TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#57

「さて、まずはここを出ようか」

 

目の前のロトと言う男を、スフェーンはよく知っている。故に最初に目を覚ました時は驚き顔を隠すのに必死だった。

 

「(こんなデカかったか?アイツ)」

 

すこし髭を伸ばし、服装も少々野盗に寄った格好をしていた男にまるで親からの目線のような目を向けながらスフェーンは軽く首を傾げていると、

 

「どうかしたか?」

「ああ、いえ。何でも」

 

そう言い、地面に倒れた大男を一瞥した後にロトに聞く。

 

「出る前にコイツ締めていいですか?」

「おいおい、出来るのか?」

 

明らかに訝しむ目を向けるロトにスフェーンは大男の持っていたナイフを抜き取ると、そのまま頸椎に突き刺していた。

 

「おおぅ…豪快だねぇ…」

 

何の躊躇なく大男にナイフを刺した事でロトは軽く引いていた。ひでぇ、そんな目で私を見るなよ。

 

「やるねぇ、嬢ちゃん」

「…別に」

 

一人を絞めた後、ロトはスフェーンの手を取って彼女を部屋から出した。

 

「?」

 

そして扉を閉じて部屋の鍵を閉めた。

 

「閉めるの?」

「ああ、下手に逃げ出されても困るんでね」

 

そう言いスフェーンだけを外に出して部屋の鍵を閉めると、無情にも部屋にいた女達は死んだ大男と共に一夜を過ごさねばならない事がほぼ確定していた。南無三。

 

「無情ね」

「周りに敵が多すぎるの。今助けるのは無理だ」

 

そう言いロトと共に廃墟のビルを歩く二人、

 

「まぁ、ちょいとの我慢だ」

 

そう答える彼はスフェーンを連れて歩き始めると、そこでロトはスフェーンの持っていた散弾銃や銃剣を返す。

 

「君のだろう?」

「…えぇ、ありがとう」

 

そしてサングラスを含めて一式の装備品を返してもらった彼女は聞く。

 

「ここは野盗のアジトなの?」

「ああ、ここは地獄だ」

 

聞けば周辺の野盗が集まって一つの大きな組織となっていると言う。

 

「少し前から内定捜査を始めたんだが…この有様だ」

 

廃墟のビルの屋上に登り、そこで都市を見下ろすとある場所の明かりが灯ったままだった。

 

「気づくのが遅かった。まさか野盗がペーパーカンパニーを作っていたとは」

「…」

 

その明かりをよく見ると、そこでは野盗共が銃を片手に宴会のような事をしており、その近くでは憔悴している人達の姿があった。

 

「あれは…」

「騙されて野盗にこき使われた運び屋の成れの果てだ」

「…」

 

既に死亡者もいる事だろう。なかなか酷い、街ぐるみで犯罪をしている様なものだ。一発で討伐対象入りだろう。

 

「今も君の様に騙されて街にくる奴がいる」

「軍警は出ないの?」

「既に準備は整えている」

 

軍警では既に準備が進んでおり、いつでも爆撃が出来ると聞き。それを聞いたスフェーンは軽く驚いた。

 

「何だ、まとめて爆撃しないの」

「それをするにはまだ民間人の人数が多すぎる」

 

基本的に野盗のアジトとなった都市は企業か軍警によって掃討作戦が行われ、野盗団の撲滅を行う。

その際、ある程度の民間人の犠牲もやむなしとされ、サイボーグで運良く生き残れば、作戦後に損傷した部位は保証されることになっている。

 

「軍警の名声に関わる以上、上も慎重なのさ」

「まだ理性が残っているのね…」

 

軍警は治安維持の信用と信頼と実績があるからこそ、この星で最も大きな組織へと成り上がった。そこで民間人を大量に虐殺して野盗団を倒したとしても、後の活動に影響を及ぼす可能性が大いにあり、企業のPMCよりも行動を慎重にせざるを得なかった。

 

「傭兵に依頼を出せばいいのに」

「ははっ、出来るならレッドさんにお願いしたい所だよ」

 

そう言うと、ロトは少し悲しげな表情を浮かべた。

 

そう、このロトと言う男はかつてブルーナイトが拾って来て自分たちが育てた孤児の一人だった。

 

 

 

ロトはジェロと共に傭兵業をしていた時にスラムから拾って来た孤児だった。

まだその時は幼く、まるで女の様なか弱い雰囲気丸出しで、本当に生きていけるのかと当時は首を傾げていたものだが。成長するに連れてなかなか逞しくなり、出て行く時は軍警に就職をしていた。

 

「レッドさん?」

「ああ、傭兵でね。すごく強いって噂の人だった」

「だった?」

 

スフェーンは首を傾げると、ロトは短く頷いた。

 

「今は事故で行方不明なのさ。まぁ、二年近く経っているからみんな死んだと思っているけどね…」

 

その時の表情は諦めた様な顔であり、レッドサンの死亡を認めて受け入れようとしている様だった。

 

「俺を育ててくれた一人だ」

「…」

 

ロトはそう言うと、スフェーンを見る。

 

「さて、君もこの街から離れるといい。近々、ここは軍警による掃討が行われる」

「…待って」

 

そこでスフェーンは目を閉じると、軽く舌打ちをする。

 

「チッ、列車の近くに人がいる」

 

その一言でロトは色々と察した。

 

「映像かい?全く、諦めの悪い奴らだ」

 

ロトはそれを聞いて呆れると、駅の方を見る。

 

「じゃあ、俺が注意を引くから。その間に逃げなさい」

「貴方はどうするの?」

 

スフェーンはロトに聞くと、彼は少し笑って彼女に答える。

 

「俺はもう少し忍び続けるだろうよ」

 

そう言った後に街を見て続けた。

 

「まだ助けるべき市民は多くいるからな」

 

ロトと言う男は軍警の治安官として真面目に働いている事は時折聞いており、孤児院に寄附をしているとも聞いていた。

そんな慈善事業はやめとけと言ったところで聞かず、たまに彼から仕事を依頼しにくることもあった。他にも孤児院にいた数人が軍警に就職をしており、そいつらの面倒も見ていたはずだ。

 

基本的に孤児院にいた奴らに傭兵家業はさせなかった。やはり憧れる奴はいたが、傭兵をするのは色々と辛いので勧めようとは思わなかった。

その教育がうまく行った様で、自分が知っている頃に傭兵になった孤児たちは居なかった。

 

「所で、君は運び屋なのかい?」

 

廃墟を歩きながらロトが聞くと、スフェーンは頷く。

 

「ほう、そりゃすごい。俺はその年で何してたかなぁ…」

 

お前の場合は孤児院の女に虫を使ってちょっかい出してアンジェロに他の奴と共にけつ叩きされてたぞ。

 

「馬鹿なことしてた気がするよ」

「(あぁ、実に馬鹿なことをしていたよ)」

 

などと心の中で少し懐かしんでいると、スフェーンはロトに少し気になって聞いた。

 

「そのレッドさんって、どんな人なの?」

「ん?良い人だよ」

 

そこでロトはレッドサンの話をする。

 

「普段は素っ気なくて、何考えているかわからないけど。仕事とはしっかりやる人なんだ」

 

軽くdisりながら話すロトはとても懐かしそうに話す。

 

「俺が軍警に就職した後も色々と関わりがあってね。まぁ、半分以上は俺がレッドさんに会いたかったって言う口実なんだけどさ」

 

おう、この野郎白状しやがった。確かに軍警からの依頼で事あるごとにコイツが担当になること多かったが…。

 

「でも公私をしっかり分けて働けるって、改めて尊敬するよ」

 

ロトはそう答えると、レッドサンに憧れの念を持っている様な雰囲気で話すので、思わずスフェーンはロトに言う。

 

「傭兵にはならないほうがいいですよ」

「はははっ、レッドさんと同じ様なことを言うね。君」

 

だって中身は本人ですしお寿司。などと話しながら歩いてたその時、

 

「隠れろ」

 

そう言って近くの瓦礫の影にスフェーンを軽く押し込んで隠すと、彼に話しかける人物がいた。

 

「おい、ロト」

「ん?」

 

そこではライトを片手にこちらを見ていた二人の野盗がいた。

 

「何だ、どうかしたか?」

「見張りは?」

「アイツにやらせたよ」

 

すると二人はそんなロトに言う。

 

「はっ、アイツロリコンだぞ?」

「死んだら大目玉喰らうだろ」

「それは無いさ」

 

だって実際死んでるし。

トドメを刺したのはスフェーンだが、制圧したのはロトだ。軍警用の強力なデバイスを使っていたので一撃だ。そしてこの任務の内容などからおそらく彼が配属されたのは…

 

「(情報部かな?)」

 

軍警に置いて情報収集と隠密行動、時には暗殺や情報操作を行う暗部の仕事を請け負う場所。その中で対外的な潜入捜査などを行うのは情報部六課と呼ばれる場所だ。

 

「出世したな、ロト」

 

野盗に向かって平気で偽りの顔を作るロトに育て親として少し誇らしく思っていると、彼は野盗と話し終えて戻って来た。

 

「さて、行こうか」

「んっ、分かった」

 

まぁ、だからって自分の正体を明かすわけにはいかないのだが…。

 

 

 

 

 

「所で一ついいですか?」

「ん?何だい?」

 

駅の近くのビルに登るスフェーンはロトに聞く。

 

「列車の周りにいる人たちはどうするんですか?」

「俺が適当に言って人払をするつもりだ」

 

ロトはこの野盗の中でも上の地位にいるのだろう。部下を従えて動かせるほどには偉いと思うのでスフェーンは彼に言った。

 

「じゃあ、もう一つ良いですか?」

「何かな?」

「私のお願いを聞いてもらっていいですか?」

 

そんなスフェーンの要望にロトは頷いた。

 

「良いとも。女性と子供には良くしろと言うのが実家の掟なのでね」

 

そう答えると、スフェーンは少しあたりを見回した後にロトを連れて駅ビルに向かった。

 

「おいおい、列車とは方向が違うぞ?」

「大丈夫です」

 

ビルの階段を登りながらスフェーンはロトを連れる。

スフェーンの列車があるのは駅のホーム。映像を見るに、自分の列車に乗り込みたいが鍵を開けるのに難儀をしているらしい。

そりゃそうだ、前にサラによってクラッキングされたお陰で列車の鍵に金庫並みのダイアル式の鍵を取り付けたんだから。番号知らないと鍵開けに丸一日かかる厄介仕様だ、しかも失敗したら最初からやり直し。

 

「(まぁ、せいぜい苦労すると良い)」

 

目的はおそらく中身の物色と、列車を売り飛ばすために列車を動かすためだろう。運転手を殺した野盗が良くやる方法だ。

足がつかない様に運び屋を狙っているのが実に腹立たしい。どうせなら運送業者を狙って企業に潰されれば良いのに。

 

「さて、ここら辺でいいでしょう」

 

そして目的地に到着したロトはスフェーンを見て聞いた。

 

「んで、俺は何をすれば良い?」

 

ロトが聞くと、スフェーンはビルの廊下で立ちながらロトを見た。

 

「…なら、」

 

するとその時、

 

「えっ…?」

 

ロトは割れたビルのガラス窓から外に突き飛ばされた。

 

「取り敢えず、一旦死んでください」

 

そしてそんな落下して行くロトを見下ろしながら、彼を突き落としたスフェーンは虹色の瞳をロトに向けていた。




なろうに飛行機系の作品を上げました。
よかったらそっちも読んでもらえると幸いです。
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