ヒーロー名『ソウブレイズ』   作:火のペテン師

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プロロローグ その2

 

 ソウとグレンが奇っ怪な姿に進化してから暫くして……二人はこの姿に早くも順応していた。真っ当に変化したグレンは、学校では本物のヒーローみたいだと羨望の眼差しで見られていた。

 

 それは見た目だけではなく、肩についた鎧を合体して砲塔にする事で、炎の攻撃の威力をさらに高める事が出来るようになった派手さも関係しているのだろう。

 

 もともとグレンがヒーロー志望であると広く知られていたのも相まって、学校ではグレンはどんどんと持ち上げられていった。

 

 

 逆にソウは……中二病に目覚めたのかと言われた。まぁ見た目はまんま中学生が好きそうな闇落ち騎士みたいなので無理もないが……色も変わっているし。

 

 まぁ、他にも色々大変だ。腕が剣と言う歩く銃刀法違反になってしまった。

 

 しかしこのソウの剣、実は結構汎用性の利く代物で、刃部分は炎の様な特殊なエネルギーで作られており、その形状は変幻自在だ。

 

 戦闘面においては、鉤爪状にしてクロー攻撃したり、日常では炎を手のようにして細かな作業もすることができる。圧倒的不便なのは間違いない。

 

「……はぁ。」

 

 この日、ソウは校舎から少し離れた所で昼飯を取ろうとしていた……教室にいると、姉の事を聞いてきたりする輩が多い。

 

 そんなの自分じゃなくてグレン本人に聞けとソウは何度も思ったことか……無論、姉の凄い所、立派な所は幾らでも羅列できる。

 

 だがその度にそんな姉よりも劣る自分に、妬む自分に嫌気が差す……立派で、太陽みたいで、周りに人が沢山居て……自分とは真反対な姉が、羨ましくてしようがない。

 

「あー……クッソ……」

 

――お前の姉貴さすげぇよな!明るくて優しくてさ!よかったら今度電話番号教えて――

 

――ソウのお姉ちゃんってさ、頭いいよね!この間も学年上位だったし!――

 

――お姉ちゃんはすごいね、運動でも何でもできる!――

 

――グレンってこの間、街で子供に絡んでた不良追い払ったらしいよ!――

 

――えぇすごっ!ヒーローみたいじゃん!――

 

 

 

 

 

――それで、ソウは何ができるの?――

 

 

「ッッッ!!!」

 

 ふと、脳裏によぎったその一言に怒り……ソウは腕の剣を振るってしまう。まるで実に絡みつく何かを振り払おうとするようにも見えた。

 

「だぁッ!……駄目だな。変な事ばかり考えてしまう。」

 

 自分には何ができるのか……何をどれほど考えても、答えなんか出てこない。

 

 力も、頭脳も、性格も、炎も、何をもっても姉のほうが上……オマケに、ソウは誰かの手をつかめるような腕すらも、剣となって失ってしまった。

 

「……俺は何ができるんだろうな。」

 

 姉と比べられてきた人生、もう自分が何に優れているのか、ソウには全く分からなくなっていた。何をどう頑張っても姉の方が上……努力を絶やした事は無いが、それでも幾年経っても姉との差は縮まらない。

 

 考えても考えても答えは出やしない……ソウは肩を落としながら、猫背で歩く……すると、不意に建物の影から、グレンの姿がその目に入る……何人かと話している様子だ。

 

(……グレン?)

 

 てっきり教室で友人と昼食をとっていると思っていたのだが……ソウがそんな事を考えると、グレンと女子達の会話が耳に入る。

 

「グレン、あんたさ、最近調子に乗ってるでしょ?異形型のクセに!」

「そーそー、イメチェンがなんか知らないけど、かっこつけちゃってさ。」

 

 女子数人でグレンを囲い、罵詈雑言を浴びせる……調子に乗るな、生意気、いい子ぶるな、異形型のクセに……よほど、グレンが気に食わないのだろう。グレンも、何故だか全くもって反応を返さない……ただ。俯くだけだ。

 

「……黙ってんじゃないわよ、いつもあんなにおしゃべりなクセに。」

「いつもそうよね、あんた。普段はあんなに威勢いいのにさぁ!」

 

 ……流石にソウも観てはいられずに、足音を立てながら物陰から現れて、ゆっくりとグレンの元へと歩みだす……それを見て、グレンは心底驚いた表情を上げる。

 

「え、ソウ!?」

「っ!ちっ……」

 

 女子達はソウの姿を見るやいなや、顔を隠しながらその場を去ってしまう……小心者な奴らだ。いや、そうじゃなければ態々こんな所まできて暴言を浴びせるというしょぼい真似はしないか。

 

 ソウは冷めた瞳で逃げる女子達を見据えると、今度はグレンの方に顔を見せる。

 

「え、えっとぉ……何処から……」

「……グレン、何時からだ?」

「えっ?」

「何時からさせれてた?」

 

 ソウの真剣な表情と言葉遣いに観念したのか、グレンは数度言うのを渋りながらもポロポロと語りだす。

 

「え、えっとぉ……昔から偶に、ね?ま、まぁよくある事でしょ!」

「……俺は、何で今まで黙ってたって話をしてるんだが?」

 

要するに、ソウと同じ様にグレンに嫉妬した人間がするのだろう。よくもそこまで堕ちれる物だとソウは逆に感心まで覚える。

 

 だが、グレンもグレンだ。そりゃあ虐められているなんて話、普通は家族にはそう簡単にできる話ではないだろう……ソウも分かっている、分かっていても問いたださずには居られなかったのだ。

 

「え、えぇ?心配かけたくないし……ソウとか絶対気にするじゃん?下手に巻き込んでソウに何かあったら大変だし……」

 

 ……まだグレンの中では、ソウは守られるべき存在なのか。双子のはずなのに、対等にはなれないのか?心の中がぐちゃぐちゃに掻き乱されるのを感じる。

 

「……昔からね!なんか私が気に食わなくて突っかかってくる子達が多いんだよね!いやぁ私の不徳の致す所で……」

 

 不徳とか、グレンに問題があるとか、そういうことじゃない……眩しすぎる光は、只管に鬱陶しいだけなんだ。ソウも、グレンにちょっかいをかける者達の気持ちはわからなくはない。

 

 グレンは眩しい、あまりにも……だから、どうしようもなく羨ましくて、妬ましくなってしまうのだ。

 

「あーっと……母さん達には言わないで……ね?」

「……。」

 

 昔から、と言うからには小学生の頃から度々起っていたのだろうか?その度に相談せず一人で抱え込んで。

 

――そんなに自分は信頼できないのか!?――

 

 ソウは思わず叫びたくなった言葉を喉の奥に押し込む……すると、グレンがポツリと一言こぼした。

 

「ソウはさ、重圧に潰された時ってある?」

「……無いな。」

 

 期待された事は一切無かったからな。

 そんな事を思いながら、ソウは呟くと、グレンは少しずつ語りだした。

 

「なんと言うか……プレッシャーって言うのかな?皆私の事に期待してくれてる……それは嬉しいけど……けどその期待に応えられなかった時、私はどうなるんだろうって。何でもできて凄いねって言われて……皆私のことを持ち上げて……それで、私が何もできなかった時、一体どんな風に()()()()のかなって……それが怖い。」

 

 グレンは、何処までも誰かの期待を理想像を壊してしまうのが嫌だったのだろう……もしかしたら、虐めの件をソウや両親に一切話さなかったのは、それが原因なのかもしれない。

 

 『人気者で太陽のように眩しいグレン』ソウが持つその理想像を壊したくなかったのかもしれない。それが賢い決断なのかは別にして……物事一つ一つに完全完璧最適の答えを出せる人間なんて居やしないのだから。

 

「グレン……」

「……あっ……何言ってるんだろうね私!ちょっとネガティブになっちゃってるかなぁ?」

 

 そう言ってグレンは、またいつもと変わらない屈託のない笑顔をソウへと向ける……ソウは言葉一つ出すことができずに、グレンを見つめるだけだ……言葉が出てこない、()()()()()もないと思う。

 

 何故かと言われれば、ソウだって結局上辺だけのグレンしか知らなかったのだから……

 

 グレンの周りに集る者達と同じで、グレンの輝く部分にばかり目を向けて、その影を一切知ることがなかった。知ろうともしてなかった。

 

 人間、そんなできたもんじゃないのは当たり前なのに……グレンは違うと、いつの間にか彼女を『人間』の枠組みから外してしまっていたのだ。それが、本人にとってどれだけ苦痛になるのかも知らずに。

 

(……やっぱり、まだまだだな、俺。)

 

 何故だろう、ここまで来ると怨嗟の感情も溶けていくのをソウは感じていた。変わりに、自分への不甲斐なさが重くなっていく。

 

 グレンはこんなにも苦しんでいたのに、押しつぶされそうになっていたのに、自分は外野からごちゃごちゃと理屈立てて嫉妬して……あぁ、馬鹿らしい。

 

「……グレン、教室戻ろうか?」

「そうだね!」

 

 グレンはそう言って、何処か軽快な足取りで歩き始める。ソウは、そんなグレンの後ろをゆっくりだが、しっかりとした足取りで歩き始める。

 

 何処までも先を行き、たった一人で、憧れや期待や嫉妬だけを背にして進むグレン……まだ、ソウはその背中に一切届いちゃいない。

 

 今までは、半ばその背中に届かないと諦めていた節させあった。だけど、何故だろう今は……意地でもその背中に追いつきたいと思えるようになった。

 

 このままだと、グレンがとてつもない遠くにあって、その遠くの場所で一人になってしまうような気がして。

 

(グレンだけをそんな所に行かせてたまるか。)

 

 そう思えば、少しは前向きに進める気がした……諦めかけてた『夢』だが、俄然に火がついた。

 

 きっとグレンは、ヒーローとしてたくさんの人を救おうとしているのだろう……ならば、ソウはそんなグレンを助けるヒーローになろう。

 

――ヒーローを助けるヒーロー――

 

 驕った夢かもしれないが……悪くないかもしれない……まずは、前を行くその背中に追いつくことが最優先なのだが。

 

 グレンは、ソウの方を振り返って笑顔で手を振る。

 

「?ソウ!早く行こ!次の授業始まるよ!」

「……うん。わかってる、直ぐに追いつくよ、グレン。」

 

 あぁ、必ずだ。必ず追いついてみせる。時間は掛からせない……必ずその背中に追いついて、少しでもグレンの力になれるように頑張るから。

 

 だから、待っててくれとも、見ていてくれとも言わない……そのまま、真っ直ぐ進んでくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この2年後――ヒーロー養成学校のトップである、私立雄英高校に、とある双子が学籍を入れる事になる。

 

 それは、やがて『ソウブレイズ』と『グレンアルマ』と言うヒーローを生み出す始まりとなるのは……まだ、誰もしらない話だ。

 

 

 

 




ソウ:グレン大好きシスコン、であると同時に心の底からグレンをライバル視してる面倒くさい人。

グレン:所謂個体値6Vで勉強から運動から家事から何までできて性格も普通に良い子。弱点がないのが弱点とか言われるタイプ。
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