LEVEL3に到達するとムワッとした熱が込み上げてきた。
なんだと思ったらこれがLEVEL3の飢餓地獄らしい。
なんで飢餓と熱が? と想ったらこの砂漠だと砂漠みたいに水が取れない上に、海底の個室の筈なのに太陽のような日照りがある。
そんな所じゃまともに食事もありつけない。
つまり脱水と飢えで苦しむのがここのスタンスらしい。
なんというか、やってる事が悪辣だよねぇ。
そりゃ犯罪者になるくらいだから相応の悪いことしてたんだろうけど、だからって取り締まる側も凶悪である必要は無いじゃん。
罰を与える事と、加虐する事は別のことだと私は思うなぁ。
なんだか、この世界の海軍があまり信じられなくなってきた。
あとブルゴリがついに追いかけて来なくなった。
ほかの看守も減ってる。Mr.3曰く「おそらく2人を連れてきた王下七武海の対応に人を割かれているんだろうだガネ。政府公認とはいえやはり海賊、最低限の警戒は必要だガネ」と答えた。
やっぱりこの人頭いいよね。
それなら一気に進もうと走るけど、その途中変な声が聞こえた。
チラッと覗くとそこにはしなやかな動きで蹴りや突きを放つ男性がいた。
掛け声が「アン・ドゥ・クルァ!」と面白いけど、その攻撃は明らかに武術。
こんな環境でも修行を怠らない姿勢に感服して……思わず声をかけた。
「すごい蹴りですね!」
「あん? なーによぅ! こんなところでアチシのプリマに惚れちゃったのーぅ!? ンガーハッハッハ!」
キャラが濃い!
多分この人オカマさんだ。
「しょうがないわねぇーい!」
なんて言いながら囚人服の姿でクルクル回る。動きはバレエなんだけど時折放たれる攻撃の鋭さが尋常じゃない。
蹴りだけで言えばクリリンさんにも匹敵するかもしれない。
あの人、地球人の中ではかなり強くて技も豊富、それでいて経験も凄いから下手すると私負けちゃうんだよね。
スーパーサイヤ人になればゴリ押しで勝てるけど、技じゃまだまだって思わされちゃう。
「あー!?」
するとルフィくんが驚きの声を上げる。
「麦ちゃーん!? こんなところで奇遇ねぇーい!」
「ボンちゃーん!」
2人とも仲良さそうに抱き合う。
ルフィくん誰とで仲良くなるなぁ。
するとMr.3が驚きながら「Mr.2!?」と驚いていた。
なんでも二人は同じ組織の仲間で、一度はルフィくんとも敵対したらしい。
ただ彼は男気というか、オカマ気溢れる人で「敵とはいえ友を見捨てたらオカマが廃る」と、とある理由で動けないルフィくん達の代わりに囮になって海軍に捕まったらしい。
名前はボン・クレーと言うらしく組織のボスを覗くと実質No.2。
ここにいる理由を聞かれ答えるうちにルフィくんのお兄さんが捕まってて、助けに来たと聞いて号泣。
多分義理人情に弱い人なんだろうね。
彼は自ら協力を申し出て、行動を共にしてくれることになった。
「それよりもアナタ随分と鍛えてるわねぃ」
併走する中、ボンちゃん(そう呼んで欲しいと言われた)に声をかけられる。
「分かります?」
「モチのロンよーぅ! アチシ、人を見る目あるの! ……アンタ、その気になればこのインペルダウンを壊すくらい出来るんじゃないの?」
「……まぁ」
「やらないってのは、手を抜いてるとかじゃなくここの囚人や看守を思ってのことよねぃ?」
すごいなぁ、あっさり見抜かれちゃった。
「好きにするといいわよーぅ! ただ、力の使い時は間違えちゃダメよーぅ!」
力の使い時……か。
確かに温存ばかりして取り返しのつかないことになるのはダメだ。
この世界にはドラゴンボールは無いんだ。死んだら二度と生き返らない。
本当に守りたいものを間違えたらダメだよね。
多分、私の中にある迷いをボンちゃんは見抜いたんだ。だから助言をしてくれてるんだと思う。
「ありがとう、すごく助かる」
「ンガーハッハッハ! いいのよーぅ! ダチが悩んでたら相談に乗るってのがアチシなのよーぅ!」
裏表ない素直な返事が嬉しくて思わず抱きついちゃった。
「ボンちゃん大好き!」
「あらあら! また人を魅了しちゃったわねーぃ! ンガーハッハッハ!」
走りながら騒いでるとバギーさんから「ちゃんと走らねぇかスットコドッコイ!」と怒られた。
うん、そうだった。今獄卒獣に追いかけられてるんでした。
しかもその中でも凶悪な4体に。
サイ、コアラ、ウシ、シマウマの
それをヒラヒラと避け、時には反撃をしながら話してたのです。
「でもこいつら倒してもすぐ復活するから面倒ねーぃ」
「
「後ろにいる女を黙らせりゃ少しは落ち着くんじゃねぇか?」
バギーさんの言葉にちらりと見ると、確かに背後でムチを振るう女の人が居た。
よく見ればルフィくんが殴り飛ばして気絶させても、ムチですぐ叩き起してる。
……あの人を倒せば少しは時間が稼げるかも?
「やってみる!」
ジャンプして空中に浮かぶ。
LEVEL3になったあたりから通路がやたらと広いおかげで舞空術も使えるようになった。
「飛んだのねーぃ!?」
「あのお嬢さん悪魔の実の能力者だったのカネ!?」
「空飛ぶ能力者といやぁ……金色のシキだったはずじゃねーのか!?」
なにやら声を上げる面白い3人組。
私は手のひらを上に向けて顔の前で構える。
「むむむっ……ふん!」
手のひらに現れたのは丸い気弾。
これは普通の気弾とは違って強い弾力性を持たせた物。
クリリンさんの気円斬もそうだけど、気は特化させると性質を変えることが出来る。
その分コントロールは難しくなるけど、修行のおかげでこれくらいは出来る。
「繰気弾!!」
放たれた気弾は真っ直ぐコアラの顔面を殴りつける。
手を動かすとそれに合わせて軌道を変えて今度は、シマウマの側頭部に直撃。
「操っているのカネ!?」
「なんて技だ!」
「ハッ! せやッ! たぁ!」
続けてサイとウシも昏倒。
最後に後ろにいる女性に向かって飛ばす。
「弱い人や一般人ならいざ知らず、戦える人でこちらに仕掛けてくるなら容赦しないよ!」
そう言って振り抜かれた腕に合わせて、彼女の胴体に繰気弾がめり込むと同時に炸裂。
ムチの女の人は壁に叩きつけられて気絶した。
「よし、次行こうか!」
振り返ると驚いた顔で固まるバギーさんとMr.3さん。ボンちゃんだけはクルクル回りながら「やるじゃないのよーう」と褒めてくれた。
ルフィくんは「俺にもそれできるかなぁ!?」とワクワク顔。
「……なあ、なんか揺れてねぇか?」
「え、そう?」
「言われてみればなんだか天井が高くなってるような……」
「心做しか暑くなってきてるのだガネ……ロウ人間の私にはキツいのだガネ……」
「うわ、Mr.3溶けてない!?」
「ばっきゃろう! そんなことよりよく見ろ、天井が高くなってるんじゃねぇ、俺たちが落ちてんだよ!」
どうやら、戦いの衝撃でもろくなってた足場が崩れてしまったみたいだ。
「どうすんだ! このままじゃLEVEL4の灼熱地獄に真っ逆さまだぞ! 正規ルート以外はまともに歩けねえ、炎の海だってのに!」
仕方がない、ここで力を温存するのはみんなが危ないね。
ルフィくんやボンちゃんはともかく残りのふたりが危ない。
落下していく中で、私は力を込めようとした……だけどそれよりも前に思わぬ妨害が入った。
「貴様ら、随分と好き勝手してくれたようだな」
「!?」
振り返るとそこには真っ黒な巨体の、悪魔みたいな男がたっていた。
「なんだぁこいつ!?」
「げぇ!」
「そんな!」
バギーさん達が青ざめる。
今も尚落下する足場なんて気にもならないくらいの様子で、ボンちゃんが叫ぶ。
「インペルダウン所長……マゼラン!」
マゼランと呼ばれた男はちらりと私とルフィくんを見て目を細める。
「脱獄を測るやつらは幾度となく居たが、まさか自ら地獄に入ろうとするバカは初めてだ。モンキー・D・ルフィ」
「うるせえ、俺はエースを助けに来たんだ!」
「エース……ああ、最近黒ひげによって捉えられた火拳のエースか。やつのためにわざわざご苦労なことだ。だがその苦労もっ子で終わる、貴様らはここで処刑だ!」
巨体から予想できないくらいの速度で拳が放たれる。
「黙ってやられるか! ゴムゴムのォ……」
「ダメよ麦ちゃん!!」
構えて殴りかかろうとした次の瞬間、ぼんちゃんがルフィくんに飛びかかった。
そのおかげでマゼランの攻撃は空を切る。
「む……」
「なにすんだよボンちゃん!」
「ダメなのよぅ! アイツには攻撃は通用しないのよう!」
「やって見なきゃわかんねぇだろ!」
「分かるわよぅ! あいつは、ドクドクの実を食べた、全身毒人間なのよぅ! 触ったら毒で麦ちゃんがやられちゃう!」
見たことないくらいにボンちゃんが慌てて逃げるようにルフィくんを諭す。
流石にボンちゃんの剣幕を見てただ事ではないと察したルフィくんは歯がゆそうにマゼランを睨む。
「だからって、逃げ場なんてないだろ!」
「それでも、それでもダメなのよぅ!」
あまりにもマゼランを恐れてる。たぶん、捕まってる間に随分と心を折られたみたいだ。
「貴様らが戦わずとも、こちらから行くぞ!」
今度はバギーやMr.3に向かって仕掛け始めた。
その拳は紫色の液体を滲ませていて、明らかにやばい毒だとわかる。
「ぎゃーー! こっちにきたー!」
「ひぃぃぃーー!」
慌てる二人の前に飛び出る。
「む!?」
「キーニ!?」
「逃げるのよぅ!」
それを前に私は構えを取る。
「か……め……は……め……波ァーーーーー!!!」
手から放たれた巨大な気功波をぶつける。
「ーー!? む、おぉぉぉぉぉーーー!?」
受け止めたマゼランがそのまま押され壁の中に消える。
ぽかんと惚けるみんなに振り返って叫ぶ。
「逃げるよ! まだ倒せてない!」
そう言うとルフィくん達は頷いて走り出す。
私はバギーさんの足とMr.3の首根っこを持って空を飛び滑空する。
ボンちゃんは器用に壁を蹴って降りてくる。
降り立った所は左右を拷問器具と炎に包まれた一本道だった。
「ここは……どっちが下に向かう道!?」
「わからんガネ……本来の道で来なかったせいで方向感覚なんてもう役に立たんガネ……」
熱でヘロヘロになったMr.3が答える。
「……とりあえず、ここは私が食い止めるからルフィくんは先に行って!」
「何言ってんだよキーニ!」
「さっきの技見たでしょ!? 私なら手を触れずに戦う手段はいくつかあるけどルフィくんはないでしょ!?」
「だけどよ……」
仲間を置いていくことに強い拒否感を見せる。
多分元の仲間と離れ離れになったせいで軽いトラウマになってるのかもしれない。
だけど説得する時間すらくれないようだ。
「
紫の毒液が私たちの前に降り注ぐ。それは崩れることなく円柱のままを維持していて、その中をマゼランが滑るように泳いできた。
「……先程の一撃はなかなか効いた。貴様何者だ」
警戒心を顕に睨みつけてくるマゼランの目には油断や隙もなく、こちらを完全に敵として認めていた。
「私はキーニ、戦闘力民族サイヤ人ラディッツの娘よ!」
「サイヤ人……? 聞いたことがないな、どこかの非加盟国の種族か? ……まぁいい、こうして海賊共にインペルダウンに攻撃を仕掛けてきたのだ。貴様を危険人物として捕え、法の裁きを受けさせてやる!」
こうしてマゼランとの戦いが本格的に始まろうとしていた。
前話から1年経ってたっていうね?
反省します