通報を受けた軍警察が現場に駆けつけると、その状況を見て絶句してしまう。
「これは…」
一部はそれを見て吐いてしまう兵士がいるほどであった。すると一人の治安官が測定器を持って指示を出す。
「空間エーテル濃度が酷い…しかも活性化エーテルか…」
「総員、これよりガスマスクを着用せよ」
そこでは計器が危険値を示していた。それは長時間、この場所に居てはならないと言う通常のものよりも危険な代物であった。
「以降、活動時間は三〇分に限定する」
「やるんですか?」
「当たり前だ」
そこで被ったヘルメットに活動時間が表示される中、一人の治安官が聞いて来たので軽く叱責を行いながら部隊長は言う。
「うわっ」
「気を付けろ」
地面に大量に生えていた蔦に足を取られて転倒しかけた治安官を支えると、その治安官は唖然となって目の前の光景を見る。
「一体、何があったんだ…」
彼は地面に倒れて白骨化していた遺体の目から生えている花を見ながら唖然となって植物と活性化エーテルで塗れた目の前の施設を見た。
トラオムの世界は常にエーテルの殻に覆われている影響で、新月の夜であっても空に浮かぶオーロラのような光が地上を完全な常闇にはしない。
「〜♪」
軽く口笛を吹きながら男は林の木の根元で立哨していた。理由は彼がいる迫撃砲陣地の防衛のためである。
「やけに上機嫌だな」
「まあな」
そこで同じ陣地で迫撃砲を操作する要員が話しかけると、男は上機嫌だった訳を言う。
「そろそろ騎士団が帰ってくるだろう?そしたらやりたい放題できる」
「ああ、あいつらか…」
その理由を知って軽く呆れた様子でため息を漏らすと言う。
「今日出たのか?」
「ああ、徴発に反対した村に向かって交代する前に帰って来ていたぞ」
「異端認定したのか?」
「らしいぞ、そういうタレコミがあったって話だぜ」
二人はそう話すと、その陣地に別の集団がやってくる。
「おーい、そろそろ交代だ」
「ああ、分かった」
そこで二人は交代要員と交代して陣地を出ると、そこで眼下に広がる景色を見つめる。そこには無数の軍用車両や物資が並び、ヘスコ防壁で守られている陣地があった。
「はぁ、ったく。最近は異端認定が多いな」
「徴用に耐えられんらしいからな。人民の努力不足といったところじゃ無いか?」
皮肉混じりに彼らは話すと、駐屯地に戻って他にも同様の装備で固めた兵士たちを見ながら食堂に向かう。
「今日の配食だ」
「ちっ、前よりも減っていないか?」
そこでトレーに乗せられた食料を見ながら兵士達は毒吐くと、配給係は少し顔を顰めて言う。
「補給が減っているんだ。我慢してくれ」
「へいへい、分かりましたよ」
無いものを強請っても意味がない事は分かるほどの知識はあったので、男はそれで我慢しながらテーブルについて食事を始める。
交代を行い、迫撃砲陣地で煙草を吸い始める兵士。
「ふぅ…」
そこで何も考えずに煙草を吸っていた。
「うこっ…!?」
その直後、彼は眉間から細長い銀色に鈍く反射する金属質の物体が貫いた事で脳幹を破壊された。
「何だ…っ!!?」
目の前で男が死んだことに驚愕する間も無くその男も口元を抑えられた上で喉、肺、心臓、下腹部を次々と銃剣で突き刺された男はそのまま赤い泡を吹いて地面に倒れた。生命維持装置も動作しておらず、電波が発信された兆候も確認できなかった。
「制圧しました」
「重迫なのに二人しかいないのか?」
そこでルシエルが報告を入れると、周りに弾薬が多数用意されている中でその運用人数の少なさに驚いた様子でサダミが呟いた。
「それだけ無警戒って事でしょう?いい事じゃない」
二人に少し遅れる形でスフェーンも森の中から陣地に入ってくると、そこで積まれていた迫撃砲弾を確認する。
「欲しいやつあった?」
「ああ、これだろ?」
スフェーンの質問にサダミが用意されていた砲弾の中の一つを見せると、満足そうにしてスフェーンは次に重迫撃砲を見る。
「やるか?」
「ん、ちょっとお待ち」
そこでサダミにスフェーンはしたいとなった二人の男の頭に触れると、次の瞬間に二人の目玉がゴロリと飛び出して地面に落ちて目の奥から草花が飛び出した。
「よし、始めちゃおうか」
「ん」
そこで彼女達は外に向いていた砲口を反転させる。すると目から草花の飛び出した兵士は、開花した花が僅かに光出しながらエーテルが噴き出るとともに体から血の気が失せて行き、同時に徘徊するように前屈みになって辺りを歩き出す。
「下が地面に刺さっていないので楽ですね」
衝撃吸収のための底板が地面から浮いた状態なのを見てルシエルはやや驚きながら迫撃砲を反転させ終えると、仰角を高く設定して照準を合わせる。
「よし、これで計算通りなら駐屯地の真上に着弾しますよ」
自信満々に報告すると、交代要員が来てしまう前にサダミが取り出した砲弾に火薬を最低量取り付けて両手で砲弾を掲げるように砲口から砲弾を装填する。
「拉縄は?」
「いるの?」
「…いらないか」
そこでコントのような軽いやり取りをした後にサダミは砲口から砲弾を入れた後に伏せて耳を抑える。
ッーー!!
直後に砲口から円環型に炎が噴き出て砲弾が空高く飛翔した。
「?」
放たれた砲弾の砲声に一瞬近くにいた兵士は首を傾げたが、直後に放たれた砲弾が空中で落下傘を開いて中の装置が起動した。
「うおっ!?」
そしてその砲弾から射出された電磁パルス攻撃が駐屯地全体に広がると、施設内で無防備に姿を晒していたアンドロイドやサイボーグがサージ電流を流して火花を散らして一気に壊れていった。
「何だ!?」
「照明が落ちたぞ!」
新月の夜に一斉に駐屯地の電源が落ち、一瞬の暗闇が場を支配すると、直後に駐屯地内に着弾して行く。
「くそっ!どこから撃って来やがった!」
食堂で食事中だった兵士は飛び出して外を見ると、燃える倉庫を見る。
「何処がやられた!!?」
「食糧庫だ!」
「急いで火を消せぇ!」
そして燃えている糧秣庫を見て兵士達は慌てて消火器を持ち出す。
「おー、大当たり」
「よし、次行くぞ」
燃え盛っている倉庫を見ながらスフェーンは言うと、サダミが砲弾を抱えた砲口に装填すると、直後に砲弾が発射されて砲弾は弧を描いて駐屯地内に着弾して行く。
「スフェーン」
「分かってるって」
まだ何処から撃たれたのかがわからない状態で混乱している様子を前にスフェーンは嬉々としてルシエルがロケットランチャーを放つのを確認する。
「うおっ!?」
そして着弾した弾頭は内部の成形炸薬弾が起爆し、モンロー効果によって自走迫撃砲を破壊する。
「攻撃されているぞ!」
「くそっ、一体誰が…」
その直後、兵士達の髪がチリチリと静電気が走ったと感じ取ると、直後に彼らに電流が迸った。
「があっ!!」
全身に高電流が流れ、雷に打たれたようにその場にいた全員が電撃を受けて倒れる。
「何だ!?」
「この攻撃…まさか異能!?」
「馬鹿な…異能が使えるほど空間エーテルは無いはずだ!」
その直後、再び駐屯地に着弾をすると今度は発電設備のある施設が破壊された。
「くそっ、何処の奴の攻撃だよ!」
「車を出せ!」
「偵察はどうしていた!?」
そして散発的に着弾する砲撃に彼らは悲鳴と驚愕と混乱で、いまだに十分な反撃ができずにいた。
「へえ、案外こいつ物知りだったのね」
着弾して爆発を起こした駐屯地を見ながらスフェーンは徘徊しながらエーテルを撒き散らしている二人組の男を見ると、彼らの脳から得た情報に感心していた。
「スフェーン、そろそろ敵が来るぞ」
「了解。まあやりますか」
何度か砲撃を行っていた事でこの陣地から砲撃がされていたことが薄々と勘づかれてしまったので、三人は迫撃砲を真上に向けて砲弾を発射してから陣地を飛び出した。
「どうする?散会するか?」
「いや、隠れながら行こう。その方が安全だし」
飛び出した彼女達は森の木陰に隠れながら話し合うと、後ろで声が響く。
「こっちだ!」
「くそっ、コイツらが撃ちやがったのか?」
そこでは銃を持って飛び出して来た兵士達が集まったが、直後に真上に撃ち上げていた迫撃砲弾が落ちて来て着弾した。
「「うわぁぁああっ!!」」
そして着弾をすると他に積載されていた弾薬に引火。誘爆を引き起こし、連続的に花火が炸裂したような爆発が何度も響き渡った。
「ヒュ〜、でっけえ花火だ」
「汚い花火だよ。全く…」
爆発の混乱に乗じて駐屯地に飛び込んだ三人。そこで飛び入った施設の中でスフェーンは不満げに溢した。
「しかし空間エーテルが低い…」
「あらかじめ除染作業をしているんだろう」
元々この駐屯地を運営している組織の大元を辿れば異能者を殺戮して来た歴史がある。当然、異能者対策はバッチリと行っているだろう。
「スフェーン、空間エーテルを全開に出来るか?」
「さっきやっちゃったから、何処かで補充しないと無理ね」
そこで先ほど行った広範囲での電撃で活性化エーテルは使い切ってしまったと彼女は言った為、サダミは少し考える。
「ふむ…どうしたものか」
「そもそも報復でカチコミやる方が頭沸いていますよ」
サダミは呆れながら持ち込んだロケットランチャーの弾頭を装填する。
「まあその分他の街が襲われなくなるってことでいいんじゃない?」
「無駄な出費の連続ですけどね…」
そう言い呆れつつも彼女は建物の外に出て、駐屯地を出て行こうとしたピックアップトラックを吹き飛ばした。
「あそこだ!」
「撃て撃て!」
その瞬間を見ていた別の兵士が指を差して探照灯が照らされ、ルシエルは建物の影に隠れた。
「ほい」
その様子を見てスフェーンは左手を動かすと、目の前でハッキングを行ったサイボーグが勝手にくるりと銃座を回転させた。
「え…!?」
「ぎゃあっ!」
「うおっ?!」
そこで自分の意思を聞かないで動いた体に兵士は驚愕をすると、直後に銃座を使っていた兵士に銃口が向けられた。
「テメェ!」
「違っ、コレは…」
彼が弁明する前に兵士達の銃撃が体を貫通していった。
「おーおー、仲違いしてるわ」
「…鬼か」
その様子を見てケラケラと笑うスフェーンに、隣でサダミは半眼になって突っ込んでいた。
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