TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#59

「今、シディム一帯は軍警で封鎖中だ」

 

同期から聞く話にロトは首を傾げる。

 

「封鎖?都市で何があったんだ?」

 

首を傾げる彼に本当に何も覚えていないんだなと軽く呆れるような様子で短くため息を吐いたライルは今のシディムの状況を教えた。

 

「あの都市は一週間経った今も燃えている。消火が今も追いつかず、区画が丸ごと燃え切った場所もあるくらいに激しくな」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

チュンッ!

 

「くそっ、どっからだ」

「軍警の襲撃か?!」

 

陣地に身を隠し、頭上を掠める銃弾。

 

突如暴走する重装甲サイボーグ。

裏切りを敢行したオートマトン。

そして今起こっている狙撃。

 

何もかもが分からず、野盗達に間に混乱と悲鳴が上がっていた。

 

「おい、どうするんだよ」

「誰か、助けてくれ…」

 

そこで見えない敵にすっかり怯えている野盗。

 

「落ち着け」

 

そんな中、リーダーは生き残っている仲間に言う。

 

「敵は向こう側から撃っている。合図を出したら機関銃で撃ち抜け」

 

そう言うと、リーダーは狙撃地点を探る為に鏡付きナイフを陣地から上げると、真上を銃弾が掠める。音的にライフル弾だ。

 

「っ!?」

 

そして、そこで人影が一つあった事に気が付く。

 

「敵だ!目の前にいるぞ!」

 

それに驚き、顔を覗かせた一人が放たれたサボット弾の餌食となって一瞬で脳が破壊される。

 

「馬鹿者がっ!」

 

死んだサイボーグにそう毒吐きながら残った面々に言う。

 

「カウントだ。3…2…1…」

 

そしてタイミングを合わせて野盗達は持っていた機関銃を使って乱射を始める。

 

「うぉぉおおおっ!!」

 

小型ガトリング砲やオートマトンの銃弾も飛んで行き。先ほど見えた人影に向けて銃弾を放つと、暫くしてオートマトンから連絡が入った。

 

『敵が倒れたぞ!!』

「止めろ!」

 

そして陣地からこれほどの被害を出したであろう奴の顔を拝みに野盗達は向かった。

 

「…」

 

瓦礫の上で赤い鮮血を派手に散らして倒れるその人影に野盗達は驚く。

 

「子供…?」

「ガキだ…」

 

そこでは体に穴の空いた一人の服を纏っていない少女が倒れており、野盗達は唖然となった。

 

「コイツにやられたのか?」

 

軽く銃床で小突くも反応はなく、そこで野盗達は理解した。

 

「…ははっ、」

 

この怪物を倒したのだと。

 

「やっt」

『空間エーテル濃度値を測定』

「「「「っ!?」」」」

 

身体中穴だらけの少女から声が聞こえる。

 

『…活動可能範囲内、体内器官の機能低下を確認。周囲に敵性存在を捕捉、モード・サマエルを起動します』

 

すると側頭部が軽く抉れた顔から血色の結膜に虹色の虹彩が開かれると、徐に上半身が起き上がった。

 

「う、動いたぁっ!?」

「ひっ?!」

「逃げろっ!!」

 

それに恐れをなして慌てて逃げ始める野盗達。リーダーもその中に混ざっていると、少女は抉れた頭部がモコモコと泡が出るように膨れて傷跡がすべて消え。ビスマスの結晶の様な虹色に反射する結晶体の突き出た右手を伸ばし軽く人差し指を差すと、その人差し指から真っ赤なレーザーが一本ビルに向かって飛んでいった。

 

「「うわぁぁぁああっ!?」」

 

そして溶断されたビルに隠れていた野盗達は崩壊に巻き込まれたり、レーザーで体が消失していた。

 

レーザーは無造作に放たれてあらゆる施設を破壊し、野盗を蒸発させ、その余波熱が弾薬集積場に引火し、通り一体に響くほどの大爆発を確認し、周辺の建物数棟が爆発に巻き込まれて倒壊する。

 

「敵性対象を確認」

「ひいっ!?」

 

一度の攻撃で燃え盛る都市のビルの残骸、そこで息を殺していた野盗の一人は目の前に立つ少女に悲鳴をあげる。

 

「排除します」

 

その瞬間、人差し指をデコに押し付けられた野盗の視界は真っ白に染まっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

目を開ける感覚を感じ、見えたのは一面の蒼の空。

薄く水面が広がる永遠の水平線が見え。空は昼間の様に青いのにも関わらず、無数の流れ星や輝く星が見えていた。

ただ、エーテルのオーロラが見えないのでここは現実世界では無いとすぐに理解できる。

 

「…」

 

そして自分と言う存在がその空間で息をしている。

 

「…あぁ、」

 

そうだったな、無茶をしたんだった。

途中までは野盗を一人ずつ保線用のハンマーで倒していたが、そこからだんだん我慢できずにサイボーグのエーテルを操作していた。

そして最終的に、敵のオートマトンに乗り込んでコックピット毎破壊されたが、銃弾が命中しながらもコックピットを抜け出して一人ずつ貰った狙撃銃で倒していた。

だがその後に機関銃による手痛い被害を受けて倒れているはずだ。

 

「大分無茶をしましたね。レッドサン」

「…」

 

前を見ると、そこではスフェーンが立っていた。

 

「っ…」

 

そしてその時、自分の体がレッドサンのものである事に気が付く。ただ膝下から先の足は無かった。レッドサンの最期の瞬間がそのまま映し出されている様子だ。

 

「こうして面と向かったのは初めてだな。ルシエル」

 

そう言い、スフェーンの容姿のルシエルに話しかけると。彼女は軽くため息をついた後にレッドサンに近づく。

 

「私は一時的に貴方の体を再現しているに過ぎません。そしてレッドサン、貴方には一時的にその体にさせて貰いました」

「…」

 

スフェーンではなく、レッドサンと呼ぶルシエルは真横に座るとレッドサンに言った。

 

「レッドサン、今の貴方はバイタルサインが全ての基準値を下回っています」

「…だろうな」

 

なにせ機関銃の弾丸をもろに受けたんだ。普通の人間ならあの世逝きだ。

 

「このままでは、貴方の身体活動は停止するでしょう」

「…死ぬのか?」

 

レッドサンは横で座り込むルシエルに聞くと、彼女は答えない。

 

「…そうか」

 

レッドサンはその後、軽く溜息を吐くと空を見上げる。

 

「じゃあ、ここは何処なんだ?」

 

上空には無数の流れ星が輝き、その一つ一つが煌めいているその景色。水平線に近づくにつれ淡い紫色に変わり、地面は白い大地の上に薄く水面が張り詰め、この世とは思えない景色が広がっていた。

そんな問いかけにルシエルは答えた。

 

「貴方の好きな言葉で言うのなら、精神世界…と表せばよろしいでしょうか?」

「精神世界ね…」

 

時々小説なんかに出てくる幻想の世界、確かに幻想を抱くのは好きだ。

 

「だが、ここは幻想の世界には見えないな」

「かも知れません」

 

ルシエルは少し無機質に応えると、そのままレッドサンと同じ景色を見ながら言う。

 

「レッドサン、私は貴方に幾つか謝罪をしなければなりません」

「何だ?」

 

そこでルシエルは彼にある事を伝える。

 

「エーテルの情報の欠片を集積して作られた貴方の体は、固定化された情報の影響で成長する事はありません」

「…」

 

ルシエルから聞かされた話に驚くこともなかった。おそらく分かっていたのだろう、そりゃそうだ。この体になってから飯を食っても身長や体重に変化がない、排泄もしないのにおかしな話だ。

 

「そして、体はエーテルで満たされているので傷を負っても体内や周囲のエーテルによって修復が開始されます。よって今のあなたの状態でも死に至る可能性は低いです」

 

つまりルシエルの意味する所は、

 

「あの体は不老不死ってことか?」

「その可能性は非常に高いです」

「…はははっ、」

 

ルシエルの懸念を聞き、レッドサンは笑いたくもなってしまう。

そりゃそうだ、企業や時の権力者がどれだけ金と時間を掛けても成し遂げられなかった事だ。

そんな人類の永遠の夢とも呼べる所業を、いつの間にか成しているかも知れないと言われれば、笑わざるを得まい。

 

「俺が?笑っちまうよ」

 

一度は死んだ人間…いや、だから与えられたのかもな。

 

「俺は永遠にエーテルの空の下で生きろと、神様が言ったのかねぇ…」

「…」

 

そんなレッドサンに少しルシエルは表情を曇らせると、彼のこめかみに軽くデコピンをした。

 

「痛っ」

「何故悲観的になるんですか?レッドサン」

 

そこで軽く呆れた表情のルシエルはレッドサンに言う。

 

「故人は生きている人間の記憶の中でしか生きられないと言ったのは貴方自身でしょう?」

「…」

 

そしてルシエルは足元に手をやると、白い地面が盛り上がって足の形になるとそこに色が乗る。

 

「でしたら貴方も生きて下さい。私を含め、貴方と言う存在を見ている人物がいる事もお忘れ無く」

「…そうだな」

 

そんなルシエルにレッドサンは少し笑うと、彼女の頭に手を乗せて軽く二回叩く。

 

「…ですが、」

 

そして一旦の区切りをしたルシエルは次の話題に移る。

 

「今回の無茶に関しては一つ言わせて貰います」

「…あい」

 

そこは甘んじるしかあるまい、迷惑をかけたのは事実なのだから。

 

「その後に関しては、私の方より一時的に対応をしていますので。ある程度のところで貴方にお返しいたします」

「はい…」

 

外で起こっている事に大体の想像ができるのが何ともあれだが…。

 

「んじゃ、俺はこのまままでば良いのか?」

「いえ、一つして貰いたいことがあります」

「何かな?」

 

そう聞くと、ルシエルは両手を広げながら応える。

 

「私をおんぶして下さい」

「…はいはい」

 

そこで足のできたレッドサンはスフェーンが何を考えているのか理解できたので、ブーツまでしっかり再現された足を使ってルシエルを背中に乗せる。

 

「どうだ、人として触る気分は?」

 

そこから少し歩いて水面が少し立ちながら歩いていると、背中でルシエルは答える。

 

「人の温もりと言うのはこう言うものかと。分かった気がします」

「百聞は一見にしかず。何事も経験しないと分からないものだな」

 

レッドサンはそこで少し昔を思い出していた。

 

孤児院に用事で訪れた時、ジェロが延々と子供達と戯れており。リアルでおんぶに抱っこ状態で遊んでいた頃の記憶。

俺の買ったマッサージチェアやランニングマシンなどに小言を言うが、あいつだって子供用の玩具なんかは無作為に買い与えていた。

 

子供好きな彼はちょくちょくスラム街から孤児を引き取っており、アンジョラに病院兼孤児院を設立させた時。他の仲間と共にスラム街で見かけた孤児達を引っ張って孤児院に連れてきたりしていた。

 

「今はどうしているかな…」

「ブルーナイトのことですか?」

「あぁ…」

 

レッドサンは頷くと、ルシエルは納得した後にレッドサンの背中で言う。

 

「ロトと言う青年の言葉に少し違和感を感じました」

「あぁ」

 

それは彼と話していた時に、感じた違和感だった。

 

「ロトは俺のあの事件を崩落事故と勘違いしていた」

「とすると、ブルーナイトのあの行動は。他の人物は知らない…と言うことでしょうか?」

「かもな。まぁ、ロトはジェロに拾われた側の人間だから詳しく知らないだけかも知れないが…」

 

外とは異なり、この空間で二人は静かに話し合っていた。




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