蒼海の龍神艦隊   作:SEALs

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お待たせいたしました。
予告通り恐竜帝国の皇帝陛下にお会いして、会談を致します。此処まで来れば分かりますが、恐竜帝国の最高権利者であるあのお方が登場します、ついでに恐竜帝国の科学者も少し登場しますのでお楽しみを。

それでは、気を改めていつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
では、どうぞ!


第16話︰護織皇帝との会談

 

入り口に侵入した山本の脳裏には、三神から聞かされた、恐竜帝国の姿が浮かぶ。

帝国というが、国土は固定されているわけではない。差し渡し10キロ、高さ8キロほどの中空の大岩石が、溶岩の中に浮いているようなものだと言うことだ。

 

無論、ただの岩石では、マグマの熱に溶かされよう。実は、この大岩塊は外装を、一種の生体鉱物で覆っており、絶えず層になった泡のような壁を作り出し、溶岩を遮断しているおかげで、さほどの暑さは感じないということだ。

 

辿り着いた一同を迎えたのは、会議場に詰めかけた、多くの恐竜人たちが見つめていた。

 

そのとき、会議場中央にいた大男が口を開いた。

 

「総理大臣閣下においでいただき、真に光栄です。我が帝国は、こちらの時代では一つの街にもなり得るかどうか。その程度のものですが、国土をお貸し頂いて、国民一同、感謝しています」

 

近衛と山本に椅子を勧め、ゆったりと切り出した大男は、麗那や美穂と同じく、人間とほとんど変わらない同じ姿を持つ大柄な男である。違いと言えば、身長2メートルの長身と、麗那ではほとんど痕跡程度で、美穂でも極細いものに変わっている尾が、それこそ祖先の恐竜たちを彷彿とさせるほど、太く、長い、逞しいものであることが分かる。

一見恐ろし気な姿だが、東洋の神話に登場する龍の頭部を象ったような冠をつけているためか神々しさすら感じさせる。

 

近衛文麿と、恐竜帝国の最高指導者・護織四世の会見は、結果から言えば成功した瞬間だった。

 

「一野谷博士や倉見君の話だと、日本の国土は元々、貴国の所在地であったとか。それに貴国は現在、富士火山帯の溶岩に浸かっているそうですな」

 

腹を決めた近衛は、なかなか堂々とした受け答えで答礼する。さすがに、この難しい時期に一国の宰相を務めていることだけはある。

 

「国家の主権は、地上には及びますが、地下はどの程度の深さまで国土とみなすかは議論がございます。ですから、その定義が決まるまでは貴国と我が国は地表と地底に位置する同盟国――そのように位置づければよろしいでしょう」

 

前もって顧問団と討議を重ね、条約案を練り上げてきた近衛は、その案を護織に提示した。

 

骨子は、三つある。

一つは、お互いに同じ国土にある主権国家として、相手の内政には干渉せず共存すること。そして、それぞれの技術や資源を供与し合い、共栄を目指すこと。

さらに、何方かが他国と戦争に陥った場合、もう一方は一定の兵力を提供し、それぞれの主権を守るという、相互防衛条約だった。

実を言えば、近衛はこれがもっとも不安の種だった。

恐竜帝国は、他国との戦争という概念は持たない。そうした異国に、謂わば軍事同盟を結ぶことが出来るかどうか、と不安は拭えなかったのだったが、その懸念はあっさりと払拭されたのだった。

 

護織皇帝は、現代が各国家が利益を求め、鎬を削る時代であると知っている。そして西洋諸国は爬虫類を嫌い、その一族の龍(竜)を悪魔の使いとして排斥してきたことも熟知している。

こうした複雑な時代で爬虫人類が生き延びるには、強力な国力を持つ国家と同盟を結ぶのが得策だ。

同じ国土に住む日本人がやはり爬虫類を嫌う者たちが多いにせよ、蛇に信仰心を抱いていることを知り、共存出来る可能性があると判断したのだった。

なにしろ、6400万年前に落下してくる巨大隕石から逃げ延びるために、取るものも取り敢えず時間跳躍してきた彼らだ。

生活に必要な生活必需品はごく少なく、水の確保にも限界がある。双方を購入する代わりに、彼らが持つ優れた技術と、科学の成果を提供しようと考えていたようだ。

 

日本にとっても、同盟を結ぶメリットは大きい。

D装備や生体金属に加えて、恐竜帝国はマグマが含む様々な元素を抽出し、鉄やボーキサイト、金銀を作り出すことが出来たのだ。

そして兵士として志願した国民を、日本に送り出すことも同意した。人口が少ないから陸軍兵士としてはさほど影響はないだろうが、優れた科学力は技術研究所に有効であり、人類よりも優れた身体能力や戦闘力を持つ者たちがいるのも確かな事実だ。必ず特殊な兵団をつくるのに役立つに違いない。

近衛と護織は、川神と山本、それに恐竜帝国側の高官2人を立会人に、同盟締結書を交わした。

隕石の落下から逃れてきた護織たちを含めて恐竜人たちには、安住の地を見つけたいという悲願が込められた調印がなった歴史的この瞬間に、歓呼の声が湧き起こり、会場を揺るがせるほどだった。

 

いずれは、民間にも恐竜帝国の技術を公開せねばなるまい。

陸軍にはすでに、一部を公開済みだが、これから先も隠し通せるとは、山本や辰巳も思っていなかった。

陸軍出身の、D装備の秘密を知る男――石原莞爾や穏健派たちは、まだ時期尚早と見ていた。

全ての陸軍にこの秘密を公開しては、それでなくても自己を最良のエリートと考え、暴走しかねない若手参謀たちの行動に、歯止めがなくなる恐れがあると懸念しているようだ。

調印式を見ていた山本は、心に浮かんだ一抹の不安を、意識して払い落とす。

――いま、心配してもどうにもなるまい。ただ、俺は提供された技術を使って、日本が亡国の道を辿らぬように努めるばかりだ、と、自分にそう言い聞かせた。

調印式が終わって祝賀会となった会議場で、一野谷博士と語り合っていた恐竜側の科学者を摑まえて聞いてみた。

 

「我麗博士――でしたね。一つ伺いたいことがあるのですが」

 

何でしょうか、と、怪訝な顔を向けた初老の科学者に、かねてから抱いていた質問をぶつけてみる。

 

「辰巳と深雪が貴方たちの時代に移送されたのも不思議ですが、特に深雪がなぜ変形艦に改装されて現れたのかが分からんのです。二人に聞いても、天城が滑り落ちてきて、下敷きになったと思った途端に、白亜紀にいたということですが……どういう事でしょう?」

 

「そうですな。なにか強力なエネルギーが一点に集中したとき、時空を歪ませることがある。お二人はその戦艦に打たれた衝撃は、おそらく幾つかの要因が重なって、膨大なエネルギーを持つ波に叩きつけられたのでしょう」

 

我麗博士という、爬虫人の科学者が丁寧に説明してくれる。

 

「お二人のみが、辛うじて我々の時代に届いたのです。もしかすると、この二つの時代の間に流れる時間流が弱いのかもしれませんな」

 

「山本長官。時間の物理学は、まだ不明点が多いのだよ。アインシュタイン博士が、ようやく先鞭をつけたばかりなのだ」

 

我麗の傍らから、一野谷が口髭を捻りつつ言ってきた。

 

「この帝国は、わしには宝の山だよ。君は万が一の場合にも備えて、軍備を整えておくことだ」

 

「その方策は立てております。……軍の役目は政府の方針に従って、武力をもって政策を行う……それだけですから」

 

深海棲艦に続き、米国を敵として事を構えるのは得策ではない、と、苦いことを思った山本を察知したのか、優しげな眼を向けて、我麗が言った。

 

「私たちにも生存権があります。それゆえ、恐竜帝国は日本帝国に協力致します」

 

そして、天井を見上げるようにして、決意の滲んだ口調で言葉を継いだ。

 

「6400万年前、私たちの世界は滅亡の危機に晒されました。直径10キロの巨大隕石が、地球に衝突したのです。私たちは他の国と連絡を取り合い、危機を回避する方法を研究した結果、衝突のエネルギーを利用して時間跳躍を行う方法を開発――しかし、同時に跳躍したはずの残りの2カ国は、残念ながら成功しなかったようです」

 

山本の傍らで、麗那と美穂が頷いた。二人とも固く唇を引き結び、瞳に炎のような光を沈めていた。

恐竜帝国の恐竜人たち――全員の意思なのだろう。

我麗の言葉を引き取るようにして、美穂が優しげな顔に似合わない、思い詰めた口調で言った。

 

「私たちは、生き残らねばならない……それが、6400万年前に滅びた同胞たちに向けた、せめてもの供養です」

 

自分たちの生存に向けた強い意志に、山本は圧倒される思いでいると、辰巳がその思いを繋いでくれた。

 

「彼らは、意志と技術で時間の流れにトンネルを穿ち、この時代に転移を果たした。俺たちは天城の艦体に潰されそうになったとき、無我夢中で時間をこじ開けた。そして深雪も時間を超えて、彼らの時代に辿り着いた――山本、俺たちには生き残るために努力する義務があるんじゃないか。この国土に眠っている、大勢の祖先たちのために。人類、爬虫人類を問わずな」

 

言いながら、辰巳は床を踵で叩く。

コンコンと固い音が耳に響き、山本は粛然とした思いに囚われる。

そんな彼に追い打ちを掛けるように、辰巳は言葉を継いだ。

 

「非科学的ではあるがな。俺は深雪とともに恐竜時代に流れ着いたのは、なんとかして日本の役に立てたいという、全ての乗組員たちの思いが働いたように思えてならんのだ。そして俺たちの祖先たちが、欧米列強に伍して、日本の名を世界に轟かせる助けとなるように。俺たちもなんとかして、帝国の苦境に力を貸せればと思ったのさ」

 

面映ゆそうに頭を掻いたその仕草は、山本や小沢治三郎、武部鷹雄らとともに海軍航空の未来を語った、気鋭の海軍将校そのままだった。

 

その通りだな、と山本は頷いた。種族は違えど、同じ国土に生きる者同士、例え意に沿わずとも、与えられた責務は果たさなければならない。と、胸の内に決意を固める。

 

それは、日本帝国と恐竜帝国が、生前のために意志を通じ合い戦うことを誓った、最初の公的な一日だった。

 




今回は恐竜帝国の皇帝陛下こと、護織四世にお会いして、会談を致しました。なお辰巳と深雪が白亜紀に来た理由も憶測ですが、我麗博士が推測しました。
此処まで読むと分かりますが、この元ネタとなった某ロボットアニメとスパロボシリーズを知っている方たちならば分かりましたよね?
そうです、本作品の元ネタはゲッターロボです。
日本と同盟国となった恐竜帝国はそのままのマシンランドであり、今回登場した護織陛下→帝王ゴールであり、我麗博士→ガレリイ長官です。
一度読み終えていますが、バット将軍が出ないんですよね。
そもそも龍神の艦隊の恐竜帝国は戦争を知りませんし、何しろ戦うほど彼らの世界はありませんでしたからね。しかし、帝王ゴールの片腕とも言うべき恐竜帝国の大幹部であり、一族と爬虫人類の繁栄を重んじ、恐竜帝国のために専心する優秀な忠臣がいないのは寂しいですし、何らかの形で出そうかなと思います。
出すとしたら、漢字はどうなるやら。感想欄などに書き残して置いたら助かります。
それから中里融司先生、ゲッターロボに興味があったのでしょうか?今となっては真相は分かりませんが、オリジナルの龍神の艦隊では、ゲッターロボをモチーフにした摩訶不思議な架空戦記小説となっていますから興味があったのではないかと思います。

では、次回は今回の行き先、果たして戦果がどうなっていくのかを見ていきます。今回と同じく短いですがお楽しみに。
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それでは第17話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)
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