踏み台悪役貴族に転生したので、最強になって壁になってやる! 作:カンさん
「それで、話ってなんだファースト」
とある空き教室にて、ファーストは4人の生徒を集めていた。
人工魔剣使いと戦って、アレから1ヶ月経っている。
ルティナ・アロンダム。フィリス・クレセルト。クラウス・マッケンディ。ロデュウ・ギルバート。
それぞれが聖剣使いであり、学園に入る前にファーストが救った知古の人間でもある。
普段の生活では、彼ら彼女らとの接触をファーストは避けている。それは彼女自身の体質の話もあるが……一番の理由はリオンである。
「聞きたい事がある。リオン・フォーエンハルムについてどう思う?」
彼女の問いかけに全員が顔を見合わせて不思議そうな表情を浮かべる。何故、勇者の末裔について尋ねてくるのか、と。
まず初めに答えたのはルティナだった。
「うむ。あの者は強いな。一度模擬戦をしたのだが、有意義な時間を過ごせた。この私と剣技のみであそこまで渡り合える者はそうはいない」
まるで長年探し続けた想い人をようやく見つけたかのような言い方だった。
彼女目線、リオンは求道者のような存在に思えたのだろう。また、彼と話していると不思議と胸の奥が熱くなるのを感じていた。
次に答えたのはフィリスだった。
「わ、私はご存知の通り男の人が苦手なのですけど……リオンくんは何故か平気で……こ、この前も楽しい時間を過ごせました。えへへ」
クラウスやロデュウといった長年面識のある彼らに対しても、フィリスは顔を見る事ができなかった。異性が苦手で引っ込み思案な彼女が昔からそうだった。
しかしリオンに対してだけは初めて会った時から安心感を覚え、彼との時間を苦痛に感じず、ずっと一緒に居たいとすら思ったほどだ。
「兄弟のことか? あいつは男気のあるいい男だぜ」
クラウスはニヒルな笑みを浮かべながら答える。初めて会った時から気の合う友人であり、今では親友を超えて兄弟呼びだ。彼の為なら命を賭けても良いと、自然とそう思えるほどに。
「リオンは聡明な男だ。私は、彼の生き様を見習いたいと思っている」
ロデュウはリオンを尊敬していた。自分にはない価値観からくる考えや行動には関心させられ、固定概念に縛られている自分とは違う人間から学べるものはたくさんあると確信していた。
「なるほど。それで」
4人のリオンに対する想いを聞いたエミリアは、最終的な印象をさらに問い掛ける。
そんな彼女の言葉に彼らは顔を見合わせて――全員が同じ言葉を紡いだ。
――気持ち悪い、と。
「不可解だ。何故私は、関わりのないあの男にこれまでの想いを抱けるのか。理解できない」
「わ、私もです。普通ならおかしいのに、おかしいと思えない……」
「うむ……もしファースト殿が居なければこの違和感に気づけなかっただろうな」
「……なぁ、ファースト。これが以前言っていた【世界の強制力】とやらか?」
「……ああ。おそらくな」
ファーストは、ある日を境に気付いたことがある。
この世界は勇者の末裔リオンを中心に都合よく回っているのではないか? と。
その事に気づけたのは、彼女だけがこの世界が2巡目だと知っているからだろう。前の世界では全く名を聞かなかったリオンの名が、この世界では不自然なほどに、過剰に、耳を塞いでも聞えてしまうほどに賞賛の声が聞こえてくる。
さらには会った事がないのに、彼の名声を聞いた村の人たちがまるでリオンを神様の如く崇んでいた光景を見た時は恐怖すら感じた。
誰もがリオンを好いていた。理由なく。
そしてそれは、目の前の聖剣使いにも作用していた。
人の嘘が分かるファーストは、彼女たちが本心からそう言っているのが分かるだけに、この異常さに内心震えている。
「なぁ、フィリス。これも催眠魔法の力なのか?」
ファーストから聞かされたリオンの催眠魔法の使用。その情報を聞いてもルティナたちは「何か理由があるのだろう」とどうしても彼に対して悪感情を抱けなかった。
しかし聖剣の力の影響か、この状況に違和感を抱けるだけの抵抗力はある。
ルティナの問いにフィリスは首を横に振った。
「ファーストさんの話によると、リオンくんは確かに使っていますがすぐに死に戻りをして無かった事にしています。それに、水魔法なら私もアクアも気付ける筈です」
フィリスは水の聖剣の使い手であり、水魔法のエキスパートだ。どんなに巧妙に隠されていても、もし使用していれば感知する事が可能だ。
現に、これまでファーストやリオン、ヒュースが倒した十数人の者たちから、中央騎士団や教師たちが気付けなかった催眠魔法の痕跡を見つけている。
「つまり……ファースト殿の推測通り、聖剣や魔剣を使った世界との契約であろうな」
呪いや契約を調べ尽くしているロデュウからしても、この状況を説明できるのはそれしかなかった。
運命の帳尻合わせは、時に人の理解から外れた現象を起こす。つまり、考える事自体が無駄であり、そういうものだと思うしかない。
「兄弟……じゃなくて、リオンを中央騎士団に突き出さなかったのもそれが理由か?」
「いや、それはまた別問題だ」
確かにエミリアは、リオンを中央騎士団に突き出そうとした。しかしそれをしなかったのは、ファーストを見つけた時に自分を殺した謎の男の存在があった。
あれ以来姿を見せていないが……彼女は理解していた。この王都に人工魔剣をばら撒いて自分たちに襲わせている黒幕は、あの男だと。
自分の背後に現れて即死させるだけの実力を持つ人間に対して、無策に挑むほどエミリアは馬鹿ではない。
故に彼女は――リオンを巻き込む事にした。彼を戦力として数える為に。
「なるほど、そういう事か。だったらオレ達も――」
「いや、お前たちは自衛だけしていろ。死なれたら面倒だ」
協力を申し出ようとしたクラウスを、エミリアは切って捨てる。
……今回、彼女が彼らを集めたのは釘を刺す為だ。人工魔剣の騒動から離れる様に、と。
これまでにも何度か人工魔剣の事件に巻き込まれているエミリアだが、その度にクラウス達は助力に駆け付け――何度か死んでいる。
その度にエミリアはすぐに己の命を絶って助けているが……正直疲れていた。
これまでの付き合いから、彼女がそういう選択を取っている事を感じ取ったのだろう。クラウスたちは押し黙る。
……これは余談だが、クラウスたちが死んだ時リオンは大いに動揺し動けなくなっていた。死に戻りの選択をする暇もなく、そのまま無力化される程には。
(……黒幕は、
最たるものが石化魔法だろうか。人工魔剣使いたちは自分たちを殺しに来るが、その前に必ず石化魔法で無力化してくる。
彼女自身も石化魔法によって動けなくなり、その後死に戻った事から体が砕かれたのだろう。そういう痛みを感じながら、黒幕への苛立ちを募らせていた。
もしかしたら、黒幕は自分たちの力を……。
「
「――それはできない」
しかし、彼女の言葉をクラウスが強く否定した。
「オレたちは、お前を救うためにここに来たんだ! そして、しっかりとオレ達の声を聴いて、オレ達の姿を見てほしい! ――お前が救った人間たちを、しっかりと!」
「……ふん」
クラウスの言葉にエミリアは何も返さない。肯定も否定もせず、話は終わりだと言わんばかりに空き教室を去っていく。
そんな彼女の背中を見送るクラウスに、ルティナが言った。
「クラウス」
「……なんだよ」
「やはり方法は
彼女との問いに、クラウスは悔しそうに頷く。
古代の文献や聖剣たちから聞いた話では、やはり光と闇の魔法、聖剣と魔剣の力が必要だと。
「人工魔剣の呪いのシステムは、聖剣や魔剣の契約を参考にしている。それを破棄するにはやはり……」
「そうなると、本当のファーストが持っているであろう闇の聖剣と光の魔剣が必要か」
ロデュウが彼女を救える方法を口にし、それができるのは前の世界のファーストだとルティナが断言する。
その力さえあれば、エミリアを救えると彼らは考えている。
「急がないといけません」
フィリスは、聖剣アクアの力を使ってエミリアを見ていたから理解していた――もう時間はない、と。
「ファーストちゃんの命は……もう半年もありません」
「「「――っ」」」
――エミリアの体にはとある人工魔剣が
その力によって彼女は様々な力を得ているが、同時に幾つかの代償を払っている。
「彼女は……本来持ち得ない身体能力、強力な闇の魔法を会得している……」
「その分命を削っている、て事か」
「というよりも、死ぬ時期を予め決める事による能力の獲得。潜在能力の底上げですが」
つまりエミリアは、約3年前に自分が死ぬ日を決められた事により強くなる可能性と手段を与えられた。人工魔剣によって。
それによってエミリアはどんどん際限なく強くなっていき、ついには前の世界のファーストを超える力を手に入れた。ヒュースには及ばないが。
「ここ最近、アイツの強さが急激に上がっているのは死に戻りだけじゃないって事か」
「はい。おそらく死期が近づいたことで呪いの力が強まっています」
「なるほど。だから――」
「だからアイツは、同じ話をオレたちに何度もしているのか……!」
……エミリアは、過去の記憶の欠落が起きている。両親の顔や自分を助けてくれた恩人の顔も、声も、思い出も――幸せな出来事を忘れている。
さらにここ最近はクラウスたちとの時間を忘れる事があり……直近のやり取りを繰り返す事が増えて来た。
つまり彼女の記憶の欠落は、彼女にとって幸せな事から始まることを意味し、クラウス達との時間はエミリアにとって心の支えになる程に尊いモノだった。
彼らはそれを嬉しいと思うと同時に、悲しいと思う。
故にこの事をエミリア自身には言わない――傷つけてしまうから。
「……リオン殿や人工魔剣について忘れないのは、呪いの影響だろうか」
「分からねぇが……急ぐぞ。アイツを救うために」
彼らはエミリアを救うために探し続ける――救世主を。
(……そういえば)
ふとフィリスは思い出した。
(人工魔剣使いのうち、何人かは後遺症が無かったな)
しかし彼女はその小さな違和感を認識できずにいた。
◆
「げっ」
「ちっ」
クラウスたちに警告した後、
こちらを見た途端嫌そうな顔をするリオンに思わず舌打ちをしてしまう。
「なんでお前が此処にいるんだよ……」
「呼び出されたからだ」
「はぁ? お前も?」
コイツとは学園で何度も行動を共にしているからか、噂で付き合っていると言われ続けている。腹立だしい。虫唾が走る。
それにお前も、という事は……コイツも彼に呼ばれたのか。
「お待たせしましたお二人とも」
声の下方向を見ると、そこには女子生徒の服を着た――この学園で何かと有名な聖女クリスが居た。
「リオン様。先日は助けてくださりありがとうございました」
「い、いいよ。勇者として当然のことをしただけさ」
聖女クリスの言葉に、リオンはだらしなく鼻の下を伸ばして答えた。気持ち悪い。
彼が今述べたお礼は、【G】の人工魔剣使いが起こした騒動だろう。犯人は聖女クリスに恋した生徒らしい。噂だとヒュースにフられたのに、尚も仲良くしようとする聖女クリスに脳が破壊されたとか。……脳を破壊する魔法があるのか。ちょっと怖いな。
「それで? 話ってなに?」
「はい。実は私がこの学園に来た理由と関係があるのですが」
そこから語られるのは、彼の真の目的。
何でも、聖女クリスは今回の人工魔剣の騒動を聞きつけてその解決の為にこの学園に転入したらしい。王族の命によって。
しかしなかなか人工魔剣使いと遭遇できず、事件が起きても
「だから、こうしてコンタクトを取り今後は助力しようかと」
「クリスちゃん……! ああ、分かった! これから一緒に頑張ろう!」
……嬉しそうだなコイツ。おおかた、聖女クリスと仲良くなれるなら好都合とか考えているんだろう。もしくは絵物語の様に聖女と勇者で相性が良いと考えているのか。
……
しかし、その前に。
「ヒュース・カルタルトには声を掛けないのか?」
「おい、別にいいだろうアイツは」
「……ヒュースさんは呼べません」
「何故?」
「彼は――人工魔剣製造者と関わりがある可能性がありますので」
――嘘じゃない、か。
「だったらアイツを捕まえるべきじゃないのか!?」
その言葉を聞いた途端にリオンが声をあげる。嬉しそうに。
……コイツ、ヒュースをこの学園から追い出したいのか? 少しは感情を隠せよ。
しかし聖女クリスは首を横に振るだけで、リオンに賛同しない。
「可能性の話があるだけです。それだけで彼を糾弾する事は難しいのです。しかし、お二人には極力あのお方には接触しない様に。それと、私の事も内密に」
「……君がアイツに迫っていたという噂ってもしかしてヒュース・カルタルトの事を調べる為に?」
リオンの問いに、聖女クリスは言葉には出さずに頷く事で応えた。……なるほど。
するとリオンは何処か嬉しそうに、ホッとしたように彼の答えに喜んだ。
「そっか。もしかしたら洗脳でもされて、好感を抱くようにされているのかと思ったよ」
……それはお前だろうが。
「フフフ。リオン様は冗談がお上手ですね」
「そ、そう? へ、へへへ」
きっしょ。思わず顔を顰めて舌を出しそうになった。
「お二人の活躍はお聞きしております。どうか、お力を貸してくださいませんか?」
「ああ! こちらこそよろしく頼む!」
リオンは差し出された手を握ってだらしない顔で笑っていた。見てられないな。何でコイツの顔だけ……。
聖女クリスはリオンからの助力を得て、次はこちらに視線を向けてくる。……うーん、ここは。
「条件がある。でも
「はぁ?何だよそれ」
苛立ち交じりに苦言を零すリオン。
「リオン様。ここはどうか」
「分かったよクリスちゃん!」
聖女クリスの言葉で、不満顔だったリオンはウキウキ顔で従った。……なんだかなぁ。
しかし、部屋を出る前にリオンは聖女クリスにある事を聞いた。
「今回の人工魔剣の騒動の黒幕って誰か知っている?」
「はい、存じております。天魔の狂気と呼ばれる人工魔剣使いです」
「……そうか。あの女が黒幕か」
聖女クリスの言葉を聞いてリオンは、顔をしかめて義憤にかられた表情を作る。
……何がしたいんだろうか。それに天魔の狂気の事を知っているのか? 数年前に指名手配された人間だけど、最近は名前を聞かなかった。それに……。
……いや、こいつの行動にいちいち勘ぐっても意味が無いな。
リオンが出て行ったのを確認し、
「ファースト様。それで要件と言うのは――」
「その前にさ、言いたい事があるんだけど」
先ほどまでのコイツの言葉から、
人畜無害な話し方をしているが、
「人に物を頼む時は嘘を吐くべきじゃない。――特に
コイツはとんでもない大嘘吐きだ。
さっきリオンに黒幕は天魔の狂気だと言っていたけど――コイツは嘘を教えた。
リオンは気に入らないけど、嘘で人をコントロールするのはもっと気に入らない。
そして何より。
「アンタ、何で女のフリしているの?」
「……フフフ。情報通りですね現代の英雄さま」
……口調は変わっていないけど、纏う雰囲気が明らかに変わった。どうやらこっちが素の様だ。
それにこの物言い……。
「
「ええ。その呪いについても」
――嘘じゃない。
「……どのくらい知っているの?」
「全てですわ」
――なるほど。嘘じゃない。つまり……。
「――誰から聞き出した?」
普通ならあり得ない。
「いいえ。誰にも聞いておりません。調査から来る推測でしたが、ファースト様の反応で確信に変わりました」
「……」
「それと、聖剣使いの方々に調査をする際はなるべく痕跡を残さない様に助言してあげてください。アレでは、治療法から逆算して貴女の身に何が起きているのか容易く推理できます」
「……ちっ」
今のコイツの言葉に嘘は無かった。つまり……
頭に血が上って短絡的な行動をして、コイツに答えを教えてしまった様なものだ。
舌打ちをついて剣を収める。これで不利になったのは
あとアイツら一回しばく。余計な事を……
「バラされたくなかったら手伝えと?」
「いいえ。その様な事は致しません。私が人工魔剣をどうにかしたいと思っているのは、ファースト様なら理解なされている筈」
「……」
「さて、何故女性のフリをしているかと言いますと、そうしなければならない立場に居るからです。私の本当の名を、本当の姿を知られる訳にはいきませんので」
偽名と性別の偽装。確かにそれだと本当の自分を隠すことができるな。
……それにしてもどんな変装をしているんだ。誰も違和感を気付かないだなんて、相当な技術か元々の容姿が中性的だとか?
「信頼はできませんよね。しかし、それでもよろしいです――貴女には嘘を吐きません。呪いについても公言致しません」
「……」
「ただ――あの男を止めてほしい。それができるのはファースト様かリオン様のどちらかと思った……それだけです」
――男。つまり……今回の事件の黒幕は
「今回の一件。誰が黒幕なの?」
「名は私も知りません。しかし二つだけ確定している情報があります。一つは天魔の狂気を殺した男である事」
……天魔の狂気を殺せる程の人間、か。そうなると相当強い。
天魔の狂気とは、かつて勇者エルドと世界を救った魔女だ。しかし旅を終えて暫くして勇者エルド、ジョニーさん、マリアンと仲違いして……戦闘の後に行方不明になった。
リオンもその事を知っていたみたいだけど……この情報は限られた人間にしか知らない筈。
……
……いや、嘘の情報を教えた事から聖女クリスは試したのか?
「そしてもう一つは――人工魔剣に刻まれた魔法のイニシャルが【F】である事」
「――」
F……だと。
頭に血が上るのを感じる。動悸が早くなるのを感じる。――私の憎悪に人工魔剣が活発になるのを感じる。
……コイツは、
「――アイツが居るのか」
ああ、そうか――そうかそうかそうかそうか……そうだったのか!
確かにアイツなら簡単に天魔の狂気を殺せる。いや、アイツに対抗できるのは光の属性を持つ勇者の力と、何度も殺されてあの魔法の耐性を持った
そして――やはりあの時、
「よく調べたね。アイツの事を」
「前々から目を付けておりました。……あれは、人工魔剣が生み出した怪物。早急に対処しなくてはなりません」
「分かっている――
……つまり、今回の人工魔剣に選ばれた人間たちはアイツの実験動物って事か。
そうなると目的も見えて来る。人工魔剣使いが魔獣化の果てに自滅する前に倒さないといけない。それを後何回も。
「分かった。協力する。でもアイツを殺すのは
「ええ。存じております。その為にも情報の共有を致しましょう」
反対に聖女クリスも重苦しい空気を出している。
「……予想はしておりましたが、まさか本当にあの禁断の魔法が刻み込まれているとは。製作者は何を考えているのでしょうか」
「対処法はある」
そしてそれができるのは死に戻りが可能な
……アイツがあの男に勝てる未来は見えないけど。
「……一つ聞きたい。ヒュース・カルタルトは、本当に人工魔剣製作者と関わりがあるの?」
「はい。その製作者と敵対していないのは確かです」
……嘘ではない。つまり助力を頼むのは難しい、か。
おそらくヒュース・カルタルトは今回の件が終わった後裁かれる可能性がある。それだけ人工魔剣の存在はこの国にとって害悪だ。……
むしろもし敵に回ったら……勝てないだろうな。
しかし、
いや……今考えても仕方ないか。
「残念だ」
「……さて。これで聞きたい事は以上ですか?」
「うん。これでもう……ああ、待って。一つだけある」
聖女クリスが、リオンに言った嘘について確認したい事がある。
「アンタ、リオンの事どう思っているの?」
「はい! 大嫌いでございます」
――うん。こいつとは仲良くできそうだわ。