TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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いつか二輪免許で走れるケッテンクラートを作ってみてぇなぁ…できるならだけど。


七両
#75


一面の荒野、かつてはそこも緑で埋め尽くされていた事であろう。

大災害で緑が消えた事で、世界の大半が土色に染まっている。

 

「射撃用意っ!!」

 

そんな不毛な大地の一角、無数の大砲が横一列に並んでいた。その数は十二門。

 

一門の大砲に三人の砲兵が付き、目の前の203mm自走砲に砲弾を装填する。

55口径の砲身は駆逐艦の艦砲で使用されているものと同じであり、今は市販のトラックに懸架されていた。

 

「砲弾装填完了!」

 

ケースレス弾の巨大な砲弾が薬室に装填されるのを確認すると中央指揮所ではタブレットを用いて目標の設定を飛ばしたドローンに合わせて照準を合わせる。

 

「用意よし!」

「発射用意よし!!」

 

そして各砲の準備が完了すると中央指揮所に立つ砲兵中隊長が手持ちのタブレットでも全ての大砲の準備が完了したのを確認した。

 

「全砲門、発射準備完了です」

 

そして砲兵大隊長に報告が上がると、測距儀を片手に隊長が頷くと一言。

 

「発射」

「撃ぇっ!」

 

中隊長達はタブレットの発射ボタンをタップすると四門ずつ一斉に発射される。

 

「だんちゃーく…

 

 

今っ!」

 

発射された砲弾は砲兵隊の視界の先にある小さな街に命中すると、地面が盛り上がる程の豪爆と共に建物が吹き飛ぶ。

 

「「「「「わあぁぁぁああああっ!!!」」」」」

 

それを合図に塹壕や丘陵に隠れていた兵士や装甲車、戦車やオートマトン、多脚戦車など多様な戦闘車両が飛び出して集落に攻勢をかける。

 

今日は軍警が通報のあった街に対し、野盗殲滅の為の攻撃を開始していた。

バイクに跨り、片手に銃剣を付けた機関銃を持って突撃していく兵士の姿は遥か昔の騎兵を彷彿とさせる。

機関銃の砲火が飛び交い、空からはヘリコプターやドローンによる爆撃も始まる。

 

「突撃ぃいい!!」

 

そしてタンクデサントをしながら持っている軍警の歩兵の標準装備の50口径自動小銃の引き金を引く。

 

「うぐぁっ!」

「くそっ!」

 

途中、野盗の放った銃弾が命中して倒れる。しかし部隊は、そんな兵士を置き去りにして街に進軍し続ける。

 

 

 

「突入しろっ!」

 

装着式の履帯を前進させて市街地に進入する多脚戦車とオートマトン。

歩兵は街の外周に潜む野盗を掃討する為に戦車や歩兵戦闘車と共に行動していた。

 

「っ!!」

 

一瞬の気配を感じてビルの上を見ると。そこでは生き残った野盗が片手にRPG-29を構えており、発射された直後だった。

 

「うわっ…!!」

 

そして被弾、一台のオートマトンの直上に命中して頽れるとすぐさま多脚戦車の120mmリボルバーカノンが照準を合わせるとすぐさま引き金が弾かれた。

 

ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!

 

弾倉に装填された六発の砲弾が命中するとビルは粉々に崩壊し、同時に車載機銃の50口径機関銃も放たれた。

 

「…」

 

そして倒壊したビルや一帯の熱源反応を慎重に確認しながら部隊は破壊されたオートマトンの救助を後続部隊に任せ、前進を再開した。

 

 

 

「どうだ?」

「はっ、全て予定通り。順調であります!」

 

街郊外に設置された臨時の司令所、そこでロトが憲兵の腕章をつけて近くにいた部下の兵士に話しかけると、彼女は敬礼をしながら返してくれた。

 

「そうか…」

 

そして報告を聞き、移動し始めている砲兵隊を見ながら

 

「俺たちもそろそろ移動するぞ」

「はっ!」

 

そして彼らは近くの装甲車に乗り込むと他の部隊と共に走り出していった。

 

 

今日もどこかの地では闘争が起こっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

傭兵をやっていた少し昔の頃。オートマトンを駆って世界中を駆け回っていた時、観光と言うものは金持ちだけがする娯楽だと思っていた。

 

「うわぁ…」

 

しかしそれは間違いだった。

 

「マジで一面の花だ…」

 

視界の先に広がるは一面の花、主にフウリンソウである。

 

『フウリンソウは、またの名をツリガネソウやカンパニュラと呼ばれている花であり。花の形が鐘に似ている事からカンタベリー・ベルと言う愛称も持っています』

 

仕事を終えて街に観光をするスフェーンはこの街の観光名所である郊外の花畑を訪れていた。

 

「流石は花の街ね…」

 

ここら辺一体は空間エーテル濃度が低く、自然栽培の農作物を育てている他に観賞用や贈呈用の花も育てており、押し花などが街では販売されていた。

 

 

街の名前はコノハナ。

緑化連合に属する都市の一つであり、レンガで作られた建築物が多く立ち並ぶ風光明媚な観光都市を売りにしており。大災害の後に空間エーテル濃度が低いこの地に人々が集う事で成り立った都市である。

確かに、空を覆うエーテルのオーロラの量も見える範囲では少なく思える。

 

「花の香りもする…」

 

色とりどりの畑を前に全部米や小麦だったら良いのにと思うのは邪推かもしれない。

確かに観賞用の花なんて何に使うんだと思うかもしれないが、花には緑が失われ世界では自然の植物そのものに付加価値が付く。

グリーンボウルから輸出される植物は都市部に植えられる木が殆どの中、コノハナでは花や穀物が輸出されている。

 

それらの大半は植物工場で生産されているが、やはり付加価値を付ける事はいつも時代でも起こる事であり。自然栽培のこれらはブランド品として市場に流通している。

そして自然栽培の植物は値段が三桁上がるので、顧客の大半は目立ちたがりか、そう言うのが好きな金持ちである。

 

「これほどデカいと泥棒もできるな…」

 

目の前いっぱいに広がる畑を見ながらつぶやくと、ルシエルが補足する。

 

『盗難はありますが、市場に影響が出るほどの量ではない様子です』

「あぁ、なるほど…」

 

つまり市場に影響が出るほど盗難されれば緑化連合の総力を持って叩き潰されると言うわけか。

 

「出来ない訳じゃないか…」

 

全人類に埋め込まれているインプラントチップ、それは読み取り機器があればすぐにすべての個人情報が把握可能なのでカメラに内蔵でもすれば描画範囲であれば犯人が分かってしまう。

 

「まぁ、儲からんか…」

 

畑泥棒は基本的に転売で儲ける泥棒。そんな出所のわからん食材に手を出す一般人はほぼいない。食材に変な毒物を入れられて倒れるくらいなら信頼のある店から買うのが一番と言うのがこの世の基本だ。

 

「帰るか…」

 

ひとしきり観光を終えて帰ろうとした矢先、

 

ッーーーーー!!

 

「ん?」

 

帰ろうとした時、サイレンの音が畑の畦道に響き。その方を見ると、白黒ツートンのミニパトが赤色灯を回して畑泥を追っかけ回していた。

 

「おっと…」

 

スッと道の端に寄って道を畑泥とミニパトに譲ると軍警のミニパトは逃げるサイボーグの男を延々と追っかけていた。

 

『止まれぇ!馬鹿者ぉ!』

 

女性治安官の怒号のような声が拡声器を通って聞こえ、車とほぼ同じ速度で走って逃げるサイボーグの健脚に軽く感心していた。

そしてポケットから徐にライターとラキストを取り出して火を付けて一服しながら一言、

 

「平和だな〜」

 

そして再び静かになった畦道を見てそう呟くと彼女はそのまま街まで歩いて戻って行った。

 

 

 

 

 

コノハナの街は景観の美しさも兼ねて七五メートル以上の建築物の建造を禁止しているので、多くの建物が制限ギリギリの七四メートルの煉瓦造り風の建物で建築されている。

 

「この時間でこの人か…」

 

夜のこの時間、多くの通りで街灯が照らされ。夜のマーケットに出て飲んで食うを繰り返す街の住民や観光客。

所々に軍警の交番が設置されており、その側では治安官がビール缶片手にナッツを食べていた。

 

「飲んどる場合かよ…」

 

そんな治安官の状態に軽く呆れながらもこの街の雰囲気に少し浸かりながら近くの出店のタコスを買う。

トルティーヤ二つ折りで包まれた間にはサイコロステーキの具が入っており、上には刻んだキャベツやレタスなどの野菜が乗せられていた。

 

「はむっ」

 

熱々のタコスの具が野菜の冷たさで程よく冷やされ、サルサソースの辛さが舌を少し刺激すると次に肉の食感を噛み締める。

 

「もぐもぐ…」

 

そしてタコスを食べ終えて次の出店料理を探そうとした時、

 

「ん?」

 

街の建物の壁にもたれ掛かるようにして座り込んでいる一人の女性がいた。片手には蓋の空いたワンカップ大関が握られ、どうやら酔って爆睡をかましている様だった。

こんな時間にこんな場所で寝ていれば低体温症や強盗、強姦に会う可能性があるのでスフェーンは声をかけた。

 

「おい、おばさん」

「んん〜…」

 

軽く肩を触って揺らすも、彼女は寝言を言うだけで顔を上げる様子もなかった。

すると近くにいた地元の人と思われる男がスフェーンに言う。

 

「関わらんほうがいいぞ、お嬢ちゃん」

「?」

 

声をかけてきた男は倒れている飲んだくれ女を見ながら一言、

 

「そいつは魔女だ。介抱したら持ち金全部持っていかれるぞ」

「…」

 

そう言えばこの女性の周りに人が寄っている雰囲気が無かった。

景気の良い筈のこの街の住人すら彼女に声をかけている様子もなかったので、おそらく日常的に彼女は酒で飲んだくれて倒れているのだろう。

 

「こっちだ」

 

すると別の大人が治安官を呼んできており、座り込んでいる女性を見て軽くため息を吐いた。

 

「はぁ…またか」

 

二人ほどやって来た治安官は女性に近づいて声をかける。

 

「アリズさん〜、聞こえていますか?」

「んあ〜、聞こえてまひゅ〜」

 

ワンカップの中身が溢れながら真っ赤な顔を見せながら答えているのを見た。

 

「ダメだこりゃ」

「仕方ない…」

 

諦めた治安官達は二人がかりで女性を肩に担ぐと、

 

「んがっ!何をする!!」

 

抱えられ、足で反撃をする女性に治安官は呆れた口調で言う。

 

「ほら暴れない暴れない」

「放せぇ〜!!」

 

反撃虚しく、交番に保護されていく女性を見送るとスフェーンは呆然と見送っていた。

 

「あらまぁ…」

『アルコール度数が著しく高く。確実に泥酔状態ですね』

「ありゃヒデェ」

 

少なくともワンカップを外で飲んで座り込んでいる人間でまともな奴を見たことが無い。

 

「腹冷やすからな…」

 

自分ですら外で酒を飲む時は酔い過ぎに注意すると言うのに…。

これだけでこの街の治安を表しているような気もする。

 

『腹を冷やす以前に色々と問題があるのでは?』

「それはそう」

 

スフェーンは頷くと、そのまま街の郊外の貨物ターミナルに足を進めていた。

数日は滞在する予定なので、しばらくは観光をしていくとしよう。




アンケートにスフェーンの身長は考えないでください。

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