ルフィをモブ化させず、シナリオを進めるの結構大変
今、私は何を見せられているんだろう。
「ハンコック、これうめぇな!」
「はぁん! わらわの料理でルフィが笑顔に! それにわらわの名前を!」
宴会のような状態で、ルフィくんの横で事ある毎に可愛いリアクションしながら定期的に料理を甲斐甲斐しく持ってくるハンコック。
「なんか、姉様がごめんね」
「あ、いいのよマリーゴールド。それよりも怪我は平気?」
「ええ、
まるでサイヤ人みたいな回復力だな、なんて思いながら彼女が持ってきた料理に手をつける。
ちなみにお酒を持ってきてくれたけど未成年なので遠慮した。
初めてのお酒だから酔っ払ったら大変だしね。
「ましゃかあ
おでこを抑えながらため息を吐く小さなおばあちゃん。この人はにょん婆と言うらしくて、所謂この島の相談役みたいなものだという。
とりあえずこうなった経緯を振り返る。
まず、戦いを終えて舞台に残された私とルフィくんはハンコックの屋敷に連れていかれた。
誰も入ってこられないよう部屋の鍵を念入りに閉めたあと、ハンコックの身の上を聞いた。
彼女は天竜人と呼ばれる一種の権力者に奴隷として捕まっていた。その時に焼印として背中に消えない傷をおわされたそうだ。
それを知られたからと言ってこの島の人間が彼女らを蔑むとは思わないが、単純にそれを知られたくない、あの日の生活を思い出すようで怖くて辛いと本音を吐露した。
正直私は怒りを覚えた。
こんなに綺麗で可愛い人たちを奴隷のように扱う天竜人なんて人間、殴り飛ばしてやりたい。
「天竜人? あー! あの変な頭したムカつくやつか! もっとぶん殴ってやればよかったな!」
どうやらルフィくんは既に殴った後だったらしい。
ナイスルフィくん。
その後、ルフィくんとハンコックは何やら話をしていたけど何となく「聞くのは野暮」な感じがしたので少し距離を取っていたら、気づいた時には彼女はルフィに惚れていた。
何言ったのルフィくん。
そのあと暫ルフィ君はハンコックのラブラブアタックを受けてたけど、キリッと表情を取り戻して「お前たちは何者じゃ」と問いかけた。
「おれはルフィ、海賊王になる男だ!」
そんな自己紹介をした。
海賊の王……やっぱり聞き覚えがあるなぁ?
ハンコック、いちいち悶えないで。
「私はキーニ、異世界から来ました」
素直に答えたら三姉妹とルフィくんが不思議そうにした。
「どういう事じゃ? それは新世界のことを指すのか?」
「新世界? それはなんですか?」
「このグランドライン後半の海のことなのじゃが……それを知らんと見るとどうやら違うようじゃな」
「ええ、多分私の言う世界とあなたの言う世界は別だと思います。こちらの世界でこのようなことできる人はいますか?」
そう言って、手のひらから気弾を作り出し手見せる。
「なんだぁ!? ピカピカ光ってんぞ! お前、黄猿の仲間か!?」
「きざる? だれそれ、お猿さんにはまあ縁があるけど、私たちはサイヤ人だよ?」
「さいやじん? なんだそれ?」
ふたりそろって頭の上に沢山ハテナを出しながら首を傾げる。
「……すくなくともわらわは見たことがない。覇気……と似た性質を持っているようじゃが、知るものとは全く違う」
「ちなみにハンコックさんが知る覇気って?」
「こういう事じゃ」
そう言った瞬間、彼女の手が黒く変化した。
「なんだぁ!? 真っ黒になったぞ!? 痛くねぇのか!?」
さらっと、相手を心配するあたりいい子だよねルフィくん。あとハンコックさんも悶えてないで説明してください。
「覇気には三種類存在して、自身を鋼のように硬化させて攻守共に強化する武装色、知覚範囲を広げ更に極めると未来すら見通すとされる見聞色、最後に100万人に1人にしか持つものが居ないと言われる『王の資質』である覇王色」
聞けばマリーゴールドさんは武装色が得意で、サンダーソニアさんは見聞色が得意らしい。
あの時マリーゴールドさんの体がやたら固くなったり、攻撃が重くなったように感じたのはそのせいか。
「ちなみにあの戦いの最中にルフィが使っていたのは紛れもなく覇王色であった」
「なに!? そうなのか!?」
……たしかに物凄い衝撃を感じた。
瞬間的にはベジータさんが少し本気になったくらいの圧迫感で、割と本気で攻撃やりかけちゃった。
するとサンダーソニアが微笑みながら注意する。
「ただ、今のあなたは無自覚で奮ってるだけ。使いこなせていない覇王色は強い気迫と変わらないわ。まあそれでも、気の弱い子はそれだけでも気絶しちゃうけど」
うん、ベジータさんに睨まれたらそうなるね。
「じゃあ使い方を教えてくれよ! 使えるんだろ!?」
「悪いけど覇王色を持ってるのはハンコック姉様だけだから」
そう言うとハンコックに視線が集まる。しかし彼女も少しすまなそうに目を伏せる。
「すまないルフィ、教えてやりたいのは山々なんじゃがこの力を手ほどきを受けたわけではなく、生きる上で無我夢中で覚えていっただけなんじゃ。だからそれを教えるほどのノウハウは持ち合わておらんのじゃ」
「そんなー」
しょんぼりするルフィに慌ててハンコックが続ける。
「しかし武装色と見聞色であれば、きっかけくらいは出来るやもしれん! この島に住む戦士のほとんどは強弱あれど覇気を使いこなしておる。共に暮らせば可能じゃぞ!」
すごい、あの力をみんなも使えるのか。
でも『共に暮らす』のあたりでうっとりするのは辞めようかハンコック。
「うーん、でもおれ仲間に会いてぇんだよ。きっとみんなもシャボンディ諸島に戻るはずだしさ」
「そ、そうか……ではせめて宴と行こう!」
「宴?」
「この島においては強者は何よりも尊敬される。ルフィは男だがあの戦いで力を示した事で誰も文句は言わぬ。キーニも単独でマリーゴールドを下した手腕を認められておる。問題こそあったが、女ヶ島の皇帝であるわらわがゆるせば全て無罪じゃ!」
わお、何となく察していたけどやっぱりハンコックはここの女王だったんだね。
しかも女ヶ島って、女の人しかいない島なんだって。どうやって人口維持してるのかなって思ったら、彼女の海賊船に乗る子が一緒に旅をしていつの間にか妊娠して、船をおりて出産というのが通例なんだって。
つまり、やってること完全にアマゾネス。
外で男を捕まえて子を作って、結婚せずに帰ってきて子を産む。
うーん、なんともワイルド。
こうして宴が始まり、冒頭に至る。
ここでようやく知ったんだけど、ルフィくんの腕が伸びる理由が「ゴムゴムの実」っていう、悪魔の実を食べたせいらしくて彼の体はゴムみたいに伸びるゴム人間になってるんだって。
何それって思ったんだけど今横でむしゃむしゃ食べる彼の体型は漫画みたいに丸くなってて、食べる度に大きくなってる。
「そういうあなたもすごい食べるのに体型変わらないのね」
サンダーソニアがドン引きした顔でこちらを見る。
「サイヤ人は私くらいか、私以上に食べるからね」
「あなたみたいなのが部族単位でいたの? よく食糧難にならなかったわね……」
あはは、たしかにね。たぶん惑星ベジータの食糧事情が悪かったのってそれが原因じゃないかな。
食べすぎて農業が追いつかない、そもそも農業するくらいなら奪って食うの精神だったし。
そりゃ追いつかない。
それにしてもこちらの料理はシンプルなのに美味しい。
そりゃチチさんのご飯がいちばん美味しいけど、こちらはすごくシンプルなのに質がいいと言うか食べてて「肉!」って感じがして好き。
むしゃむしゃと食べて目の前の皿が次々と空になっても、女ヶ島のみなさんが「いい食べっぷり!」と褒めてオカワリをくれる。
なんだろう、パパたちには悪いけどもうちょっとここに居てもいいかなって思っちゃってる。
そんな時、ルフィくんから少し大きな驚きの声。
何事かとみるとなにやら切迫した空気。
話を聞くと彼の兄であるエースという海賊が海軍に捕まったという話だった。
さらにはその数日後には処刑が決まっていると言われた。
するとおもむろにルフィは麦わら帽子に隠してあった一枚の紙を取りだした……だが不思議なことにその紙はジリジリと動きながら、少しづつ燃えているのだ。
どういう事だと聞けばこの紙はビブルカードと言うらしく、特殊な製法で持ち主の遺伝子を紙に組み込むというもの。ルフィが持っているのはその紙の1部を切り取ったものだという。
その紙は常に大本である紙の遺伝子を組み込んだ人間、つまりルフィ君のお兄さんの元へ近づこうと少しづつ動く性質があり、これによりその人物の位置を把握できるという不思議な物。
だがもう1つ、性質が存在した。
それは「持ち主の命が尽きようとすると、燃えて最終的には無くなる」というもの 。
つまり彼の兄から貰ったこの紙が燃えて小さくなってるということは、死期が迫っているという証拠だった。
これには明るいルフィくんも顔つきを変える。
どうしたものかと悩んでいると、不意にハンコックが刑務所にまで連れてってくれるという。
なんでもハンコックは王下七武海という、政府公認の海賊だった。
内心、政府公認の海賊ってなんだって思わないでもないけど、今はその話はしないでおく。
そもそも、どうにもこの世界の海賊は私のいた世界とはちょっと認識が違う感じがする。
そのハンコックは理由は知らされてなかったけど、政府から召集命令を受けてたらしい。
たぶん、エースさんの公開処刑の為に呼ばれるのだと会話の流れで察した。
そこで、政府の召集先であるマリンフォードに向かう前にエースが収容されているというインペルダウンにルフィを送り届けてくれると言うのだ。
これを聞いて私はいくつかの考えが浮かんでいた。
まず、このまま二人を見送った場合。
パパたちがドラゴンボールで呼び戻してくれるまで過ごしつつ修行。正直これが一番楽だと思う。
ただ、その場合ルフィくんがその先で死んじゃったりお兄さんを助けて逃げれるのかそれは後のニュースで知るか、それともここで永遠にお別れになるのかのどちらかになる。
なんとなく、それは嫌だと感じた。
どうしても私は親しくなった人が困ってるのに放置するという考えが出てこない。
それにいざと言う時は心配性なパパが持たせてくれた秘密兵器が必要になるかもしれない。
それを考えると、協力してあげた方がいいと思えてきた。
「ルフィくん、私も行くよ」
「え!? いいのか!?」
「うん、せっかく友達になったのに、ここでお別れなんて寂しいじゃん」
「うはー! お前が仲間になってくれると心強いよ! ありがとう!」
そう言って抱きついてくる。
ちょっとやめて、ハンコックがすごい目でこっちみてるから。
私はルフィくんを引き剥がしたあと、ススッと彼女の横に寄って耳元で「恋のいろはを教えてあげる。ハンコックそういうの知らないでしょ?」と言うと、目を輝かせて「よろしく頼むのじゃ」と握手された。
ハンコックて身長高くてお姉さんって感じなんだけど、ルフィが絡むと年頃の女の子って感じになるから可愛いよね。
そのあと、漫画知識だけどルフィくんみたいな男の子を振り向かせる100の方法なる指導をしつつ夜を過ごした。
ルフィってあってまだ1日だけど、間違いなく恋愛に興味無い朴念仁タイプだよね。
だからハンコックが彼を射止めるには、普通の恋愛じゃ無理だから彼に合わせた付き合い方をしたらいいと思うんだよね。
そんなやり取りをしながら夜を明かしたのでした。
翌日、私たちはハンコックさんの協力を経て海軍の船でインペルダウンへと向かうことになった。
なんでも「召集を受ける代わりに、問題のエースという男の顔を見せろ」と交渉した結果受け入れられたそうだ。
ルフィくんはハンコックさんの服の下に隠れて潜入。ちょっとエッチだなって思ったけどふたりが気にしてないみたいだからいいや。
ちなみに私も一緒です。なんだろう、ハンコックっていい匂いするね。