踏み台悪役貴族に転生したので、最強になって壁になってやる!   作:カンさん

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第五話 蛙化現象

 シリアス過ぎてゲロ吐きそう。

 

『彼女相当苦労したのね』

 

 オレは、ぼっちで中庭で飯を食べながら三日前に戦ったファーストについて話し合っていた。

 

 なにやらオレと戦いたかったみたいだから快く受けたんだが、強かったなぁ。

 ……ほら、何故か悪役貴族として噂が立っていて孤立していたから、ちょっと嬉しくて、つい。

 でもまた煽っちゃうし、意味深な事言うし……いや、怪我させたらあかんやん? それと主人公の事を我が運命って言うのまぁまぁ重いよな。ヤンデレかよ。

 

『それよりもマスター。どうするの?』

 

 え? どうするのって何が? ……ああ。あの娘に埋め込まれた人工魔剣の事? 

 アランとテレシアの力を使ったら一発で破壊できるけど、勝手にやっても良いものかね? 復讐したいって言っているし、それが終わってからでも良くない?

 

『……マスターは、あの者の復讐を止めないのか』

 

 止めてどうするんだよ。オレにその資格は無いと思うぞ?

 テレシアが感知した所、寿命削ってまで手に入れた力なんでしょ? 他にも色々と削っているだろうけど。そこまでして成そうとしている願いを、オレのエゴで潰すのは違うと思う。

 そして、何も知らないオレが偽善で首を突っ込むのもまた違う。本当に関わるのならとことんやるけど。

 

 それに、止めるべき人間は別に居るんじゃないかな。あの子、誰かを求めているし。

 

【だが、もし彼女が仇を討った時、オレはその呪縛を解きたい】

 

 モノローグさんあの子の事好きだね。授業で一緒になった時もうるさかったし。逆に原作主人公を前にすると大人しくなる。限界化でもしているのか?

 

「ヒュース」

 

 ぬるりとオレの影から魔王が出て来た。どうでも良いけど出る時は気を付けて欲しい。デカい角がガンッと当たって痛い。

 影から首だけを出した魔王がこちらを見ている。どうした。何かあったのか。

 

「お腹空いた」

「……」

 

 無言でサンドイッチを差し出す。するとパクッと咥えてアムアムと食べ進めていく。行儀悪いな。でもコイツ腹減っていると動かないし話さないし言う事聞かないんだよな。

 弁当箱の中身が無くなった所で魔王は満足した。オレの昼飯……。

 満足したのか、ムフゥと無表情ながらも嬉しそうにする。良かったね。オレは腹が減ったよ。

 

「ヒュース。言いたい事がある」

「なんだ」

「今から襲われる」

 

 ――は? と思ったのも束の間、突如空気が乾燥し、周囲の温度が一気に上昇するのを感じた。

 この急激な環境の変化は――魔法かっ!

 その場から跳躍すると同時に、先ほどまでオレが居た場所に火球が撃ち出される。その際の衝撃音でみな気付いたのだろう。校舎から人の気配が騒がしくなった。

 

【ヒュース・カルタルトォオオオオ!】

「……こいつは」

 

 ズシンッとオレの目の前に降り立ったのは、今まさにオレに魔法を放った下手人だ。

 猪をそのまま人型に押し込んだかのような、炎の毛皮を纏う異形。

 そして手には禍々しい形をした【W】の宝玉が埋め込まれた剣。

 

「人工魔剣か」

【この力でお前を倒し、最強になったボクは認めて貰うんだぁあああ!!】

 

 再びこちらに火球を放ってくる人工魔剣使い。それを回避しながら原作にない展開に困惑する。

 いや、もうほぼ原作は崩壊しているか。

 しかし、何故オレが襲われているんだ? 心当たりがあり過ぎて分からない。あまりにも敵を作り過ぎたぜ。

 

【うぉおおおおおお!】

 

 強化された身体能力任せに人工魔剣を振るって来るが、まぁ当たる訳がない。

 それにしても、【W】の人工魔剣で火を操るって事は……これはサブクエストか。

 

 原作ではメインストーリーを進めるとサブクエストが解放される。主人公が人類の味方である事を示す為に善行を積まないといけないのだが、その為に用意されるのがこのサブクエストだ。

 クリアするとゴールドやアイテムを貰えるのだが、人工魔剣関するサブクエストをクリアすると魔法を習得する事が出来るのが特徴。

 闇の聖剣を持つ光の勇者だからできる事なんだよな。

 

 そして原作のサブクエストでもこの人工魔剣は出ていた。

 

「ウェザー・コントロールの魔法。確か、天魔猪(ウェザー・ボア)が使っている魔法だな」

 

 人工魔剣は、モンスターの魔法が刻み込まれている。だから精神汚染されれば元のモンスターの闘争本能に呑まれて、この様に魔獣化する。

 

『どうするマスター』

「倒す」

 

 炎を纏って突進してくる人工魔剣使いを避けながら、アランの問いに答える。

 でも普通に倒したらこの人死ぬんだよね。魔獣化したら、もう助からない。原作でもそうだった。エルドとマリアンも原作主人公の目の前でそれで殺されたし……。

 

 しかし、一つだけ救う方法がある。本来なら原作主人公と魔王でしか使えない。

 それは――光の聖剣と闇の魔剣の力だ。

 

 両手にアランとテレシアを顕現し、すれ違いざまに斬り付けた。

 

「――がっ!?」

 

 すると、人工魔剣使いの魔獣化が解かれて人の姿に戻る。そして手に持っている人工魔剣が罅が入り、粉々に砕け散った。さらにアランにウェザー・コントロールの魔法が付与されるが……。

 

『いらん』

 

 ペッ! て吐き出されてしまった。ばっちぃな。

 

 それにしても……誰だろうこの人。この学園の制服を着ているから生徒だろうけど……ネクタイの色的に2年生か?

 

「ぁ……ふぁ、ふぁあすと……ぼく、は……――」

 

 それだけを呟いてガクンッと気絶する生徒。うーん……もしかしてファーストちゃんが人工魔剣をオルディバから奪った犯人? 今の死の間際に残した遺言的に。死んで無いけど。

 

『で? 実際の所どう思うの』

 

 多分違うでしょ。人工魔剣の力は使っているけど、誰かに使うみたいな外道な事をする人間性は無さそう。というか、そういうやばい奴は原作主人公の仇だけで良いよ。

 むしろよく魔獣化していないねって感心している。どれだけメンタル強いんだ。

 

 それはそれとして――。

 

「どうした、何があった!?」

「これは……ヒュース・カルタルト! お前がやったのか!?」

 

 なんて説明しようかね。この状況。

 

 

 

 

 次の日。昼休み中庭にて。

 学園内で人工魔剣による事件が起きた事は、すぐに王都内で広まった。当然オレも取り調べを受けたが、親父殿のおかげで早々に解放された。まぁ、オレは被害者だしね。

 

【ようやく動き出したのか――あの男が】

 

 誰だよ。

 しかし……随分と展開が早いな。本来なら半年後に起きる筈なんだけどな、人工魔剣事件は。

 

 特に【ナイトメア】【トリプルアクセル】【ブースター】の人工魔剣は、原作メインストーリーで登場する敵が使う人工魔剣だ。

 魔王に聞いた所によると、盗まれた人工魔剣の中にその三つがある事は確認できている。つまり、この原作ストーリーは起きる可能性が高いのだけど……。

 

【歪められた運命は、歪められた道筋しか示さない】

 

 今となっては、はたして何処まで原作が頼りになるのか分からない。

 とりあえずヒュースとしては、【ブースター】に気を付けたい……。

 

『確か原作のマスターが使うんだったか?』

 

 正確には死ぬ前に、かな。

 散々主人公に絡んで、邪魔して、全てから見放された原作ヒュース。魔法の効果を強化できる【ブースター】の人工魔剣を使って主人公に戦いを挑むけど、仲間を得て強くなった彼に付け焼き刃の力で勝てる筈も無く……。

 

『今のマスターなら、人工魔剣程度掌握出来るのではなくて?』

 

 いやー。どんなに強くても欲深いと途端に魔獣化するから……四天王もそうだったし。

 それにオレにはアランとテレシアが居るから要らないっしょ。

 

「ヒュース」

 

 ヒョッコリと影から顔を出す魔王。

 どうでも良いけど君それ気に入っているの?

 

「学園の影中を探ったけど、人工魔剣を持っていそうな人間は居ない」

 

 そっかぁ。昨日教師に連れて行かれる前に魔王にコッソリと調査を依頼していたのだけど、どうやら学園の中には犯人は居ないらしい。

 

 ……動き辛くなるなぁ。昨日の一件で中央騎士団の一部が学園の警備に当たることになったと親父殿から聞いた。

 そしてその責任者がデュランダル。あのおっさん、よくオレの居る学園に来る気になったな。

 

『警戒はしておけ。ああいう自尊心の高い人間は、どの様な行動をするのか予測できん』

『簡単に外道に堕ちる事もあるわ』

 

 随分と実感の伴った言葉だな。

 

 しかし問題は山積みだな、オレの学園生活。

 あの件についてもどうにかしないといけないし。あのクソ王子め。

 

「し、知らねぇよ! お前の勘違いだろうが!」

「だったら! アンタはなんであの人たちの墓参りに行かないの!? ジョニーさんからお墓の場所は聞いているんでしょ!?」

「……他人のお前には関係無いだろうが!」

 

 ……ん? 何だか言い争う声が聞こえる。

 声のした方向を見ると、校舎の陰で二人の男女が言い争っていた。というか原作主人公とファーストちゃんじゃん。知り合いだったのか?

 

『明らかに、穏やかな雰囲気では無さそうだが』

 

 そうだねぇ。何故かファーストちゃんが詰め寄っている。対して原作主人公はタジタジになって言い訳を繰り返しているみたいだけど……。

 

 ……うーん。

 

『……どうした、マスター?』

 

 いや、そのね? ちょっと魔王に調べて貰った事があって、さ?

 でも、その、うーん。正直オレの手伝いをしてくれてる二人には言い辛い事なんだけどさ。

 

『……臆さずに言ってみてちょうだい?』

『我らはそこまで気の短い方では無い』

 

 ……昔物干し竿にした時滅茶苦茶キレた上に、しばらくスネた癖に?

 

『そのせいで、そこの魔王に物干し竿呼ばわりされたんだが!?』

 

 まぁ、その話は置いておいて。

 二人が聞いてくれるって言うから言うけどさ、オレの悪い噂の出所さ……原作主人公っぽいじゃん?

 

『確証は無いがな』

 

 オレも信じてないけど……というより信じたくないんだけどさ、状況証拠的に一番可能性があるんだよね。

 結局、可能性の話だからグダグダ考えても仕方ないから置いておく事にしたけどさ。

 ……ただ。

 

『ただ?』

 

 ……オレに対する態度が主人公らしくないかなーって思う時があるんだよね。

 今もファーストちゃんの話を聞く気が……あっ、逃げた……。

 ……うーん。

 

『マスター?』

 

 ……。どうしたんだよ主人公。

 お前は確かに父親のエルドを殺されて何処か不貞腐れたけど、あんな顔しているファーストちゃんから逃げるような奴じゃなかった筈だろ?

 お前は、もっと鋼の精神を持った傑物じゃなかったか……?

 

 

 

【オレは、何のために……】

 

『マスター!』

 

 ――うん? アレ、オレ今何を……?

 ……なんか、変な事を考えていた気がする。頭の中に靄がかかったみたいな?

 あれ? いつの間にかファーストちゃんが居なくなっている。何処行ったんだろう。

 

『……彼女も立ち去ったわ。かなりイライラしながら、ね』

 

 ふーん……痴情のもつれって奴かね? 若者は大変だ。あ、オレも肉体的には同い年か? がはは!

 

『……大丈夫? マスター? かなり無理しているように見えるけど』

 

 ……まぁ、ちょっと嫌な気持ちになったけどオレの考えすぎだよ。【アイツは本当は主人公じゃない】。期待し過ぎてたのもあるかも?

 ここまで頑張って来たし、それにゲームとは違うってのも分かっている。【エ■■アが可哀そうだ】。ファーストちゃんみたいな子も居るし。

 【リオンはリオン】じゃないし、【■■■アを】救う為にも、頑張らないとな。

 

『マスターがそう言うのなら、我らは従うまでだ』

『でも嬉しいわ。マスターの素直な気持ちを聞けて』

 

 オレ、普段からかなり素直だと思うが?

 ……さて、メンタルリセットして余裕ができた。

 

「魔王」

「なに?」

 

 いつの間にか居なくなっていた魔王を呼ぶと、再びオレの影から顔だけ出して来た。

 冷静になったら気付いたんだけどさ。また人工魔剣使い、学園に入っているよね?

 

「うん。()()()()()

 

 ……だよなぁ。先日の【W】の人工魔剣使いに襲われた時もそうだったけど、魔王やオレに気付かれない様にこの学園に侵入するのもおかしい話だ。

 特に魔王は、オレと違って待機状態の人工魔剣の気配も感知できる。光の魔剣と融合しているから。劣化レプリカとはいえ同じ存在に気付ける筈。

 

 しかも、今回は二人が別の場所で現れている。片方は……。

 

現代の英雄(ファースト)勇者の末裔(リオン)が相対しているか」

 

 あの二人なら大丈夫かな。早々負けないだろ。特に英雄ちゃん。もしあの子が二人居たらオレも危ないくらいには強い。

 

 それじゃ、オレは……誰かを襲っている方を片付けるか。

 魔力を全身に巡らせて身体能力を強化し、ひと跳びで人工魔剣使いが居る場所へと向かう。

 ……これは、学門付近か?

 校舎や生徒を眼下に収めつつ、校門前の人だかりを見つける。どうやら丁度中央騎士団が居たみたいだが……人工魔剣使いに圧倒されている?

 

「ぐっ……怯むなぁ! なんとしてでもお助けしろぉ!」

 

 む、どうやら誰かが人質に取られているらしい。

 中央騎士団も安易に手出しできずに居るようで、先頭に立つ男……デュランダルが物凄く焦った様子で攻めあぐねている。

 あいつ、オレを散々煽った癖に。私が居れば貴様の出る幕はないとかなんとか。

 

 とりあえず――。

 

「瞬刃剣」

【がっ……!?】

 

 背中から伸ばしていた触手を斬り裂き、捕まっていた子を抱える。

 

「きゃっ」

 

 腕の中から可愛らしい悲鳴が聞こえる。かなり小さくて華奢な子だな。でもごめんよ、助ける為だから我慢して――って。

 

「あ、ありがとうございます……!」

「……」

 

 腕の中でこちらを見上げるのは、小柄な美少女と言っても過言ではない子だった。栗色の髪をした……。

 その子は、オレを見上げると瞳をウルウルと濡らして頬を赤くして息を呑む様子を見せる。傍から見たら恋愛漫画の1シーンなんだよな。

 ……うん。とりあえず。

 

「き、貴様ヒュース! 余計な事を――」

「受け止めろ」

「え? きゃああああ!?」

「うおおおおおおお!?」

 

 煩くこちらに文句を言おうとしていたデュランダルに向かって、オレは抱えていた栗色の子を投げ渡した。二つの悲鳴が聞こえたが、大丈夫だろう。

 

【ヒュース・カルタルトォ! お前のせいで、僕はこの学園にぃ!】

 

 目の前の魔獣化した人工魔剣使いは、【V】の宝玉が埋め込まれた禍々しい剣を持ちながら吠える。またオレの名前を叫んでいる。オレ恨まれ過ぎて草。

 

『言っている場合か』

 

 せやね。触手……いや、蔓の先から様々な魔法が込められているのを確認できる。

 懐かしいな。デビルスネークの時を思い出す。あの時はアランの指示が無いと、どんな魔法が来るのか、どれを斬れば良いのか、どう動けば良いのか理解していなかった。

 だが、今は自分で動く事ができる。

 

【死ね! ヒュース・カルタルト!】

 

 ドパパパッ! と幾つもの蔓から火、水、風、岩と様々な魔法で作られた砲弾が襲い掛かる。

 そのうちの火、水、風といった実体の無い魔法弾は打ち消すようにその辺で落ちていた剣で弾く。多分やられた中央騎士団の剣だな。

 岩の実体のある魔法弾は逸らして、背後の人が居ない場所に落とす様にする。

 

「きゃあああああ!?」

「あいつ、人の事を考えないのか!?」

 

 考えて被害出さない様にしとるやろがい!

 魔法弾を全て打ち消した後、大地を踏み締めて一気に距離を縮める。アランとテレシアを使いたいけど、衆目の前で聖剣はともかく魔剣は使えない。だから普通に倒す必要がある。

 

 つまり、人工魔剣に埋め込まれたモンスターの攻略方法を探さないといけない。

 単純にゴリ押しで倒す事もできるが、それだと人工魔剣に取り込まれた人も死んでしまう。

 故に、どんなモンスターが素材にされているのかを理解しないといけない。

 そして、それを推測する材料は魔獣化している時の姿と魔法、そして宝玉に書かれている文字。今回は【Ⅴ】だ。

 

『植物の蔓に、その集合体の様な肉体。そしてVと来れば……』

『【バインド】。魔法を使っている事から、上位互換の【バインド・マテリアル】かしら』

 

 確か、その魔法って攻防一体の魔法だったな。蔓による打撃攻撃と相手の魔法を受け止めて吸収する特性があった筈だ。

 だったら、さっきの様々な属性魔法による砲弾は中央騎士団の魔法を吸収したって事か。

 つまり放ってくる魔法を防ぎ続ければ弾切れを起こす……が、そこまで待ってやるつもりはない。

 

「全部削ぎ落す」

『脳筋ね』

『我は合理的だと思うぞ』

 

【ヒュース・カルタルトぉおおおおおお!】

 

 ほとんど理性が残っていないのか、同じことしか叫ばない人工魔剣使い。全身に巻きつけている蔓が殺到するが、その全てを斬り裂きながら止まらずに本体に詰め寄る。

 

【ぐおおおおおおお!?!?】

 

 そのまま本体を斬りつけるが、ガキンッと鉄を叩いたかのように固い音が響く。

 ふむ。鈍らとはいえオレの魔力で強化したのに刃が通らないという事は、魔法による概念防御が仕込まれているな。それも、この人工魔剣使いとは別の誰かの手によって。

 

 だったら、アランとテレシアを使えば解決なのだけど周囲の目が邪魔だな。

 ……正攻法では倒せない、か。

 

「――なら」

 

 オレは人工魔剣使いの懐に潜り込み、蔓の一つを掴んで思いっきり上空に向かってぶん投げた。

 

【な、何を――】

「天国へ連れて行ってやる――一瞬だけな」

 

 そしてそのまま思いっきり蹴り上げた。概念防御によりダメージはないが衝撃はある。さっき攻撃した時に確認していた。

 そのままオレも跳躍し、蹴り上げられた人工魔剣使いに追いつきさらに上空へと蹴り上げる。それを宙に舞っている塵を蹴って追いつきさらに蹴り上げ――それを数十回繰り返す。

 

 すると地上から遠く離れた空に人工魔剣使いと二人っきりになり――これで心置きなく聖剣と魔剣の力を使う事ができる。

 

「聖剣解放――テレシア・F・R・リザメルニカ」

 

 右手に白き極光を纏った聖界の剣を、

 

「魔剣解放――アラン・L・G・フェシルクス」

 

 左手に黒き波動を纏った魔界の剣を、

 

聖魔合剣(せいまごうけん)――絶界之一太刀」

 

 そして解き放つのは相反する力を融合させた、オレたちの最高の一振り――剣技と魔法を合わせた秘奥義。

 この斬撃は世界そのものを断つ剣。魔法だろうが、呪いだろうが、全てを無に帰す神殺しの一撃。

 音すらなく斬ったという事実だけを残し、人工魔剣と使用者。契約と呪い。呪縛と浸食。全てを切断し――目の前の魔獣は爆発し、気絶した少年と砕けた人工魔剣が重力に従って落ちて行った。

 

 ふっ、決まったな。

 

『カッコつけている所悪いけど、早く回収しないとあの子死ぬわよ?』

 

 やっべ。

 オレは、テレシアさんの忠告を聞いて慌てて人工魔剣使いを追い掛けて地上へと向かった。

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