いしきのまじん 作:流浪の職員
非常食「そういえばお前って、何を食べるんだ?」
とり「人。記憶。感情。」
非常食「そ、それ以外で…」
とり「………………ねこ?」
非常食「ねこを!?」
とり「野鳥も食べるぞ。」
旅人「共食いするんだ…」
非常食「そこじゃないだろ!!」
旅人達はわからなかった。
否、頭ではとうに理解している。心が理解することを拒んでいた。理解したくなかった。
「我に肉体はあらず。しかし、我は肉を喰らう。我を【認識】した者を喰らう。」
「…つまり、俺達やテイワットの人々がお前を知り、その数が増える程、お前は強くなると?」
「是であり否。否であり是。我はただそこにあり。お前達が我をそう【認識】したが故に、我は強くなった。」
「旅人!お、オイラちっともわかんないぞ…!」
「………」
「おい!その目はなんだよ!」
(……僕もちっともわからないや…)
「なるほど…皆に説明するならば…バアルゼブル、俺達にとって、コイツはなんだ?」
「…強敵。恐らく、我々が束になっても勝てない魔神。」
「それだ。コイツはコイツを【認識】した者の記憶やら、感情やらを食べて成長するんだろう。そして、俺達の持つコイツへの【認識】をそのまま喰って、その通り成長した姿が今のコレだ。」
「……つまり、わたくしたちは知らぬ間に数百年間、子育てをしていたと言う訳ね…」
「子育て。言い得て妙である。面白い。」
面白がっているのは鳥だけだ。
ティナリは考え込んだ。生物として、ここまで常識外れな存在が未だかつていなかったがために。
「あるじ、あるじ。あるじをしらない。おおいです。まだわかってない。です。」
「ふむ…お前達、俺の
全員が【鳥】を見る。【鳥】の無機質な目は、旅人達が先程まで見ていた黒い目から【緋色の】___
___赤い。
___大地が紅い。
___空が朱い。
___全てが赤い。
___影がさす。
___上を見る。
___大きな【鳥】だ。
___【鳥】は口を開き、自分を__
【赤時化 夜薙げ 緋色の鳥よ 草食み 根食み 気を伸ばせ】
「「「「「___ハッ!?」」」」」
旅人達は正気に戻った。
旅人達は…否、旅人達も含め、皆が始めて【緋色の鳥】に喰われるところまでを見た。見させられた。
「おかえりです。ぶじです。ねこはもんだいないとみます。」
「上手く調整できた。理解したか?」
この場にいる誰もが、もうこの魔神の力を疑うことはなかった。
これ程恐ろしい力だったのか。旅人を含めた若き世代は力の差を思い知った。
ここまで強くなっていたのか。神々は
そこで旅人達は思い出した。
「そうだ召使!」
「大丈夫!?」
「気分はどうかしら?」
「い、いや…大丈夫だ。旅人、神々も、感謝しよう。」
旅人達の予想に反し、以前あれほど不調を訴えていた召使はなんの異常もなさそうであった。
「何をしている?」
「い、いや…その…」
「……良い、後で私の口から話そう。」
「?」
「私のことは後でいい、続きといこう。この【祝詞】の蔓延だが…」
「結局は、各国で対策を練るしか無さそうね…璃月の惨状を考えると、抵抗できる程の力が無いといけませんが。」
「最悪は、自爆テロに使われることだが…」
「確かに、叫ばれれば終わりですね…」
ならばいっそのこと情報を開示してしまうか。
否、ただでさえ手が付けられない程の力を持つこの魔神をより強くして終わりだろう。
虱潰しに資料を探し出して処分するか。
否、この広いテイワット中から探し出すのは骨が折れるどころの苦労ではない。
原因に消えてもらうか。
否、断じて否。この魔神と敵対すれば、テイワットは瞬く間に終焉を迎えるだろう。
「…提案。我が手を加える。」
「「「何?」」」
空気の読めないふぁっきんばーど。
この魔神の能力で苦しんでいるというのに突然何を言い出すか。
「現在、【祝詞】モドキで人が来る。血を見て人が来る。真なりや?」
「公子殿曰く、その通りだ。」
「なれば、【祝詞】を追加する。【祝詞】モドキも延長される。血は…堪える。我頑張ろう。」
「そ、そんなことができるのですか?」
「無論。」
「なら初めからやれよ!」
「力ある今だからこそ。昔ならば不可能。」
「ばかです。まぬけです。できるならあるじはやります。あるじにはおいしくないです。とっくにやります。した。」
「ムッキャー!!!」
「しかし条件。我報酬を望む。」
「……稲妻でできる範囲でならば、私が叶えましょう。」
「…天権殿、頼めるか?」
「勿論です。璃月としても、異論ありません。」
「スメールも、わたくしがなんとかするわ。」
「フォンテーヌでも、統治に差し支えない程度ならば答えよう。」
「モンドでも了承しよう。民への被害が減るならば、容易いことだ。」
皆覚悟は決った。
自国や民の被害が減るならば拒否してはならない。国を治める者として、この条件は呑まねばならぬものであった。
「我の望む報酬。それは我が積年の望み。」
「お、おい…一体何を要求するつもりなんだ!?」
「我が長年の望み。たった一つの望み___
美味いモノを喰わせろ。」
「「「「「は?」」」」」
一同は呆然としている。
「待て待て待て!そ、そんなもので良いのか!?」
「ム、聞捨てならぬ。とても重要なれば。」
「………何故、美味しいものを望むのです?」
「人、たいてい不味い。記憶、味しない。感情、ほぼ不味い。他に喰えるものはない。」
【緋色の鳥】にとって、食事とは【原野】を訪れた者を喰らう、本能的な成長に必要なもの。しかし、これがどうにも美味しくない。むしろ不味い。
加えて、【鳥】にとっての記憶の大部分は、大昔、食料が無く、飢饉が起こっていた時代の話である。
「……まさか、【祝詞】の【くさはみねはみ】って…」
「文字通り『草を食い』、『根を食う』ことだが?当時我を崇めた村はそうして命を紡いでいた。」
衝撃の事実である。
そう、あの島は【緋色の鳥】により貿易など無く、島で取れる食料もたかが知れていたため、貧しい食生活を送ってきた。
ちなみに【祝詞】とは、本来食料難になった村が、苦しませるよりはと餓死寸前の者を【緋色の鳥】に捧げるための文言である。
そう、本来の【祝詞】とは死者へ送るものである。
「それが時代と共に崇める心が憎悪へと変わり、例のマヌケが外へ持ち出し、【祝詞】は【呪言】へとなり変わった。」
「つまり、俺達が知るものは…」
「【あかしけ やなげ 緋色の鳥よ】___読めなかったのか、文字が違う。そのおかげで【祝詞】は無事だが。」
本来の【祝詞】では、【原野】にて自我のある【緋色の鳥】が喰らって終わりだが、ねじまがった【祝詞】では、自我の無い不完全な【緋色の鳥】による拷問が待ち受けている。
「文字には“意味”がある。その意味を理解せぬまま唱えたのだろう。」
「えーっと…美味しいものって、何か要望はあるのかしら?」
「否。料理でも、食材でも。」
「……各国、問題無いでしょうか?」
「「「異議なし。」」」
「では【鳥】よ、我々はその条件を呑みます。」
「我歓喜。なれば、条件を締める。」
こうして条件が引き上げられ、
・【祝詞】を全て唱える、見る、聞く。
・【緋色の鳥】、【認識の鳥】を口に出す、目にする、聞く。
以上2つに触れると発狂するよう抑えた。
「これで被害の拡大は収まるでしょう。」
「凝光殿、帰り次第俺達ファデュイを使って検証させてくれ。安全が確認され次第、後処理も行わせて貰いたい。」
「良いでしょう。結果はすぐに各国に伝えても?」
「勿論。俺達が招いたようなものだからね。」
これにて、奇病への対策は、「上手く付き合うしかない」という結論になった。
「これにて解散としますが、今後も【祝詞】には充分に注意を払うように。」
「ついでだ。各国の重鎮が集まる今、普段とは違う交流を持てるだろう。旅人、もう少し塵歌壺を借りて良いか?」
「もちろん!」
帰るものもいれば、残ってお喋りに興じる者もいた。
「そうだ!【鳥】…オイラ、あんまり【鳥】って呼びたくないぞ…混ざりそうで…」
「確かにややこしいけど…パイモン、何か良い名前付けてあげなよ。」
「えぇー!?お、オイラがか!?んえーと…」
「我期待。超期待。」
「ねこはわくわくします。」
「ん〜…ダメだぁ!旅人、お前が考えてくれぇ!」
「えぇー…」
旅人は考えた。ものっすごく考えた。【緋色の鳥】や【認識の鳥】になぞらえたいが、下手に近付け過ぎるといつ連れ去られるかわかったものではない。
「うーん…」
「ワクワク?」
「わくわく、です!」
「うーん、ゴメンっ!イイ感じのが浮かばなくて…“認識”からとって『シキ』でどうだろう…?」
「………旅人…流石に安直じゃないか…?」
「ならパイモンが考えて。」
「オイラには無理だぁ!」
「『シキ』…良い。我は、今より『シキ』を名乗ろう。」
こうして【鳥】は『シキ』を名乗る様になった。ちなみに“ねこ”は“ねこ”である。「ゆずれないこだわり」らしい。
「そうだ!シキ、オイラ達猫に嫌われたらしいんだ…」
「ねこに?」
「ねこです。ねこはこのひとたちがきらいです。」
「ほら!な、なんでなんだぁ…?」
「ふむ…」
シキの周りにはいつの間にか影、鍾離、八重神子が集まり全員が“ねこ”に嫌われた理由を知りたそうだ。
「お前達、ねこをなんと呼んだ?」
「猫。」
「猫だよな。」
「猫です。」
「猫じゃ。」
「猫だな。」
「ねこはねこです。なんどいってもねこを猫といいます。」
「なるほど。わかった、理解した、納得した。お前達、同音異義と言う現象を知っているか。」
「流石にオイラでも知ってるぞ!だからそんな目でオイラを見るなッ!」
「コヤツはお前達の知る、『真核生物動物界脊索動物門脊椎動物亜門哺乳網食肉目ネコ亜目ネコ科ネコ属ネコ亜属ヤマネコ種イエネコ亜種』ではない。」
「待って?」
「待って下さい。」
「待て。」
「待つのじゃ。」
「おぉおおぉ〜???」
「聞き逃したか?『真核生物動物界脊索動物門脊椎動物亜門…』」
「シキ、お願い止まって?パイモンがアホになっちゃう。」
「( ᐛ )?」
「あぁほら凄い顔に…」
「………パイモンのことは置いておこう。今の発言からするに、猫殿は俺達の知る猫では無いということか?」
「ねこはそういいます。した。ねこは“ねこ”です。」
旅人達は改めて“ねこ”をよく見た。
頭の上に生えた耳、癖のある白髪、ハイライトの消えた死んだ魚の様な目、白い尾、少年なのか少女なのかわからない“ねこ”。
どう見ても綺良々のような人化した猫にしか見えない。
「ふむ…言っていなかったが、このねこは我の同類だ。」
「「「え"?」」」
「示した方が早かろう。ねこ、やれ。我が許す。」
ねこは眼鏡を外し、改めて旅人達に向き直る。
ハイライトの消えた目は、なんだか人間の様な___
「『ねこです。よろしくおねがいします。』」
ねこみたいな不思議ちゃん(?)のセリフ書くのが楽し過ぎる。
感想及び高評価感謝です。SCP関連のせいか、面白い、鋭い感想があり大変嬉しく思います。逆に参考になったりもします。
あと感想欄でご指摘頂き、すっかり原作の設定忘れて書いてるところがあったので修正しときます。本編への影響はないので読み返さなくても恐らく問題無いかと思われます。
(以下、設定)
【シキ(緋色の鳥)】
容姿:長身キャラ。スタレの星ちゃんぐらいの長い緋色の髪を持ち、黄泉の様に前髪で片目が隠れている。表情筋は死んだ。
性格:表情には出ないが意外と面白いタイプ。(参考キャラ:トキ等)
【ねこ】
容姿:艦これの海防艦『平戸』のイメージ。表情筋は死んでいる。
性格:ノゲノラの獣人『イズナ』のイメージ。舌足らず。
ねぇ上げる直前まで他小説読んでて気付いたけど『日間26位』ってなんや。伸び過ぎやろ。驚き過ぎて震えたわ。ありがとう御座います。
今見たら『日間15位』まで上がっとるやんけ…(震え)
さて、どの国から行こうか。
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やはり自由の国モンド!
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美味い飯が多い璃月!
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元々近くにいたよ稲妻!
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独自の文化を誇るスメール!
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技術と歴史あるフォンテーヌ!
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あの、戦時中なんすけど…ナタ!