令和のガンマン   作:星乃 望夢

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第6話 バーガーチェイス

 

 5歳で売り飛ばされ、そこから3年は心を殺して執行人、6年を暗黒街で色々とやって、そして日本に渡った。

 

 1年を仕事場を探すために費やして、大宮を活動拠点として店を構えたのが15年前。

 

 最初は開店休業状態で閑古鳥が鳴いていた。

 

 それも仕方がない。

 

 ニューヨークの暗黒街で慣らしたとはいえ、海を渡ればそうでもなくなる。

 

 それを狙って日本に渡ったのもある。

 

 のんびりとやって行けば良いかと思いながらも、新参の店にみかじめ料を徴収しに来た地元組みの奴らを返り討ちにしてやったりもすることもあった。

 

 最初は払ってやったが、どうにもこっちの足元を見た値の釣り上げ方をしたもんだから、少し灸を据えてやったのさ。

 

 そうしたらまぁ、地元組みとの全面抗争となった。

 

 とはいえ、あちらはヤクザ崩れ。

 

 こっちは暗黒街のマフィア仕込みだ。

 

 お話しにならなかったワケだが。

 

 その時に初めて松永と顔を合わせた。

 

 まだ新米で、初めて手錠を掛けたのが俺だったんだとさ。

 

 まぁ、そこは今は良いだろう。

 

 実質的に大宮南銀座を治めちまった俺は、南銀座の治安の改善と保全を条件に出て来たワケだが、また悪さをしない様に目付役として付けられた松永とつるむ様になった。

 

 同じくらいの時に伊手蔵が俺のもとにやって来て、上場とも顔を合わせた。

 

 その頃の俺は本当に銃を撃つしか能がなかった。

 

 逆に頭はキレても荒事はてんで専門外だった上場とは、まぁ良くある凸凹コンビだった。

 

 そこに合わせて松永も居りゃ、ガンマンと探偵と警察官という、ガンマンが余分なトリオの完成だ。

 

 カウンターの席の真ん中に俺、左右が上場と松永。

 

 あの頃から変わらず、俺たちはそんな席順で座って飲み交わしていた。

 

 そんな関係は15年続いているわけだが、その15年の中でも今回は5指に食い込む程度には色々とめちゃめちゃにされ、面倒事も山積みだ。

 

 近くのパーキングに車を停め、歩いて店まで行く。

 

 店の前では鑑識が作業していた。

 

 貼られたテープの前に立つ警官に手帳を見せてテープの内側に入る。

 

「よう。随分派手にやられたな」

 

「まぁな」

 

 切れ目で上はショート、襟足から下がロングのスーツ姿にコートを羽織ってストールも首に掛けている姿は、わかりやすくカタギでないことを伝えるには手っ取り早いだろう。

 

 顔の作りが良いからホストに見えるし、声も低音であるから夜の街でも引っ張りだこの夜の帝王。

 

 まぁ、この辺りの元締めだ。

 

「悪ぃがボトルは軒並みおじゃんだ」

 

「ハッ、ご愁傷さまってヤツか」

 

「まぁな。松永にはやり過ぎるなと言われんだろうが、足が付かないように頼むぜ?」

 

「良いぜ。私もお気に入りの店と酒を台無しにされた落とし前はつけてやんねぇと気がすまねぇからな。んで? どこまで辿る」

 

「根切りにして構わねぇよ。まぁ、ガキは好きにしろ」

 

「相変わらず、甘ちゃんだな。まぁ、そこが気に入ってるんだけどな」

 

「そうかよ」

 

 会話が途切れて互いに煙草を取り出して1本咥えて火を点ける。

 

 紫煙を吸い込んで肺に取り込むと、吐き出す空気と共に煙も出ていく。

 

「にしても気の毒だな。バカ息子のやらかしで家が無くなっちまうんだ。ま、ケンカ売った相手が悪かったな」

 

 別に俺も人殺しが好きなわけじゃない。

 

 暗黒街のマフィア仕込みとはいえ、いちいち根切りにしていたら敵を作るばかりだ。

 

 だから日本スタイルに合わせて極道やヤクザの様に当人たちが誠意ある対応をしてりゃあ、本人のケジメで赦してやるが。

 

 今回そのラインを超えてきたのは向こうからだ。

 

 アウトローの非ずものにもルールはあり、そして理がある。

 

 それを踏み抜いたんだから文句は言わせねぇ。

 

 ご愁傷さまっていうのはそういう事だ。

 

「どうだ? 今夜付き合わないか」

 

「別に構わねぇけどな。何処にする」

 

 屯場である俺の店はご覧の有り様でめちゃくちゃだ。

 

 吹きっ晒しで酒も無いので良いなら開けることは出来るが。

 

「藤の所で良いだろ」

 

「おう。土産は期待するなよ?」

 

「わかってるさ。別に素寒貧から巻き上げようなんて阿漕な真似はしねぇよ」

 

 煙草を吸い終わり、吸い殻を携帯灰皿に捨てる。

 

「飴ちゃん舐めるか?」

 

「ああ」

 

 飴の袋を受け取って、口に入れる。

 

 もう一つをイザベルへ向けて投げる。

 

 飴はみぞれ飴だった。

 

天狼城(あまらぎ)、パーティーは派手にな」

 

「任せろよ。盛大に歓迎してやる」

 

 後ろ手を上げて去っていく天狼城を見送る。

 

 すると入れ違いで40代程の刑事が手を上げながら声を掛けてきた。

 

「よう。昨日は災難だったな。ま、お前さんなら問題なかっただろうが」

 

「まぁな。ひょろい弾に()たってやるほど、俺もお人好しじゃねぇよ」

 

「そうだろうな。まぁ、女将さんにもケガがなさそうで何よりだ」

 

「ご心配ありがとうございます、(げん)さん」

 

「いえいえ。店が再開したら知らせてくださいよ。部下を連れて引っ掛けに行きますんで」

 

「まぁ! その時はお願いしますね」

 

「それで? 連中はゲロったのか?」

 

「いや。どいつもこいつも仲間に責任を擦り付けようとする証言ばかりだ。まぁ、お前さんの脅しが効いたんだろう。数人程供述しちゃいるが、お前さんらが9割9分9厘殺しにした奴に煽動されたってことだけだ。そいつが目ぇ覚めなきゃ、先に進みそうもねぇな」

 

「そうかい。まぁ、気長に待つさ」

 

「次はもう少し証言出来る程度にしといてくれよ?」

 

「俺のルールを踏み抜いたんだ。そんなこたぁ知らないね」

 

「裏社会の仁義ってやつか。まぁ、ほどほどにな」

 

「おう。後で報告書を出しに行くよ」

 

「ああ。そんじゃあ後でな」

 

 現場責任者として荒れた店の中に入っていく玄徳(げんとく)の背中を見送って、口の中の飴をコロコロと転がす。

 

 じんわりと口の中に広がるメロンの味を感じながら、寒い風を凌ぐ為にイザベルの肩を抱き寄せた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 現場鑑識が一段落したところで昼食の時間だ。

 

 西口に出て真っ直ぐ少し歩けばキングなバーガー店がある。

 

 そこに入って注文する。

 

 昼時である為席は満員──一か所だけ、店の隅であるが不自然に人が近寄らない場所がある。

 

 いくつもの包装紙の成れの果てがテーブルの上に山となって積まれ、バーガーを頬張る当人の後ろにはスーツ姿の屈強な男が2人も立っていれば近寄りがたい威圧感が漂うのも無理はない。

 

 そしてバーガーを貪るのは金髪碧眼の欧州圏の美女。

 

 白いスーツとオーバーコートを着てソースでも跳ねたら悲惨な事になるのは間違いないだろう格好をしている。

 

 そんな美女の前に俺は腰掛けて注文したワッパーに齧り付く。

 

 マックと違って肉に香ばしさがあるのが少し割高である分旨い。

 

 カリカリのポテトも旨い、これで1杯やりたいところだ。

 

 ワッパーを食べ終わるまで無言のまま食指を動かす。

 

 ポテトを口に放り込み、そしてコーラで喉を潤して最後のワッパーの一口を楽しむ。

 

「相変わらず、君は美味しそうに食べるねぇ、ノワール君」

 

「食は心の栄養、笑いは心のビタミン、浪漫は心のガソリンだ」

 

「ふむ。それについては私も異論はない。昨夜は愉快なお祭りだったそうじゃないか。仲間外れにされて、私はとてもとても悲しかったよ」

 

 そう言って手で目頭を覆い首を横に振る彼女であるが、それは単なるポーズ──ではなく、本気で悲しみを顕にしている。

 

「単なる七面鳥だ。屋台の射的の方が歯ごたえがあるぜ?」

 

「わかってないなぁ、ノワール君。我々はどのような場所であろうとも、どのような規模の物であろうとも、そこに鉄火の号砲が鳴り響くのならば、血と汗を流し、硝煙の香りを感じられればそれで満足出来るロクデナシなのだよ。つまり、君には七面鳥撃ちであろうとも、我々からすれば、それは楽しい楽しいdie Feierなのさ」

 

「相変わらず狂ってんな、大尉殿」

 

「ククク、狂ってる? それは我々の父や祖父が悪いのだよ。この身に流れるアーリアの血がそうさせるのだ。あの鉄十字に誓ってしまった魂がそうさせるのだよ。我々は忘れ去られた最後の大隊だ。あとは余燼として消え逝くのみ。それはとてもとても悲しい。だからこそ、我々は小さな火種も見逃さずに愉しみたいのだよ」

 

「火種にニトログリセリンぶっ掛けられると、俺の店が種ヶ島辺りに吹っ飛ぶからノーセンキューだ」

 

「おやおや、それこそ杞憂だ。私は君との親交を大切にしているつもりだ。君の店を吹き飛ばす予定は、今のところは無いよ」

 

「できれば永世中立地帯として扱って欲しいもんだがね」

 

「扱っているとも。だからこそ、今回の騒ぎは方々で問題になっているわけではあるが」

 

「まぁな。まったく、面倒なことをしてくれたぜ」

 

 コーラに口をつけながらぼやく。

 

 ただの1発や2発程度なら内々に処理できるが、昨日のは銃撃戦にカテゴリーされる案件だ。

 

 当然警察の手が入る上、やんごとなき御歴々の気を揉む事態となった。

 

 それ程、俺の店は多方面に影響力を持っている。

 

 言っちまえばスイスの銀行みたいな扱いだからな。

 

 だから俺の店で銃を抜いたからには文字通り命を懸けろ、ソイツは脅しの道具じゃねぇってワケだ。

 

「でだ。奴らが使ってた玩具に本物が混じってたんだが」

 

「AKMとなると特定は難しいね。本体が木っ端微塵とあってはさらに倍率ドンというものだ。物品が目の前にあれば別ではあるがね」

 

「イザベル」

 

「はい」

 

 俺がイザベルに声を掛けると、彼女はボストンバッグを俺と大尉のテーブルの間に置いた。

 

「ふむ」

 

「捜査特権で頂戴してきた。終わったら返してくれ。でないと始末書が面倒だからな」

 

「良いとも。1日で返却しよう。軍曹」

 

「ハッ」

 

 大尉が呼んだ軍曹が服の内側に小声で何かを話すと、店の外から1人男がやって来て、ボストンバッグを持って出て行った。

 

「しかし、我々の品が表に触れるというのは些か面白くない。たまには水漏れの点検でもしようかね」

 

「不景気だからな。叩けば埃くらい出てくるさ」

 

「耳の痛い話だ」

 

 そう言って大尉はペンと紙束をスーツの内側から取り出して、スラスラと記入し、1枚ビリビリと切り離すと、俺に紙切れを寄越してきた。

 

「迷惑料と店の修理費とお布施だ。足りなければまた言うと良い」

 

「ありがたく」

 

 その紙切れをスーツの内ポケットにしまう。

 

「して、どうかな?」

 

「少しは付き合ってやるよ」

 

「それは結構。それで、昨夜のブツは?」

 

「持ってきたけどな」

 

「それは重畳」

 

 俺はスラックスのポケットからポリ袋に包んだ靴下を大尉の目の前に置いてやった。

 

 それを手に取り、その袋の口を開けて躊躇無く顔を突っ込んで深呼吸する。

 

 理解出来ない趣味だ。

 

「はぁぁぁ、なんという芳しいかほり……。汗と土と、硝煙の香り。僅かに感じる金木犀の香りと混じって中々芳醇なものだよ」

 

「さよか」

 

「フッフッフ、君もこの極地へ至れば、我々のことも少しは理解出来ると思うのだが?」

 

「変態の仲間入りは御免被るよ」

 

 他人の履いた、洗っていない靴下を追い求める変態集団。

 

 靴下狩人なる連中は世界規模のネットワークを持ち、暗躍しているという。

 

「まぁ、良いさ。時価1億の靴下をこうして提供してくれるだけでも充分だよ」

 

「そうかい」

 

 俺には解らない世界の話をされながら、店員が運んで来た山盛りのワッパーやバーガーの山に手をつける。

 

「今夜は藤木戸(ふじきど)の所に集まる予定だ」

 

「そうかい。私も今夜は会議だが、終わったら顔を見せに行くとしよう」

 

「おう。アイツにはそう伝えておく」

 

 ワッパーをむしゃむしゃと咀嚼しながら、腹が膨れるまで食べ続けた。

 

 俺の数倍食べてるのにあんなボッキュンボンなスタイルどうやって維持してるのか謎だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇ 

 

 

 

 大尉との会食という名のフードファイトに付き合い腹いっぱい食べた所で、俺は一度家に戻る事にした。

 

 まだまだ顔を出さないとならない所はあるが、そろそろ戻っておかないと、置いてきたお姫様が機嫌を悪くしそうだと思ったからだ。

 

 とはいえ、アイツが上手くやってるだろう。

 

「ノワール」

 

「ああ」

 

 イザベルの声に答えてやりながら、バックミラーで後ろを見る。

 

 大宮のパーキングを出てからずっと着いてくる1台のハイエース。

 

 家に帰るのなら中山道か17号を走れば良い。

 

 その中で俺は何度か無駄な道を走った。

 

 それでもそのハイエースはすぐ後ろに着いてくる。

 

 見失わない様にというのは理解出来るが、尾行対象に気付かれては意味が無いだろう。

 

 それも素人相手に言うには酷なことか。

 

 少し考えればわかりそうなものだが、そこまで頭が回らないのか、或いはそこまで要求する能力がないからバレてでもついて行けという指示があるのかは判らないが。

 

「掴まっとけ」

 

「ええ」

 

 アクセルを踏み込んで車を加速させる。

 

 だがスバル360の最高時速は83km/h。

 

 現代の車相手では勝負にならない。

 

 ただこのスバル360はとても小さくコンパクトな車だ。

 

 逃げ道に関してこちらは多くの選択肢を選ぶことが出来る。

 

 国道から逸れて選ぶ無駄な道は産業道路方面。

 

 遠回りだが、後ろのやつを家まで連れ込む気はない。

 

 住宅地の中を走って土地勘を無くさせる。

 

 向こうがこっちの道に詳しいだとか、スマホやカーナビで地図を見ていたら効果は薄いが、やらないよりはマシだ。

 

 伊奈町方面へ抜けてさらに右折で新幹線の方へ向かう。

 

 そのまま菖蒲方面へ向かうが、バックミラーで見るとハイエースの運転手と助手席の人間は互いに幾度か顔を向き合ってなにやら話している。

 

 何処まで俺の情報が漏れてるかは判らないが、寝床の名義は俺の本名で取っている。

 

 ノワール・フォンティーヌ名義ではないからネット上で探すことは出来ない。

 

 つまり俺の寝床の正確な位置がまだ知れていないのだろう。

 

 だから今、それを掴もうと尾行してきたというわけだろうが、そう簡単に尻尾を出すと思うなよ。

 

 まぁ、菖蒲のモラージュまで引っ張ってくれば充分だろう。

 

 駐車場に入って車を停める。

 

 俺たちを()けて来たハイエースも近くに車を停めた。

 

 そしてまた俺は車を出すと、ハイエースは着いてくる。

 

 もう黒で確定だな。

 

 アクセルを思いっ切り踏み込みながらハンドルを切る。

 

 後輪がスピンして車体が回転する。

 

 180度反転すると同時にバックギアに入れてバックすれば、俺のスバルとハイエースは対面して走る形になる。

 

 そして窓を開けたイザベルが身を乗り出して手にしたモーゼルを2発撃ち込む。

 

 その弾丸はハイエースの前輪を同時に撃ち抜き、バーストしたタイヤが絡んで突っ張りになり、さらにバーストしたタイヤからゴムが無くなった分、前に車体が傾いたのと同時に突っ張りが出来ればどうなるのか?

 

 車体の後ろが浮いてそのままの勢いでハイエースは一回転してひっくり返った。

 

 またハンドルを切ってギアを入れ直して、なに食わぬ顔で俺は車を走らせた。

 

 シートにイザベルが座り直したところでバックミラーを確認すると、ハイエースを避けてこちらを追ってくるのはスズキのエブリィ。

 

 ハイエースの影に隠れて追ってきてた奴だ。

 

 向こうはハイエースを影にして付かず離れずの距離で走って来てたが、それでもここまで走り回して着いてきていればこっちも黒だ。

 

 こっちもどうにかしたいところだ。

 

 取り敢えず車を走らせて白岡菖蒲ICで圏央道に乗り、桶川方面に向かう。

 

 ETCを積んでいるから楽に通れるが、向こうはどうやら発券機のようで、それで少し離すことが出来た。

 

 さらにアクセルを踏み込んで80kmまで加速させる。

 

 平日の夕方とあって、下りは多いが上りは少ない。

 

 後ろから離されてスズキのエブリィが追って来た。

 

 あちらはスピードが出るからすぐに追いついてくる。

 

 まぁ、高速道路で撒けるとは思っちゃいねぇ。

 

 桶川から下道に戻ると、川田谷を突っ切るルートを選ぶ。

 

 田舎道で田んぼ道。

 

 土地勘がなければ少し迷子になれる程度には入り組んでいる。

 

 左折に右折を繰り返し、同じ道に戻ったりをしてとにかく方向感覚を狂わせる。

 

「どうだ?」

 

「助手席の方はスマホとにらめっこね」

 

 今どこを走っているのか確認しているのだろうか。

 

 とすると、これ以上やっても無意味か。

 

 まったく、昔はこの手で楽に撒けたんだがなぁ。

 

 世の中便利になるのも考えもんだぜ。

 

「ノワール!」

 

 珍しくイザベルが声を張り上げるもんだからサイドミラーで見てみると、エブリィのサイドドアが開いて、中からRPG-7を構えた奴が出て来た。

 

「おいおい。なんてもん持ってんだ」

 

 俺はサイドブレーキを引いてハンドルを切り、また車を180度回転させてバックギアに入れる。

 

 すると同時にRPGが発射されたが、その弾頭を俺はマテバで撃ち抜いてやった。

 

 ちょうど助手席の真横で炸裂したRPGはその爆風でエブリィを横倒しにした。

 

 馬鹿みたいな爆音がするわけで、こんな田舎道だからさらに響く爆音に住人が出てくる前に現場からはドロンだ。

 

「AKMにRPGか…。ったく、大尉の奴。水漏れがひでーぞ」

 

 とは言え敢えて水漏れを放置するのが大尉だが、さすがに表の人間にRPGまで持ち出されたとなると、大尉でも腰を据えて対処する案件だろう。

 

 武器商人は武器が売れればOKの死の商人ではあっても、裏社会であるから良いのであって、それが表の人間に渡ったり触れたりするのは嫌う。

 

 なにしろそこから当局に手を入れられるのを嫌うからだ。

 

 裏社会には裏社会のルールと秩序と理と仁義があるが、表の人間はそんなこと知ったこっちゃない。

 

 だからオモチャを平気でぶっ放せるのさ。

 

 取り敢えず追跡者はあれだけだったようだ。

 

 尾行を撒くのに少し時間を使わされた。

 

 あとは真っ直ぐ家に帰るが、それでも田舎道を走って保険は掛けておく。

 

 ただのモデルのストーカー連中にしちゃあ金持ってんなーっと思いつつ、どうやら今回のヤマは色々と面倒な事になりそうだと、憂鬱な気分だった。

 

 

 

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