異界冒険譚シリーズ 【セシル編】-始まりと終わり-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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エピローグ

アリスちゃん、エリカさん、ニナ、リリィ……そしてリヴィ。

 

ヴェルクモント王国の人たち。

 

スタンロイツ帝国の人たち。

 

聖国の人たち。

 

多くの人達と別れ、ヤマトへ逃げて来た過去をミラさんに話し、私は深いため息を吐いた。

 

あれからどれだけの時が流れたのだろうか。

 

その膨大な時間を全て思い出すことは出来ないが、あの時の事だけは今でも鮮明に思い出す事が出来る。

 

愚かな私の、罪深き日々の事は……。

 

「結局、私がかの国へ行ってしまった事が全ての原因。最初から一人で生きていけば良かった……いえ、あの月の夜に」

 

「セシル様!」

 

「っ」

 

「私は、世界の全てに意味があると考えています!」

 

「……はい」

 

「だから、結果として、セシル様が深い悲しみの中に沈んだとしても!」

 

「……」

 

「セシル様が、大切な思い出と共にここに居る。そして私に伝えて下さった。その事に意味があると考えます」

 

ミラさんの言葉に私は、頭を揺さぶられる様な感覚を覚えた。

 

リヴィ達と出会う前、この世界に来る前の世界で……私は彼女を見た。

 

ミラ・ジェリン・メイラーという少女を、私は知っている。

 

「……そうか」

 

「そう。私はリヴィアナ姫様の書庫で……!」

 

「ミラさん」

 

「は、はい!?」

 

「私は私のやるべき事を思い出しました」

 

「え? いや、あの、ヴェルクモント王国の書庫は」

 

「その件はまた今度、全てが落ち着いたらにしましょうか」

 

「……分かりました」

 

「では申し訳ございませんが、私は一度城に戻りますので、ミラさんは祭りをゆっくり楽しんでいってくださいね」

 

 

 

何故か落ち込んでしまったミラさんをそのままに、私はフソウの城へ上りc巫女の部屋に向かう。

 

そして、頼子が残した書を開いてそこに書かれた予言に目を通した。

 

『異界より失われた巫女と共に来た少年が、止まっていた時間を動かす』

 

『だが、少年が現れた事により、世界は闇に覆われ、多くの悲しみと絶望が世界に来るだろう』

 

『だが、大いなる光が集えば、再び世界に光は戻る』

 

「……やっぱり」

 

私は予言の書を引き出しに戻し、外を見るべく露台から下を見下ろす。

 

夜の闇の中、篝火を焚き、多くの者達が楽しそうに笑いながら、騒いでいた。

 

『私は、世界の全てに意味があると考えています!』

 

そして、先ほど聞いたミラさんの言葉を思い出しながら私は小さく息を吐いた。

 

これまで失ってきた多くの命を想い……悲しみに涙を流し。

 

これから守る事の出来る多くの命に……喜びの涙をこぼした。

 

「……私がこの世界に生まれてきた意味は、これだったんですね」

 

遠く、遥かな昔に消えてしまった大切な人達への想いを抱きしめて、私は笑う。

 

「リヴィ。私もようやくあなた達の所へ行く事が出来そうです。向こうで会えたら、また褒めて貰えますか……?」

 

遠い空の向こうを見ながら、私は服を握りしめて、止まらない涙を畳の上に落とし続けるのだった。

 

 

 

それから、幾分か落ち着いた私は木で出来た手すりに寄りかかりながらフソウ全体に広がっている祭りを見て、昔を思い出しながら笑っていた。

 

私やレーニがこの国へ来たばかりの頃は、まだ国も荒れていて殺伐としていた。

 

しかし、私の癒しとレーニの魔術と、頼子の力で少しずつ国を整えていったのだ。

 

そして、フソウの街が綺麗に整えられた記念に、祭りを開いたのが始まりだったな……。

 

「セシル」

 

「……レーニ。どうしたの?」

 

「どうしたの? じゃない。一人でフラフラと動き回るな」

 

「ごめん。ちょっと調べたい事があってね」

 

「調べたい事……?」

 

「そう」

 

私はセオストがある方の空へ視線を移しながら、笑う。

 

「これから本編が始まるんだよ」

 

「本編? 何のことだ」

 

「ふふっ、レーニには分からないかもね」

 

「人間の事は私には分からん」

 

「人間のこと……というよりは私の事情だよ。レーニ」

 

「……」

 

「多分、私しか知らない事だ」

 

そう。

 

これから異界冒険譚が始まる。

 

かつての私が、待ち望んでいた本編が。

 

マリエルを救う物語を終え、明かされなかった様々な謎を解き明かす為の本編が始まるんだ。

 

その兆しは、もうこの国に居る。

 

ミラ・ジェリン・メイラー。

 

オーロ。

 

天霧瞬。

 

そして、多くの侍たちと、レーニ、頼子。楓……桜。

 

「……ふふっ」

 

「セシル?」

 

「レーニ。私はね。本当に異物なんだよ。彼の物語に、セシルなんて女は居ない。本来、この世界の聖女はミラさんだけなんだ」

 

「何を言ってるんだ。セシル。酒でも飲んで酔っているのか?」

 

「私は何もおかしくなっていないよ。レーニ。これは世界の真実だ」

 

「……セシル」

 

「私は生まれるべきじゃ無かったかもしれない。けれど、私が生まれた事で、可能性が生まれた。私が生まれた意味はあったんだよ」

 

レーニから視線を外し、彼が来るであろう外の世界を見る。

 

「全てはセオストで始まる」

 

「それは予言か?」

 

「ううん。私は予言者じゃないよレーニ。未来だって見えない。でも、これは決まってる事なんだよ」

 

「そうか」

 

「うん……だから、レーニにはまた動いてもらいたいんだ。転移の魔術はレーニしか使えないからね」

 

「……それがセシルの願いに繋がるのか?」

 

「うん。それにアメリアさんの願いにも繋がる」

 

「そうか。分かった。ならいつでも言ってくれ。私は何処へでも行こう」

 

「ありがとう。レーニ」

 

私は微笑みながら、レーニに礼を言って、目を伏せた。

 

 

 

翌日。

 

私はやや疲れているミラさん達を呼び、楓ちゃんと共に彼らの今後について聞く事にした。

 

「俺達は闇神教って連中を追うつもりだ。放っておけば何をするか分からん連中だからな」

 

「そうですか」

 

「そうか! なら、忍衆に集めてもらおう! わらわも未来を視れば……」

 

「いえ。情報を集めるのなら、セオストへ行った方が良いでしょう。あの場所には多くの情報が集まりますからね」

 

「え!? セシル様!?」

 

「楓ちゃん。貴女の未来視はまだ未熟で、自ら視たい未来を選ぶことは出来ないでしょう?」

 

「そ、それは、そうですけど」

 

「であれば、何か視えた時に伝える方がより効率的です。忍衆だって、世界中飛び回り続けるのは大変ですからね」

 

「……はい」

 

私はすっかり落ち込んでしまった楓ちゃんを抱き寄せて、その背中を撫でる。

 

「巫女様……俺は」

 

「瞬くん」

 

「っ! はい」

 

「どれほど先の事になるか分かりませんが、今後、私と楓ちゃんがセオストへ行く可能性があります」

 

「なっ!? セシル!?」

 

「セシル様! それは……!」

 

「本当ですか? セシル様」

 

「えぇ。可能性としては非常に高いと思います。ですから、セオストで私たちが滞在しても問題ない拠点を確保していただきたいです。出来ますか? 天霧瞬」

 

「お任せください! 『島風』と『如月』に誓います。必ずや任務を果たしてみせます!」

 

「……瞬」

 

「では頼みます。でも無理はしないで下さいね。後で宗介くんや和葉ちゃんも送るつもりですから」

 

「承知いたしました」

 

私は瞬くんと楓ちゃんを納得させつつ、ミラさん達がセオストへ向かうのを見送ろうとしていたのだが、レーニが騒ぎ始める。

 

「おい! セシル! 私は聞いてないぞ」

 

「まぁ言ってませんからね」

 

「私は反対だ! 瞬! 余計な事はしなくて良いからな!! 宗介と和葉にも言っておくからな!!」

 

「私はレーニを抑えておきますので、後はお願いします」

 

「おい! セシル!」

 

「では、瞬くん。オーロさん……そして、ミラさん。この世界の未来は任せましたよ」

 

「セシル! 私は!」

 

私はそのまま騒ぎ続けているレーニの背中を押して、部屋から出て行った。

 

後は楓ちゃんが上手くやるだろう。

 

まだ子供ではあるが、頭の良い子だ。

 

「ここから始めましょう。私の最期の戦いを」

 

「おい!! セシル!」

 

……まったく締まらないな。

 

「はいはい。向こうでゆっくりと話しましょうね」

 

私はレーニを押しながら、これから来るであろう波乱の未来に想いを向かわせるのだった。

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