ヒーロー名『ソウブレイズ』 作:火のペテン師
『個性』と呼ばれる異能力が、全人類の八割に蔓延り、それを他者を傷つける為に使用する『ヴィラン』と、そのヴィランへの対処能力を持つ者達『ヒーロー』が存在する、まるで大昔のアメコミのような超人社会。
もはや街中で派手な能力を持つヴィランが暴れ、それを退治するヒーローが持て囃され、それかいつしか日常になり……幾年の月日がたっただろうか?
人々は、今日もその少し変わった世界を、何の気なしに過ごしていく……その営みの中で、生まれる命もある。
ある所に、双子の赤子が生まれた……その二人は生まれつき人間とは思えない、ある種のモンスターとも呼べる見た目をしていたのだ。
赤と黒の体色に、木炭の兜の様な頭部に、燃え上がるような灯火を持つ双子、両者共に全く同じ形の人とは異なる姿――即ち異形型――の個性と言う、中々に珍しい例であった。
両者の違いと言えば――姉の方の瞳は赤く、弟の瞳は青かった位の物だ。
両親は、二人の名前をそんな瞳にならって、姉を『
個性名は……木炭っぽい見た目から『カルボウ』となった。正直、実在の動物とは懸け離れすぎてもはやそんな半ばヤケクソみたいな名前をつけるしかなかった。
そんなちょっと特殊な二人の子を、多忙でありながらも、二人の両親は大切に育てたと言う。
そんな二人は、すくすくと毎日を過ごし、すくすくと育っていった。
「ソウ!ソウ!やっぱヒーローって格好良いね!」
「……そうだね、グレン。」
「あ、今のってソウと掛けてるの?上手いなぁ〜!」
「そうじゃないよ、グレン。」
「今のも!」
「はぁ……」
二人はテレビに映るヒーローの姿を見てそんな会話をしていた……テレビに映るのは、日本が世界に誇るNO1ヒーロー、オールマイト、その活躍の一端を収めたムービーだ。
暑苦しくハイテンションで語っているグレンに対して、ソウは見ていて楽しいのか楽しくないんだか分からない感じだ……まぁ、その実を言えばバリバリに楽しんでいるのだが、グレンの熱気が凄くて逆に引いてる形だ。
「私さ!絶対将来はヒーローになるよ!」
「……なれるんじゃないかな、グレンなら。」
ソウはそんな在り来りな返答をする……正直、グレンなら本当になれるだろうな、と言うのがソウの本音でもある。
理由の一つに、グレンは、ソウとは炎の出力が段違いだ。
ソウの最大出力が『ひのこ』やちょっとした『ほのおのうず』だとしたら、グレンの最大出力は『ふんえん』……いや、『だいもんじ』並みだ。
炎の細かな扱いならまだソウの方が上とも言えるが、それもいつ越えられるかはわからない。
周りからは、頭も運動神経も良い才女で快活なグレンの性格も相まって、注目や期待をされるのは常にグレンだ……反対に、ソウはそんなグレンと比較されまくった。
――姉はあんなに凄いのに――
――姉と違って陰気臭い――
――姉の影に隠れた腰巾着――
さて、どの言葉をどの程度言われたのだろうか?ソウももはや覚えるのも怠くなってきた……両親も、何方かと言えばグレンの方に期待しているのは言葉にせずとも分かった。
決してそれはグレンに対してソウの扱いが雑だとか、そう言う事では断じて無くて……言葉の節々に、明らかにソウがグレンよりも劣っていると示唆するような言葉が入るのだ。
例えば、実はソウの炎はグレンに全くダメージを与えられない、むしろその力を高める事になるのだが……グレンの炎はどんな小さなものでもソウにダメージを与えることができる。
喧嘩した時とか、ソウの炎ではダメージが通らず、方が一方的に燃やされるのなんて何度あった事か、その度に親はこんな風に仲裁する。
――グレン、ソウに乱暴しちゃ駄目でしょ!――
――ソウが可愛そうだろ?ヒーローになりたいなら、辞めて上げなさい!――
……可愛そう?暴力を振るったのは
グレンも素直だから、両親の言葉を受け取ると素直に頭を下げる。
「ごめんね……ソウ、手加減したつもりなんだけど……」
「いいよ、グレン。俺の方こそごめん。」
手加減していたつもり……何処まで言っても自分はグレンには勝てないと、改めて叩きつけられた気がした。
グレンも努力していたが、ソウも努力していなかった訳では無い。寧ろ、客観的に見ればソウの方が努力はしていたと言えるだろう。
なのに、グレンとの差は広がるばかり……ソウは、心の中で醜い嫉妬の炎が渦巻くのを感じていた。
――流石だな!グレン!ソウも良くやった!――
――二人とも自慢の子供ね!――
こんななんてこと無い両親の言葉にも、裏と劣等感を感じてしまう自分が心の底から嫌になる。だけど、怨嗟や渇望と言うのは一度生まれると中々取れる事がないものだ。
優劣があるのは当たり前、それは真理だ。
あぁ、しかし何故だろう……優秀な姉が何故だかとても恨めしい、妬ましい……そんな事を思う自分もまた同じ様に恨めしい。
だが……どうしても嫌いになれない。グレンはいつだってソウを大事にしてくれた、両親もそうだ。そんな三人をどうやったらそんな下らないエゴで嫌いになれるものか。
だが、何故だか心は晴れぬまま……ソウは自分の人生をゆったりと生きていくのだった。
そんな二人の人生が、決定的に変わるようになったのは……二人が中学生になりたてのある日のことだった。
コイン等といった骨董品収集クセのある父がとある物を家へと運んできた事から始まる。それは、黄色と黒色の鎧だった。
「まぁっ?どうしたのそれ?」
「知り合いから物々交換してね。」
「えぇ……でも、家に置き場所なんて無いでしょ?」
「僕の部屋にまだ使ってない置き場がある、そこを使うよ。」
「う〜ん、まぁ大金叩いて買った訳じゃないならいいけれど……」
そんな両親の声が聞こえて、ソウとグレンが自室から顔を出す。すると、グレンは目を輝かせて、その鎧達へと駆け寄る……ソウも、グレン程ではないが、はしゃいだ様子でその後ろを追いかけた。
「わ、わぁ!?なにこれなにこれ!?」
「ちょっとした骨董品でな……何となく気に入って持って帰ってしまった!」
「父さん……」
そんな父が持ってきた鎧が、数々の戦で武功を挙げた戦士の証とされる『イワイノヨロイ』と、呪の感情が込められた『ノロイノヨロイ』である事は、この時代に伝わることはなかった。
そしてそれが、個性と言う異能が生みでた現在……とんでもない力を秘めた広ものであることも、この時点では誰も知られていない。
ソウとグレンは、そんな二つの鎧を見つめる……何故だろうか、今ここで初めてみた鎧なのに……何故だかとても、親近感を感じる……まるで、かつてから自分の一部だった様な気が……
二人は、思わずその鎧に手を伸ばす……グレンは黄色の『イワイノヨロイ』に、ソウは黒色の『ノロイノヨロイ』に手を伸ばし……その手先が少し触れた。
次の瞬間、部屋を黄金と漆黒の輝きが一瞬包む……それは、まるで待っていたと言わんばかりの勢いだ……その光は、やがて一つの塊に収束される様に吸い込まれて消える。
そして、その光の中か現れたのは……黄色の鎧を纏い、紅の炎を揺らすグレン。
そして、青い瞳から紅い瞳へと変化し、黒色の鎧を纏い、青い炎を揺らめかせ、腕が小剣の様になってしまったソウ。
前の二人とは似ているが、明らかに違う姿、その代わり様は変身などといったものでは表せない……進化だ。進化と言う他ない。
両親は、そんな二人の姿を見て腰を抜かす。
「お、お前達!?どうしたんだその姿!?……あれっ!?鎧は!?」
「と、兎に角病院!病院に行きましょう!」
両親二人が変わり果てた様子のグレンとソウに対してあたふたとしている間……グレンはぴょんぴょんと飛び跳ねて、なんだか喜んでいた。
「うおっ!凄い凄い!何これ何これ!?」
「……!?……!?……!?」
ソウは反対に自分の身に起きたあまりにも非科学的な現象に驚いて、もはや言葉すら発せない状況だ。そもそも、手が無い。さっきまであった手が無くなっているではないか!?
……あれ、これ不味くないか?事実上の欠損ではなかろうか!?
と言うか何故鎧に触れただけで鎧が消えて身体が変化する!?呪いか!?(当たらずとも遠からず)これ治るのか!?
次々と頭に襲って来る異常事態に、ソウはもはやパンク寸前だ……逆に、グレンの受け入れ方が可笑しいのだ。
大抵のことは「そういう事もある」で受け流す両親がさっきからバタバタしながら何処かに連絡をかけている。ソウはさらにグレンが怖くなった。
この後、ソウとグレンな色んな病院をたらい回しにされることになるのだが……当然と言うか、原因不明……その一点張りの様な状況だ……と言うか、殆ど誰にも信じてもらえなかった。
正直、こんなのを見せられて説明されて、どう納得してどう処置すれば良いのか、信じられるものか……仮に信じられたとしても、そんなのはもう医者の領分じゃない。学者の仕事だ。
ソウもグレンも両親も、落ち着けば(でしょうね。)としか感想がわかなかった……こんなの持ち込まれても医者はどうにも出来ない。
幸い身体機能には何も影響は無い至っての健康体、それだけ分かれば御の字であろうか……いや、ソウは事実上の手の欠損の為に健康体ではないのだが、まぁ体内的な意味では問題ないらしい。
父は泣きじゃくりながら二人に只管に謝罪した、自宅ではもはや土下座にも等しい勢いで……
「すまなかった!父さんがあんなにを持ってきたばっかりに……二人を……二人をぉ!!!」
「あなた……」
「父さんは悪くないよ!それに、私は結構気に入ってるよこの姿!」
「……正直、こんな事態予測しろって方が無理だと思う。」
グレンもソウも、その姿になったことを大層驚きも困惑もしたが、父を恨むことはなかった……流石にここまで超常的すぎると、もはや予測も対処も不可能だ。仕方がない、そんな気持ちのほうが勝ってしまう。
あぁ……しかし、手のあるグレンは兎も角、それすらなくなり訳のわからない剣になったソウは……どうしようかと、只管に悩むことになるのだった。
個性『カルボウ』
本作の主人公、少し陰気で卑屈な所があるが、根っこは結構な負けず嫌い。ノロイノヨロイに触れたら何故か手がなくなって剣になった。解せぬ。
個性『カルボウ』
ソウの姉……双子だから姉も弟もほぼ何もないのだが、当人が面倒見が良いのと才女な性で皆からは姉と見られている。根っこは結構ネガティブ。イワイノヨロイに触れたら正当進化した。やったね。