TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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エクスガイナーが欲しくてたまらなかった昔が懐かしい…


#90

依頼を受け、目的地まで物を運ぶ。

 

運び屋や運送業者の基本的な仕事はそれだけである。

 

前者と後者の違いは固定給かそうで無いか。あとは機関車の大きさなどである。

 

「デカイこった…」

 

出て行く複線専用機関車を見送りながら駅舎の休憩室でベンチに座ってスフェーンは溢す。

基本的に複線専用機関車は巨大で、高さも二倍。故に乗せられるコンテナは単線専用機関車の四倍となり、圧倒的な輸送量を誇る。

そして多様なコンテナを載せて出て行く列車は他にもあり、そう言った複線専用機関車は運送業者の車両である。

 

『間も無く列車が出発します。お近くのドアからご乗車下さい』

 

アナウンスが流れ、旅客駅舎で止まっていたキハ81系に乗客が乗り込む。

そして発車ベルがホームに響き渡るとスライドドアは閉まり、ブルドックのようなボンネット型の先頭車からエーテル機関の唸る音を撒き散らしながら走って行く。

 

『そろそろヤサカさんが帰ってくる時間かと』

「ん、そうかい」

 

ルシエルに言われ、スフェーンは休憩室を出て行く。

高床ホームにはキヨスクが並び、特急待ちの乗客が駅弁や飲み物を購入していた。

 

食堂車を連結して四日目、目的地には明日に到着する。

 

「しかしもう終わりかぁ…」

『料理は美味しかったですね』

「えぇ、控えめに言って最高だった…」

 

そう言い食堂車で一人優雅に三食の食事を食べるのは最高だ。マジックミラーのおかげで外からは真っ黒にしか見えない窓ガラスのおかげで人目を気にする事なく寛げる。

 

「今日は何の料理が出るのかな…」

『今後はダイナーの依頼は積極的に受けましょうか?』

「うーん、それも良いかも」

 

そんな事を言いながら改札を通って駅を出る。

旅客駅と貨物駅は基本的に別の場所にあるので都市内を移動する必要があり、スフェーンは併設されている跨座式モノレールに乗り込むと、ゴムタイヤを回してモノレールはコンクリート製のレールを走ると、列車が揺れる。

 

席に座り、窓の外の景色を眺めるスフェーン。

 

「…」

 

ビルの合間を縫うように上下左右に揺れるモノレール。跨座式と懸垂式が上下に別れて運行しており、それが並行し、計四本の列車が一斉に運行している。

 

天気はやや小雨。曇り空の中、その雨足は次第に強まり、路上では傘を差す人間ばかりになる。

 

『次は地区本部前、地区本部前。お出口は右側です。手足のサイボーグ施術はお任せ、安心安全な医療をお届けするーー』

 

自動放送を聞き、スフェーンは席から立つと駅に到着した列車はホームドアと連動して扉が開いた。

 

モノレールの駅は運輸ギルドと併設されており、駅を出るとそこは運輸ギルドの地区本部に繋がる。

運輸ギルドの本部は海を挟んだ向こうの大地の一つ、オードリー島に本拠地を構えており。自由経済の基盤を築いていた。

 

世界的な自由市場を導入した要因として、企業の独占支配による資源の徹底管理、それによる経済の衰退を招き、『灰色の季節』と呼ばれる長年の不況に喘いでいたからである。

 

そんな中、緑化連合を中心とした自由経済の導入による発展を見た世界は次々と己の保有していた会社や財産の細分化を行い、今の新秩序をもたらしていた。その代名詞たるが運輸ギルドである。

 

自由経済の導入による混乱を抑えるべく、各企業が加盟して今の運輸ギルドの前身の『企業連合経済共同体』が設立されていた。

 

「えっとぉ…」

 

地区本部のハイパービルディング。地上約二〇〇〇メートル、地上四〇三階建ての施設では常に多くの人が行き交い、他にも多くの商業施設や企業のオフィスが置かれている。

 

「仕事も多いな…」

『さすがは地区本部、と言ったところですね』

 

五階吹き抜けのこの場所は中央受付。中央の掲示板にありとあらゆる依頼が映し出され、一番下ではカウンターにアンドロイドやオペレーターが座り込んで二四時間対応を行っている。

円形の掲示板に最新の依頼が映り、更新されて行く依頼。多くの運び屋や運動業者が仕事を探して掲示板を眺めている。

ネットでも確認はできるが、あっちは一日経っても依頼がなかった余った仕事などであり、最新の割の良い仕事などはこちらで確認する方が早いのだ。

 

「まあ今は関係ないけど…」

 

そう溢しスフェーンは貨物ターミナルの掲示板の喧騒を置き去りにして傘を差す。

残念ながら貨物ターミナルは屋根がないので移動は傘を差すか雨合羽を着る必要がある。

目の前には留置線が大量に存在し、時には数本の列車が同じ路線で待機している。

 

雨が降る中、スフェーンは赤い傘を差してヤードを移動するマイクロバスを待つ。

 

「今月のローンもキツイぜ…」

「どうする、別の副業でもするか?」

 

待機の列の中、二人の若者が言い合う。身なりからして同じ運送業者の彼らは悩んでいた。

 

「この新しい店に行ってみない?」

「えぇ、良さそうね」

 

同じ列には女性二人がタブレットに触れながら話し合う。雰囲気からしてこっちは運び屋だ。

画面には次に行く都市の有名店らしきメイドレストランのレビューが映る。

 

「(人も多様ね…)」

『それぞれの職種毎に人がいるのですから、当然の事かと…』

 

そういう意味でじゃないと軽く突っ込むと、ルシエルは首を傾げていた。

いくら学んでいるとはいえ、まだまだ経験は浅いかなと思っていると…

 

「おや、こんな所で会うとはね」

「あら、ヤサカさんじゃあありませんか」

 

そこにはエコバッグに食材を詰め込んだヤサカが片手に黒い傘を持ってスフェーンをみていた。

 

「いやー、こんな所で会うとは奇遇だったよ」

 

そう言いヤサカはスフェーンの横に立つと、二人は前の留置線を見ていた。

 

「今日はどんな料理が?」

「ん?ちょっとしたメニューにない料理を作ろうと思ってね…」

「まずい料理は勘弁ですよ?」

「はははっ、それは料理人の名折れだよ」

 

ヤサカはそう言い、雨の中二人で待っていた。

雨の中のバス停に赤い傘を差した少女と黒い傘を差した太った男。この光景にスフェーンは一つ思い当たった。

 

「なんか…トトロみたいな光景ですね」

「ブッ」

 

そこで堪えていたヤサカは思わず吹き出してしまうと、スフェーンに言う。

 

「ちょっと思ったけどさ…」

「なんか久しぶりに見たくなってきたな…」

 

後でサブスクで見るかなどと思っていると、目の前にマイクロバスがやって来て扉が開いた。

 

「さて、いきましょうか」

「そうだね」

 

そして二人はマイクロバスの運転手に行き先を伝えながら座席に座ると、他にも待っていた数名が乗り込み。バスはすぐに発車していった。

 

「しかし運輸ギルドの地区本部は大きいね」

「ビル自体が通信塔の役割を担っていますからね。大きいものになりますよ」

 

運輸ギルドはそれ自体が独自のネットワークを持っている組織であり、多くのタスク管理を行う必要がある。

企業の荷物を運ぶ事からサイバー攻撃の対象ともなりやすく、システム障害には徹底した予防策が張られている。

そして軍警の管区とほぼ同じ分け方で地区本部が設置されており、その中には中央司令室や運行計画の認可などを行うコンピューターが存在し、列車のや線路の周囲の状況管理などを行なっている。

 

「…ねぇヤサカさん」

「何だい?」

 

スフェーンは窓の外を見ながら聞く。

 

「貴方から見て、傭兵とはどのような存在ですか?」

「ふむ…不思議な質問をしますね」

 

聞かれたヤサカは少し考えた後に答える。

 

「賑やかで楽しく生きている人達…でしょうかね」

「…」

 

ヤサカはそう言い、傭兵の印象を口にする。

 

「傭兵の皆さんは荒くれ者が多い印象ですし、実際私の店に訪れた方の中には傭兵をやってらっしゃる方もいました」

 

傭兵という職は命知らずや荒くれ者がやる職業というイメージがあり、

 

「その際、机の上に足を乗せたり煙草を吸われたりと大変粗相は悪かったと覚えています」

「お、おう…」

 

過去に傭兵をやっていた身としても中々な行動に顔が少し引き攣る。

 

「でも、その方は後に強盗を行った罪で治安官に逮捕されていましたね」

「逮捕…」

「えぇ、おかげで傭兵は私達ダイナーのような職の間では要注意な職種でした」

 

酷いとダイナーで暴れて物損事件も発生していたと言う。

 

「そう言う意味では、傭兵と犯罪者の差と言うものは一般的な視点で言えば大きな差異は無いですね」

「…」

 

そう締め括ったヤサカにスフェーンは少々ショックを覚えていた。

 

 

 

 

 

「まさか、傭兵と犯罪者に大きな差が無いとはねぇ…」

 

オートマトンを見ながらスフェーンは溢す。

 

『でも確かに傭兵職に関しての世間的評価はそれほど高くはありませんね…』

 

ルシエルもスフェーンにつられて傭兵の情報を収集していると、そこで見た傭兵という職に対する世間の目と言うものに少し驚いていた。

 

「…だから、ジェロは動いたのかもな」

 

スフェーンはそこでブルーナイトが動いた動機を理解したような気がした。

 

『それはどうでしょうか?』

「あの世界じゃあ、私はあまりにも名が売れすぎているからね」

 

そう溢し、軽く笑う。

 

「アイツの事だ。何をしたいのかは容易に想像が付く」

 

スフェーンはそう言い、共に仕事をしてきた相棒を思い返す。

 

「思えば、俺は傭兵に対するやる気がなかったかもしれんな…」

 

元々、赤砂傭兵団と言うのも誰かが勝手につけた名前だ。公式なものではない。

付いてくるのも離れるのも勝手にしやがれと言うレッドサンの自由主義が招いた一つの結果である。

 

「ただオートマトンの操縦が上手くて、毎度毎度戦場から帰って来ていた…。それだけの男だったんだがな…」

 

それを組織化しようと動いていたのがジェロであった。

今の赤砂傭兵団は彼が音頭を取り始めてから大規模な組織改革が行われた。

各所に事務所が設けられ、傭兵は構成員となって組み込まれている。

 

「あるいは傭兵の地位向上に努めたかったのかもな」

 

自分は事実、それを知らなかった。あるいは驕っていたとも言うべきか。

力こそ全ての業界である傭兵、如実に力のヒエラルキーが生まれてしまう。

故に少し強いだけで不遜になる馬鹿者が出てくるし、傭兵という職は下に見られる。

 

『傭兵の産業化…それがブルーナイトの目的であると?』

「最終的にはそう言うことだろうな」

 

今乗っている自分のオートマトンを見ながらスフェーンは言うと、食堂車から今日の夕食ができたという連絡を受け取って彼女は食堂車に移動した。




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新たな依頼をピックアップ致しました。

  • 幼い飛行艇乗り
  • 軍警観閲式
  • 難民に揺れる街
  • レースカーの街
  • 海の上の街
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