蓮ノ空依存日誌   作:ぽぽろ

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一年生組はまだあんま自信ないので、解釈違いの所があったらすみません。
蓮ノ空の恋愛でもヤンデレでもいいから沢山欲しい



3ページ目 安養寺姫芽

「せんぱい〜、疲れました〜」

 

今日のダンスの練習が終わり、僕の肩にもたれ掛かる様にしているのは、スクールアイドルクラブの1年生、僕の後輩の安養寺姫芽。

 

「お疲れ様、タオルとドリンクあるよ」

「せんぱい、タオルで汗拭いて下さい〜」

「そのくらいは自分でやりなよ」

 

僕は彼女に渡す。彼女は汗を拭き、ドリンクを喉を鳴らしながら飲んだ。

 

安養寺姫芽という後輩は、どこか不思議な存在だ。

スクールアイドルクラブに所属する彼女は、明るくて、人懐っこいイメージだった。

けれど、その距離感は他の後輩たちとは少し違う。

まるで僕に絡みつく糸の様にさえ思えた。

 

安養寺姫芽は僕に対してだけ、ほんの少し近いのだ。

 

練習後にこうして甘えてくるのも日常的なことだし、部活中もふとした瞬間に視線を感じる。

学校では休みの事に2年生の僕の教室へやってきて、ゲームの話で盛り上がり、また教室へ戻る。といった状態だった。

 

僕は、手持ち無沙汰から周りを眺めてみる。

すると、ルリと慈さんの2人と目が合い、2人は僕に向けて軽く手を振られる。

僕も答えるように手を振ると2人とも嬉しそうに、はにかむように微笑んだ

 

「せんぱいもるりちゃんせんぱいとかめぐちゃんせんぱいが推しですか〜?」

「まあ、推しというか3人のパフォーマンスって見てて元気になるよ」

 

僕がそう答えると、姫芽ちゃんはほんの少し頬を膨らませ、狼の真似をするように爪を立てながら冗談めかして言った。

 

「私は同担拒否なので〜、誰にも渡しませんよ、ガルルルって感じです。」

 

彼女の言葉と仕草に、僕たちは笑い合った。

しかし、その笑顔の奥に何かが通り過ぎる確信めいた物を僕はこの時気づけていなかった。

姫芽ちゃんは2人を軽く一瞥し、僕の方に笑顔で向き直る。

 

「せんぱい、今日は私の部屋でゲームしません?」

「姫芽ちゃんの部屋で?」

 

何度か他の人の部屋には入ったことはあるけれど、それはあくまで用事があって、短時間で済ませている。

ただでさえ僕はこの学校でたった一人の男子。

目立つ僕の恋バナなどの伝達スピードは、きっと光速を超える。

それで変な噂を立てられるのは、スクールアイドルとして頑張っている彼女達の足を引っ張ってしまう感じがして、嫌だった。

 

「いーじゃないですか〜。たまにはオフライン対戦しましょうよ、今日は格ゲーがやりたいので、回線のせいにされちゃうかもしれないですし〜」

「僕が負けるってこと?」

 

ゲーマーとして、煽られたら煽られっぱなしじゃ居られない。かの邪智暴虐な少女、安養寺姫芽をボコボコにしなければならない。

 

「いいよ、姫芽ちゃんの部屋ね、何時からにしようか」

「おっ、やっぱ乗ってきましたね〜、お菓子とかジュースは沢山準備してますので。楽しみにしてま〜す♡」

 

###

 

僕の愛用のコントローラーと一応お菓子とジュースを持って彼女の部屋に向かう。

ノックをすると、直ぐにドアが開いて中に入れてくれた。

カチリと音を立てて扉が閉まる。

 

「売られた喧嘩を買いに来たよ」

「負けすぎてセンパイ泣かないようにしてくださいね」

 

僕は持ってきたドリンクをしまうべく、彼女に許可を貰って冷蔵庫を開く。

中は飲み物やお菓子で沢山詰まっており、それ以外にも水やジュース、お菓子が沢山箱で置かれている。これだけで1年間過ごせてしまいそうなくらいの量だった。

 

「凄いお菓子とかの量だね」

「近くにコンビニとかないので、行くのが面倒で箱買いしちゃうんですよね〜」

「確かに、それは便利かも」

 

そして僕らはコントローラーを持って対戦を始めた。

 

###

 

対決は実に白熱し、気がつけば日付が変わりそうな時間になっていた。

 

「もうそろそろ帰ろうかな」

「もうちょっとやって行きましょうよ〜」

 

そう言って、引き止める声をなだめつつ僕は荷物をまとめて扉を開けようとする。

しかし、ドアノブは一向に回らず、扉も開く気配がない。

 

「ドア開かないんだけど鍵掛かってるのかな。明日ルリちゃんと慈さんと出かける約束があって、帰らないと」

 

僕は彼女に言った。立て付けの問題とか色々あるのかもしれない。

 

「先輩、どうして帰ろうとするんですか?私よりあの二人を取るんですか?」

 

最初は小さな違和感だった。怒気を孕んだ声に振り向くと、それが当然であるかの表情でこちらを見ていた。

無邪気な少女にも見えたし、暴君にも、恋人を引き止める健気な少女にも見えた。しかし、共通して感じられたのは僕をここから出さない。という事。

今すぐ逃げるべきだ。と頭は警鐘を鳴らす。しかし扉は開かないし、窓も姫芽ちゃんの方にある。素直に逃がしてくれるとは彼女の様子からは見えなかった。

 

手で自分の隣を叩き来るように促す彼女

 

「どうしてって、明日出かける用事が……」

「ここでずっと一緒にいればいいじゃないですか。」

 

彼女の声は甘く、でも底の見えない深い井戸のようだった。

その目は僕だけを見つめ、他の何も映していない。

まるで僕以外は不要と言わんばかりに。

 

「るりちゃんせんぱいもめぐちゃんせんぱいもきっと、なぎせんぱいのこと好きなんです。でも私、せんぱいへの推し活は同担拒否なので〜。私の方が好きに決まってますし」

 

僕は何も言えなかった。開こうとしても、口が鉛にでもなってしまったかのように重く感じられた。

彼女は僕の無言を肯定と受け止めたのか、更に続けた。

 

「ここでせんぱいとずっとゲームとかしながら過ごす。いいと思いません?卒業したら同棲とかもしましょうか。推しと過ごせるなんて……最高…です!」

 

彼女は僕にもたれ掛かり全体重を預ける。

そして、人差し指で僕の胸をなぞる。

 

ドアノブを回し続けても開かない現実に、僕は心の中で焦燥感を募らせていた。姫芽ちゃんのその表情、口調、言葉の一つ一つが異常だと分かりつつも、軽率にその場を訪れた自分の過ちを呪うばかりだった。

 

部屋の中には、今まで対戦で使っていたゲーム機の音と、彼女の軽やかな笑い声だけが響いている。この異様な空間で、僕はなんとか状況を打破しようと頭を回転させた。

 

「でも外にも楽しい事は沢山あるよ、確かに姫芽ちゃんとゲームをするのも楽しいけれど、それこそ君がみらくらの2人と出かけたりとかさ」

「せんぱいがいないと全て楽しくありません、ゲームもそうです。」

 

声色は甘く、けれど芯にある執着がはっきりと伝わってくる。

 

「そんなに出たいですか?」

 

じっと、心まで見据える様に彼女は僕の目を見た。

 

「そりゃ、もちろん。」

 

ぼくは答える。

 

「せんぱいには2つ選択肢をあげます。」

 

そう言って右手の指を2本僕の目の前にピンと立てる。

 

「ひとつが私と付き合って、ここから出ること。もうひとつがここでずっと私と暮らすことです。」

 

"さあ、どっちを選びますか?"と彼女は付け加えた。そして、僕の事をニコニコとしながら見つめていた。どちらでも構わないといった様に。

 

「分かった、付き合うことにしよう。」

 

暫く時間が経っただろうか、僕はそう決断をした。

受け入れない以上、ここでずっと過ごす羽目になってしまう。

そう伝えると、彼女は顔を綻ばせた。

 

「さすがせんぱいです!これでやっとせんぱいと一緒……最愛の推しと一緒になれるんですね!!」

 

飛びつくように彼女は僕に抱きつき、胸に顔を埋めた。"あ!"と彼女は何かを思い出したかのように声を上げた。

 

「これからめぐちゃんせんぱいにも、るりちゃんせんぱいにも、もう近づかないでください。私だけを見ててくださいね、せんぱいを推していいのも、せんぱいが推していいのも私だけですから!」

 

彼女は静かに微笑んだ。その笑顔はどこまでも美しく、どこまでも恐ろしかった。

 

 

 

 

 

 

蛇足の小話

 

『もしもーし、聞こえてる?』

『ばっちし!』

「僕も聞こえてるよ」

 

僕は、ルリちゃんと慈さんとゲームを遊ぶ約束をした。何とか姫芽ちゃんの許可を取り付けた。心配な事はあるけれど取り敢えずボイスチャットから聞こえてくる音声に僕は答える。

 

『やっと凪くん、ルリ達とゲームしてくれたね!!いっつも誘っても断られちゃってたから』

『そうそう!せっかくめぐちゃんが誘ってあげてたのに!』

「誘われてたんだ、今まで聞いたこと無かった」

『え!うそ!……でも確かに今まで、ひめっちからしか聞いてなかったかも』

『姫芽ちゃんから「せんぱい今忙しいらしいので〜」って言われてたような』

 

なんでだろう……僕が悩んでいると後ろからそっと手が置かれて、肩に誰かの顔が置かれた。

 

「めぐちゃんせんぱい、それ私の真似ですか〜、あんま似てなかったです〜」

『うるっさい!ってあれなんで姫芽ちゃんが凪の所から聞こえるの?』

 

彼女は想定通りとばかりににやりと笑い、後ろから抱きつくようにマイクに顔を近づけた。

 

「ありゃ、言ってませんでしたっけ、私と凪せんぱい同じ部屋に住んでるんですよ!」

「そんなの聞いてないけど!」

「ごめんなさい、せんぱいが照れるから言い出せなくて」

 

声が聞こえなくなった。まるで時が止まってしまったかのように。

暫く時間が経つと元気を失ったかのような2人の声が聞こえてきた。

 

『ね、ねぇ、凪くん、いつからひめっちと同じ部屋に住んでたの?』

『そうそう、めぐちゃんの許可を取らずに勝手にほかの女の子と付き合うなんて許さないぞ!』

「僕が助けて欲しいくらいだよ、僕の部屋に居ても来るし、半ば強制的に連れてかれるんだ。」

 

彼女の僕を見つめる瞳に僕はいささか弱かった。

決して惚れているからと言うよりかは、恐怖という意味合いが大きく、意に沿わない事をするとまた、彼女の部屋に閉じ込められてしまうのだ。

 

「え〜でも、今せんぱいが自分から選んだんですよ、私と付き合うって」

 

姫芽ちゃんはまるで画面の向こうにいる2人に見せつけるみたいにキスをした。

 

「ま、そういうことなので、めぐちゃんせんぱいもるりちゃんせんぱいもこれからなぎせんぱいには近寄らないでくださいね!」




対戦よろしくお願いしま〜すっ!(完全決着)煽り屈伸は勝ったものの特権。
好きな人への推し活は全力で!同担拒否でファンは私以外はNO!!
センパイ大っっっっっっ好きな姫芽ちゃんのお話でした。

次回は今断片的に吟子と綴理を書いてあるんですけど、どっちだろ。3年生組が卒業するまでには………
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