その時間、軍警察の空軍基地の駐機場で駐機されていた
「何だ、こんな時間に出撃か?」
「ああ、しかも護衛付きでな」
そう言い、乗り込む治安官は同じ駐機場に並ぶ
「
「随分とまあ豪華な護衛なこった」
プロペラ機である偵察機の護衛が
「これから偵察するのは場所わかってんのか?」
「ああ、情報部が調べた」
「げっ、そっちからかよ…」
嫌なものを見る様な目で任務を前に操縦手は呟くと、撮影を行う偵察手が返す。
「ま、それほど怖いことにはならんさ。別に戦場を飛ぶわけでもないって話だったろ?」
「まあな、てっきり国境付近の撮影をしろって言われるかと思ってたけどよ…」
そんな事を言いながら二人は段の無い一直線のキャノピーを開けて乗り込んでいく。
「場所は…黒鉄市近郊か」
「最近、そこらへんで列車襲撃が酷いという話らしい」
「なるほど…」
偵察機は事前に敵情を把握し、その情報を司令部に届けて作戦立案の補助をする事である。
「野盗か?」
「一応はな」
一応、と偵察手が返した事で操縦手はそれが『ただの野盗では無い』と暗示したので面倒そうな仕事を前にため息が漏れる。
「だから迎撃されるかもってか?」
「噂じゃあ、パシリコの方から金が流れているっていうらしい」
「へえ、嫌な仕事もあったもんだ」
そこで護衛機にクラスター爆弾が搭載されているのを見る。
「ま、当たらない事を祈っとくんだな」
「へいへい」
彼らはそう話しながら乗り込むと、無線を繋いでからエンジンを起動して離陸をしていった。
初めにその違和感に気がついたのは研究員の一人だった。
「?」
FCSが起動した事を示す警告が鳴り、いつもよりも早い起動に違和感を感じた。
通常であれば護衛と支援を行うオートマトン部隊が展開してから起動するはずのそのシステムに首を傾げた直後。
ッ!ッ!ッ!ッ!
聞こえた四発の轟音。聞き馴染みのないその後の直後、ガソリンを積載していたタンクに焼夷榴弾が撃ち込まれて引火した事で爆発が起こった。
「っ?!」
初めは何が起こったのかがさっぱり不明だった。
「何だ!?」
「襲撃か!!?」
周りにいた面々も困惑した様子で左右を見回すと、直後に着弾した25mm焼夷榴弾の起爆である者は火達磨に、ある者は炸裂した弾殻の破片でズタズタに引き裂かれた。
「っ…!!」
その時、野営地に響く警報。走る兵士。そして爆発し、火災が発生した中佇む赤色のオートマトン。
オートマトンは銃口がこちらを向いていた。
「どういうことだ!!」
「撃ってきたぞ!」
「退避!退避ぃい!」
銃声を聞き、戸惑い始める研究員達。
「どうしたんだ!?」
「くそっ、主任がやられた!!」
悲鳴をあげて血だらけの研究者を引きずって退避を行うと、野営地に格納されていたオートマトンが起立する。
「くそっ、何が起こったんだよ!」
「迎撃しろ!」
そこで多脚戦車が起動して野営地を走ると、直後に主砲の120mm滑腔砲が砲撃を行った。
「うわっ!?」
その衝撃波で周辺にあった機材が吹き飛んでしまう。思わず整備員達も耳を塞いで砲撃を耐えると、発射された対戦車榴弾をオートマトンは簡単に回避する。
「ちっ」
「撃て撃て!」
展開したオートマトン部隊は持っていた25mm自動小銃を放つと、赤いオートマトンは増設されたスラスターを噴射して上空に飛翔して回避する。そして持っていた25mm自動小銃の引き金を引いて地面に次々と着弾させていく。
「くそっ!」
「アイツ、人を狙ってやがる…!!」
そこで着弾と当時に弾けて薙ぎ倒される兵員を見ると、直後に自由落下を始めたオートマトンが一台の多脚戦車の上に飛び降りた。
「うわっ…!!」
直後、へし折られる砲身に銃身下部の120mmキャニスター弾が放たれ、別の多脚戦車が穴だらけになってコックピットに無数の穴が空いた後に背負い式の弾薬庫に引火を起こしてブローオフパネルが吹き飛ぶ。
「あと四つ…」
少女はそう呟くと、直後にオートマトンからの銃撃をスラスターを動作させて急激に後退する。
『何だあの移動速度!?』
『くそっ、早すぎで照準が追いついていないぞ!!』
無線で怒鳴り散らす彼らは、集団で固まってホバーによる回避軌道をとっているオートマトンに向かって攻撃を行う。
着弾した弾頭が焼夷榴弾なこともあり、着弾とともに地面が爆発して地面に焦げ跡がついていく。
「どうして…?」
その様子を見ながら無数の赤が見える光景を前に彼女は首を傾げた。
「赤…赤い景色…」
彼女はただその言葉のみを呟いて疑問に思っていた。爆発した野営地の被害は大きく、派手な火災が黒煙とともに濛々と立ち込めていた。
『何しやがった?!』
『とち狂いやがった!』
『始末しろ!これ以上は危険だ!』
無線で野営地でヘスコ防壁を盾に銃撃を行うオートマトン部隊。
その爆発音は、遠い荒野で楽しく食事をしていたスフェーン達も耳にしていた。
「え?今の何?」
「爆発…ですね」
二人の表情は途端に固くなって警戒した様子で食事を地面に置いて隠れていたワジから多脚戦車の測距用カメラを起動して偵察を開始する。
「っ!燃えてますよ!!」
「…」
そこで黒煙を吐き出して燃えている野営地を見てユウキが驚いていると、その火災の中で砲声と銃声が響く。
「うおっ!」
その音に反射的に身を屈めてしまう二人。
「何の音ですか?」
「最低100mmクラス。多分多脚戦車の砲撃ね」
事前の偵察で多脚戦車やオートマトンが配備されていることは知っていたので、二人は身を屈めながら火災の発生した野営地を観察していた。その直後、頭上を曳光弾の光が通過していった。
「おっと、こりゃ危ないね」
「機内に戻りましょう」
そこで二人は身を隠して食べかけていた食事を口にかき込みながらコックピットに座ると、スフェーンは操縦桿を操作する。
「(現状は?)」
『無線がかなり混戦しています。暗号化処理も施されていないので盗聴が簡単でいいですよ』
ルシエルが問いかけに答えると、彼女はスフェーンにその内容を伝える。
『叛逆か!?』
『撃て!機体ごと処分しろ!』
オートマトンか、多脚戦車か、いずれかの機体の無線から指示が飛んだ後に射撃音が聞こえる。
どうやら一台のオートマトンが暴走を始めたようで、その対処に彼らは追われていた。
「ちょっとばかし毒が効きすぎたかな?」
その無線を聴きながら彼女は小さく呟くと、その後に起動した多脚戦車をワジに沿って走らせて野営地の観測を続ける。
「どうする?このまま逃げるかい?」
「いえ、もう少し撮影をさせてください」
スフェーンの質問に即答で返したユウキはカメラを拡大して写真撮影を行っていた。少々予想外な展開を前に記者として執筆欲が沸いたのか、彼は興味津々で写真撮影を行っていた。
「あーあー、こりゃひどいね」
スフェーンはそこでいっぽい的にスラスターを全開にしたままの高機動戦闘に翻弄され、撃破されていく車両を見て哀れにさえ思ってしまった。
彼女達が見ていた野営地の中で、真っ赤に燃え上がる施設や装備を見つめて佇む赤色のオートマトン。
「どうして…?」
そのコックピットで少女は困惑気味にその様子を見下ろしていた。
「赤がいっぱいあるのに…」
彼女が見下ろす先には血染めの地面が広がり、燃え盛る炎がそれを照らしていた。
なぜこのような行動に至ったのかはわからない。ただ茫然と『これをしたらいけるかも?』という疑問があった。ただそれを実証したにすぎなかった。
「…かはっ!!?」
一面が赤く染まった直後、彼女は激しい振動とともに機体が大きく揺さぶられた。
「…え?」
その瞬間、彼女は何かに抉られたように機体が割れると、大きく前に吹き飛ぶように彼女は機体諸共倒れた。
『くそっ…手こずらせやがって…』
その真後ろでは、割れてコックピットが丸出しになっていた多脚戦車が頽れていた。そのコックピットで、右半身が血だらけの男が破壊したオートマトンを見つめていた。
「どうして…?」
彼女は困惑したまま血を吐き出すと、背中から撃ち抜かれたオートマトンはフレームが折れ、真っ二つに折れるように倒れた。
「あっ…」
そして倒れた少女は直後に視えた虹色の煌めきの奔流を見て、思わず笑みがこぼれた。
翌日、黒金市に逃げるように戻った二人。
「結局、あれは何だったんですか?」
ユウキはそこで集めた資料を見ながら記事を書いていく。
「さあね…」
その問いかけにスフェーンはそう返しながらユウキが撮影した写真を次々と見ていく。
写真には、燃え盛る野営地の中で佇んでいた赤色のオートマトンが背後から奇襲で真っ二つに折れる瞬間までしっかり映像に残していた。
「とりあえず、後のことは軍警が捜査をするのかしら?」
「軍警の偵察機が飛んでいましたしね。まあでも、とりあえずこれは記事にして本社に送ろうとは思っていますよ」
ユウキはそう言い、仮題に『謎の襲撃者の正体!伝説の傭兵の蘇りなのか!?』という見出しをつけて記事を書いていた。
内容はかつてのレッドサンを模した機体が暴れ回っていたことについてなるべく仕入れた情報の範囲で書けるだけのことを書いていた。
「でも、彼らが研究していたのは伝説の再来だったのでしょうね」
「状況証拠でほぼ推察ですけど、まあ僕も同じことを思ってしまいましたよ」
そこでスフェーンの呟きに彼は頷いて写真を見つめる。
「今まで、多くの企業がこうした腕利きの傭兵を再現しようとしてきましたよね」
「ええ、どうしてもPMCじゃあ数で補えない部分がある以上は、質で勝負するしかないもの」
スフェーンはそう言い、その惨劇の一つに加えられることとなってしまった、何とも後味の悪い今回の事件を前に呟く。
「でもそういうのはどうして悉く失敗するんでしょう?」
ユウキはそこで今まで多くの企業が行おうとしてきたこの類の実験に首を傾げると、その疑問にスフェーンは元々用意されていたように答えを返した。
「天才っていうのは、いつだって望んで生まれるわけじゃないからじゃない?」
その返答に、彼は納得がいった様子で頷いていた。その反応に納得してくれたようで何よりとスフェーンも満足げにしていた。
「…ん?」
その直後、スフェーンはふと違和感を感じていると一瞬の閃光が光った後に二人で食事を摂っていた店の窓が揺れた。
「何!?」
「おい!ビルが爆発したぞ!」
そこで店内にいた数名の客が驚愕した様子で窓の外を見ると、そこでは街で一番高い傭兵ギルドのビルから炎と煙が上がった。
『速報です』
するとテレビや携帯から一斉に警報音が鳴り響き、番組も切り替わっていた。そこでは慌てた様子でキャスターが緊急で作成された原稿を読み上げていた。
『たった今、パシリコ共和国がヴァイナハルテ誓約同盟に対し、宣戦布告を行いました』
その読み上げに店内にいた客の大半が困惑し、驚愕していた。
無論スフェーン達も、その情報を聞いて困惑して聞いていた。
ーー後に『パシリコ戦争』と呼ばれる戦争の火蓋が切って落とされた瞬間であった。
お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。
次に外伝書くなら
-
南北戦争(圧倒的作者の趣味)
-
アンジョラの病院(数話で終わる)