駐屯地を襲撃することとなったスフェーン達は、暗闇の中を走っていた。
「よっと」
「ごほっ?!」
暗闇の中、飛び出した女性は一人の暗視装置をつけていない男の頭に触れ、そのまま目にそれぞれ指をめり込ませて潰すと、飛び出す体液は一瞬虹色に反射する結晶体となった後に草木が生え出し、直後に地面にのけぞって倒れる。
「おい、朝霞がやられたぞ!」
「くそっ、暗視装置に映らねえぞ!」
発砲しながら密集陣形を組む彼らだが、直後に爆発音とともに一斉に薙ぎ倒された。
「「ぎゃぁぁぁあああっ!!」」
爆発したのはサダミが持ち込んだ防弾盾に装着した指向性対人地雷。起爆したことで起こる凄まじい反動は地面に突き立てることと、サダミの強いフィジカルで耐える脳筋仕様の攻撃に使える盾である。
「ちょっと!痛いでしょうが!!」
そこで不満げに文句を垂れるのは撃たれて巻き込まれた側の女性の言葉であった。気味が悪いほど周りの死体の山の中で生き残っていた彼女は、直後に背中まで囲んでいる防弾チョッキに命中した跡を指差す。
「ちゃんと安全考えて撃てや」
「スラグすら受け止めるやつつけてるから無問題」
「無問題じゃねえわアホ」
彼女はそう言ってから持っていた散弾銃を肩に乗せて後ろに立っていた兵士に向かって放つと、散弾が対象の頭をごっそりと持っていった。
「…あまり良い殺し方とは思えんな」
「ちゃんと残すからお待ち」
そう言い、レバーを倒して薬莢を取り出すと新しい弾薬を装填する。
「ほい」
「うわっ!!?」
そして放たれたドラゴンブレス弾の発火したマグネシウムなどの閃光は容易に近づいた暗視装置をつけた兵士の視界を真っ白に奪うと、直後に散弾が至近距離で放たれてその兵士は心臓に大穴が開いて背骨まで貫通してしまった。
「いって」
そしてレバーで指を挟んで悲鳴を漏らしながら挟んだ手を確認してしまう。
「くそっ、何がどうなってんだよ…!?」
駐屯地の土嚢で囲まれた陣地に隠れて彼らは片手に自動小銃を持って銃撃と爆発音の正体を探っていた。
「襲撃したのは?」
「女が二人…だったはず」
「だった?ちゃんと確かめろ」
「無茶言うな!」
その直後、隠れていた土嚢に無数の弾丸が着弾し、彼らは思わず身を屈める。
「あいつら、正気じゃねえ…」
そこで恐ろしくてまだ試してはないが、砲隊鏡で覗き込んだ場合はこの土嚢の奥には多数の味方の死体で溢れかえっているだろう。先ほど、対人地雷を使って一斉に薙ぎ倒されて行った音を聞いていた。
「やれやれ…」
「「っ!?」」
その時、彼らは後ろから声がしたことに気がついて背筋が凍った。
「動きに統率が取れていない。貴様ら本当に傭兵か?」
そこで片手に縦を握っていた黒猫の獣人の少女が恐怖に怯える兵士たちを見下ろしていた。
「なっ…がっ!!」
そして有無を言わさず一人の男に盾を叩きつけると、グシャリと骨と肉が潰れながら怒涛に叩きつけられて上顎が胴体と分断され、直後に超近距離で短機関銃の連続した発射音が響き渡った。
「壕が突破されたぞ!」
「退却しろ!」
周辺にいた兵士たちが大声を出して指示を出すと、一斉に彼らは退避を始めて態勢を整える。
「…ん?」
その時、退却して行った兵士たちを見送ると、彼女はそこで積み上げられて散乱していた弾薬箱と武器を見つける。
「へえ…」
それはいわゆるヴィンテージ銃に当たる高級品の銃だ。古い薬莢式の、今自分が使っている短機関銃と同類の古い銃だ。
「さっすがは宗教関連組織。良いもんもってやがる」
その銃は機関銃のようだが、見た目が切って貼ったような雑コラ画像のような見た目をした機関銃で興味が湧いた。試しにその機関銃を、スリングを通して肩に掛けて調子を確認してみる。
「シエロ、この機関銃は何だ?」
彼女は気に入った様子て聞いてみると、画像検索ですぐに結果を報告してくれた。
『これは<AN/M2 Stinger>と呼ばれる機関銃です。薬莢式の古い銃火器で、切った小銃の銃床、移植したバイポッド、キャリングハンドルを装備した改造された機関銃です。発射速度は極めて高いことでも知られています』
そんなシエロの説明の最中、チャージングハンドルを引いて銃の動作確認を行うサダミ。音は悪くなかった。
「しかし、流石に重たいか…」
『重量は約十一キロ。少なくともまともな人間は使えないでしょう。あまり推奨はされません』
シエロはそう進言してサダミが考えていることを先んじて制した。
「フィジカル面には、結構自信があるものでね」
しかしそんな忠告を彼女が汲んだことは今までほぼなかった。シエロもどうせ言ったところで聞かないのだから無駄かと半ば諦めてため息を吐くと、彼女はウキウキとなって近くの箱を漁り始める。
「ヴィンテージで献上品とはいえ、試射でも使うだろうから…」
こうした資産としての銃火器と言うのは、基本的に娯楽目的で購入される事が多い。この物資もどこの誰から巻き上げた金で買ったか奪ったかは知らないが、こうも雑多に置かれていたところから近くに娯楽用に買った弾薬もあるはずだと推察して近くの物資を漁る。
「あった」
そして予想通り、近くの箱を開けると中に金属製の箱が入っていた。側面には使用弾薬の刻印が施されていた。
『二〇〇発のベルト弾帯です。側面に装備された弾薬箱に装填して使用できます』
「OK、仕方ないとはいえ腰撃ちで試してみますか…」
実にいいものを拾って見せびらかそうとする子供のように彼女は奪った機関銃を自分のもののように肩から下げてカバーを開いて弾帯を装着した後にカバーを閉じてチャージングハンドルを引いて初弾を装填すると、左手でハンドルを握って右手で引き金を引く。
「うおっ!」
その銃声を聞いたスフェーンは一瞬驚いた声を漏らした。
「何だ?」
『新しい武器を仕入れた。気にしなくて良い』
「いや気になる要素しかないんだが?」
そう言いながら駐屯地で倒れているアンドロイドを見る。
「一通り、最初の攻撃でサイボーグとアンドロイドは無力化できたと見て良いでしょう」
「そう…」
そして対戦車ライフルを地面に置いてバイポットを展開しながら二人は建物の上で話すと、直後に安全装置を解除して引き金を引く。
「がはっ!」
直後に駐屯地から逃げ出そうとした一人の頭が破裂した。
「Hit.One down」
その様子を見て隣でルシエルが観測を行うと、直後にエンジン音が響いて駐屯地に車両が出てくる。
「あれは?」
「Ⅱ号火炎放射戦車、通称フラミンゴです」
ルシエルが警戒を促そうとした時、先頭に出て来たその車両の車体に装備された二基の火炎放射器から真っ赤な炎が飛んできた。
「ひぇっ」
咄嗟に身を屈めると、炎は建物を覆って施設内を炎で包んでいく。
「あの建物だ!」
「火を放て!炙り出してやれ!」
戦車を先頭にその影に隠れて兵士達は銃を構えると、一斉射撃を行なっていく。
「どうする?」
「と言いましてもね…」
建物の影に隠れて彼女達は辺りを見回してからルシエルが言う。
「取り敢えず戦車を黙らせましょう。援護できます?」
「生憎、機関銃はないんだけどねえ…」
そう言いつつも片手に手榴弾を取って安全ピンを抜いてから放り投げると、空中で安全バーが外れて地面に転がる。
ッーー!!
「うおっ?!」
その時、手榴弾の爆発が戦車の目の前で起こると一瞬操縦手は驚愕してしまった。
「頂きです」
その瞬間にルシエルが装填を終えていたロケットランチャーを放って戦車に命中させると、火炎放射用燃料に引火して戦車が吹き飛んだ。
「うおっ!!」
その爆発で巨大な手榴弾となった火炎放射戦車は次々と誘爆を起こしていった。
「おい!何だ今の爆発は!!」
まるで地震でも起こったかと勘違いするほどの衝撃が駐屯地を襲ったことで、驚愕した様子でサダミが聞いて来た。
「ルシエルが火炎放射戦車吹っ飛ばしやがった」
『ああ…』
そこで周辺の施設ごと吹き飛び、火災が発生している状況で自分たちの隠れていた建物まで吹き飛んでしまったことにスフェーンは恨み節を込めてルシエルを見上げた。
「おかしいですね、こんなに吹き飛ぶはずでは…」
しかしルシエルも驚いている様子で首を傾げていた。
「整備状態が悪かったとか?」
「燃料に引火しただけでこんなに吹き飛ぶとは…」
「吹き飛ぶでしょうよ、そりゃあ」
自分の武器を無くしていないかと確認しながらスフェーンは体を起こすと、すっかり崩壊している駐屯地を見た。
「どう、いた?」
『いや、まだ見つけていない』
そして駐屯地を捜索している様子で彼女達は連絡を取り合う。
「いるならここだと思ったんだけどねえ…」
『分からないぞ、何せ取り込んだのは下っ端の情報だけだからな』
「まあそうだよね…」
スフェーンは死体となった兵士たちに触れ、目元を茶緑色に染めると、次々と兵士達は傷口から草花が生え、辺りに土臭い香りが立ち込めていくと、徐に立ち上がり始める者もいた。
「彼を探して来てちょーだい」
そして彼女が指示をすると、そのまま兵士達は徘徊するように駐屯地を歩き回り始めていく。
「相変わらず畜生ですね」
「そもそもまともな人の生まれ方してねえって」
そう言い、植物があらゆる場所から生え始め、同時に一部は地面と同化している状況を見ながらルシエルは苦笑気味に隣に立つ獣人もどきを見る。
「さて、そろそろ見つかっても良い頃合いな気がするんだけどね…」
ところどころで火災による黒煙が立ち込めている中、スフェーンは確信めいた様子で辺りを見回した。
一体何が起こったのか、その詳細は誰にも分っちゃいない。
「ママ…?」
「大丈夫。大丈夫だから…」
上からくる振動に子供が書くと、母親は自分も恐怖で倒れそうな所を堪えて子供に言い聞かせる。
この部屋には大勢の老若が隠れていた。元々、ここにあった村を改造して作られた駐屯地であったので、この村に居た面々は組織の中核でもあった。
ガコンッ
「ひっ…!」
その時、外と中を繋ぐ扉がゆっくりと開き、その事に僅かに誰かの悲鳴が漏れた。そして扉が開くと、入り口では仁王立ちしてその手に散弾銃を握っていた一人の人物。
「おー、いたいた」
そして口を開いた時、その声に驚いた様子で顔を上げる人がいた。
なお作者は直前まで九六式軽機関銃と悩んだ模様。
☆弾 幕 は パ ワ ー だ ぜ☆
という古から伝わるお言葉を受けてこちらにしました。ご要望であれば交換いたします。
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