TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#5

この車両の居住空間というのは元々非常に狭い。あるとすれば前後の運転席の空間と格納コンテナの作業用スペースだ。

後の空間には自己防衛用の武装が格納されており、そこに暮らせる隙間はない。

そりゃそうだ、元々そう言った設計でないのだから本来の運用から外れた運用をすればどこかで設計の皺寄せがくる。

 

幸いなのは少女の体になったことである程度広く感じる事ができる点だろう。

 

「よっ…と」

 

片手に25mmの弾薬を一発ずつ鷲掴みしながら弾倉に込めていく。例の野盗から奪った弾薬だ。

企業はどうせシリアルナンバーなんかわざわざ追う必要はないと判断したのか、野盗は虫以下の如く扱っているからなのか。野盗の装備を奪っても罪になることはなかった。

 

「はぁ、弾を込めるだけで一苦労だな」

 

弾薬毎奪い、生き残っていた予備弾倉は四つほどあった。弾薬もほぼ同じくらいだ。

 

「銃身も…まぁまぁ残っているか」

 

銃単体は三丁ほど。流石に男の時でも運ぶのには一苦労だったので、こんな少女の体で運ぶのは不可能。そこで手動クレーンの力を借りながら最悪はサンコイチで修理をするかなどと考えていたが、ハンドガードをとって中のコイルガンの銃身を見るとあまり消耗していなくて軽く安堵していた。

野盗と言うのはケチで貧乏で武器もボロいと言うイメージだったが、そう言ったことは今回はなかったようだ。

 

「使っているのも正規品、余裕はあったのかもな」

 

シリアルナンバーと社名のロゴが入った武器を見て密造じゃないことは確実だった。大半の密造銃ってのは碌なことがない。

 

「さて、直しますか…」

 

そこで少々古かったもう一丁の自動小銃を確認すると予備の銃を修理する。

ニコイチで修理するにあたり、マシな方を確認。パーツ毎に分解をして、修理を始める。

 

「あぁ…疲れた」

 

そして修理に格闘すること数時間。スフェーンは軽く肩で息をしながら直った自動小銃を見る。予備の自動小銃の有無で戦場での生存率は大きく変わる。

奪ったオプションのグレネードランチャーも今は外されて置かれており。コンテナの中は少しゴチャッとしていた。

 

『お疲れ様です。スフェーン』

「…少し休もう……」

 

色々と疲れた彼女はあと片付けもせずに一時休息を選んだ。

 

 

 

 

 

その後、休息を取ったスフェーンは昼の時間という事で買い溜めていた缶詰を取り出すと水も取り出す。そしてガスコンロと鍋を取り出すと水を注いで紅茶パックを突っ込んで煮込む。

その間に缶詰を開けると、中身の牛肉のシチューをスプーンを使って食べる。

 

「しまった…湯煎をしとけばよかった」

 

紅茶の紅い色素が滲み出ている中、スフェーンは思わずそう呟く。

すっかり慣れていたが、せっかく湯を沸かしたのなら紅茶を作りながら缶詰を入れて温めておけばよかったと軽く後悔した。

 

『スフェーン、次は食料保温器なんていかがです?』

「要らん、湯の中に突っ込んどきゃ十分だ」

 

ルシエルの意見をバッサリと切るとスフェーンは缶詰を食べ終え、出来上がった紅茶パックを取り出す。

 

「乾燥したらもう一回使えるか?」

『可能ですが味と香りは大幅に落ちます。使用しても三回が限界でしょう』

 

スフェーンのくだらない呟きにルシエルが反応すると少し考えた後にスフェーンは次で捨てようと思った。

 

「カール・ポート到着後は海の幸でもいただくかね…」

『到着までこのまま進めば二日、路線の危険度レベル1ですので問題なく進めると思われます』

 

ルシエルが教えてくれると、スフェーンは窓の外を見る。

大きく横に広がる線路には今も貨物列車が横断し、そこにはPMCの保有する武装貨車も連結されていた。

武装貨車は連結されたダブルストックの中に二機のオートマトンが直立で待機してあり、緊急事態の時はすぐに出撃ができる。正直、今の自分には必要ない装備だった。

 

横を走っているのは複線専用の中型貨物列車で、よく見かけるタイプだ。

先頭の機関車も同様に縦横に二倍ほどでかいし長いので単線四両編成の自分と比べると圧倒的だ。

 

『列車番号AWC112439、ハインスト社所有の鉄鋼輸送列車です』

「はっ、鉄鋼運ぶだけでPMCが付いているのかよ」

 

基本的に鉄道管理局に積荷と運行計画を報告して列車は運行されるが、一部は予定にない積荷が運ばれている事もあり、そういったものは大半が企業が開発した新製品や企業秘密の商品をついでに運んでいる。

他の企業も似たようなことをしているので半分黙認状態だ。

 

「変なことに巻き込まれたくはないな」

『列車から離れますか?』

「ああ、君子危うきに近寄らずってね」

 

そこで速度を上げて貨物列車を追い越すと、スフェーンは追い抜いた列車を見送って目的地に向かった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

大陸のとある場所、そこでは多くのオートマトンや戦車、サイボーグ兵が爆炎の中を駆け抜ける。

 

『突撃ぃっ!!』

『行け行けっ!』

 

向かう先はとある鉱山施設、採掘しているのはエーテルだ。

多くの傭兵やPMCが鉱山地帯を守っている移動式要塞砲の餌食になりながら戦線の突破を目論む。

 

『ぎゃあっ!!』

『貴様らぁっ!それでもPMCの兵士か!?』

 

大型輸送ヘリコプターから投下されていく多脚戦車や履帯式戦車、それらを迎撃するための対空砲やミサイル。

基本的に二脚の兵器をオートマトン、それ以上の脚を持つ車両は多脚戦車に分類される。

 

そして六脚の戦車が着陸をすると搭載されている120mm重機関砲が火を噴く。

 

『戦線をこのまま突破しろ!』

 

この鉱山で戦闘を行っているのは多目的企業のアイリーン社と、元々鉱山を保有していた地元企業だ。

アイリーン社による鉱山買収に反対した地元企業に対し、アイリーン社はPMCによる奪取を指示したのだ。

 

そして戦線突破用の六脚戦車を投入したアイリーン社は徐々に戦線を押していた。

 

『よしっ、このまま行けば…』

 

しかしその瞬間、戦線に巨大な穴を開けるが如く巨大な爆炎と光線が戦線を横薙ぎにする。

 

『なっ……?!』

 

何が起こったかと思ったが、鉱山の奥地に現れたそれを見て驚愕した。

 

『エーテル・カノン……!!』

『E兵器だと?!』

 

巨大な単装砲の砲塔が姿を現した事にPMCの誰もが驚愕した。

 

『ふざけんなっ!E兵器があるなんて聞いてないぞ!?』

 

E兵器とは、膨大なエーテルを使用するこの星最強の兵器だ。

一撃で一個師団を葬る事もできる最強の名にふさわしい威力を持っている。

そして、そんなE兵器を持ちだしてきた事にアイリーン側に居た傭兵は完全に怖気付いた。

 

『あっ!貴様!』

『やってられっか!』

『E兵器だぞ!?自殺するようなもんだ!』

 

参加していた傭兵たちが逃げ出すと、PMCでも脱走を考える兵士が出始めた。

 

『くそっ!』

 

現場指揮官は瓦解し始める戦線に悪態を吐いていた。

 

 

 

 

 

鉱山から常に産出される膨大なエーテルを使用したE兵器、つまり全力発揮しているE兵器を遠くで見ていた別の大型輸送ティルトローター機。

 

『鉱山入口にE兵器を確認しました。あなた方には当該兵器の無力化を依頼します』

「…了解」

 

今回の依頼主であるアイリーン社のPMCの役員から受けた連絡を中に居たパイロットは承諾する。

 

『報酬は弾みます。また敵機撃墜毎に追加報酬も出します。頼みますよ、赤砂の新しいリーダー』

 

そして輸送機のハッチが開くと、格納されていた一機のオートマトンが切り離される。

 

今時では一般的な第四世代機。ただ、ヘリコプターからの降下だと言うのにパラシュートの類を一切装備しておらず、代わりにロケットエンジンで減速し、その瞬間に鉱山の防壁に接近する。

 

『は、早いっ!!』

『うわっ!!』

 

そこで壁の外に出ていた数機が一気にやられると、鉱山側も危険度を上げて要塞砲を撃ち込む。

 

『あっ、あの機体は…?!』

 

そしてそこで、高速で移動して接近してくる機体を見たある鉱山側の兵士が驚く。

 

『ブルーナイトだ!!』

『何っ!?』

 

青と水色のカラーリングに機体のマーキングは剣を持った青い甲冑。その独特な外観や、その異名を知っている者達からは驚きの声が上がった。

 

『近づかせるな!』

『撃て撃てっ!』

 

地表付近をスレスレで飛んでいたその機体に大量のミサイルや砲撃、更にはE兵器が飛んでいくも。それらを全て回避され、擁壁内部にその機体は侵入した。

 

『至急応援を!』

『真っ直ぐE兵器に向かっているぞ!!』

『迎撃っ!絶対にエーテル・カノンを守れ!!』

 

鉱山防衛部隊が一斉に攻撃をすぐが、その尽くが返り討ちに遭う。

それと同時に他数機の同じようなオートマトンが防壁を超えて侵入した。

 

「…」

『単機で向かうな!守りを固めろ!!』

『がっ!?隊長っ!!』

 

そして跳躍を行うと、ブルーナイトは持っていた40mm半自動小銃の引き金を引いた。

 

そして銃身で加速した弾頭はそのまま砲口を向けていたエーテル・カノンに吸い込まれるように飛び。内部でそのまま爆発した。

 

『しまった!!』

『くそっ!』

 

そして爆発した発射直前だったエーテル・カノンは臨界エーテルを誘爆させ、備蓄エーテルにも被害が出るほどの爆発を引き起こした。

 

「…」

 

そして爆発する鉱山を防壁の上から見ていると、生き残ったであろう鉱山側の人間の恨みのこもる掠れた声が聞こえた。

 

『企業の…犬に成り下がった屑共めぇっ…ーー!!』

 

その直後に、その男の乗っていたオートマトンは爆圧で破壊され、無線は途切れた。

そんな通信を聞きながらブルーナイトは雇用主にチャンネルを繋いだ。

 

「仕事は終わった」

『お疲れ様でしたブルーナイト。これで我がPMCも順調に作戦を遂行できます』

 

防壁の外では爆発を見て好機と捉えたPMCの部隊が残存戦力を掻き集めて、鉱山防衛部隊の残党狩りを始めていた。

 

『やはり、赤砂傭兵団と業務提携を行った事は私達にとってより良い選択でした。貴方がリーダーとなってくれた事はまさに僥倖でしたよ』

「……」

『レッドサン……赤き太陽は彼方に沈み。蒼き騎士がこの静寂の荒野の、新たな刺激となってくれる事を期待しております』

 

それを最後に通信が消えると、ブルーナイトは陽の沈む西の空を静かに眺めていた。

 

「…レッド……」

 

その名を口にした彼はそのまま機体を翻し、帰還の途についた。




武装解説
40mm半自動小銃
狙撃能力に重きを置いた長銃身の小銃の実弾兵器であり、機体と接続して狙撃を行う。
25mm自動小銃や30mm自動小銃に内蔵された複合型コイルガンと違い、こちらは火薬を必要としない完全なレールガンである。
レールガンの電力エネルギーは全て機体任せで、第四世代機の出力でなければ満足な発射は不可能だ。
しかし威力は折り紙付きであり、正面から一撃で重装甲の戦車を破壊可能だ。


E兵器
鉱山地区の防衛装置などでたまに見られる超兵器。臨界エーテルを用いた強力な荷電粒子砲である。
エーテルを大量に消費し、圧倒的な火力を持って戦場を焼き払う本砲は鉄壁な要塞を構築するのに役立っているが、大災害以降その製造技術は大半が失われ。今では稼働状態にある同兵器はごく僅かだった。
今回の戦闘で使用されたのは大型単装カノン砲のタイプであった。

モデルはアドルフ砲。


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