入学式を終え、自分の教室に着く。
しかし、周りを見渡しても女子ばっかり。
そんな空間に1人の一月はどうしたものかとため息をする。
「兄さん。私がいるんだからまだマシでしょ?」
と後ろの席からマドカが声をかける。
確かにまだ身内が1人いるだけでも助かるものだ。
「しかし、この視線をどうにかしたいな」
「仕方ないよ。それとも兄さんはあの男と一緒が良かった?」
「それはない」
「ならわがまま言わないの」
「分かったよ。それとマドカ、参考書のここを教えてくれないか?」
「いいよ」
マドカは席を立ち一月の隣にしゃがみ参考書を開けて説明する。
「はーい!全員席について下さい」
教室に入ってきたのは見覚えのあるせんせいだった。
「皆さん、IS学園入学おめでとうございます。私は1年3組の副担任の山田真耶です。一年間よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
「はい!では順番に自己紹介をしてもらいます……では窓際の生徒から順番にお願いします!」
そう言い窓際の生徒から順番に自己紹介を始める。
名前、中学、趣味や部活などを話している。
「次は石動一月君お願いします」
「はい。石動一月です。
中学では武術や剣術を習っていました。後は少しですが料理が出来ます。
不慣れな所もありますがよろしくお願いします」
お辞儀すると拍手が響く。
そして拍手の中教室のドアが開き金髪の女性が入ってきた。
「遅れてきてごめんなさい、私がこのクラスの担任、スコール・ミューゼルよ。ISの基本理論や実習を担当します。生まれはアメリカのカリフォルニア。以前はアメリカの代表候補生も務めたけど、まあ昔の肩書は関係ないわね。とにかく、一年間よろしくね」
笑顔を見せるスコールだが、すぐに鋭い表情に変わる。
「私たち教師の役目は、あなた達新米を世間に出しても恥ずかしくない『人間』にまで鍛え上げること。でも、それは技術だけじゃない。私たちはあなた達の『心』も鍛え上げる」
スコールは一拍置いて、さらに続ける。
「ISとは兵器である」
クラスの空気が変わった。
それは生徒たちからの緊張、そして教師たちの厳しい視線。
「ISは女性にしか扱えない。……ああ、現在の男性二例は除いてだけど、いうなれば、強大な兵器は女性のみ扱うということ」
スコールは言う。
現在ISは『IS運用協定』、いわゆる『アラスカ条約』において軍事転用が可能になったISの取引、運用などを規制すると同時に、IS発表当初の技術を独占的に保有していた日本への情報開示とその共有を定めた協定が定められている。
つまりISの軍事転用を規制しているのだが、それを守っている国は無い。
ドイツ、アメリカ、ロシア、中国等の強大国家は平然とISを軍事転用しているのだ。
それは、他国がISで攻撃を仕掛けてきたときの、あくまで防衛手段として、抑止力という建前で。
もし、他国がIS、もしくはそれに準ずる兵器で自国を攻めてきた場合、まずIS操縦者が駆り出される。
「そうなればいずれ君たちが戦場に立ち、戦争をしなければならない。つまり……人を殺さなければならない」
生徒たちが凍りつく。
「各国が大人しくアラスカ条約を守るという幻想を抱いているなら、この場で捨てなさい」
人間は愚かである。
そもそも、発表当初ISは宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツである。
だが、その後『白騎士事件』によってISは本来の運用目的から大きくずれた。
それが軍事利用だ。
現状、ISに勝る兵器は存在しない。
巷ではこう言われている。
女性がISで戦争を仕掛けたら三日で勝つと。
だが、逆に聞きたい。
「君たちIS適性者は人を殺せますか?」
息を呑む。
「私たちはISをファッションと捉えつつある風潮を嘆いている。だからこそ、今言う。覚悟無ない者は今すぐこの学園を去りなさい」
厳しい言葉だろう。
だが、何時も子供っぽい雰囲気を出している真耶が真剣な表情でスコールの言葉を聞いていた。
「私たちは、人の命を簡単に握りつぶせる兵器を扱える。だからこそ、心を鍛えなければならない。命の重さを、武器の重さを、暴力の意味を」
世間は女尊男卑だと言って女性が我が物顔で闊歩し、いわれのない男性の犯罪、いわゆる冤罪事件が多発している。
企業も女性優先に社員を採用、男性の就職率が下がる一方で、とある国ではデモまで起こっている。
宗教によって女尊男卑が浸透しない国もあるが、それでも国内が混乱するし、それに乗じて内紛は起こった国もある。
「女尊男卑などという考えは、人の命を摘む覚悟がある人間だけ行いなさい」
スコールの話に生徒たちの表情が変わった。
先程まで、生徒たちはISをファッションと捉えていたのだろう。
ISは一種のステータスだと、ただ、就職に有利な材料でくいっぱぐれないための手段だと。
しかし、スコールの言葉に、ガツンと頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
改めて考え直さなければならない。
ISという力をどう制御するかを。
生徒たちの表情が、先ほどまでの浮ついたものから覚悟したものへと変わったのを見たスコールと真耶は、満足そうに頷き再び微笑んだ。
「厳しいことを言ったけど、すぐに変わらなくていい。学園生活は三年あるんだからね」
「そうです。ゆっくり、卒業するまでには皆さんの答えを先生達に伝えてください。
もし分からない事があれば先生達が協力します!」