いしきのまじん   作:流浪の職員

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 います



 なんか気付いたら評価高くなってました。ありがとう御座います。今後も、よろしくおねがいします。


3.よろしくおねがいします

 

 例の島へは将軍権限で手配した中型の船で行くこととなった。この大きさならば元素力と風力だけで動く仕組の為、他の船員を用意せずに済むからだ。

 途中海祇島に寄り、雷電将軍自ら珊瑚宮心海にこの度の件を警告した。敵対していたとは言え、旅人や他国の神々が共に行動しており、民に影響が及ぶ可能性があることから疑うこと無く、受け入れた。

 

 そうして一行は船を走らせ、島を目指す。

 鶴見に近付くにつれて、遠くに件の島が見える。件の島は決して大きな島ではなく、帯電しているような特殊な島でもないごくごく普通の、緑あふれる島だ。

 

 

「旅人さん。あの島で間違いありませんか?」

 

「うん…でも、前に見た時より…その、なんだろう…」

 

「いや、言いたいことはわかる。」

 

「妖力…いや、わからん。わからんが…何らかの大きな力が渦巻いておる。」

 

「えぇ…以前よりも存在感のようなものが大きくなっているのでしょう。」

 

 

 既に島までもう少しの距離。

 目を凝らせば、島には豊かな自然が。

 青々とした草木。

 大きな木は、荒々しく大地を割くように根を伸ばしている。

 野鳥や小動物、そして人影。

 

 

「待って、影さんあそこ!人が…」

 

 

 旅人が指差した先には、既に何者もいなかった。

 

 

「………いませんね…」

 

「…旅人、何か見たのか?精神は…【祝詞】や、一面赤い景色は見なかったか?」

 

「………ううん、大丈夫。」

 

「少しでも不調があったら言ってください。あの魔神は、今まであなたが対峙してきたものとは全くの別物です。神子もですよ。」

 

「うむ、わかっておる。此度の様な状況でもなければ、今すぐに帰りたいものじゃ。」

 

 

 神達は二人の体調を気にしながら船を進めた。

 そして一行は、何事もなく島に上陸した。上陸した浜から島の中心部へは、一本の道があった。

 

 

「着きました。ここからはより、警戒して進みましょう。」

 

「何故じゃ。影が言うには、かの魔神とは敵対しておらんのじゃろう?」

 

「確かに敵対はしていません。ですが、あの魔神の力が強過ぎた為、この島の生態系などの調査が一切行えていないのです。唯一、過去に人が住んでいたことは解っていますが…」

 

「少なくとも、あの魔神は既に俺達に気が付いているはずだ。」

 

「えぇ…皆さん、感じていますか?」

 

「うん。」

 

「あぁ。」

 

「うむ。」

 

「えっ、えっ…な、何があるんだよ!オイラちっともわからないぞ…」

 

 

 一行は辺りを注意深く見回す。

 

 

「パイモン気を付けて。()()()()()。」

 

「えぇっ!?だ、誰かいるのか!?」

 

「人ではない。獣…でも無いな。なんだ?」

 

「奇妙な視線よ。敵意も無く、ただ見られておるわ。」

 

「この感じは…私もわかりません。」

 

 

 辺りを見回せど、視線の主は見つからない。と、言うよりも四方八方から見られているのだ。

 

 それは前から。

 後ろから。

 右から。

 海から。

 木の陰から。

 空から。

 船から。

 草むらから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チリンッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴の音が聴こえた。

 一斉に鈴の音の方へ向き直る。鈴の音は船とは逆方向、島の中心側へ向かう道の真ん中に、人が立っていた。

 身体をこちらに向け、俯き、顔は見えない。

 

 

「人の子かの…?」

 

「いやいやいや、よく見ろ!ディオナみたいな耳が生えてるぞ!」

 

「旅人、警戒しておけ。先程からの視線は、アイツからだ。」

 

「……そこのあなた、()()()()()()。」

 

 

 全員が武器をとり、最大限目の前にいる人物を警戒する。

 その人物は真っ白な髪を持ち、頭には猫科と思われる耳が生えていた。綺良々のような猫又かとおもわれたが、後ろに見える白い尾は一本。

 人は、ゆっくりと顔を上げた。

 そしてその目を___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ねこです。よろしくおねがいします。』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旅人ッ!!!」

 

「ッ!?」

 

 

 鍾離に激しく肩を揺さぶられ、旅人は難を逃れた。

 

 

「よし、帰って来られたな…」

 

「旅人!大丈夫か?」

 

「…すみません、迂闊でした。」

 

 

 旅人以外は既に帰って来ていたようだ。

 

 

「それで…アレは?」

 

「魔神…というよりは、仙人に近い存在でしょうか。」

 

「そのとおりです。しつれいしました。」

 

 

 いつの間にか背後にいた先程の人物に旅人は驚き、飛び上がった。

 よく見てみれば、影や鍾離も武器を仕舞っており、とっくに和解していたようだ。

 

 

「あらためまして、わたしはねこです。」

 

「猫。」

 

「ねこです。ねこはどこにでもいます。」

 

「……なるほど、先程鈴がなるまで視線の主がわからなかったのは…」

 

「ねこはねこです。ねこはくさのなかにいます。きのかげにいます。ねこはそらです。ます。いえのなかにもいます。うしろにも、あたまのなかにも、めのなかにも、あるじのゆるすかぎりどこにでもいます。」

 

「お、おう…」

 

「これはまた濃い個性じゃな。」

 

 

 少女なのか少年なのかよくわからないこの“ねこ”は、旅人達を見上げるように見つめている。

 しかしその目はハイライトの無い、無機質な、壁のような目だった。

 

 

「猫さん、あの意識の魔神はいらっしゃいますか?」

 

「ねこです。いしきのまじんとやらはしりません。ねこはみています。した。きいています。した。でもそのなまえをきいたことはありません。」

 

「ふむ…ならば猫殿。赤い色をした鳥のような者はいるだろうか。」

 

「ねこです。それはあるじのことです。ますか?ねこはこのしましかしりません。あかいいろのとりはあるじしかしりません。」

 

「恐らくその主がかの魔神じゃろう。童、案内せよ。」

 

「お願いします、猫さん。」

 

「………ねこです。ねこはあなたたちがきらいです。でもあるじがよんでいます。ついてきます。いいです。ねこはさからいません。」

 

 

 そういって“ねこ”は背を向け、スタスタと島の中心部へ歩きだしてしまった。

 

 

「…よくわかんないけど、案内してくれるってことだよな?」

 

「しかし、妾達は何故か嫌われたようじゃ。」

 

「……嫌われた理由はわかりませんが、ひとまず付いていきましょう。」

 

「あぁ。まずはあの魔神に会うところからいこう。」

 

 

 一行は初対面ですぐに嫌われてしまった。しかし、目的の魔神のもとへ案内してくれているようなので、意外と早歩きな“ねこ”の後を急いで追った。

 

 

「な、なぁ猫。あっちに村っぽいのがあるけど…」

 

「ねこです。あれはあるじの【のりと】がいたるところにかかれたはいそんですよ。」

 

「廃村?じゃ、じゃあこの島にも、過去に人がいたのか?」

 

「います。た。もともとあるじはこのしまであがめられる。ます。あくようしたどこぞのまぬけのせいです。」

 

「そうじゃったのか?」

 

「いえ、初耳ですね。確かに人はいましたが…」

 

「まぬけ、むかししまをでました。どこまでいったのか、わかります。せん。」

 

「さっきから聞いてたら文がめちゃくちゃじゃないか!わかるのか、わからないのかどっちなんだよ!」

 

「わかります。せん。」

 

「ッキー!!!旅人!オイラ!アイツ!キライ!」

 

「なんでカタコトなの…」

 

「猫殿はこの島で過ごしていて、あの【祝詞】を見て狂ったりしないのだろうか?」

 

「ねこです。ねこはあるじのものです。あるじのなかにねこはいます。ねこは【げんや】にもいます。ねこはあるじに」

 

「…猫さん?」

 

 

 突然“ねこ”は立ち止まった。

 “ねこ”の背を追ってたどり着いたのは、島の中央に位置するであろう森の中。木々が覆い茂り、あまり陽の光が入らないため、薄暗くジメジメとしている。

 “ねこ”は振り返り、じっと旅人を見ている。

 

 

「………」

 

「…な、なに?」

 

「うごくな。です。」

 

 

 旅人は動きを封じられた。

 “ねこ”はじっと旅人を見ている。

 

 

「…え、えっと…?」

 

「しゃべるな。ます。」

 

 

 旅人は口を開くことを封じられた。

 “ねこ”は距離を縮めながらじっと旅人を見ている。

 

 

(………助けてパイモンー!)

 

(無理だ!)

 

「よそみするな。した。」

 

 

 旅人は目を逸らすことを封じられた。

 “ねこ”はじっと旅人を見ている。“ねこ”の顔はもう旅人の目の前だ。

 

 

(………?)

 

 

 違う。

 旅人は気が付いた。

 “ねこ”は旅人を見つめているのではなく、もっと遠くの

 

 

「『___閉じよ。』」

 

 

 “ねこ”の声では無い声が“ねこ”より発せられた。

 次の瞬間、旅人の背後で、雷元素が弾けるような音がした。

 

 

「なッ!?」

 

「「「旅人(さん)!」」」

 

「やっぱりついてきます。した。」

 

「猫殿…アレは一体…?」

 

「ねこです。このもりです。みればまよいます。つかまればはいられます。かこもみらいも、すべてにはいられ、つれさられます。」

 

「よ、よくわかんないけど…守ってくれたんだろ?ありがとな。」

 

「あるじにつたえてます。さい。あと、あるじはここにいます。このなかにいます。」

 

 

 “ねこ”のそばには、大きな洞窟があった。洞窟と言うよりも、大きな穴。

 鍾離達の頭は情報の処理が追いつかない。

 

 

「これは…!?」

 

「…?」

 

「猫さん、私達は先程まで、森にいたのでは…?」

 

「ねこです。たぶん、すこしたべられかけています。」

 

「食べられッ!?」

 

「ねこはもりにいません。さむすぎます。きもちがわるい。」

 

「……お主も行きたくない、と。それ程ヤバ目なモノだったのじゃな。」

 

「はやくあるじのもとへいきます。あるじはしまのすべてをしります。ねこはあるじにみつかります。」

 

 

 そう言ってまたスタスタと旅人達に背を向け、歩き出した。躊躇なく洞窟を下り、我に返った一行は慌ててその後を追った。

 

 

「ね、ねこぉ…お、お前の主は、ホントにこんなとこにいるのかぁ…?」

 

「あるじはいます。このさきにいます。ここからでません。」

 

「何故…この様な地下深くに…」

 

 

 あの洞窟、だいぶ地下深くまで繋がっていた。

 かなり冷え、湿った空気が一行の肌を撫でる。ドラゴンスパインよりは寒くはないものの、長くいると風邪を引く程の気温だった。

 

 

「あるじはつよいです。あるじはみえてしまいます。あるじはみないためにもぐります。した。ねこはこのさむいがすきです。」

 

 

 深く、暗い洞窟を進み、再び“ねこ”は立ち止まった。

 

 

「つきました。あるじがいます。ここにいます。」

 

「……祠?」

 

「気を付けてください。あの魔神の力を強く感じます。」

 

「そのようじゃ。見よ…髪の毛ですら逆だっておるわ。」

 

 

 “ねこ”は祠のそばまで歩く。

 そこはとても広く、旅人にとっては強敵(突破素材)と出会うような場所に感じられた。

 木で出来た祠は【緋色】に塗られており、この暗い洞窟の中でも異様な存在感を放っている。

 

 “ねこ”は祠を開き、中から折り畳まれた【一枚の紙】を取り出した。

 

 

「ではいきます。よびます。あるじのもとへ。こころしずかに。うけいれる。ます。よろしくおねがいします。」

 

 

 “ねこ”は紙を広げ、一行に向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___カシコミ カシコミ

 

 

 

 

___敬い奉り御気性穏やかなるを

 

 

 

 

___願いけれ

 

 

 

 

___生神たる我らが御主の御遣いや

 

 

 

 

___今こそ来たらん

 

 

 

 

___緋色の鳥よ

 

 

 

 

 

___未だ発たぬ

 

 

 

 

 





SCP-040-JP
http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp

SCP-1777-JP
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1777-jp

緋色の鳥よ
http://scp-jp.wikidot.com/locker-s-tales-red-scarlet-crimson





 ふぁっきんバード、まだ姿現してないマ?

 旅人達が“ねこ”に嫌われた理由は次回明かされます。
 まぁ察しの良い方はわかったかも知れませんが、そこまで難しい理由じゃないとだけお伝えします。
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