今更始まる摩訶不思議アドベンチャー   作:ただのトーリ

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インペルダウン3

 

 

 場所は変わってインペルダウンLEVEL5。

 

 極寒地獄。

 

 海底とは思えないその空間はまるで北極のような雪原地帯。さらに病むことの無いブリザード。

 海軍ウルフと呼ばれる獰猛で統率の取れた猛獣が常に徘徊しているエリアである。

 

 そこを一人の男がボロボロな姿で歩いていた。

 

「寒いわねぃ……」

 

 その姿は副所長であるが、顔はボン・クレーである。

 

 彼の能力であるマネマネの実のは他人の顔に成り代わるというものだった。

 偶然ひとりで行動していた副所長であるハンニャバルを見かけ、不意を打って気絶させマネたのだ。

 ちなみに服までも真似る事は出来ないので現在のハンニャバルはふんどし一丁で気絶中である。

 

 

(大丈夫……キーニちゃんと麦ちゃんの体力ならいくらマゼランの毒でも直ぐに死んだりはしない。……となれば危険を考慮して何処かに拘留するはず。そうなるとあの二人の実力を鑑みればLEVEL4じゃまだ不安が残るし、LEVEL6だと麦ちゃんの兄貴がいる階層で何かの間違いで邂逅する危険性を考慮して避ける……となればこのレベル5がいちばん濃厚!)

 

 その手には牢屋の鍵が握られており、一つ一つの牢が設置されたエリアを回っていた。

 

 なんどもいうが猛吹雪のエリア、そこを彼は一人あるいている。

 しかも運悪く防寒具も手に入れられていない為、刻一刻とその体温を奪われながら。

 しかも……。

 

「くっ……また来たわねぃ!」

 複数の足音、このエリアに放し飼いにされている海軍オオカミの群れである。

 1匹1匹の戦闘力もそこそこ高く、少数であればボン・クレーのオカマ拳法で蹴散らすことも可能だが、襲ってくる時は大抵軍となって群れるのが海軍オオカミの特徴。

 しかも野生のオオカミとは異なり、統率取れた波状攻撃などをしかけてくる当たりまさしく海軍であった。

 

 

「これで八回目……あと何回打ちのめせまいいのよぅ! ……ぐあ!」

 

 鋭い牙が足に噛み付く。

 直ぐに殴り飛ばして解放するが、噛まれたところがじくじくと痛む。

「じゃますんじゃねぇ! あちしは、あの子たちを助けに行かにゃいけねぇんだよっ!!」

 

 普段のおかま口調すら乱れさせ、ボン・クレーは吠える。

 彼は今心身ともに燃えていた。

 その体の体温を奪う極寒にも負けない熱意で、愛する友を救わんとその体の限界を超えようとしていた。

 

(思えば、キーニちゃんも不思議な子だったわ。あの子の強さは多分私なんかよりはるかに上……下手をしたら麦ちゃん以上。だけどどこか甘い。その辺を遊んでる子供がそのまま戦いの技術だけを学んだような子。さいやじん、とか言ってたけど……あの子の種族じゃあれが普通なのかしら。

 でもそんなことはどうでもいい! あちしはキーニちゃんのダチで姉貴で兄貴なのよぅ! そんなあちしがあの子を見捨てる訳には行かないのよぅ!)

 

 血を流しながら、必死に歩を進めると1つの牢を見つける。

 見つけた。

 毒にまみれた姿で寝転がされ、今もなお苦しむダチの姿。

 

「麦ちゃん!! キーニちゃん!! (だず)げに()だ! 友情の名のもどに!!!」

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 目が覚めると、そこは薄暗い洞窟の中だった。

 意識を失うまで感じてた全身を襲う痛みや熱は無くなっていて、疲労感もない。

 

「ここは……?」

「あら、目覚めたのね?」

「え?」

 

 声がして振り返るとそこには壁みたいな顔があった。

 

「うわぁ!?」

「んー、本当に回復してるっチャブル。与太話と思ったけどあれ本当だったのね」

 でかい顔で、キツイ化粧をした人が興味深そうに取り出したのは私の少ない手荷物のひとつだった。

 

「あ! 仙豆!!」

 悪ブウに一度やられちゃってから過保護が加速したパパが数年おきにくれる私の秘密兵器。心配性なパパが「何かあったら大変だから」とカリン様からのお仕事をやるわかりに貰ってくる。

 

 そういえば意識を失う直前、救助に来てくれたボンちゃんに託した気がする。

 

 

「これ仙豆っていうのね。ボンボーイがヴァナタが意識を失う前にこれを託したって言うけど正直ヴァタシとしては半信半疑だったわ」

 

 やたらと口調の個性が強いひとだなぁ。

 

「えっと、助けてくれたってことですよね? ありがとうございます」

「ノンノン! ヴァタシがやったのはきっかけを与える、だ・け! あんたが勝手に助かったブルよラッキーガール。それと礼を言うなら、あんたらが苦しんでるあいだボロボロな体で寝ずに応援し続けたボンボーイに言ってやりなさいな」

 

 そう言って視線を向けると、隣ベッドで横たわるボンちゃんがいた。

 

「え!? なんでこんな怪我を!?」

「落ち着きなッキャブル! この不思議豆でほとんど完治してるわ! ただ精神的に疲れが溜まってて眠ってるだけッチャブル!!」

 

 そう聞いてホッと息をついた。

 

「取り乱してすみませんでした。あの、お名前を聞いても?」

「あら、ヴァナタヴァタシを知らなっギャブルね? ヴァタシの名はエンポリオ・イワンコフ、このインペルダウンLEVEL5・5の女王よ!!」

 

 LEVEL5・5? どういうことだろう。

 

 聞いてみると、ここはLEVEL6とLEVEL5の境目にある床の隙間をくり抜いて作った場所で、海軍も把握出来ていない場所だという。

 ここには多数の脱獄犯が居て、外の情報も海軍の通信を盗聴して大雑把にだが獲ているそうだ。

 

「ヴァナタ達が何のためにこのインペルダウンへはるばるやってきたかは知らないけど、ここなら安心よ。ほとぼり冷めるまでここにいるといいわ」

 

「そういう訳には……」

 と言いかけた瞬間、ドタドタと病室に駆け込んでくる気配が近づいてきた。

「キーニ目が覚めたってほんとか!?」

 駆け込んできたのは包帯こそしているけど、かなりピンピンしてるルフィくんだった。

 

「ルフィくん!」

「おー! 無事だったかぁ! よかったぁ!」

 抱きついてくる彼は「あっはっは!」と笑いながら体をバシバシやってくる。

「大人しくしなっちゃブル! 元死人手前だつってんだろうがバッギャブルがァ!」

 

 とイワンコフさんの鋭い蹴りで吹き飛ぶルフィくん。

 

 それをくらってもケロッとして起き上がる彼はなかなかに大物だ。

 

「お前のくれた不思議豆のおかげで助かったんだってな。ありがとう!」

 

 どうやらルフィくんも仙豆の効果で危険を脱したようだ。

 

「今回の施術代として二つだけ貰っちゃブル。いいわね?」

「ええ、かまいません。あと三つあれば十分です」

「ちなみに製法を聞いてもいいかしら?」

「すみません、これ貰い物で私も知らないんです」

 

 そう答えると予想していたらしくあまり落胆せずに「ま、そんなこったろうと思ったブルよ」と切り替える。

 

 

 ちなみにどんな治療をしたのかと聞いたら、イワンコフさんはホルホルの実を食べたホルモン人間らしく、その力で私たちの生命力を前借りするような形で抵抗力を上げて毒に打ち勝たせてくれたらしい。

 命を削るような行為らしいけど、そうでもしなきゃ死んでいたのだから文句は無い。

 

 復活後、普通なら失ったエネルギーを取り戻すために大量の食事が必要だったはずなんだけど、ボンちゃんに託していた仙豆を食べさせた途端体の傷という傷が全て完治。睡眠状態になったという。

 まあ、それでもルフィくんは私より少し早く起きてご飯食べてたらしい。

 常人の胃袋なら10日分の満腹感を得られるはずなんだけどなぁ。

 

 ちなみに仙豆をツマミ感覚で食べるヤジロベーにパパが「娘の命を救うかもしれん大事な仙豆バカバカ食いやがって、ぶっ殺してやる!」と追い払ってからヤジロベーはカリン様のところに近寄れないらしい。

 

 最後に見た時、ちょっと痩せてて誰か分からなかった。

 

 

「よっと」

 

 立ち上がる私を見てイワンコフさんが僅かに眉を寄せる。

 いくら治ったとはいえ、仙豆を信じきれない彼女(?)にとっては絶対安静していて欲しいのだろう。

 

「ちょっと体の調子を確かめたいので、どこか運動出来る場所ありますか?」

 そう言うと、ルフィも「俺も!」と言い出す。

 

「全く仕方がないわね、あんた達! この子たちを訓練場に連れて行ってやりなさいな!」

 

 そう言って案内に出てきてくれたのはなんとも言えない格好のお姉さんお兄さんおじさん。

 バニー服をきた強面おじさんとかどういうことって思ったら、この場所ニューカマーランドって名乗ってるらしく、みんな見た目通りの性別じゃないんだって。

 

 だから服装と性別が一致しなくても当たり前。

 だからみんな男女関係なく笑いあってる。

 

 うん、カオスだけど楽しそうなのはいいことだ。

 

 ちなみに目の前にいるバニーおじさんは元女性で、女の人が好きな自分に違和感を感じてたらしいけどここに来て「本当に自分になれた」と喜んでいた。

 

 

 

 

 

 訓練所は結構丈夫に作られていて、多少暴れてももんだ無い程度には強化されていた。

 

「ここならちょっと組み手しても問題なさそうだね」

「おう」

「手伝ってもらっていい?」

「まかせとけ!」

 

 

 そこからルフィくんと気弾や能力を使わないシンプルな手合せをした。

 

 

 結果として分かったことだけど、サイヤ人としての特性が働いたらしく私の戦闘力がまた上がっているのを感じた。

 悟空さんやベジータさん達はスーパーサイヤ人になれるようになった時点で特性は発動せず、自己研鑽でしか戦闘力は上がらなくなる。

 

 だけど悟天くんトランクスくん、そして私みたいな子供組は生まれながらスーパーサイヤ人になる素養を持って生まれてきたせいか、変身可能になった今でも成長の余剰があるらしくて特性が消えていない。

 

 まあ、死にかけること自体が稀だから関係ないかもしれないけど。

 

 

 ただ驚いたのはルフィくんもサイヤ人特製みたいに強くなってた。

 どういうことなんだろう? 彼は普通の人間……いや、ゴムだから普通じゃないけど……それでもサイヤ人では無いはずなんだけど?

 もしかして食べた悪魔の実にそういう効果でもあるのかな?

 

 

 

 

「ふう……」

 組手を終えると、ルフィくんは座り込みながら笑った。

 

「うははは! やっぱお前強いなー! 全然攻撃が当たらねぇや!」

「そういうルフィくんも凄いよ。反射神経だけでこっちの攻撃を避けてるし、なによりその体質だけでもかなり厄介」

「まあな! でも伸ばさない戦いは久々だから楽しかった! またやろうな!」

「うん、全部が終わったら是非!」

 

 

 そんな会話をしてるとイワンコフさんが呆れた様子でため息をついた。

 

「ヴァナタたちが助かった理由何となくわかる気がするわ。まったく人間(ヴぁな)した体力ね。さっきまで死にかけていたヤツとは到底思えナッキャブル」

 

「でもおかげで戦えるってわかりました。LEVEL6も目の前ですし、あとはエースくんも助けて脱出するだけです」

「まったく、簡単に言っちゃブルね。このインペルダウンが何故不落要塞と呼ばれているのか分かっているの?」

「知らねぇ!」

 

 即答するルフィくん。

「あのねぇ、ここには多くの犯罪者……それこそ億越えの大犯罪者が収監されている。それでも尚ここから出られない。マゼランの力は間違いなくインペルダウンにおいて最強なのよ!」

「でも俺はエースを助けてぇんだ!」

「エース……たしか白ひげの部下だったブルね。それがあなたのお兄さんなの?」

「そうだ! 俺はエースを助けてぇんだよ! なあ、イワちゃん手伝ってくれよ!」

「黙ッチャブル!」

 ルフィくんのお願いを一喝するイワンコフさん。

 

 

「ヴァタシは"まだ"脱獄する時じゃなっシブル。「海軍」と「白ひげ海賊団」を中心に世界が大きく動こうとしているけど"あの男"はまだ動かない。

 世界中の革命家達の"黒幕"、ヴァターシの同胞・・・・"革命家ドラゴン"!!

 彼が軍を率いて動き出す時、ヴァターシは再びシャバへ飛び出し、世界の流れに身を投じる。今むやみに脱獄しても、シャバで大きく手配されるだっけャブル」

 

 この人そんなすごい人の仲間だったんだ。

 

「ああ、俺の父ちゃんか」

 

「そうあなたの父ちゃん……父ちゃん!?」

 

 綺麗な二度見。

 

「っていうかルフィくんのお父さんドラゴンっていうんだね。あたしもねドラゴンボールで助けられたことあるから縁がありそう」

「え!? お前父ちゃんに助けられたことあんのか!?」

「あいや、ドラゴンぼー……」

 訂正しようとしたら大きな顔が間に入ってきた。アフロに埋まる……!

 

「まっちゃブル! ヴァナタ、父親がドラゴンってほんと!?」

 

「ああそうだぞ? ……あ、やべ、これ言っちゃダメなやつだった」

 

 まあ、革命家って聞こえはいいけどテロリストだったり反社会組織だもんね。今の社会が良いものかは別として。

 

 するとイワンコフさんはルフィくんに出身地を聞いたりした後「辻褄は合う」とか「麦わらボーイが息子なら兄のエースも!?」だとか言い出してる。

 

 たしかに、ルフィくんが革命家の代表の息子ならそのお兄さんであるエースさんもその息子ってことになる。

 

 

「あれ、これ……かなりマズいんじゃ?」

 

 私の言葉にぎゅるん、って音がしそうなほど振り向いた。

「まずいなんてもんじゃなっシャブル!! もし処刑なんて行われようものなら、白ひげと革命軍、そして世界政府との大戦争になるわ!」

 

 世界情勢は詳しくないけど何となくわかる。

 イワンコフさんの中で予想しうる最悪のケースへと今まさに刻一刻と進んでいるのだ。

 

 

「こうなったらヴァタシたちが全力でサポートするから、ヴァナタたちは全力でお兄さんを助けなさい!」

「手伝ってくれんのか!?」

「いい麦わらボーイ! あなたは何がなんでも救出するのよ!? もしそれが失敗したら最悪の場合、世界を巻き込んだ戦争になって戦火は多くの町を焼くことになる!」

「お、おう!」

 

「さぁ! 準備をおしっ! ここからは行くも地獄帰るも地獄の山場の山場! 共に行く者は死を覚悟しな!」

 

 その掛け声と共にみな一斉に動き出した。

 ちょうどそのタイミングでボンちゃんも目を覚まし、共に行くと誓ってくれた。

 

 

 




イワンコフの言葉遣い慣れないと大変
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