今更始まる摩訶不思議アドベンチャー   作:ただのトーリ

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インペルダウン2

 

 真っ先に動いたのはマゼラン。

 

 

 

 奴はバギーさんやMr.3を狙わずルフィくんを狙い始めた。

「うわっ!?」

 

 毒と聞いていた為か、いつもより大袈裟に避けて飛び退く。

 対してボンちゃんや他の2人は離れたところで様子を伺ってる。

 戦いに巻き込まれないだけ助かる!

 

 

 それよりも戦いが始まった以上今更手を引くのは難しそうだ。なら腹を括って共闘した方がいいかな。

 

 意を決してルフィくんに語りかける。

 

「ルフィくんはなんでもいいからマゼランの気を逸らして! 私が何とかして決める!」

「わかった!」

 そう言うと、彼は拳を振り上げ壁を殴り壊し始めた。

 ……! なるほどそういうことか!

 

「いくよマゼラン!」

 私が叫ぶの視線がルフィくんから私へと向かう。

 両手を顔の前で広げる

 

「何を……」

「太陽拳!!」

 

 その瞬間、フラッシュバンにも似た激しい光がマゼランの視覚を奪った。

「ぐおぉ! 目が、見えん!!」

 

 一時的な物とわかっているのでルフィくんに合図を送ると、こちらの意図を理解した様子で行動に移り始める。

 

「ゴムゴムのォ! パチンコ!!」

 

 彼は自分のゴムという性質を利用して砕けた岩をマゼランへと飛ばし始めた。

 

「ぬぐぅ! 小癪なっ」

 目が見えなければ避けようもない。

 腕でガードする彼の前に音もなく接近して懐で気を貯める。

 本来なら戦闘中に使えるほど気を素早く貯めれないけど、目が見えない今がチャンス。

 

「む、しまっーー」

 気がついたみたいだけどもうおそいっ!

「爆力魔波!!」

 

 手のひらを突き出すと、指向性を持った爆発にも似た気の炸裂がマゼランを襲う。

 

「がはっ!」

 

 再び大きく仰け反るが、すぐに反撃に転じてきた。

 

 

 それを事前に察知した私は余裕を持って下がる。

 

 

 

「な、なんだよ行けそうじゃねぇか!」

「がんばるんだガネ!」

 

 後ろでバギーさんたちが応援してくれるのが嬉しいけど、なんとなくマゼランからはあまり油断出来ない雰囲気を感じる。

 

 

毒ガス弾(クロロボール)

 

 突然、口から紫の液体を弾丸のように吐き出してきた。

 それを気弾で撃ち落としすが、驚くことにその攻撃は終わらなかった。

 

 はじけ飛んだ毒弾からは濃いきりのようなものが立ち上がり、気がつけば通路を徐々に埋めつくし始める。

 

 その時感じたのはツンとした刺激臭。

 

「!? ……ごほごほ! くしゅん、くしゅん!!」

 

 襲ってきたのは目と鼻の痛み、さらに耐えられないくしゃみ。

「これは、ごほ、まさか!!」

「そうだ、催涙弾だ!」

 

 なんてことだ、まさか悪魔の実ってそんなことも出来るの!?

 地下の海底空間だから壁を壊して換気もできない。

 密室空間でなんてことをするのこの人!!

 

 

 まともに動けなくなった私にマゼランは、注意深く距離を取りつつ構えを摂る。

 

「貴様は危険だ。一歩間違えば世界を壊しかねん程にな! 今ここで確実に貴様を処罰する! ーー毒竜(ヒドラ)!!」

 

 両肩から毒液で構成された龍の首が生えてくる。

 それはまさしく命を持った竜のような、そんな動き。

 

 その片方が私目掛けて迫ってくる。

 やばい……! 思うように動けない!

 

 目の痛みとくしゃみで意識が乱れる。

 食らうか、覚悟しかけた次の瞬間横に体が引っ張られた。

 

「あぶねぇ!」

「……ルフィくん!」

「大丈夫か!」

 

 彼が助けてくれたみたいだ。

 でもよく見ればルフィくんも毒を僅かに浴びていた。どうやらもう一本の毒竜は彼を襲っていたらしい。

 彼一人なら避けきれたかもしれないのに、私を助けたせいで被弾してしまったらしい。

 

 

「ありがとう、でもごめん……ちょっと毒、くらっちゃった……」

「そんな!」

 

 ルフィくんのおかげで直撃は避けれたけど、右腕が僅かに毒液に飲み込まれてしまっていた。

 

 その箇所からズキズキとした痛みが走り出して、体が思うように動かなくなりつつある。

 

 気合出て何とか立って構えを取るけど、かなり苦しい。

 

「……本来であればかすった時点で身動きが取れなくなるのだがな……貴様と言いその男と言い、驚かされるばかりだ」

 

「キーニ」

「なに、ルフィくん」

「本気で暴れるぞ。ここで勝てなきゃ、エースに会えねぇんだ」

「……わかった」

 

 

 そう答えると彼は腰を深く落とし、右拳を地面に突きつけた状態で俯いた。

 

「ギア……(セカンド)!」

 

 直後、ルフィくんの身体が赤く変色して、おびただしい煙が上がる。

 私にはわかる……彼の戦闘力が何倍にも大きく膨れ上がったのを感じた。

 これは……界王拳!? いや違う、まさかルフィくん擬似的とはいえ界王拳を自力であみ出したというの!?

 

「ゴムゴムの……JETピストル!」

 音速を超えた重い一撃がマゼランの腹部を叩く。

 恐ろしい技だ。界王拳をして強化された打撃をゴムの伸縮性を伴って遠距離から打たれるのだ。

 

 戦いにおいて間合いはかなり重要だ。それも互いに実力が拮抗しているのであれば尚のこと。

 

 マゼランにしてみれば突然殴り飛ばされたようにしか感じないだろう。

 

「痛ぇ!!」

 ただ毒液に自ら触れる行為なので彼も傷つく。

 彼はこの自爆にも似た攻撃も、覚悟の上で行っているのだ。

 それを見て私は自分の覚悟の甘さを痛感していた。

 

 

 私はずっと心のどこかで「別世界のこと」だとか「帰る時のこと」を考えていた。

 だけど、ルフィくんやボンちゃんたちは今まさにこの世界で、必死に生きているんだ。

 私一人だけ力の温存とか気にしてる場合ではないんだ。

 毒のせいで全力は難しいかもしれないけどそれがなんだって言うのだ! 私はラディッツ(パパ)の娘なんだ! この程度の限界なんて超えてやる! 

 

 

「……はぁぁぁぁぁぁ!!! たぁ!!」

 気合と共に気を覚醒させる。

 体を覆う金色のオーラと、髪色が黄金へと変化する。

 

 ……スパークは無し、ということは2ですらないか。やっぱり毒の影響は大きいみたいだ。

 

「なんだ、それは」

 

 マゼランが目を見開いてこちらを凝視する。

 ルフィくんは毒で辛いはずなのに目を輝かせて「かっけーー!」と大興奮。君そういうのはあとにしなさい。

 

 

「行くよマゼラン、今の私はさっきまでより100倍強いよ!」

 間合いを一気に詰めて拳を放つ。

「ぐおぉ!?」

 殴りつけた衝撃だけで肩から伸びていた毒の竜が爆ぜる。

 大きく距離が空き、ルフィくんの隣に降りる。

 

「キーニ!」

「ルフィくん、やるよ!」

「おう!」

 

 

 

 最初に動いたのはルフィくん。

 彼は何倍にも上がった速度でマゼランに肉薄すると、両手を伸ばした掌底でその腹部を打ち付けた。

「JET、バズーカァ!」

 

 追撃するように私も肉弾戦で迫る。

 毒を避けるなら気功波の方がいいんだけど、猛毒を食らっちゃったなら短期決戦で肉弾戦の方が強い。

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

 ひるんだその顔に拳と蹴りを連打する。

 

 痛い! やっぱり毒を浴びる事にダメージが増えてるのを感じる。

 しかも殴る度に毒液が飛び散って体にまで付着する。

 

 ……でも、間違いなくダメージはこっちの方が聞いてる!

 

 たぶん、悪魔の実の能力者はみんな体が普通の人間の何倍も丈夫になってるんだ。

 サイヤ人ほどとは行かないけど、最低でもピッコロさんや天津飯さんたちレベルだ。

 

 

 

 攻撃を繰り返し、時には気弾で注意を引き付けてる間にルフィくんの強力な連打が叩き込まれる。

 

「JETガトリング!!」

「ぬおおおおお!!」

 

 徐々に押しているように感じるが、まだまだ倒せる気配は無い。むしろこちらの消耗の方が早い!

 

 ちらっと視線をボンちゃんに向ける。

 すると彼は私の視線の意味に気がついて、涙を浮かべながら首を振る。

 口パクで「おねがい」と言うと、彼は涙を流しながらMr.3とバギーさんを無理やり抱えて走り出す。

 

「おいてめぇ、どこに行きやがる!?」

「いやこれでいいんだガネ!」

「ああん!?」

「我々がここに居ては足手まといになのだガネ! ならば我々がいない方が彼らも存分に力を振るえるというものだガネ!」

「ぐ……」

 

 悔しげに言葉を飲み込むバギーさん。

 Mr.3はわたしをちらっと見て「これでよかったかね」と口だけを動かした。

 

 何も答えずに目を細めると、彼らはルフィくんが壊した壁の隙間から別の場所へと退避した。

 

 

 

 何とか逃げる時間を稼いだ私たちだったが、やはりマゼランとの相性は最悪だった。

 徐々に追い詰められて行き、私たちも力を出せなくなっていく。

 

 

「舐めるなぁ! 毒竜(ヒドラ)ァ!」

 

 攻撃を舞空術で回避するけど、ルフィくんは回避が遅れてそれをもろに受けてしまった。

「ぐああああああ!!」

「ルフィくん!」

「よそ見とは余裕だな!」

「しまっーー」

 

 

 私の最後の光景は大きく口を開けた毒竜の顎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 逃走したボン・クレーと二人は物陰に隠れて頭を抱えていた。

 

「ごめんなさい麦ちゃん……キーニちゃん……」

 頭を抱えるボン・クレーに対しMr.3は冷静だった。

 

「さて、これからどうするんだガネ」

「どうって……そりゃあ」

 

 

 バギーはその言葉の先が出ない。

 普段の彼ならば奴らのことなど知らんと我が身可愛さに逃げ出していただろうが、なぜか脳裏にキーニの自らを慕うような笑顔が頭から離れない。

 

 しばらくの沈黙の後、戦いの継続を感じさせていた揺れが無くなった。

 

 ……しかし、一向にルフィとキーニのふたりは追ってこない。

 それが何を意味するのか、分からない彼らではなかった。

 

 

 不意に、ボン・クレーが立ち上がる。

「どうするんだガネ」

「あちし、あの二人を見捨てたの」

「……それはあのお嬢さんの意思でもあったはずだガネ」

「それでも! あちしは残れたはずなのよぅ! でも、逃げろって言われた時……あちしホッとしちゃったのよぅ!」

 

 その言葉に二人は俯く。

 あの状況で戦線を離れられるとなった時、心のどこかで安心や喜びを感じていないとはいえなかった。

 誰だって命は惜しい。

 死にたくないから脱獄してるわけだから当然の感情だ。

 

 しかし、ボン・クレーはその心を心底恥じているようだった。

 

「なにがオカマ(ウェイ)よ! ダチを見捨てて食う明日の飯がそんなにうめぇかよ! 覚悟決めろやボン・クレー!」

 

 自分の顔を何度も叩いて鼓舞する。

 

「な、何を……」

 

 彼は立ち上がり、背を向ける。

 それは逃走のための背中ではなく、友を救う闘争のための背中だった。

 

「あんた達がこの後どうしようと指図する気は無いわ。でももし少しでもあの子たちのことを気にかける心があるなら、あんた達にしかできない事をやって欲しいのよぅ」

 

「俺たちにしかできない事……」

「そんなことがあるのカネ……」

 

 考え込む二人に「じゃあ、生きてたらまた会いましょ」と短く別れを告げてかけ出すボン・クレー。

 

 それを見送ったバギーとMr.3の二人に沈黙が流れる。

 

 

「……自慢じゃねえが、俺ァLEVEL4より下を生きていける実力があるとは到底思えねぇ」

「同感だガネ」

「上に登るぞ」

「ーー!? それは……」

「あのクソ麦わらも、キーニの奴もそう簡単にくたばるタマじゃねぇ。あのオカマが行ったんだ、必ず昇ってくるに決まってる。その時に少しでも楽になるように、俺たちで上をド派手に盛り上げてやろうじゃねぇか!」

「……ふふ、面白い提案だガネ! LEVEL4となれば一億手前の犯罪者がゴロゴロいるはずだガネ! 奴らを房から出して恩を売って配下に加えるのも一興だガネ!!!」

「おうよ!! バギー様とMr.3の超ド派手脱獄大作戦の決行だァ!!!」

 

 二人はボン・クレーとは真逆のルートを走り出す。

 それは逃走の背中ではなかった。

 後を追って来る仲間を信じての逃走ルートを守るための、より困難な闘争への道だった。

 

 




バギー大好きなんすよ
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