蓮ノ空依存日誌   作:ぽぽろ

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卒業に間に合わんかった。あと5人書かないと行けないのかーって思ってたら105期来たら更に2人増えるってま?誰か続き書いて。前回の文章がループしてたみたいで指摘して頂きありがとうございました。助かりました!

あと2ページ目 村野さやかに小話を追加しました。ちょいエロ注意。


5ページ目 夕霧綴理

朝、僕は携帯のアラームと共に起きる。

手を伸ばして、充電コードから引き抜き、ストップのボタンを押す。

そして、起き上がるともう一人分布団に膨らみがあるのに気がついた。

 

僕ははぁ。とため息を着くと、布団をめくる。

すると、案の定、僕の先輩である夕霧綴理さんがいた。

 

「綴理さん、起きてください」

 

僕が揺すり、起こそうとすると少しずつその目が開かれた。

 

「なぎ、おはよう」

 

眠たい目を擦りながら彼女は起き上がる。

しかし直ぐに力が抜けた様に僕にもたれ掛かり、目をつぶる。

 

「ほら、起きますよ」

 

僕はもう一度揺すると緩やかに目を開ける。

 

「なぎ、一緒に今日は寝て過ごそーよー」

 

僕が布団から出ると、彼女も観念したかのように起きる。

 

「綴理さん、僕の部屋に来て寝ないでくださいって何回言えば……」

 

彼女の悪癖と言うべきか、いつの間にか僕の部屋に入ってきて寝ていたり、ご飯を食べている事がある。

僕はこの学校の唯一の男子生徒。注目をされている自覚はあるし、噂なんて一瞬で広まる。

 

「ボクとなぎは一心同体。だから大丈夫」

「……そんなわけないでしょう。」

 

僕が呆れたように言うと、綴理さんはフッと僅かに嬉しさを息に含ませる。

 

「でも、なぎが嫌がってない。」

 

そう言いながら、僕の制服の袖を指先でくるくるといじる。その仕草が妙に幼く見えて、僕は視線を逸らした。

 

「嫌がってますよ。」

「そんなこと言いながら、追い出されたこと無い。なぎ好き」

 

確かに、僕は綴理さんを本気で追い出したことはない。でも、それは単に諦めただけであって、暫くすれば……

 

携帯の通知音がなる。

開いてみると、同級生の村野さやかからだった。

 

『凪さん、綴理先輩ってそちらにいらっしゃいますか?』

『うん、実は今日もいるよ』

『やっぱり。綴理先輩のお部屋にいらっしゃらなかったので。最近多いですね。私からも注意はしておきますけど……』

『助かるよ、ありがとう。』

『いえいえ、私が勝手にやってる事なので』

 

携帯を閉じ、振り向いた時。

一瞬、瞬き程の極僅かな時間だけ彼女の顔が酷く無表情で僕の携帯の画面を見つめていた気がした。

直ぐにいつもの様子に戻ったから僕の気のせいだったかもしれない。でも僕の瞼には彼女の顔が焼き付いていた。

 

「綴理さん?」

「誰からだった?」

「さやかからでした。綴理先輩がこっちに居ないかという旨の」

 

彼女は興味無さそうに、ゆっくりと息を吐いた。

さやかが来るまで綴理さんは僕が学校の準備をするのをじっと見つめていた。洗面所で顔を洗う時に扉を閉めようとすると、そのまま入ってきてじっとその様子をまた見つめていた。

 

綴理さんは、僕がコップを持つのも、髪をかきあげるのも、瞬きするのさえ見逃さなかった。まるで、少しでも目を離せば僕が消えてしまうと信じ込んでいるみたいに。

 

###

 

あの後すぐにさやかが綴理さんを回収に来た。

そのついでにさやかと話している時にすら綴理さんは僕のことを見ていた。

彼女はアリの行列をずっと見ている様な人だから何か僕には分からない繋がりがあるのかもしれない。

 

時間は代わり、昼になると僕とさやかは一緒にお昼を食べていた。

 

「最近の綴理先輩は少しおかしいと思います。毎日凪さんのお部屋に行って。」

「僕もそう思うよ。」

 

彼女はお茶を一口飲むと、不満と一緒に息を吐いた。

 

「何か理由とか分かったりしますか?」

「それが僕にもよく分からないんだ。さやかみたいに料理が美味い訳でもないし、お世話をする訳でもない。」

「綴理先輩は色々不思議な所もありますから……」

 

そこまで彼女は言うと、話を区切るように、大きくため息をついた。

 

「ところで……もしよろしければなんですけれど、今週の土曜日に少しお弁当のお勉強に付き合ってくれませんか?近くで駅弁などが売られるみたいで……」

 

僕はスマホで予定を確認し、了承をした。

 

「2人ともこんな所で何してるの?」

 

後ろから声が掛かる。少しばかり怒気を孕んでいる様な気がした。2人で後ろを振り返ると、綴理さんだった。

 

「たださやかと一緒にご飯食べてるだけだよ。」

「そうです。静かで気持ちがいいですよ」

 

ここは2人の秘密の場所だったから、来たことに僕たちはびっくりした。

 

「なぎ、探した。教室にいなかったから」

「よく見つけられましたね。」

 

彼女は、いつもの調子で"勘"とだけ言った。

 

綴理さんは、僕とさやかの間に座った。

まるでそこに座る事が最初から決まっていたように。

その瞬間、僕は風の匂いが変わったように感じた。

芝生がうなだれる様に彼女の形を象った。

 

僕とさやかは困ったように笑った。酷く固まってしまった空気を少しづつ柔らかくするみたいに。

空気を繋ぐための笑いだった。空気の流れというものが少しばかり不自然だったのだ。

 

僕とさやかは立て直そうと、話題を変える。少しばかり考え、出た話題がやはりスクールアイドルの事だった。

 

「やっぱりトレーニングをもう少しレベルを上げるべきでしょうか」

 

さやかは、僕の方に足を近づけながら話した。

 

「今のままで十分だと思うよ、次のライブまで時間はあるし、ゆっくりと準備する時だ」

 

と僕は答える。するとさやかは嬉しそうにほほ笑む。

綴理さんは僕の顔のパーツを一つ一つ注意深く点検でもするみたいに見ていた。

 

彼女は静かに僕の顔に手を伸ばし、その指先でまるで古いレコードをなぞるみたいに、そっと撫でた。

それから、さやかと僕のあいだに、まるでページの間に差し込まれたしおりのように、身を起こした。

 

「ボクが君を見てる限り、君はボクのものだよ、ね、そうでしょ?」

 

綴理さんはそう言って、僕の瞳を見据えていた。まるでさやかがそこにいないかのような目だった。目の奥にある火が、静かに燃えているのを見た。

 

僕は笑おうとしたが、それは途中で止まってしまった。喉の奥でひっかかったような、半分だけの笑いだった。

それだけを言うと満足したのか、入念にやはり僕の顔を見てから、僕の膝に頭を預け寝てしまった。

 

###

 

あれからいくらか時間が経った。綴理さんは相も変わらず僕の部屋にいた。

しかし、これからはしっかりと自分の部屋に行ってもらわないといけない。

 

”綴理さん”と僕は声を掛けると、”なぁに?”といつもの様な間延びした返事が返ってくる。

 

「さやかと付き合うことにしました。 」

 

綴理さんに僕は言った。彼女はショックを受けたような表情をしていた。

あれから色々あって、僕とさやかは付き合う事にしたのだ。

 

「ボクはいつまで我慢してればいいの?」

 

彼女は泣きそうな顔でそういった。

 

「どういうこと?」

 

僕は首を傾げながら尋ねる。訳が分からなかった。

 

「どうしてボクの目の前から居なくなろうとするの?」

「え?」

 

理解が出来なかった。いつもの綴理さんより弱々しく、母親にすがる子供の様に彼女は僕を必死に引き留めようとする。

 

「別にいなくなるつもりなんて……」

 

いい切る前に急に視界が変わって天井を見上げていた。

起き上がろうとしても出来ず、顔だけ動かすと綴理さんが僕の上に乗っていた。

 

「さやと別れて欲しい」

「そんなことは出来ないよ」

「目の前から居なくなろうとしないで」

 

そのまま倒れる様に彼女は胸に顔を埋める。

そして、ぎゅっと強い力で抱きしめる。

 

「好き、なぎ好き。好き、だから居なくならないで」

 

彼女は何回も"居なくならないで"とうわ言の様に繰り返す。

まるで壊れたラジオが昔の声を拾ってしまったかのように。

その声は熱も冷たさもなくて、音程もなくただ平坦に部屋に響く。

僕は何をしたらいいのか分からなくて、ひたすら彼女の声を聞くことしか出来なかった。

 

彼女は時折、僕の顔を手で探るように触った。心臓の鼓動を確かめた。体温を確かめた。

彼女の中では合っているのであろう行動や言動の繋がりが僕にはよく分からなくて、むしろ恐怖さえ感じている。

 

「ボクはいつもここにいるよ。君の隣にいる。君が気づいてなくても、ちゃんと見てる。だから君も、ボクを忘れないで」

 

小話

〜綴理視点〜

 

朝。

携帯のアラームが鳴る前から、私はもう起きている。

なぎの寝息を聞きながら、眠ったふりをしている。

 

彼の呼吸を、その一つだって聞き逃したくないから。

目を閉じていても、まぶたの裏にはなぎの輪郭が焼きついている。

 

なぎはボクにとっては特別な存在だ。

さやもご飯作ってくれるし、何かと世話をしてくれて好きだけど、なぎと一緒にいるとさやといる時とは違うドキドキがある。

それが何なのかはボクには分からない

 

布団がめくられる。

光が差し込む。

ボクはそちらへ寄り添うように、ゆっくりと目を開ける。

 

「なぎ、おはよう」

 

彼はため息をつく。

 

「ほら起きますよ、綴理さん」

 

呆れた様な顔をして見ているけれど、言い方は柔らかく割れ物を扱うようにしてくれる。

ボクを大切にしてくれている、ボクを見ていてくれている感じがしてとても好きだった。

 

私は彼にもたれ掛かり、目を閉じる。

このまま眠っていれば、ずっと一緒にいられる気がした。

 

でも、なぎは起きる。

学校があるから。

ボク以外の世界があるから。

 

「綴理さん、僕の部屋に来て寝ないでくださいって何回言えば……」

 

そんなの知らない。

知らないふりをする。

 

「ボクとなぎは一心同体。だから大丈夫」

 

彼は呆れたように眉を下げる。

なぎの隣にはボクがいるべきで、ボクの隣にはなぎがいるべきなんだ。

 

だって、ボクは知ってる。

なぎはまだ離れられると思ってる。

逃げられると思ってる。

 

でも…無理。

だって彼は、もうずっとボクのものなんだから。

ボクはもう彼なしでは生きては行けなくなってしまっている。

 

携帯が鳴る。

視線は彼の携帯に映る。

 

そこには"村野さやか"との表示があった。

 

一瞬顔を顰めるが彼にバレないようにすぐに戻す。

さやを見るとどうしようもなく心がチクチクしてくる。心にドロリと黒く淀んだものが蠢いているのが分かる。

 

こういうのがあるから彼を視界から外しては行けないのだ。

その内誰かに引っ張られて手の届かないところに行ってしまいそうだから。

 

彼が顔を洗うときも、コップを取るときも、髪を整えるときも。

いつも見ている。

見ていない瞬間ができたら、不安で死んでしまう。

 

“なぎが誰かと手の届かない所に行く”

夜になるとそんな考えが、私の喉を内側から掴む。

息が苦しくなる。

 

だから私は、彼の全部を見逃さない。

 

###

 

昼休み。彼の教室に真っ先に向かうと居なかった。

少しばかり呼吸が乱れる。

人の目を気にせずに学校の中を走り回っていると、人目に付きにくい場所でなぎとさやかが2人でいる。

 

胸の奥で、黒い何かが音を立ててひび割れる。

 

"さやに盗られるよ"

"その内捨てられるかも'

 

ボクに似たナニカが話しかけてくる。

無意識的にさやの事を睨んでしまっていた。

鏡がないから分からないけれどきっと2人には見せられない顔をしていたと思う。

 

そして彼の隣に座る。

そこはボクの席だから。

生まれた時からそう決まっていたみたいに。

 

その視線はなぎだけを見つめる。

顔のパーツを一つ一つ確かめる。

そこにあることを確認し続ける。

 

「ボクが君を見てる限り、君はボクのものだよ」

 

他の子を見るなんて許さない。

その目にはボクだけを映して、その耳はボクの声だけ聞いて、その肌はボクの温かさだけを感じて。

 

###

 

しばらく月日が流れたある日の夜。

彼は言った。

 

「さやかと付き合うことにしました」

 

頭の中で何かが割れる音がした。

ひどく静かだった。

 

「ボクはいつまで我慢してればいいの?」

 

言葉の意味は自分でも分からない。

ただ泣きたくなった。

子供みたいに。

 

なぎは分かってない。

気づいてない。

あの日から、ずっと、ずっと…

 

「どうしてボクの目の前から居なくなろうとするの?」

 

何故か胸が激しく痛むし、呼吸が荒くなる。

 

気がついたら、彼に覆いかぶさっていた。

もう、離れないように。離さないように。

そうだ、やっとこの感情の名前が分かった。

 

「好き、なぎ好き。好き、だから居なくならないで」

 

なぎの事が好きなんだ。さやにも盗られたく無いくらい。

 

何度も確かめるように、彼の顔を撫でる。

心音が聞こえちゃうくらいうるさい。まるで身体全体が鼓動してるみたいに。

 

「ボクはいつもここにいるよ。君の隣にいる。

君が気づいてなくても、ちゃんと見てる。

だから君も、ボクを忘れないで」

 

忘れちゃダメ。

絶対に。

 

忘れた時の為に、忘れないようにボクの証でも付けようか。

一生記憶に残るような。

 




ボクから離れていかないで。いつでも君の事は寝てても見てるよ。ちょっっっっっとだけ寂しがり屋な綴理さんのお話でした。系統的には花帆ちゃんの亜種みたいな感じ。
綴理さんは難しかった。解釈違い等あるかも。
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