いしきのまじん 作:流浪の職員
います
なんか気付いたら評価高くなってました。ありがとう御座います。今後も、よろしくおねがいします。
例の島へは将軍権限で手配した中型の船で行くこととなった。この大きさならば元素力と風力だけで動く仕組の為、他の船員を用意せずに済むからだ。
途中海祇島に寄り、雷電将軍自ら珊瑚宮心海にこの度の件を警告した。敵対していたとは言え、旅人や他国の神々が共に行動しており、民に影響が及ぶ可能性があることから疑うこと無く、受け入れた。
そうして一行は船を走らせ、島を目指す。
鶴見に近付くにつれて、遠くに件の島が見える。件の島は決して大きな島ではなく、帯電しているような特殊な島でもないごくごく普通の、緑あふれる島だ。
「旅人さん。あの島で間違いありませんか?」
「うん…でも、前に見た時より…その、なんだろう…」
「いや、言いたいことはわかる。」
「妖力…いや、わからん。わからんが…何らかの大きな力が渦巻いておる。」
「えぇ…以前よりも存在感のようなものが大きくなっているのでしょう。」
既に島までもう少しの距離。
目を凝らせば、島には豊かな自然が。
青々とした草木。
大きな木は、荒々しく大地を割くように根を伸ばしている。
野鳥や小動物、そして人影。
「待って、影さんあそこ!人が…」
旅人が指差した先には、既に何者もいなかった。
「………いませんね…」
「…旅人、何か見たのか?精神は…【祝詞】や、一面赤い景色は見なかったか?」
「………ううん、大丈夫。」
「少しでも不調があったら言ってください。あの魔神は、今まであなたが対峙してきたものとは全くの別物です。神子もですよ。」
「うむ、わかっておる。此度の様な状況でもなければ、今すぐに帰りたいものじゃ。」
神達は二人の体調を気にしながら船を進めた。
そして一行は、何事もなく島に上陸した。上陸した浜から島の中心部へは、一本の道があった。
「着きました。ここからはより、警戒して進みましょう。」
「何故じゃ。影が言うには、かの魔神とは敵対しておらんのじゃろう?」
「確かに敵対はしていません。ですが、あの魔神の力が強過ぎた為、この島の生態系などの調査が一切行えていないのです。唯一、過去に人が住んでいたことは解っていますが…」
「少なくとも、あの魔神は既に俺達に気が付いているはずだ。」
「えぇ…皆さん、感じていますか?」
「うん。」
「あぁ。」
「うむ。」
「えっ、えっ…な、何があるんだよ!オイラちっともわからないぞ…」
一行は辺りを注意深く見回す。
「パイモン気を付けて。
「えぇっ!?だ、誰かいるのか!?」
「人ではない。獣…でも無いな。なんだ?」
「奇妙な視線よ。敵意も無く、ただ見られておるわ。」
「この感じは…私もわかりません。」
辺りを見回せど、視線の主は見つからない。と、言うよりも四方八方から見られているのだ。
それは前から。
後ろから。
右から。
海から。
木の陰から。
空から。
船から。
草むらから。
『チリンッ』
鈴の音が聴こえた。
一斉に鈴の音の方へ向き直る。鈴の音は船とは逆方向、島の中心側へ向かう道の真ん中に、人が立っていた。
身体をこちらに向け、俯き、顔は見えない。
「人の子かの…?」
「いやいやいや、よく見ろ!ディオナみたいな耳が生えてるぞ!」
「旅人、警戒しておけ。先程からの視線は、アイツからだ。」
「……そこのあなた、
全員が武器をとり、最大限目の前にいる人物を警戒する。
その人物は真っ白な髪を持ち、頭には猫科と思われる耳が生えていた。綺良々のような猫又かとおもわれたが、後ろに見える白い尾は一本。
人は、ゆっくりと顔を上げた。
そしてその目を___
「『ねこです。よろしくおねがいします。』」
「旅人ッ!!!」
「ッ!?」
鍾離に激しく肩を揺さぶられ、旅人は難を逃れた。
「よし、帰って来られたな…」
「旅人!大丈夫か?」
「…すみません、迂闊でした。」
旅人以外は既に帰って来ていたようだ。
「それで…アレは?」
「魔神…というよりは、仙人に近い存在でしょうか。」
「そのとおりです。しつれいしました。」
いつの間にか背後にいた先程の人物に旅人は驚き、飛び上がった。
よく見てみれば、影や鍾離も武器を仕舞っており、とっくに和解していたようだ。
「あらためまして、わたしはねこです。」
「猫。」
「ねこです。ねこはどこにでもいます。」
「……なるほど、先程鈴がなるまで視線の主がわからなかったのは…」
「ねこはねこです。ねこはくさのなかにいます。きのかげにいます。ねこはそらです。ます。いえのなかにもいます。うしろにも、あたまのなかにも、めのなかにも、あるじのゆるすかぎりどこにでもいます。」
「お、おう…」
「これはまた濃い個性じゃな。」
少女なのか少年なのかよくわからないこの“ねこ”は、旅人達を見上げるように見つめている。
しかしその目はハイライトの無い、無機質な、壁のような目だった。
「猫さん、あの意識の魔神はいらっしゃいますか?」
「ねこです。いしきのまじんとやらはしりません。ねこはみています。した。きいています。した。でもそのなまえをきいたことはありません。」
「ふむ…ならば猫殿。赤い色をした鳥のような者はいるだろうか。」
「ねこです。それはあるじのことです。ますか?ねこはこのしましかしりません。あかいいろのとりはあるじしかしりません。」
「恐らくその主がかの魔神じゃろう。童、案内せよ。」
「お願いします、猫さん。」
「………ねこです。ねこはあなたたちがきらいです。でもあるじがよんでいます。ついてきます。いいです。ねこはさからいません。」
そういって“ねこ”は背を向け、スタスタと島の中心部へ歩きだしてしまった。
「…よくわかんないけど、案内してくれるってことだよな?」
「しかし、妾達は何故か嫌われたようじゃ。」
「……嫌われた理由はわかりませんが、ひとまず付いていきましょう。」
「あぁ。まずはあの魔神に会うところからいこう。」
一行は初対面ですぐに嫌われてしまった。しかし、目的の魔神のもとへ案内してくれているようなので、意外と早歩きな“ねこ”の後を急いで追った。
「な、なぁ猫。あっちに村っぽいのがあるけど…」
「ねこです。あれはあるじの【のりと】がいたるところにかかれたはいそんですよ。」
「廃村?じゃ、じゃあこの島にも、過去に人がいたのか?」
「います。た。もともとあるじはこのしまであがめられる。ます。あくようしたどこぞのまぬけのせいです。」
「そうじゃったのか?」
「いえ、初耳ですね。確かに人はいましたが…」
「まぬけ、むかししまをでました。どこまでいったのか、わかります。せん。」
「さっきから聞いてたら文がめちゃくちゃじゃないか!わかるのか、わからないのかどっちなんだよ!」
「わかります。せん。」
「ッキー!!!旅人!オイラ!アイツ!キライ!」
「なんでカタコトなの…」
「猫殿はこの島で過ごしていて、あの【祝詞】を見て狂ったりしないのだろうか?」
「ねこです。ねこはあるじのものです。あるじのなかにねこはいます。ねこは【げんや】にもいます。ねこはあるじに」
「…猫さん?」
突然“ねこ”は立ち止まった。
“ねこ”の背を追ってたどり着いたのは、島の中央に位置するであろう森の中。木々が覆い茂り、あまり陽の光が入らないため、薄暗くジメジメとしている。
“ねこ”は振り返り、じっと旅人を見ている。
「………」
「…な、なに?」
「うごくな。です。」
旅人は動きを封じられた。
“ねこ”はじっと旅人を見ている。
「…え、えっと…?」
「しゃべるな。ます。」
旅人は口を開くことを封じられた。
“ねこ”は距離を縮めながらじっと旅人を見ている。
(………助けてパイモンー!)
(無理だ!)
「よそみするな。した。」
旅人は目を逸らすことを封じられた。
“ねこ”はじっと旅人を見ている。“ねこ”の顔はもう旅人の目の前だ。
(………?)
違う。
旅人は気が付いた。
“ねこ”は旅人を見つめているのではなく、もっと遠くの
「『___閉じよ。』」
“ねこ”の声では無い声が“ねこ”より発せられた。
次の瞬間、旅人の背後で、雷元素が弾けるような音がした。
「なッ!?」
「「「旅人(さん)!」」」
「やっぱりついてきます。した。」
「猫殿…アレは一体…?」
「ねこです。このもりです。みればまよいます。つかまればはいられます。かこもみらいも、すべてにはいられ、つれさられます。」
「よ、よくわかんないけど…守ってくれたんだろ?ありがとな。」
「あるじにつたえてます。さい。あと、あるじはここにいます。このなかにいます。」
“ねこ”のそばには、大きな洞窟があった。洞窟と言うよりも、大きな穴。
鍾離達の頭は情報の処理が追いつかない。
「これは…!?」
「…?」
「猫さん、私達は先程まで、森にいたのでは…?」
「ねこです。たぶん、すこしたべられかけています。」
「食べられッ!?」
「ねこはもりにいません。さむすぎます。きもちがわるい。」
「……お主も行きたくない、と。それ程ヤバ目なモノだったのじゃな。」
「はやくあるじのもとへいきます。あるじはしまのすべてをしります。ねこはあるじにみつかります。」
そう言ってまたスタスタと旅人達に背を向け、歩き出した。躊躇なく洞窟を下り、我に返った一行は慌ててその後を追った。
「ね、ねこぉ…お、お前の主は、ホントにこんなとこにいるのかぁ…?」
「あるじはいます。このさきにいます。ここからでません。」
「何故…この様な地下深くに…」
あの洞窟、だいぶ地下深くまで繋がっていた。
かなり冷え、湿った空気が一行の肌を撫でる。ドラゴンスパインよりは寒くはないものの、長くいると風邪を引く程の気温だった。
「あるじはつよいです。あるじはみえてしまいます。あるじはみないためにもぐります。した。ねこはこのさむいがすきです。」
深く、暗い洞窟を進み、再び“ねこ”は立ち止まった。
「つきました。あるじがいます。ここにいます。」
「……祠?」
「気を付けてください。あの魔神の力を強く感じます。」
「そのようじゃ。見よ…髪の毛ですら逆だっておるわ。」
“ねこ”は祠のそばまで歩く。
そこはとても広く、旅人にとっては
木で出来た祠は【緋色】に塗られており、この暗い洞窟の中でも異様な存在感を放っている。
“ねこ”は祠を開き、中から折り畳まれた【一枚の紙】を取り出した。
「ではいきます。よびます。あるじのもとへ。こころしずかに。うけいれる。ます。よろしくおねがいします。」
“ねこ”は紙を広げ、一行に向き直る。
___カシコミ カシコミ
___敬い奉り御気性穏やかなるを
___願いけれ
___生神たる我らが御主の御遣いや
___今こそ来たらん
___緋色の鳥よ
___未だ発たぬ
SCP-040-JP
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SCP-1777-JP
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1777-jp
緋色の鳥よ
http://scp-jp.wikidot.com/locker-s-tales-red-scarlet-crimson
ふぁっきんバード、まだ姿現してないマ?
旅人達が“ねこ”に嫌われた理由は次回明かされます。
まぁ察しの良い方はわかったかも知れませんが、そこまで難しい理由じゃないとだけお伝えします。