TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#474

スフェーン・シュエットは運び屋を生業とする女である。

この世に存在する経済活動の一つである鉄道輸送による運送業者として働いている。

 

『最近の情勢は悪いですね』

「日に日に悪化してるで〜」

 

貨物列車の旅客キャビンの中で彼女はルシエルと話していると、ベッドに座り込みながら煙草に火をつける。

彼女たちは今、契約で物資輸送の仕事を請け負っていた。

仕事は至って普通の企業から委託された物資の輸送。企業が持っている自前の列車では足りないことから、ヘルプで運び屋を雇い入れていた。

運んでいるのは主に食料品で、トリプルスタック(三段積み)でコンテナに満載された加工食品を運んでいると、直後にルシエルは警告する。

 

『路線に接近中の飛行物体』

「ドローンか…」

 

煙草を咥えながら彼女は呟くと、ルシエルは警告する。

 

『敵、発砲』

 

そして放たれた無人攻撃機から機関銃が発砲を行うと、直後列車の自衛火器の反撃が始まる。

放たれた30mm近接信管付きの榴弾は簡単にドローンを破壊すると、その後に荒野の中から出てくる複数のテクニカルやオートマトン、装甲兵員輸送車(APC)が出てくる。

 

「大きい的からミサイル打って」

『了解しました』

 

スフェーンの指示にルシエルは頷いてから自衛火器からミサイルが射出されると、荒野に飛翔するミサイルは着弾する前にAPCに装備された散弾機関銃の迎撃で爆発する。

 

『ミサイル迎撃されました』

「マジか」

 

報告を聞いて軽く驚くと、すぐにスフェーンは接近中の敵の姿を捉えて直後にエーテル・カノンを展開する。

 

「射撃用意」

『FCS、起動します』

 

そこで照準で荒野を進んで対戦車ミサイルを発射してきた敵部隊を確認すると、折りたたまれていた砲身が展開して旋回を行う。

 

『照準よし、射撃用意よし』

「撃て」

 

直後、光線が列車から放たれると、対戦車ミサイルごと敵部隊が荒野の中でごっそりと姿を消した。

 

『敵部隊、熱源反応、エーテル波消失』

「OK、流石の威力〜」

 

そこで赤外線センサーで確認を行なって熱源の消失を確認する。流石に過剰な自衛装備であるため、最大出力で撃つことはまず無い。

遥か昔に貰った装備だが、滅多に使う機会もなくなってしまっていたので久しぶりに射撃をしたものだと思っていた。

 

「後どれくらいで着くかな?」

『予定ではあと五分で都市防衛砲の射程範囲です』

 

ルシエルは簡単に安全圏までの時間を伝えると、スフェーン少し肩の荷を下ろした様にため息を漏らした。

 

 

 

仕事は至ってシンプルなもので、スフェーンも昔に通ったことがある路線であったのでそれほど苦労しることもなく操車場に到着をして、荷下ろしをして、仕事の達成報酬を受け取っていた。

 

「なあ聞いたか?」

 

そして運輸ギルド併設の二四時間営業をしているカフェで休憩をしていると、近くで座っていた制服を纏っていた男女の運転士たちが話しているのが耳に入ってくる。

 

こういう時、店で誰かが話している噂やらを盗み聞きすると言うのも、傭兵の頃ではよくやっていた手であった。案外こういった噂というのは話の種にしている場合、脚色されたとはいえ事実を元にしている場合が多いため、よっぽど嘘ぱちに思える場合以外はスフェーンは盗聴して情報収集をしていた。

 

「最近、この先の二級路線で結構な数がやられているって話」

「え?またやられたの?」

 

彼らは運転前であるためか酒ではなくコーヒーを注文しており、二人は運転前に軽く世間話をしていた。

 

「ほら、この前の仕事であいつ原棒食らっただろ?それが原因らしいぜ」

「えー、あそこ今度私使うんだけど。大丈夫なの?」

「まあ夜に出なきゃ大丈夫なんじゃねえ?」

 

そんなことを話しながら彼らは店を後にすると、残ったスフェーンは聞いた。

 

「どう思う?」

『検索を行いましたが、今のところ掲示板にその様な情報はまだ上がっていません』

 

ルシエルはすぐにこの噂話を前にこの地域の掲示板を見ていくと、その中で路線の襲撃に関する情報の精査を行っていく。

 

『各サイト、掲示板の照会を行います』

「了解〜」

『少し手伝ってもらってもいいですか?」

「OK」

 

そこでルシエルに演算機能を譲渡すると、そこでルシエルはこれから仕事を行う路線の安全状況の確認を行う。

基本的に今の時代のトラオムは治安が悪い。特に戦争がオッパジマろうとしている今なら尚更だ。

 

『黒鉄市からの物資輸送ですが、現時点で襲撃は十二件ほど起こっていますね』

 

彼女は企業が運営するものや、個人サーバーで運営されている掲示板をダークウェブの部類に入る物まで全て検索を行うと、そこで収集した情報を羅列していく。

 

「…ふむ」

 

そこで彼女は襲撃を行った野盗の情報を見ると、その中に襲撃を行ったオートマトンの情報を見ていく。

 

「赤いオートマトン?」

『ここ数日で確認されている野盗だそうです。被害が出ていますね』

「そう…」

 

スフェーンはそこでその被害にあった列車の情報を見ると、少し奇妙なことに気がつく。

 

「被害が出ていない?」

『はい。現状、機関車を破壊されて列車を停止させられることはありますが、物品の盗難などは行われていないそうです』

 

故に、襲撃を受けても軍警察はそれほど動いていない様子であるという。

 

「襲撃…ねえ」

『当該の機体は、まだ確認されたばかりですので被害はまだそれほど大きくはありませんね』

「なるほど…」

 

スフェーンはその襲撃の話を聞き、少し目元を鋭くさせるとルシエルが話しかける。

 

『どうされましたか?』

「いや、ちょっと…ね」

 

彼女はそこでARに投影されている記録を見て少し思う部分があった。

 

『この機体のマーキングですか?』

「まあね」

 

そこで襲撃された際の記録としてわずかに残っており、ルシエルが補正と加工を行ったことで見え始めた輪郭を見る。

 

「このマーキングは昔の愛機(ロート・フォッカー)の塗装だ」

 

彼女は昔に見慣れたその塗装を見ながら少しだけ思う様子を見せていた。

 

『気になりますか?』

「…まあ、ね」

 

彼女はルシエルに返すと、その心境を感じ取っていた。

 

「もう使わないとはいっても、同じテイストで塗っちゃったからにはねえ」

 

カフェで支払いをしながら彼女はルシエルに言う。

彼女の持っている貨物列車は一度塗装し直しを行っており、それからずっと同じ塗装で運行していた。かつて受け継いだ名前を体現した臙脂色を選び、その時の塗装屋で一番安い塗り方を選んでいたが、次第に機体に愛着が湧いてしまったあの塗装。

 

「まあ死んでしまったから仕方ないけどね」

『今までも散々あなたの名前を語った商売はされてきましたからね』

「今のジェロの様に?」

『まあ…彼は彼で苦労しているとは思いますが…』

 

ルシエルはそこで少し微妙な顔をしながら留置線にバイクで移動すると、そこで自分の運転する列車を見つめる。十三両編成のその貨物列車は、前後二台が強力なエーテル機関を搭載した動力車である。

 

『今回は破損兵器の移送も含まれています』

「まあ滅多に盗む奴はいないから大丈夫だとは思うけどね」

 

煙草を吸いながら彼女は列車を見上げると、ルシエルが軽く忠告をする。

 

『それでも警戒するに越したことはありません』

「そりゃそうだ」

 

たとて破損兵器であろうと、金属という資源である。これでも屑鉄としての価値があり、相場はおおよそ自動車一台分にもなるだろう。

この世の全てのものに価値が与えられる今の時代であれば、なおさらな話だ。

 

「オーラーイ」

「気をつけろ〜」

 

積み込み作業で自走迫撃砲を載せるのは都市の郷土防衛隊である。黒鉄市は、傭兵が多く集まることで、そこに付随して多数の企業が兵器生産工場を構える一大事軍需都市でもある。

 

「では、お任せします」

「了解しました」

 

先に契約を交わした企業とタブルブッキングをしないように別の仕事も受注していたスフェーンは、そこで依頼を発行した市の職員に挨拶を求められると、彼女は頷いた上で積載を終えてから進発していく。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

レッドサンとブルーナイトは、かつて傭兵の中の二大巨頭と言われていた。

しかし傭兵と言う業務を知らない人間でも知っている名前は?と聞かれたら、まず間違いなくブルーナイトと答えるだろう。世間的にはジェローム・サックスという本名の方が知られている。

 

「ジェローム・サックスは、現在は医療関係業務の傍で孤児院の院長…か」

 

そこでインターネットに上がっている情報を見て、次に彼に関する幾つかの疑惑などをまとめた記事を読んでいく。

 

「アイリーン社の支援を受けるため、彼はレッドサンをタルタロス鉱山で殺害…か」

 

記事を読み終えた彼は、泊まっていたホテルの椅子に深く座り直して天を見上げる。

 

タルタロス鉱山崩落事故は、のちに軍警察による立ち入り調査で『再操業不可能』と判断されるほどに酷い崩落であったと言われている。

その現場にいて、唯一深部まで移動して地上に帰還したのがブルーナイトだ。その時点で彼のオートマトン乗りとしての腕前が見て取れる。

今でも公式的には、彼へ与えられた判決に対して別の人間の異議申し立てによる起訴も行われたこともあるが、正当性の有無を根拠に全てが司法局によって棄却されていた。

 

「まあ、ありない話ではないだろうな…」

 

その後の赤砂傭兵団のアイリーン社支援による規模拡大を見ていて、彼は歴史を見る歴史家のような気分で好き勝手に自論を脳内で書き上げていく。

今もなお疑惑として彼へインタビューをする際に聞かれる質問であるというのだから苦労する話だ。

 

「まあ、レッドサンに関して調べている俺もあまり人の事言えんな…」

 

レッドサンの死体は今も見つかっておらず、永遠にタルタロス鉱山の奥で眠っていると言われている。

今まで何度か彼の愛機であったロート・フォッカーの引き上げを行おうとする富豪の話もあるが、いずれも引き上げは断念されていた。

軍警察の非公開資料の中には、その事件現場に向かったという話もあるが、真偽はわからない。

彼が気にかけていた孤児であるという、現在は軍警察少将の男がその真相を知っているとも言われていた。

次に外伝書くなら

  • 南北戦争(圧倒的作者の趣味)
  • アンジョラの病院(数話で終わる)
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