昔、ノリで弟子をとったらエラい肩書きが付いてきた   作:ポプテピピックα

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一発ネタです。


第一話「若返りおばさん、弟子と出会う」

 

 

「──俺を、アンタの弟子にしてくれないか!」

 

 私の肉体がまだおばさんだった頃。

 師範代の一人息子であるベリル・ガーデナントという少年が地獄の稽古終わりに意味の分からない戯言を口にしてきた。

 

 は? 私の弟子? 何言ってんのこの子?

 

「……いや、君、あんな怖い師範代(お父さん)から毎日剣術教わってるよね? こんな(外見)おばさんの私から学ぶ事なんて何も無いでしょ? って言うか私、君と同じ道場の門下生なんだけど?」

「分かっている! でも、それでも俺はアンタの剣が知りたいんだ! 何も教えなくて良い! 俺は自分の目で見てアンタの剣を覚えるから! だから俺をアンタの弟子にしてくれ!!!」

 

 えっ、えぇ……???(困惑)

 

 何も教えなくて良いのに弟子にしてくれってどうゆうこと? それって弟子になる必要ないのでは? って言うか、私の剣の何処にそんな魅力が詰まってるって言うの? 師範代が怖くてただ毎日逃げ回ってるだけなのに。

 

 いやぁ……マジで意味が分からん。

 

 でも、このままだとこの子、絶対に引き下がらないよね……師範代と似て頑固強い所あるだろうし。

 

 うーん、まあ形上の師弟関係なら別に良いか。別に私の稽古を邪魔する訳でもないし。何時かはこの子と私、それぞれの道に進んで何も無かった他人になる訳だし。

 

「分かった。君がそれで良いなら弟子にしてあげるよ。それじゃあ、よろしくね。えーと、ベリル君で良いかな?」

「ベリルで大丈夫だ! アンタはもう、俺の先生なんだから……!!!」

「先生……うん、何か悪い気はしないね」

 

 そんな感じで私はその場のノリで彼を──ベリル・ガーデナントを弟子として取ってしまった。

 

 

 もう、遙か、数十年前の話だ──。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「お嬢ちゃん、ようやく首都バルトレーンに着いたよ」

「ンが……?」

 

 馬車の中で揺られること数週間、

 

 何だか随分懐かしい夢を見ていた気がする。

 

 私の名前はステラ・ミリオン。見た目は少女、中身は中年のおばさんという意味の分からない若返り中年剣士である。

 

 どうして若返るのかと言われれば、それは私が『歳を重ねる毎に若返る』という原因不明の奇病を患っているからである。この病のせいで幼少期の頃は酷く苦労していたけど、今はもう若い少女の肉体になって毎日足取りが軽い軽い。

 

「じゃあ、ありがとねおじさん〜」

「へい、またのご贔屓を」

 

 御者のおじさんにお礼を告げて、

 私は懐かしのレベリス王国の首都、バルトレーンに足を踏み下ろした。

 

 さて、どうして今更私がこの国に帰ってきたのか気になる人もさぞ居るだろう。私は数十年前、この国、レベリス王国から遠く離れて他国を色々と旅しながら様々な文化、剣術、魔術、それらを目の当たりにしながらあの忌々しい過去を忘れるようにスローライフを満喫していた。

 

 忌々しい過去、言わなくても分かると思うが──あのモルデアとかいうスパルタ師匠が巣食う剣術道場の事である。当時の私はまだ十代で、若返りの影響により肉体がおばさんだった事からそれはもう年齢に比べて体力が少なかった。

 

 最初はうちの両親が体力向上の為に私を片田舎にある剣術道場に入門させたんだけど……まあそこが地獄でスパルタでヤバい場所だったのだ。

 

 入門当初は門下生が私と師匠の一人息子、ベリル君という少年の二人だけで、それはもうトラウマになるぐらいに扱かれまくった。まず、朝起きたらご飯を食わずに精神統一という名のお腹が鳴ったら師匠からの木剣脳天かち割りの刑、それが終わったらマイナス0°の冷水を頭の上からぶっかけて、そのまま素振り1000回とランニング30周という高熱を出しまくった頭のおかしい朝稽古。それから後は……ああ、ヤバい思い出すだけで寒気がしてきた。

 

 まあ、稽古内容はこれぐらいでそんなヤバい事が毎日、朝、昼、晩と何度も繰り返しあって流石の私も命の危険を感じて道場から脱走しようとしたり、隙を見ては稽古をサボろうとしたり、あの悪魔のような師匠から何とか逃げ回って死なないように立ち回ってきた。

 

 でも、そんな地獄のような日々も年々増えて来た門下生により、スパルタ稽古が古いという事に気が付いたのか、私が道場を去る半月前には自然と取り止めになって普通の剣術道場のように平和な稽古を執り行うようになっていた。

 

 恐らくあの時の師匠は初めての門下生という事もあってか、私とベリル君に対して遠慮という名の箍が外れまくっていたんだろう。じゃなきゃあんな拷問みたいな稽古、絶対にやる訳が無いのだから。ほんと、今思い返してもよく生き残っていたよね私……。

 

 まあそうして私があの忌々しい剣術道場(悪魔の巣窟)から立ち去ろうとした時、師匠は餞別の真剣を投げてきてこう言ってきたのだ『また寄りたくなったら何時でも帰って来い』って。当時の私は『何言ってんだこの悪魔は』と内心半ギレしていたけど、今の歳になって改めて思い返してみると旅をしている道中、全く息が上がる事もなく、まだ若くなかった肉体も他の病で苦しむ事もなく、自分の肉体が並大抵の事では倒れない強靭の肉体になっていると実感させられたのだ。

 

「うぬぬ……むかつく、あの悪魔師匠め……」

 

 地獄のようなスパルタ稽古の内容はどうであれ、結果は旅の道中で現れ、私は多少なりともあの師匠に助けられていた。その事実に何の恩も返さないのは私のプライド的に許せなかったので……今回は感謝の意を含めて、数十年ぶりに顔を見せてやろうとレベリス王国へと戻って来た訳なのだ。

 

 少し話が長かったかな? でも、これで私の戻ってきた経緯が全て話せたので満足だ。それになんで道場じゃなく首都バルトレーンにやって来たかと言うと、土産の品でも一つ買って行ってやろうと思ったからだ。

 

 あの悪魔師匠、あんな顔付きしているが饅頭が大の好物なのだ。

 

 という訳で私は昔の街並みを思い出しながら大市場で賑わっている西区へとやって来た。やはりと言うべきか私が以前見ていた市場と比べて、活気が更に溢れていて色んなお店や屋台が凄い盛り上がりを見せている。

 

 ほへぇー、多分今まで見てきた国の中でもかなり勢いのある市場なんじゃないかな?

 

「きゃぁぁー!!!」

「スリだ! 誰か捕まえてくれ!」

「どけぇ! 邪魔だお前ら!!!」

 

 そんな感情に浸っていると突然ひったくり犯らしき人物達が、私の視界の先に現れてこっちに向かって走ってきた。うわぁっ……マジで? やっぱりこんな治安が良さそうな国でもこういう輩は居るんだ。

 

 えーと、周りに騎士団の人は……居ないか。

 

 私は誰にでも分かるぐらいハァーと大きな溜息を着くと、師匠から餞別の時に貰った真剣を鞘からは抜かずにゆっくりと握り締める。

 

「(ひったくり犯は二人……先に荷物を持ってる方が来るかな? あー、早く饅頭食べたいー)」

 

 私はもう一度大きなため息を着いて、彼等が通過するであろう通路に立ち塞がって、水鏡の上に立つイメージを浮かべながら瞳を閉じた。

 

 私は自分の剣があまり好きじゃない。

 

 剣を握ると地獄の修行時代を思い出すからだ。

 

 でも、何かを忘れたい時は──不思議といつも握ってしまう。

 

 

 ──―集中。

 

 

 

 

 ──ヂヂヂッ!

 

 

「! ……なんーだ、騎士団の人案外近くに居たじゃん。しかも魔術師が一緒だなんて」

 

 私は瞳を開けて握っていた手を止めると通路を譲るようにその場から移動した。そのまま饅頭の買い出しに戻って、屋台にある饅頭を幾つか見繕う。えーと、確か師匠って蒸し饅頭より焼き饅頭の方が好きだったよね?

 

「すいません、この焼き饅頭十個下さい〜」

 

 

 ──ボッ!!!

 

 

 その瞬間──私の真後ろで荷物を持っていたひったくり犯が顎を打ち抜かれたように五メートルぐらい吹っ飛んだ。もう片方のひったくり犯もその様子に驚いて路地裏に逃げ込むが、雷撃のような袈裟斬りに襲われて一撃でノックアウトした。

 

 ほへぇー随分おもしろい魔法だね。

 

 剣術と魔法を混ぜたオリジナルかな? 

 

 あっ、そう言えばこの国。魔法師団っていうえげつない集団が居るって聞いた事あるような……多分その中の一人がやったのかな? 

 

「はい、焼き饅頭10個だよ」

「どうも。あっ、この饅頭おいひイですね」

 

 私は買い出した十個のうち一個をつまみ食いしながら味を確かめつつ、師匠へのお土産を決めていった。もう何個か他の種類のも買って行こうかな。

 

「──もしかして……ステラ先生ですか?」

 

 その時だった。

 

 突然、私の背後から『先生』という言葉が聞こえてきたのは。私は思わずその言葉に固まってしまって、そして気が付いたら……喉に饅頭が詰まって息が出来なかった。

 

「ヴゥゥッッー!!?!?!」

 

 時が動き出したように私は急いで胸元をドンドンと叩いて喉に詰まらせた饅頭を何とか胃の中に流し込んだ。はあっ、はあっ、ヤバい……今のはマジで死ぬかと思った。

 

「ステラ先生、大丈夫ですか!?」

 

 そんな私を心配するように顔を覗き込んできたのは見覚えのある顔付きをした草臥れた一人のおっさん。喋り方や声の抑揚は当時と全く違く、全体的におっさんぽく渋くなったけど……私の事を『先生』と呼び慕うその様子は、あの頃から何一つ変わっていなかった。

 

 私は何処か気まずい雰囲気を纏いながらも──顔を上げて、かつての弟子と目線を合わせた。

 

「ひ、久しぶりだね。ベリル君。元気に……してた?」

「お久しぶりです、ステラ先生。自分のこと覚えていて下さったんですね」

 

 ベリル・ガーデナント──かつて私が剣術を学んでいた時期にその場のノリで弟子として取ってしまったあの悪魔師匠の一人息子。私が道場を去ってからは一度も会ったことが無かったけど……随分とおっさんに成長したなぁ。あの頃は私の方が年寄りのおばさんだったのに……(遠い目)

 

「ステラ先生、今回はどうしてバルトレーンに?」

「……ああっ、うん。久しぶりにあの師匠に顔でも見せようかなと思ってね。というか……よく初見で私だって分かったね。あれから数十年ぐらい会ってないし、見た目もだいぶ変わっているのに」

「一目で分かりますよ。貴方は私の師匠であり、もう一人の先生なんですから」

 

 うっ……な、なんて眩し過ぎる瞳なんだ。

 

 くっ! 辞めて! あの頃と同じ純粋な眼差しでこんなおばさん(外見少女)を見ないで!!!

 

 というか今思い出したんだけど……私、君の師匠(先生)って名乗っているけど、剣術とか殆ど教えた事なかったよね?

 

 修行時代、確かに自分の目で見て覚えるって言うからホントに何も教えなかったけど……今思い返してみるとあれって師弟関係必要ないよね?

 

 現に今、先生とか師匠とか過去の名残で呼ばせてる感あるし……余りにも烏滸がましいというか。なんか、本人にも物凄く申し訳ないし……。

 

 うん、今からでも遅くないし師弟関係ナシにさせよう(名案)

 

「……あの、ベリル君。私の事なんだけどさ。もう師匠とか先生って呼ばずに今度からは──」

「ベリル先生! 一体どうしたんすっか!」

「ん。ベリル先生、いきなり走って置いてけぼりひどい」

 

 すると突然、私の発言を遮るようにさっき感じ取っていた騎士団の子と魔術師の子がひったくり犯を抱えながらこっちにやって来た。

 

 あっ、この子達、ベリル君の知り合いだったんだ。

 

「ご、ごめんよ。久しぶりに先生の顔を見たら年甲斐もなく興奮しちゃって……」

「──えっ!? ベリル先生の先生すっか!? それってもしかして、あのベリル先生が()()()()()()()()()()()って言うあの人すっか?!」

「その話、私も聞いた事がある。ベリル先生と同じ最初の門下生で、先生の二人目の剣の師匠──〝大剣豪〟ステラ・ミリオン。門下生の間ではかなり有名な話」

「そうっす! フィスちゃんよく覚えているっすね!」

「あはは……道場ではそんな話が出回っているんだね。ステラ先生自己紹介が遅れました。この子達はあの剣術道場で門下生として通っていた『レベリオ騎士団』のクルニ・クルーシエル。隣が『レベリオ魔法師団』のフィッセル・ハーベラー。二人とも自分の自慢の弟子達です」

 

 

 

 ……えっ? 大剣豪って誰のこと?

 

 

 





・主人公
名前:ステラ・ミリオン
年齢:50代中年(見た目は18歳の少女)
身長:170cm
容姿:胸元まで伸ばした橙黄色の髪、気怠そうに垂れ下がった翠眼の持ち主。

続きは未定。
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