蒼海の龍神艦隊   作:SEALs

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С Новым годом(あけましておめでとうございます)、同志諸君! 今年も本作を宜しくお願いいたします。

新年の挨拶はここまでにして、お待たせして申し訳ありません。
予告どおり、謎の船の正体が明らかになります故に、そしてこのサブタイトルの意味も分かります。

今年もいつも通り楽しめていただければ幸いです。

では長話はさて置き、本編であります。

どうぞ!


第3話:時を超えた男と少女 後編

「艦橋! 一時の方向に、艦影が見えます!」

 

問題の海域突入に伴い、提督たちが会話を中断したとき、頭上、主檣上に配置された熟練見張員から大きな声が響き渡ってきた。

彼女たちは、昼間は無論、夜間にも常人を遥かに超えた視力の持ち主として、誰よりも早く遠くの艦影などを見つけることが出来る。謂わば海岸が誇る重要な役割を担っている秘密兵器でもある。

昼間の洋上で、国籍不明の異形の艦艇となれば、簡単に見逃す筈がない、と確認のため、宗像は顔を上向かせて、大声を掛けた。

 

「相手は、どんな艦艇だ!?」

 

「全長、水線長で約110メートル。恐らく水没した部分でも120メートルは超えています! 同時に砲塔らしきもの、前後1基ずつを確認。恐らく潜水艦ですが、国旗らしきものは見当たりません!」

 

双眼鏡を目に当てた熟練見張員が、逐一に知らせてきた。

 

「なるほど、相手は潜水艦か。それにしても此れほど大きな潜水艦は初めてだな……」

 

考えてみるが、想像はおろか、推測は思いつきそうにない。

にしても、何処の国が、其れほどのものを作り出し、帝国領海近くをうろつかせているのだ……と自問自答したいぐらいだ。

やはり、ここは接近するしかない。時局がきな臭くなっているだけに、油断も出来ない。宗像は水無月に、万が一に備えるように命令を下した。

 

「水無月、砲雷撃戦用意。何時でも撃てるように各員にも伝えろ。発光信号を発しながら接近する!」

 

「うん、まかせて。司令官!」

 

各自に伝わる。戦闘や哨戒には慣れてはいるものの、異形の存在とも言える深海棲艦とはまた別の、況してや未知なる国籍不明艦相手に、誰もが緊張しきっている。艦首及び、艦尾に各部に備え付けられた全4門の12cm単装砲に砲弾が装填される。

敵艦を一撃で屠ることが出来る、匕首とも言える駆逐艦の最大武器、63cm魚雷発射管も左舷に旋回、既に魚雷も既に装填済み。そして水中に逃げた際にも備えて爆雷も、何時でも放てるように準備を整えた。全ての装備妖精たちが配置に着いたのを確認した宗像が頷くと、水無月は艦体を回頭させ、少しずつ速度を、徐々に上げていく。

速度は32ノット。出しうる速度を維持していき、まもなく水平線に関係が見えてきた。

 

「こいつは……」

 

「……こんな艦、見たことないよ。司令官」

 

宗像の瞳に映る艦艇の正体が、黒々とした怪しい潜水艦だった。

その艦にはほとんど凸凹が見られない。海の哺乳類、鯨の背鰭を模倣した建造物の前後に設けられた砲塔。しかし、その砲塔は亀の甲羅を伏せたような独特の形。あれならば水中での抵抗は少なく、稀に見ない高速な潜水艦にもなり得るな、と、彼と、側にいた水無月も同じく驚きを隠せなかった。

日本はもちろん、海軍大国のアメリカやイギリス、況してや世界中の海軍も持っていない。子ども向けの冒険小説、宗像自身が持つ架空戦記小説などに登場する、主人公たちから、潤沢な資金を持つ悪の組織や陰謀団等が独自に造った高性能潜水艦や巨大な爆発推進飛行船、飛行機、果ては空飛ぶ戦艦などまで繰り出してくるが、まさか現実にお目にかかるとは夢にも思わなかった。

正気を保たねば、と我に返った二人は、とにかく、距離1万あたりで一度停止した。彼は肩越しに振り向いて、通信長に呼び掛ける。

 

「先ほどから呼び掛けているが、返答はあるか?」

 

「ありません。返信だけでなく、先方からの呼び掛けも」

 

通信長が答えた。

 

「……ねぇ、司令官、通信長。一つ発光信号で呼び掛けてみようよ。此方に敵意もないし、今は停止しているから、もしかしたらさ」

 

「ああ、分かった。探照灯用意!」

 

水無月の意見を聞いた宗像が、さらに命じたときだった。

怪潜水艦から、断続的に瞬き、消えては繰り返し光っていた。万国共通のモールス信号だ。

 

「帝国海軍駆逐艦娘。当方に交戦の意思なし。重要な要件により、艦長と秘書艦と会談致したし。当方より、貴艦を訪問致したく、お願いする」

 

通信長が読み上げるまでもなく、宗像たちにも通信内容は読み取れる。

 

「会談?其れに重要な要件とは……」

 

首を傾げた彼が暫く考えると言った。

 

「そうだな。ただし、ボートを出して来させろ。乗艦する人数は4人まで、そして武器の携行は許可しない」

 

その指示を受けて通信長が返答、すぐさま『了解。感謝致す』との返信が煌めいた。

 

「分かった、此方も歓迎しなければな」

 

必要最低限なことは整えた宗像は、双眼鏡の倍率を上げて身を乗り出した。黒い艦体、艦首から艦尾まで丸みを帯びており、海中にそのまま滑り込んでいる、あののっぺりとした奇妙な艦の何処からボートを下ろすのか、出会ったばかりとはいえ、興味が湧くばかりだ。

軍人としては当然だ。だけど、あの艦形では、凌波性はさぞ悪いだろう。自分たち帝国海軍が誇る伊号潜水艦たちは最前線での、敵艦隊の戦力を削ぐ為に漸滅作戦を得意とする為に大型化に伴い、水上速力を高めて、いち早く外洋に進出できるように統一されている。

其れに対して、黒いあの怪潜水艦は波を切ることが出来ない、初期段階の潜水艦。速力は精々4、または5ノット程度だろうのものだろう、と推測した。

 

そんなふうに思いながら眺めていた宗像だったが、次の瞬間、二人が想像もつかないことが起きた。

 

怪潜水艦の艦首が、突如として分解したように見えた。

摩訶不思議、奇想天外とも言える出来事が、前部砲塔の前あたりに亀裂が入り、分断した。

視界を遮るほど噴出した蒸気に海水が沸き立ち、二つに分裂、直後に前半分が離れていく。

 

潜水か?と思ったが、しかし、またしても予想に反した。

宗像と水無月の眼が、さらに大きく見開いた。

分離した双方の艦内が、外気に晒された構造材がみるみると形を変えて、延びて、そして断面を瞬く間に塞いでいくばかりか、艦全体が、形を変えていく、というあり得ない光景を眼にした。

より複雑な形状の艦橋に、砲塔はごく当たり前の形の連装砲塔、さらに鯨の背に似た甲板には、形のないものに形を与えるように、新たな骨組みに伴って、表面の装甲を纏い、形を変えて、別の構造物に変わっていく。

 

宗像は虚ろな声で呟いた。間違いない、あの艦は……

 

「み、深雪……まさか、あり得ない。なぜ、あいつの秘書艦が……」

 

彼が口走り、水無月も驚愕する。

あいつはあの出来事で確か彼女と……。夢を見ているのか、果ては本物の幽霊船なのか、と、込み上げるほど、自分たちの頭の中が整理が追いつかないと思った瞬間、さらに分かれた艦首の方から全長10メートルばかりの小艇に変わっていく。

ごく見慣れたもの、帝国海軍で制式採用されて当たり前に使っている、内火艇が艇首をこちらに回して、ドドドッ、と快速な音を轟かせて、波をゆっくりと蹴り立てて走って来る。

 

一体、何者なのか、二人が慄きを抱くこと数分後、その内火艇は、水無月の舷側に横付けした。タラップが下され、乗員が上がってくる。落ち着きを払いつつ、宗像と水無月は出迎えを急いだ。

 

彼は万が一の時に備えて、自身や水雷長には拳銃を腰にして、同時に短機関銃を携行した衛兵たちも、同行するように指示も下した。

仮に乗っ取られた場合には排除すらやむを得ないものだ。余程の事がない限りは、常人すら凌駕する艦娘たちを取り押えることは不可能だが。一息を吐いて、甲板に上がってきた相手を見て、二人は立ち竦んだ。

 

約束どおり、四人だ。一組は自分と同歳の男と秘書艦、そしてもう人組は若い男と若い女だ。女の方は、少女と言っていい若さだが、若い二人は、ともに何処か普通ではない顔立ちの持ち主たちだ。

眼は大きく、釣り眼気味、小さめの鼻に、口はやや大きめ。かといっても醜くはなく、多少なり人の好みに好き嫌いは分かれるだろうが、まず美男、美少女と言ってもいい。揃いの服は、海軍の第二種軍服に似たものだ。

潮風に吹かれて靡かせた髪が、華やかな印象があり、細かに枝分かれした、妙に鳥類が持つ独特の羽毛に似ていると気がついた。

外国人独特の雰囲気を持つ地毛なのか、其れとも繊細に作り上げたカツラなのか、と頭の片隅で思う。しかし、二人の注意は若い男女の髪よりも、最初に上がってきた一組、自分と同い年と、秘書艦に集中していた。

 

「奇遇だな。宗像中尉。元気にしていたか? もっとも、今は提督で水雷屋なのか。立派になって嬉しいぞ」

 

「よっ、宗像司令官に水無月。また会えて嬉しいぜ!」

 

「ふ、ふたりとも……」

 

「夢じゃないよね、本当に二人なんだよね?」

 

「おう、久し振りだな。俺たちは幽霊じゃないぞ。ほら、この通り、きちんと足もついている」

 

「それに夢じゃないし、この深雪様たち以外決してあり得ないからよ!」

 

軽いジョークを口に楽しげに笑って、辰巳と呼ばれた男は太腿を軽く叩いて見せて、深雪はにっと微笑した。

 

「お前たちに会えたのは運が良かった。他の同期もかなり凄いことになってるだろう。だが、頭の固い連中の影響を受けているから難しいだろうな。彼奴らより、山本がいい。まだ海軍にいるんだろうな?」

 

屈託なく呼び掛ける男の名は、辰巳恭介。

同期でありかけがえのない親友。同期の面々も提督になっている。

何よりも彼と深雪は、事故で行方不明になり、死亡と認定されているはずだ。しかし、いま眼の前に現れた二人は、宗像たちが最後に見たときから、ほとんど年を取っていないように見える。

宗像と水無月は茫然として、時を超えて現れた、友を見つめるばかりだった……




今回は二人の正体に続き、深雪の艦体が変形する、謎の二人が同行していたりなどと摩訶不思議な回でした。
因みにオリジナルでは、辰巳は同じく偶然に白亜紀に漂着していたフランスで建造された最初の日本海軍軍艦で、のちに消息不明となった「畝傍」とともに現代に帰還するという設定でしたが、艦これ要素に加えて、オリジナル展開、駆逐艦深雪がフューチャーされてたらもっとよかったが、というコメントがとあるアニヲタサイトにありましたのでこちらを採用しました。
変形する時点で駆逐艦兼潜水艦にもなりました故に、少しだけ蒼き鋼のアルペジオみたいにもなりましたが。中里先生作品は今の艦これや蒼き鋼のアルペジオなどにも大きく影響力を与えていますし、もしも今も御存命ならば摩訶不思議な架空戦記から泥臭い架空戦記などと描いていたでしょうね。

長話はさて置き、次回は辰巳たちが現代の日本に戻ってきた目的が明らかになります。果たしてその目的とは一体?

それでは、次回もお楽しみを。

それでは第4話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)
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