蒼海の龍神艦隊   作:SEALs

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お待たせ致しました。
前回に引き続き、今回はやや短めです。
果たしてどんな回になるやら。
なお今回で無事に1周年を迎えられました、おめでたいです。
本当ならば上旬に投稿したかったのですが、いろいろあり遅くなり申し訳ありません。

では長話はさて置き、本編であります。

どうぞ!


第13話︰大演習、新たな戦術

麗那を連れて横須賀から戻った山本は、聯合艦隊を根こそぎ動員しての大演習を行った。

その編成を命じられた参謀たちは、山本の指示を聞いて首を傾げた。聯合艦隊の艦艇のみで仮想敵――明らかに深海棲艦と聯合艦隊の両方を演じるのだから、当然数が足りなくなる。

 

そこで例えば長門と陸奥に、『長門は《戦艦ル級》4隻担当、陸奥には《戦艦タ級》3隻担当』と言った役目が割り振られ、長門が率いる赤軍には正規空母がほとんど配備されていない。その代わりに赤軍にも空母は配置されているが、龍驤や鳳翔などの軽空母ばかりだ。

一方、日本艦隊を想定としている青軍には赤城や加賀、新米の蒼龍と飛龍が配備されており、それぞれの空母が自艦を演ずる――演習としては変則な構成だ。

ただ、青軍にはその代償のように、D装備への機関換装によって36ノットの速度発揮が可能になった金剛型巡洋戦艦が4隻のみが配備されているだけだ。

 

「山本長官、航空主兵主義を嵩じて頭に来たな。海軍の主兵は我々戦艦だ。蚊蜻蛉飛行機などこの長門の主砲で叩き落として、長官の主義を変えさせてさしあげよう」

 

長門の豪語に対して、妖精や乗組員たちは張り切っていた。

山本自身も、長門に乗っている。

艦隊の指揮は伊藤整一少将に任せており、戦闘艦橋から何も言わずに見守っている。

土佐沖で開始された大演習は、双方相手の所在を探して偵察機を飛ばし、潜水艦を駆使し合う激戦となった。

しかし、空母の数に優る青軍は、いち早く赤軍を発見しては、快速にものを言わせて雲を霞と逃げてしまう。

赤軍艦隊は地団太踏むが、相手を先に発見出来ないのだから仕方がない。

そして、演習4日目の昼――赤軍の乗組員たちが戦闘配食の握り飯を食べている時だった。

厳しい演習の中で、数少ない憩いの時間だ。朝方青軍の偵察機に接触されたが、すぐに姿を消してしまった。戦艦がいない青軍には打つ手がなく、ただこちらの位置を確かめているのだろう、と長門や艦隊の幹部たちも楽観していたのだった。

昼食が終わりかけた時、大量のスズメバチが羽根を唸らせるような轟音が、彼方から聞こえてきた。

 

《敵戦爆連合大編隊、戦艦部隊に向かう!》

 

前衛の駆逐艦部隊から緊急連絡が入り、各戦艦の艦上は、それこそ蜂の巣を突いたような騒ぎになった。

各艦に対空戦闘用意が下令。昼食の握り飯を投げ捨てた乗組員たちが配置につく。対空機銃が仰角を掛け、高角砲に砲塔員たちが飛び込んだ頃――空を覆うばかりの大編隊が現れた。

戦艦群の速度を上げ、之の字運動を繰り返しつつ、自前の対空機銃と高角砲で追尾するが、航空機の速度に追いつけない。

各艦が設けている自慢の主砲は、空を駆ける航空機を捉えることが出来ず、なおさら使えない。

 

艦載機の大群は、巨体を必死に捻る戦艦群を嘲笑うように、縦横無尽に舞い降りて、艦爆隊は爆弾投下行動を、爆装した攻撃機は水平爆撃行動を行い、そして残りの雷装した攻撃機は模擬魚雷を投下した

舷側に駆け寄ってみると、頭部に灯りを付けた模擬魚雷が艦底を通過するのが見えた。懸命の回避運動も虚しく、戦艦部隊は次々に繰り広げられる魚雷の投網に絡まれ、為す術もなかった。

その結果は――長門扮する戦艦ル級は47本の魚雷攻撃を受けて、旗艦は瞬時に爆沈。同型艦3隻も沈没及び、大破炎上中。他の戦艦も惨憺たる末路を辿った、という判定が下された。

 

「赤城たちに打電。ただいまの攻撃、見事なり、と」

 

蒼くなる司令部の中で、通信参謀に命じた山本がぽつりと呟いた。

 

「空母部隊の空襲で真珠湾を叩けないかな……。航空機で先制攻撃し、討ち洩らした敵は空母に負けない速度を得た戦艦の主砲で片付ける。こうした戦術を考えられるのではないか……」

 

その声を聞いた者はほとんどいなかった。ただ一人、副官として仕える麗那だけが嬉しげに笑い、頷いた。

 

山本の頭に、空母と戦艦を組み合わせた戦術が閃いた、これはその瞬間だった。

 

 

 

 

呉で大和が進水式を迎えた昭和14年10月頃。

その一週間後に、武蔵も進水式を迎え、正式に大日本帝国海軍軍艦として命名された。

翌年の昭和15年5月4日。大和型三番艦こと、《一一〇》号艦が長崎に、四番艦《一一一》号艦が、大和が進水した後の、呉の大型ドックで起工された。

 

一方、航空兵力も進化していた。

昭和12年に開発指示が下された新型艦戦、一二試艦戦は三菱の機体とエンジンにD装備を加え、初陣で圧倒的な強さを発揮した。

三菱の主任技師、堀越二郎の卓越した機体設計にD装備を得て、一気に1500馬力もの出力を発揮した『栄』発動機の賜物だ。

このエンジンを得た堀越は、機体構造を幾分か、強化することが出来た。

海軍の要求値をクリアして、なお構造に余裕が得られたのだ。D燃料を使えるために、予定されていた翼内タンクを使う必要がなくなり、また搭乗員や妖精たちを守るための防御鋼板を設置出来たため、一二試艦戦は予想より、数段打たれ強い戦闘機となって誕生した。

およそ1500馬力に達する、空冷星型一四機筒エンジンと、帝国海軍伝統の格闘性能。そして7.7mm機銃2門、20mm機関砲2門の重武装。その威力に感嘆した海軍は、皇紀1600年の制式採用に因んで、《零式艦上戦闘機》の名を与えて整備を始めている。

 

また同年には、九六式陸攻に代わるべき次世代の陸攻が、十二試陸上攻撃機として計画された。

計画の要求性能として、最大速度は高度3000メートルで215ノット以上。攻撃状態で、2600海里以上の航続力。そして最低1トンの爆弾搭載能力、20mm機関砲を含む防禦火力などと、九六式を50パーセント以上を上回る高性能機という、当初は無茶なものだったが、零式艦上戦闘機同様に、D装備とD燃料が全てを解決してくれた。

さらに双発機ではなく、より強力な四発機にすべきだという三菱・名古屋航空機製作所の本庄季郎技師の提案を支持してくれた山本に加えて、山本と同じく航空主兵を唱えるだけでなく、戦略爆撃を貫徹する日本人離れをした個性を持つ軍人――武部鷹雄が押してくれたおかげで、四発機としての十二式陸上攻撃機が開発されることが決定された。

 

全ては深海棲艦と、のちに対立するであろうアメリカと互角に戦える戦備と戦略を目指して。

 

戦争は、巨大な資源と人命の浪費である反面、新たな転換期を生み出すものでもある。あたかも旧約聖書に描かれたノアの洪水だ。

神は洪水を引き起こすことで、頽廃の極みに達した人類を一掃し、世界をリセットした。洪水後に広野には、以前にも増して豊かな土地が広がり、面目を一新した文明が建設される。

神は生き残った人々に、生み、増え、地に満ちるように告げた――この一節のように、文明を根こそぎにする戦火にも、そのまま当てはまろうとする側面を持っていた。

 

或いは、この戦争後が、民主主義と共産主義が争う時代の幕開けになると誰もが考えていたのかもしれない。

 




今回は大演習、もう分かる方は分かりますが、あの場所を攻撃するための演習でもあります。
なおおまけですが、武部鷹雄さんはこの世界では生きており、名前のみですがゲスト出演。なおかつ一式陸攻は双発機から四発機になりました。これにより従来の機体よりもより強化させることに成功しましたのでお楽しみを。

では、次回はとある場所に向かいますのでお楽しみを。
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今日で今年の投稿は終わりますので、応援してくださった読者の皆様、来年もよろしくお願いいたします。
それでは良い年を。

それでは第14話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)
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