礼とされているが、最近は見た目の年齢が合わないことが当たり前である為、年下と勘違いして気安く話しかけたら実は何百年話と生きてたなんて話もよく聞く事だった。

 

「そりゃあ伊達に不老者がエルフなんて言われませんよ」

「でも歳をとらねぇからすぐ病気なるんだろう?」

「らしいな。俺も詳しくは知らんが」

「あの二人、酒飲めるんですかね?」

「行けるだろ。一応、年は越してるし」

 

不老者と言うのは今でもなお『不老不死』と勘違いする人が多い。だが今まで権力の座についていた不老者の悉くが暗殺や事故、革命によって命を落としており、それはスフェーン達の祖国でも同様であった。

 

「仕事終わったら酒の肴でも誘ってみるかね」

「来ると思うか?」

「お、賭けてみるか?」

「勘弁してくれ」

 

護衛兵達はそんな話をしながら警戒をしていると、直後に列車に警報が鳴り響いた。

 

「ちっ、またかよ」

「畜生、まだ上にヘリが張り付いていないってのによ…!」

「だから狙ったんだろう?」

 

警報の理由をすぐに彼等は把握すると、機関車に搭載された複合レーダーと偵察ドローンで観測した敵情情報が送られてくる。

 

「データリンクだ。運転手達を困らせるな」

「了解」

 

そこで敵の動きを確認してから彼等は窓を開けて武器を構える。自動擲弾発射器に高い仰角をつけて引き金を引くと、放たれた40mm擲弾は迫撃砲の要領で接近中の敵集団に落着していく。

 

「くそっ!もうバレた!」

「撃て!次の攻撃が来るぞ!」

 

草原となった地域にて展開していた野盗達は被っていたカモフラージュを外してから攻撃を開始する。彼等は81mm迫撃砲を展開し、砲弾を砲口から装填して発射していく。

 

「迫撃砲だ!」

「加速させろ!」

 

護衛隊長は指示を出すと、スフェーン達も頷いてからマスコンで加速を行う。

 

「迎撃を始めます」

 

そこでルシエルは車載機銃を使って放たれた迫撃砲弾の中で命中しそうな砲弾のみを正確にCIWSの近接信管付きの榴弾を使って攻撃していく。

 

「弾は?」

「合造車まで行けばまだありますよ」

 

ガトリング銃で迎撃を行うと、空中で迫撃砲弾は爆発を起こして破片が機関車や貨車の屋根に降り注いだ。

 

「やるもんだ」

「俺たちとは経験が違いますって」

「ふははっ、違いない」

 

その迎撃に舌を巻くと、部下に言われて彼は持っていた6.5mmガトリング銃を取り出す。

 

「アルファは歩兵、ベータは迫撃砲、チャーリーは装甲車を狙え」

『ベータ、了解』

『チャーリー了解』

 

そこで現金輸送車の方で常駐していた部隊は車両に積み上げられていた使い捨て式無反動砲(MATADOR)の安全装置を外して発射すると、荒野から25mm銃弾を発射していたオートマトンの付近に命中した。

 

「命中だ!」

「ちょっと待ってろ」

 

そこですぐに新しい無反動砲を取り出して渡す。

 

「気を付けろよ」

「あぁ、分かってる」

 

彼等は直後に列車最後尾に繋げられた車両積載車から76.2mm砲の砲撃を確認すると、その防弾が目に見えて分かる軌道を描いて荒野の中に着弾をして装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)が真正面から戦車を貫通した。

 

「追撃しろ!」

「了解」

 

そして煙を上げてもまだ動いている戦車を見てすぐに無反動砲の照準を合わせて引き金を放つと、放たれたロケット弾は直進して戦車に複数命中すると、旧式の国連軍戦車は火柱を上げてブローオフパネルが吹き飛んだ。

 

「次だ」

「了解」

 

そして戦車から火だるまになって野盗が這い出てくるのに顔を顰めながら護衛兵達は新しく攻撃を仕掛けてきた野盗団を迎撃すると、展開していたピックアップトラックから無誘導ロケット弾が発射された。

 

「っ…ロケット弾だ!」

「伏せろ!」

 

上空に上がった白煙を見て誰もが顔を青ざめさせると、無反動砲を持っていた兵士は車内に引き摺り下ろされた。

 

「これはいくつか当たりますよ」

「できるだけ迎撃して!」

 

放たれた122mmのロケット弾の群れは走行中の列車や近辺の路線に次々と着弾していく。弾道計算を即座に完了させ、進行方向の線路に着弾するロケット弾の迎撃を行う。

 

「撃て!」

 

その直後、襲撃を行う野盗団側は地面に斜四五度に備え付けたロケット砲(四式四〇糎噴進砲)を発射すると、放たれた砲弾は弧を描いて運行中の列車の前方に着弾した。

 

「「っ!?」」

 

一〇〇キロ近い炸薬が命中した事で線路は軌道ごと吹き込んだ。目の前で起こった爆発にスフェーンは考えるよりも先にブレーキが掛けられた。

 

「きゃっ!」

「うおっ!?」

 

急制動をかけられ、列車全体で前に傾くと列車は大穴の空いた軌道に突っ込むような形で停車した。




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