TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

476 / 481
#476

その光景は、少女にとってみればいわゆる『知らない天井』ではなかった。

 

「…?」

 

その眩しい照明は、幾つもの小さな照明が集合して照らされていた。

 

「?」

 

体を起こすと、呆然と彼女は左右を見回した。

 

「大丈夫か?喜美子」

「おかあさん?」

 

そこでは白衣を纏った女が話しかけた。

 

「違うわ。私のことは『お母さん』と呼ぶのです」

「?…もうしわけありまs」

「うん、ちゃんと謝れましたね。次からは気をつけてください」

 

その女性が少女を見て頷くと、彼女は少女の手を取って部屋を出る。

 

「来週は待ちに待った外に出る日です。気合を入れていきましょう」

「はい」

「力を出そうということです。今までたくさん練習はしましたよね?」

「?はい」

 

そこで少女は首を傾げると、見慣れたいつもの長い廊下を歩いていく。

周囲には他にも同様に白衣や作業着に身を包んだ大勢の大人たちが出歩いており、その光景は見覚えがあった。

 

「?」

 

彼女は先ほどの会話に首を傾げ、その上でこの光景が何なのかを把握する。

 

いつものおうちでおそとにでかけるときだ。

おかあさんにてをつながれてながいろうかをあるく。

わたしはいつものように『けんさ』をしてから『おーとまとん』にのるのだ。

 

『こっち、パッテリーに充電しておけよ』

『うわ、腕のアームの配線焦げてる』

『精度高い部品持ってこいよな、開発課』

 

彼女はお母さんの奥でジャッキアップされて吊し上げられているオートマトンを見る。

その機体は赤と臙脂色で塗装されたオートマトンで、見るからに多くのスラスターが増設されていた。

 

「ふーん、私を真似をするとはね」

「?」

 

その時、知らない声が彼女の耳元に聞こえると、その機体を見つめる知らない少女がいた。

 

「えっ?」

 

その驚きの声が漏れると、直後に少女の視線は強制的に別の場所に移される。これも彼女がはっきりと覚えている記憶の通りであった。

まるで記録されたビデオテープを見ているかのように彼女が覚えている内容と同じ通りに進んでいた。

 

『こっち、まだ反応速度が足りていないんじゃないか?』

『いや、これ以上のスラスターの追加は無理だ』

『やはりあの動きの再現はこの機体では無理か…』

 

反対の廊下では、地べたに座って車座を囲んで複数のプログラマーが自身の繋がれたパソコンに接続された映像を何度も繰り返し、ある映像と見比べていた。

 

『おいおい、伝説相手に泣き言か?』

『阿呆、プログラマー冥利に尽きるつってんだよ』

『いずれにせよ、機体を丸ごと新しいのにしなきゃ無理だな』

 

彼らの持ち込んた機器類の前でそう呟き合っていると、別では一人の研究員が話していた。

 

『ロート・フォッカーの製造元は遡れたのか?』

『情報部が言ってた。一応、東雲製作所が一番作っていた可能性が高いらしい』

『まじか、多脚工作機械のトップじゃん』

『レッドサンの支援者は東雲製作所ってのが有力ってことか…』

 

口々に彼らはそう話していた。

 

『東雲製作所が相手だと少し厳しいな…』

『阿呆、そもそもレッドサンの情報を聞いても門前払いされるに決まってんだろ』

『でしょうね…レッドサンのOS情報はオートマトンのOSを書き換える価値がある代物よ』

 

研究員たちはそう話しながら作業を続けている。

 

『それ嘘じゃないの?レッドサンに関しては情報部信用してないんだけど』

『俺に聞くなよ。…ただタルタロス鉱山にはまだロート・フォッカーがまだ残っているって話だし、上はいずれ発掘しに行くかもな』

『軍警察でも無理だったのに?』

 

密閉された施設の中で彼らは顔が全体的に薄くモザイクが掛かったように顔の輪郭が朧げになっている。それに合わせて声もややくぐもった声をしていた。

 

『それに値する価値があるかもって話だろ?あくまで推測だよ』

『でもレッドサンの戦闘記録って参考になるの?」

『まあOS書き換えてシステム補助をするくらいにはなるかもな』

『そもそも五〇年近く前のOSなんて今の機体に適応できるのか?』

 

白衣の白がやけに印象的になり、下半身を中心に強く輪郭がある視界。二度目の見覚えがある光景に少女は困惑しながら歩いていた。

 

『でも伝説と呼ばれた傭兵を量産できるってなったら?』

『まあ、少なくとも爆発的に売れるでしょうね』

『だろ?ブルーナイトもそれを恐れて目の前で処分させたからな。機体とデータは仲良く溶鉱炉の中だ』

 

彼らはそう言い、次に一人がダメもとで聞く。

 

『本人に頼んだらどうだ?』

『無理だ。そもそも本人がオートマトンに乗れる状態じゃない』

『それ以前に傭兵からは完全に手を引いているし、そもそもオートマトンに乗りたがらないって話よ』

 

彼女たちはそう話すと、動くホログラムを何度も再生する。

 

『とりあえずブルーナイトはこっちで再現できるんだ。あとはレッドサンの再現だが…』

『喜美子はどうだ?』

『今までの子達の中で最高よ』

 

自信満々に彼女は頷く。

 

『まだシミュレーションだけど、今まで観測されたレッドサンの映像の動きに最も違い状態を維持できている』

 

そこでアンドロイドがオートマトンを模したポリゴンがさまざまな環境を想定した訓練での結果を見せていた。

 

『オートマトンの反応速度は問題ない。地形適応能力も、環境適応能力も、全てにおいて好成績を残している』

『そうか…!』

 

その結果を聞いて他の研究者たちも安堵した様子でいると、通りかかった少女を見て笑顔で手を振り、この時は同じように返すといいと教えられた少女は返すと、彼らは直後に再び視線を画面に落とした。

 

そんな白衣を着た面々の目の前に、白衣を着た見覚えのある下半身が現れた。

 

「おはよう喜美子」

「お父さん…」

 

そこで少女は顔を上げて自分の知っている口調でその名前を呟いた。しかしその男の上で肩車をするように座っていた少女を見て困惑した。

 

「チャオ〜、この姿で会うのは初めてだね」

 

いまいちわかっていない様子の反応をした喜美子に、少女は笑顔で手を振って挨拶をした。

 

「誰…?」

「おっと、その様子じゃあ警戒することも勉強してなさそうだね〜」

 

喜美子の反応を見て少女は糸目のまま組んでいた足を下ろして地面に降りた。

 

「失礼。ちょっと邪魔したよ〜」

「?」

 

そこで顔を上げた少女は、自分と違って紺色のナッパ服を纏っており、身長はやや高めだった。

虹色と灰色の目、灰色の長髪が特徴的なその少女は、不思議な感覚を与えた。

 

「君の記憶を見させて貰ったよ」

「?」

 

言っている意味が理解できずに困惑する喜美子。

 

「いやはや、サイボーグでもないのに人の記憶を見ることができるってのは実に便利なことだね。そりゃあ軍警察が異能者をどんどん育成させるわけだよ」

 

その少女はそう呟くと、喜美子の手を取る。

 

「えっ…」

 

手を取って移動しようとしたことに驚くと、少女は横の壁を捲る。

 

「え?」

 

そこはカーテンのようになっており、少女が掴んで持ち上げたホリゾントを潜って外に出ると、そこでは大きな照明の吊るされたプレハブ施設があった。

 

「何処…?」

「おお、教育はちまちまとは受けているんだねえ…」

 

感心したようにその少女は言うと、多数の撮影機材が積み上がった撮影現場を歩く。

 

「まあ、うっかりやっちゃっても良かったんだけど…」

 

そしてその少女は積み上がった木製パレットの上で足をフラフラとさせる。

 

「どうしてこの塗装をしたオートマトンが、列車強盗しているのかを知りたくってね」

 

彼女はそこで手元に人形サイズのオートマトンを何の動作もなく顕出させると、その人形を喜美子の手に握らせた。

 

「これ、わたしのおーとまとん…!」

「そう、これは君が乗っていたオートマトン。そしてこれは握るという行動」

 

その人形は恐ろしいほどに精巧に組み立てられ、同時に目の前の少女の動作に驚いていた。

 

「そして今の君は驚いている」

「おどろいている…?」

 

少女に言われ、首を傾げる。すると彼女は頷く。

 

「そう、君は驚いている。これは人形と言って、オートマトンではない」

「おどろいている…にんぎょう…」

 

そこで不思議な魅力のようなものを振りまいていた目の前の少女に、喜美子は不思議と渡されたオートマトンの人形と彼女の顔を交互に見ていく。

 

「どうやら、君には知恵の実が必要なのかもしれないね」

 

その少女はそう呟くと、彼女から手が伸びて喜美子は額に指が当てられた。

 

「っ!!?」

 

その直後、彼女には無数の煌めきを見た。

 

それは虹色にも、無にも、奔流のようでもあった。

 

喜び、怒り、恐れ、悲しみ、驚き、嫌悪。

 

少女はそれを見ることとなる。

虹色の煌めきとも言えるその奔流の中心から眩い光が差し込んだ。

 

「…?」

 

いまだに彼女の瞳にはあの色とりどりの反流が粒となって河のように流れていく光景が映っていたが、次第にそれも消えて真っ白い漂白された景色が広がった。

 

「…」

 

呆然としていた彼女は、そこで覗き込んでくる両親を見た。

 

「大丈夫か?」

「は、い…」

 

ゆっくりと彼女は頷くと、安堵した様子で安堵の息を吐く。

 

「意識回復しました」

「心拍数も変わらず安定しています」

 

そこで医療機器と接続していた彼女に安堵して他の研究員たちやメカニックも安堵の反応をして行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

レッドサンというのは伝説を超えてもはや神話の域に達しようとしているのは、最近感じていることだ。

 

「傭兵じゃねえな、こりゃ…」

 

その場所でパスタを食べながらユウキは今までの取材を聞いて思ったことをつぶやく。

 

「なんの話をしてて?」

「あ、スフェーンさん」

 

そこで覗き込むようにスフェーンが話しかけてきたので、ユウキは顔を上げて反応した。

 

「そのパスタ美味しいわよね」

「あっ、そうなんですよ。これ、このレストランでもおすすめらしくって」

 

彼は頷いてからオイルパスタを食べていく。

そしてスフェーンは反対の席に座ると、そこでウェイターに注文をした。

 

「このホットサンドを」

「かしこまりました」

 

そこで出てくるまでスフェーンはユウキと話す。

 

「で、わざわざ私を呼んだ理由って?」

「ええ、実は取材中に嫌な話を聞いてしまって…」

 

彼は少し眉を顰めて話し出した。




お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。

次に外伝書くなら

  • 南北戦争(圧倒的作者の趣味)
  • アンジョラの病院(数話で終わる)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。