黒の英雄~都の暗黒期に降り立つ~   作:グランドマスター・リア

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今回はそこまで話が進みません
基本的にキャラ同士の会話がメインになります


第9話:依頼

 

 レインとの出会いから翌日。

 キリトは昼前頃に【ヘファイストス・ファミリア】のホームである【ヴァルカの紅房】を訪れた。交差する槌に火山の意匠がこらされたエンブレムが掲げられた建物は、都市最高の鍛冶系派閥の名に相応しい佇まいで、【黄昏の館(ロキのホーム)】と比べて飾り気がなく無骨でありながらも形容しがたい威厳がある。

 

 このファミリアの主神であるヘファイストスと言えば、元一般男子学生であるキリトでも知るような鍛冶の神だ。

 その逸話において、かの神物(じんぶつ)は幾つもの武器や宝を鍛錬したと伝えられている。

 

 SAOにおいては生粋武器オタクでお馴染みの彼も、実在するなら一度は神の鍛錬した剣を振ってみたいと思ったものだが、まさかその神の眷族にそれを頼む日が来るとは、これもまた異世界さまさまである。

 

「『話は通しておく』ってメモには書いてあるし、あそこに居る見張りっぽい人にでも聞いてみるか」

 

 見たところ、ホームの入口にはそれっぽい人が二人立っている。

 キリトは物は試しにと近付いて、見張りをしている冒険者二人に声を掛けた。

 

「すまない。少しいいか?」

 

「ん、なんだ?」

 

 見張りの一人がこちらに顔を向ける。

 訝る男にキリトはメモを見せながら、事情を説明した。

 

「先日、このファミリアに所属してるレインって子に、今日この時間にここへ来るよう呼び出された者なんだけど……そういうのって聞いてたりするかな」

 

 見張りの二人は顔を見合わせる。

 片方は肩をすくめて思い当たる節はないと言うが、もう片方はそれとは対照的にキリトへ視線を投げて問いかけた。

 

「……お前、名前は?」

 

「キリトだ。所属は【ロキ・ファミリア】」

 

 そう告げると、今度はもう片方の見張りも「あっ」と声をあげる。

 問いを投げた方は頷き、キリトに対して気の良い笑みを浮かべた。

 

「ふむ、特徴は一致してるし間違いないな。ああ、話なら聞いてる。昨日、レイン嬢が遅くに帰ってきて『明日客人が来る』とか言うもんだから、俺達も何事かと思ってたんだが、まさかその相手があんた(・・・)だったとは……」

 

 含みのある言い方に、キリトは首をかしげる。

 その様子を見て見張りの冒険者は首を横に振ると、彼に道を開けた。

 

「いや、すまない。こっちの話だ。それと、ホームへ入るのも問題ない。俺達は見張りの任があるから付き添えないが、レイン嬢の所へは中に居る団員にでも頼めば案内してくれるだろう」

 

「……分かった。色々とありがとう」

 

 言って、キリトは謝意もそこそこに【ヴァルカの紅房】へと足を踏み入れる。

 ホームの中も外観と同様の石造りをしており、いかにも鍛冶師のねぐらと言った様子で、彼がSAOにて世話になった【リズベット武具店】にも似た印象を受ける。壁や棚には高価な絵画や芸術品こそないものの、剣や斧や槍と言った武器が所々に見受けられ、そのどれもがキリトの目から見ても一級品の素晴らしい物ばかり。

 

「おおっ、さすがは鍛冶系最大派閥。玄関からすでに武器の宝庫だな」

 

 【黄昏の館】にも数多くの武器があったが、こちらはまた赴きが違う。

 そんな光景に胸躍らせるキリト。普段ならあっちこっちで見て回りたい所だが、残念ながら今日はここへ見学に来た訳じゃない。一人の鍛冶師に、武器の作成を依頼する為だ。故に心中の高鳴りを抑えて、キリトは見張りに言われた通り、レインの所へ案内してもらう為にファミリアの団員を探す。

 

 すると、キリトはその矢先に一人の人物を見つけた。

 

「あっ、もしかして、あそこに居るのって……」

 

 思考したのはほぼ一瞬の事、次にはすでに声を発していた。

 

「おーい、そこの人!」

 

 その先に居るのは独特な佇まいをした妙齢の女だ。

 

「むっ、手前のことか?」

 

 女は、黒髪の赤眼で片方の目を眼帯で隠しており、極東の衣装に身を包んでいる。

 炉の熱によって焼けた褐色の肌は、彼女も一人の鍛冶師である事を雄弁に語っているが、それでいて纏う雰囲気は毅然として隙が無く、鍛冶師でありながら、歴戦の武人のような印象を受ける。

 

「ああ、悪いな。忙しい中で呼び止めて……実は――――」

 

 簡潔に要件を伝えると、眼帯の女もまた思い当たる節があると言った様子で頷いた。

 

「なるほど、その事であったか。無論、それに関しては手前も聞き及んでいる。何せ、"あの"レインが招いた客だからな。手前も一目見てみたいとは思っていたが、この様に偶然居合わせるとは運が良い」

 

 上機嫌にそう語る女にキリトは苦笑する。

 先程の見張りもそうだったが、何やらこのファミリア内でレインがキリトを招いた事は一種の噂話となっているらしい。まあ、彼女の鍛冶師としての腕が一流なのは、実際に剣を使ったキリト自身もよく知るところだ。

 それに加えて、彼女は凄腕のシーフやスカウトでもある。確かに一般的な鍛冶師とは言えないだろう。

 そんな彼女がホームに顧客を招いたとなれば、ファミリア内で話題になるのも不自然ではないかもしれない。

 

 もっとも、今までの言葉にはそれ以上の含み(・・)も感じるが……

 

「いいだろう。手前が案内してやる、ついてまいれ」

 

 とは言え、案内してくれるなら、それ以上追求するのも野暮ってものだろう。

 思った事はひとまず胸の中にしまって、キリトは眼帯の女に先導される形で歩き出す。ホーム内を進めば、玄関口以上に様々な武器や防具がそこかしこにあって、キリトはそれらに目を光らせながらも正面を歩く女の様子を伺う。

 しかしやがて、その沈黙は女の方から破られた。

 

「名乗りがまだであったな。手前の名は椿。椿・コルブランドだ」

 

「ああ、俺は……」

 

「知っている。キリト、だろう?」

 

 自身の名を言い当てられて、言葉に詰まる。

 そんなキリトを一瞥して椿はおかしそうに笑った。

 

「なに、そう不自然な事ではないさ。言っただろう?レインから話は聞いていると……客人の名前は知っていて当然だし、そもそも今この都市でお前の名を知らない者など居ないはずだ」

 

「……やっぱり、そういう事か」

 

 キリトは納得したように息を吐き、体の力を抜いた。

 そう、今この都市はあるひとつの話題で持ち切りになっている。いわく『世界最速記録を樹立した少年』『冒険者デビューからたった三ヶ月でランクアップした逸材』『剣姫に続く、黒衣の新星』などなど、キリトのランクアップがギルドから公表されて以降は、噂が至る所から立ちまくっている。

 昨日、レインがキリトの名前を知っていたのも、考えてみればそう不思議な事じゃなかった。

 キリトは自意識過剰ではないが、有名人になる感覚には良くも悪くも覚えがある。故に、目の前の人間が自身の名前を知っていても、驚いたりはしなかった。

 それに、この場合においては、椿だけが一方的にキリトの事を知っていたという訳でもないのだ。

 

「まさか、天下の【ヘファイストス・ファミリア】の団長様(・・・)にまで知られてるなんてな。俺も随分と有名になったもんだよ」

 

「そっちこそ、最初から手前の身分におおよその当たりは付けていたのだろう?だからこそ、他の団員ではなく手前に声を掛けた。噂に名高い『黒衣の新星』は思ったよりもいたずらが好きらしい」

 

 その黒衣の新星という呼び方は可及的速やかにやめて欲しいが、言った所で面白がって余計連呼してくるような気がするので、敢えて指摘せずスルーした。

 精神的には男子高校生のキリトにとっては、『黒の剣士』ですら顔を覆いたくなるような苦い二つ名なのだ。周りはブラッキーだのなんだのと好き勝手に呼んでくれたが、自分から自称した事は一度もない。

 後にも先にも、薄汚い『ビーター』こそが彼のアイデンティティであり、唯一無二の在り方だ。

 もっとも、そんなキリトがこの世界は一転して英雄候補(・・・・)だ。かの浮遊城は楽園というにはあまりにも苦く、残酷だったが、この世界はまた別の意味で残酷で理不尽だと言わざるを得ないだろう。

 そんな世界でも、圧倒的強者を相手にこうして軽口を叩き合えるのは、キリトの美点といって良いだろう。何せ、冒険者は基本的にそういう若者が好きだからだ。

 

「それはどうも、じゃあいたずらついでにひとつだけ聞かせて欲しい。あんたにとって、レインはどんな鍛冶師だ?」

 

 普段ならそこまで答える義理はないと真面目に取り合わない。

 しかし、彼女もまた義理人情には厚い女だ。気に入った相手には気を許す、ドワーフ然とした器量の良さもある。椿は、初対面ながらもキリトから感じる独特の雰囲気に口が軽くなっていた。

 

「そうさなぁ……性格はいかにもお前さんと馬が合いそうな感じで、エルフというよりは人間(ヒューマン)に近い価値観を持っている。『人』としては、周囲に好かれるタイプだろうな"ああいう手合い"は……しかし、鍛冶師としては変わり者もいい所だ。あいつはこの曲者(くせもの)ぞろいのファミリア内においてですら、筋金入りの『大馬鹿者』とされているのだからな」

 

「大馬鹿者?それはまた、愉快とは言えない表現だな」

 

 訝しむキリトに椿は苦笑する。

 

「だが、事実だ。……鍛冶、魔導、冒険のいずれにおいても優れた腕を持つあいつが、何故バベルの駆け出し御用達の区画なんぞに武器を出品していたのだと思う?」

 

「それは……」

 

 その理由まではキリトにも答えられない。

 ある程度予想する事は可能だが、あくまでも推測の域を出ない。確信を持ってこれ(・・)と言えるものがない以上、適当な考えで言及するのは憚られた。そんな彼を見て、椿は話の続きを口にする。

 

「あれ程の実力を持つ者がその気になれば、すぐにでも【ファミリア】のエンブレムを自身の武器に刻む事が出来る。名を上げ、富と名声を得るチャンスがあるというのに、奴はそういった打診をする度にいつもこう言うのだ。『わたしの武器は、わたしの命をかけられる人にしか渡さない』とな」

 

 呆れ半分な様子を隠しもせず言う椿。

 しかしながら、彼女の目は眩しいものでも目の当たりにしたかのように細められており、その視線はまるで往日の彼女自身を見ているようだった。他ならない、富や名声以上の"夢"を抱いて駆け抜けていた若き日の残像。そういった気配に、キリトもまた覚えがあった。

 

「……そういう事か」

 

 彼女の尾行の意味が何となく分かった気がする。

 理由こそ分からないが、どちらにしろそれほどの思いを自身の作った武器に抱いているのなら、ああして購入者をつけ回すのだって分からない話ではない。もっとも、奇行である事には違いないし、随分と変わった性分なのは聞いた通りなので、『大馬鹿者』という表現はより信憑性を増した。

 だが、そういう相手ならむしろ望むところだとキリトは口角を上げる。

 

「さて、与太話もそろそろ終いだな」

 

 言って、椿は一つの扉の前で足を止めた。

 

「ここがレインの鍛冶場だ。手前はここで待っているが、会話には立ち合わない。思う存分、一対一で交渉してくるといい」

 

「分かった」

 

 そうして言われるがままキリトは扉の前に立つと、数秒の沈黙の後、意を決したように扉をノックした。

 

「……?」

 

 しかし、返事はない。

 扉の向こうから人の気配は感じるので留守ではないだろうが、どう言う事か、と視線で椿に問いかけると、彼女は顎で扉を開けるように促す。キリトは困惑気味な様子だったが、このままでは埒が明かないと判断して、一息に扉を開け放ってしまう。

 

「入るぞ」

 

 そうして、目にした光景にキリトは絶句した。

 

「【磨き、固まり、収まれ】」

 

 奏でられる魔道の唄。

 共奏の楽器が織りなすのは槌を鉄を打つ音。飛び散る火花はどんなイルミネーションよりも美しく、また華奢な肢体によって繊細かつ大胆に武器を鍛錬する様は儚くも思える。この世界で初めて見る『鍛冶場』は、彼の想像を遥かに超えていた。

 【ヘファイストス・ファミリア】の保有する、一流の鍛冶師(スミス)が武装を作り出す聖域ともそこは、SAOで見たそれとは全く異なる姿をしている。

 

 絶えず鉄を打つ音が響き、燃え滾る炎の熱は部屋を満し、その奥に居るのは、赤いロングヘアーに尖った耳のエルフ少女。

 透き通るような肌と可憐な容姿からは想像も付かない様な力強さは、瞬く間に剣士たる魂を虜にする。

 そもそもの話、鍛冶師というのは人間(ヒューマン)やドワーフが殆どなのだ。これは各種族の適正や成り立ちに起因し、歴史上この垣根を越えた存在はそう多くない。そんな彼女に畏敬の念を抱くのは、往日の英雄たるキリトでさえ例外ではない。

 

 レインは魔法の並行詠唱を、武器を鍛錬しながら行うという極めて異質な方法を取っていた。

 並行詠唱とは高位の魔導士が戦闘の際に詠唱の隙を埋める為に行う高等技術だが、レインとってこれの真価はそこに留まらない。

 

「【(せん)の鍛錬を(いち)とし此処(ここ)に】」

 

 詠唱が完結する時、散る火花は色を変え、鍛錬された刀身には新たな命が宿る。

 

「【マテリアル・コントロール】」

 

 光が瞬いた。

 七色の輝きが煌々と燃えたかと思えば、それらは粒子となって刀身に吸い込まれていく。鍛錬の完了は、光の収束と共に訪れる。レインは形になった剣を手に取ると、その刀身を注意深く見つめてから、やっと一息ついた。

 

「よし、出来た」

 

 その一連の所作すらも絵になる。

 炭に汚れようと、汗をかこうと、それらは穢れではなく彼女を彩る付随要素に他ならない。

 

「凄い………」

 

 気が付けばそんな感想が口をついていた。

 その声は決して大きな物ではなかったが、鍛錬の終わった鍛冶場にはよく響き「え?」と声をもらしたレインが振り向く。その琥珀色の瞳に少年の姿を映すと、赤い髪の少女は飛び上がる勢いで驚愕を露にした。

 

「うひゃあ!?キ、キリトくん?な、な、な何でここに?ていうか、いつの間にそんな所に……」

 

 パニックになったレインを見て、キリトは浸っていた感慨から浮上する。

 

「ついさっきだよ。君がこの時間にここへ来るように言ったんだろ?昨日の今日でもう忘れたのか」

 

 その言葉にレインは急速に冷静になって、時間を確認する。

 

「嘘、もうこんな時間……」

 

 どうやら、時間も忘れて鍛冶に夢中になっていたらしい。

 本来なら呼び出した本人のずぼらを指摘すべき所だが、キリトはただ苦笑するだけでそういう事は言わなかった。それはひとえに、彼女の姿に魅入られたのもあるが、それ以上に好きな事へのめり込む人間が眩しかったからだ。

 とは言え、それは彼の心中であり、レイン本人は流石に申し訳なさそうにしていた。

 

「ごめん、キリトくん。呼び出したのはこっちなのに、ろくに出迎えも出来なくて」

 

「……別に構わないよ。お陰で良い物も見れたし、大して待たされた訳でもないからな」

 

 キリトがそう言うと、レインはまだ少し罪悪感を感じているようだったが、いつまでもそうしては居られないので、やがて一言「ありがとう」と言葉にし頷いた。そんな彼女に、キリトは進んで自ら話題を持ちかけた。

 

「因みに、かなり集中してたようだったけど、いつからやってたんだ?」

 

「えっとぉ、最低でも昨日の夜からは……」

 

 これまたヘビーな回答にキリトは感嘆の息をもらした。

 昨日の夜からと言えば、恐らくはダンジョンで別れてその後からと言う事だ。当然のように徹夜で没頭し、気が済むまで試行し続けたのだろう。在りし日のキリトも同じような経験を何度もした事から、妙な親近感がわく。

 

「へぇ、いいね。自分の剣を作ってくれるかも知れない人が、そんなにこだわりの強い人なら、こっちも期待が高まるってもんだよ」

 

 あっけらかんとしたキリトの様子にレインは照れくさそうに顔を背けた。

 

「もう上手なんだから……お世辞なんて言っても何も出ないよ?」

 

「お世辞なもんか。率直な感想だ」

 

 感じる人たらしの片鱗にレインはため息を飲み込んだ。

 マイペースなのはお互い様かも知れないが、こうも裏表がない反応をされると逆に困る。普通は夜通し鉄を打ち続けるエルフなど、笑い種か忌避の対象でしかないのに、彼はそんなのはおくびにも出さず肯定以外を口にしない。

 その肯定も嘘や方便ではなく、本心だと分かってしまうから考え物だ。

 

「分かった。分かったから……その、ありがとう」

 

 こういう場合はさっさと感謝を伝えて流れを切った方がいい。

 持ち得る経験とコミュニケーション能力を駆使して、不要な押し問答で羞恥を覚える前にレインは会話の流れの修正へと打って出る。

 

「はい、この話はこれでお終い。さっさと本題に移るよ。要件は、昨日も話したオーダーメイドについてで良いんだよね?」

 

「ああ、それで間違いない」

 

 問いに首肯する。

 確認が取れたレインは一転して真面目な顔をした。

 

「じゃあ、そういう事で話を進めさせてもらうね。その上でまず前提として、製作依頼を受けるかどうかだけど、これは条件付きでオッケーしようかなって思ってる」

 

「条件?」

 

 その単語に若干緊張感を覚えたキリト。

 そんな彼の心中を知ってか知らずか、レインは極めて冷静かつ穏やかな口調でその内容を述べた。

 

「そう緊張しないで。条件と言っても、そう難しい事じゃないよ。それにこれを受けてくれたら、武器のお代はいらないし、出来る限り最高の剣を作ると約束する」

 

「……その気前の良さがかえって怖いんだけど」

 

 うまい話には裏がある。

 これは世の常であり、こと交渉の場においては基本中の基本だ。そんな彼の警戒が杞憂であると伝えられるのはレインの嘘偽りない言葉だけ。

 

「そうかもしれないけどね。まあ、聞いてくださいな。わたしの提示する条件は三つ。一つ目が、素材採取の手伝い。これは言葉の通り、武器を作るための素材を採りにいくクエストみたいなものかな。二つ目はその延長線上で、この素材採取をあなたとわたしの二人(・・)でやり遂げること。その過程で、わたしはあなたの戦い方や冒険者像を見極める。これを全部を達成して、わたしが納得出来たら、その報酬としてあなたに武器を作る」

 

 言われたことをキリトは思考の中で吟味する。

 レインの提示した条件は、一貫して椿の言った『レインの心情』と合致する。これらすべては、クエストのていを取った見定めの試練。これにおいて、彼女のお眼鏡に叶った者だけがその腕によって作り出される本物の名剣を手に出来る。

 文面のわりにシンプルな内容は、キリトにとっても願ったりなものだ。しかし、まだ明かされていない条件が一つ残っている。

 

「いいぜ、その二つは構わない。全体的にも見て、こっちにもメリットがちゃんとあるからな。見極めるでも何でも好きにしてくれ。それで、最後の一つは?」

 

 本質的には、三つあれば最後が一番重要な物だと相場が決まっている。

 先の二つに関しては別にそう難しい事でもないし、それでお代免除で武器が手に入るなら願ったりだ。

 問題は、この三つ目こそが『命を預けられる人にしか武器を渡さない』という彼女の信念に直結する事が、予想される事だ。切実な思いを前に、半端も適当も許されない。

 なにを言われても、キリトは誠心誠意答えるつもりでいる。

 だからこそ、覚悟を決めて彼女の言葉を待った。

 

 そんなキリトに、レインは一層真剣な声で告げる。

 

「もし、わたしがキリトの武器を作ることになったら……わたしを―――――真の意味で、あなたの専属鍛冶師にして欲しいの」

 




次回でレインのエピソードは最後になります
本当なら二話分で締める予定だったのですが、作者の悪い癖が出て長引いてしまいました

最後に放ったレインの言葉の意味は次回明らかになります
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