踏み台悪役貴族に転生したので、最強になって壁になってやる!   作:カンさん

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第三話 光の聖剣と闇の魔剣

 

 いや、オレもさ? てっきり主人公と魔王が持っている筈の聖剣と魔剣だと思っていたんだよ。色が違うけどデザインがそのままだったから。

 だから正直、彼らの剣を寝取ってしまったのかと落ち込みながらも、何故か既に契約結ばれているから取り敢えず自害して契約を破棄しようと思っていたんだ。

 

『何だコイツ。ヤバすぎるだろう……』

『自分の命を何だと思っているの……』

 

 だまらっしゃい。

 それで名乗りを聞いたら光の聖剣と闇の魔剣って……何だそれ、聞いたことが無い。

 

『それも仕方がないだろう。我らはこの場でずっと封印されていたのだ』

『という事は、あの子たちは無事に使命を全うしている様ね』

 

 なーんか意味深な事言っているけど、オレには関係ないぜ。

 

『こやつ』

 

 闇の魔剣から苛立ちを感じるが、無視だ無視。やれやれまったく、人を焦らせやがって……。

 しかし、光の聖剣と闇の魔剣か。ちょっと考えれば確かに存在してもおかしくないな。

 原作に登場する聖剣と魔剣はそれぞれ5本だ。地水火風はどちらも共通して存在するが、聖剣と魔剣はそれぞれ光と闇しか存在しない。

 

 あ、勇者が闇の聖剣で魔王が光の魔剣ね?

 

 実はネット掲示板でも存在の考察はされていたんだよな。闇の聖剣があるのなら光の聖剣が、光の魔剣があるのなら闇の魔剣があるに違いない、と。

 しかし設定集で言及される事もなく、リメイク版で出て来ることもダウンロードコンテンツで登場する事も無かった。

 結局担い手がそれぞれ聖剣と魔剣の相反する力を有していたから、と落ち着いた。タイトルにも書いてあるし。

 もしかしたらオレの死後追加された可能性があるが、それを語り出したらキリが無いし無意味だ。

 

『我らにそのような話をされても困るのだがな』

『あら? 私は興味深いわよ? この世界が絵物語の様に伝わっている異世界。是非とも行ってみたいわ』

 

 思考を整理する時は誰かに話を聞いて貰った方が早いからね。勝手に頭の中を覗いているんだ。覚悟しろ。

 

『契約を結んだのは早計だったかもしれんな』

『でもこの子なら厄災を完全に倒せる可能性が高いわ』

 

 ……ふむ。どうやらこの二本は正真正銘の聖剣と魔剣の様だ。

 聖剣と魔剣も実は同じ存在で、違いがあるとすれば製作者くらいだったりする。魔剣側が敗戦国が作った剣だから魔剣だなんて禍々しい名前で呼ばれているだけだ。

 

『随分と詳しいわね。流石は異世界の知識といったところかしら』

 

 オレとしては、オレみたいな異物の存在を飲み込めるキミたちの方がやばいな、と思うけど。

 

『簡単な話よ。私たちも元々はこの世界の人間ではなかったの』

『……ああ、そうだ。いわば我らと汝は同胞のようなものだ。話せば長くなるが、アレは――』

 

 あ、良いっす。興味無いんで。

 

『斬り刻んでやろうかクソガキ!?』

『随分と喧嘩腰ね?』

 

 いきなり小僧呼びして来た相手に、何故友好的な態度を取らんといけんのだ。

 アンタらが誰か知らないけど、人に物を頼む態度ではないでしょ。失礼過ぎる。

 

『む……』

『それは……ごめんなさい。貴方の言う通りだわ』

 

 まぁ一番の原因は、オレのせいで原作滅茶苦茶にしちゃったのか!? という焦りと、これまでの努力が無駄になりかけた怒りなんだけどね。

 つまり八つ当たりなので、別に謝らなくても良かったりする。

 

『なぁテレシア。こいつやばいぞ』

『私は面白いと思うわ』

『そうだった。こやつも頭のネジがぶっ飛んでいるんだった……』

 

 それはそれとして。

 意図せず聖剣と魔剣を手に入れてしまった。しかしこれはラッキーだ。

 聖剣と魔剣は願望を叶える力を持っている。

 

 一生遊んで暮らしたいと願えば、仕事をすれば大儲けし、何もせずに遊んで暮らしていても何かしらの偶然が重なって大金を得る。

 

 異性にモテたいと思えばその通りになるし、特定の人物に好かれたいと思えばその人の心を奪える。

 

 まさに誰もが追い求める伝説のアイテムだ。

 

 尚、聖剣使い、魔剣使いとしての使命を反故にすれば、願いの逆転が起きて悲惨になるので注意しましょう。 

 

『ふん。我らの存在を理解していながらその様な態度を取れるとは。大物か、大馬鹿者か分からんな』

『ふふ。私は後者だと思うわ』

 

 まぁ、願いや欲望は簡単には得られないって事だからね。等価交換の法則って奴? 知らんけど。

 

 さて、オレの願いと欲望は一つだ。重ね掛けはダメとは言わないよな?

 

『構わんぞ』

『その分叶えられる願い(欲望)はより強固なものになるわ。その分聖剣使い、魔剣使いとしての使命が強く課せられるけど……』

 

 まぁ、大丈夫だろう。そっちにとっても得だと思うよ?

 にしても聖剣と魔剣の二重契約か……ラストバトルの主人公を思い出してテンション上がるなぁ!

 

『興奮しとらずに、早く欲望を言わんか』

「はいはい。全く、せっかちなんだから。

 

 オレの願い(欲望)は『原作主人公に相応しい最大の壁となるライバルキャラとして役割を全うする事』だ。詳細は脳内で思い浮かべるから、よろしくな」

 

 そう言ってオレは思い描いた原作主人公に相応しいライバルキャラをイメージする。ふふふ。前世含めて長年思い描いたヒュース・カルタルト(偽)だ。異論は言わせんぞ。

 

『――貴様、正気か?』

『嘘でしょ……』

 

 開始数秒で異論を唱えられたんだが?

 

『しかしこれだと……』

『思い違いとかではなく?』

 

 割と余裕な態度を見せていた女性の声すら震えてやがる。

 オレの完璧なヒュース・カルタルト(偽)に感動したのかな? もしくは戦慄しているとか?

 

『狂人を見て恐怖しているだけだ……』

『私、長年色んな人間を見たけど君みたいな子は初めてよ』

 

 うるさいな! それで? 叶えてくれるの!? 君たちの悲願も叶える手伝いになるんだからぶつくさ文句言わないでよ!

 

『――最後に聞く。本当に良いのだな?』

 

 当たり前だ。一度死んだ身なんだから、この世界でくらい好きな生き様を刻まさせてくれ。

 

『後悔しないのね?』

 

 どのみち君らに出会わなかったとしても色んな禁書を調べて実行していた事だ。

 だから叶えたくないなら契約は無しだ。

 

『――敬意を称する我がマスター』

 

 なんだいきなり?

 

『我は貴様ほどに狂いつつも、そこまで一途な願いを持った人間に出会った事が無かった。

 故に決めた。其方を我がマスターとして認め、最期まで見届けてやるとな』

 

 ……そうか。ちょっと嬉しいな。自分でも正直どうかと思う願いだったから肯定されると承認欲求満たされて気持ち良いぜ。

 

『私も貴方に従います、我がマスター』

 

 女性の人!

 

『テレシアです。私自身、欲深い方だとは思っていましたが……それ以上の強欲な人には初めて出会いました。

 貴方のこれからの物語を間近で見られる喜びに感謝します』

 

 めっちゃべた褒めじゃん。なんか上から目線で気に喰わないなコイツら、と思っていたけどちょっと好きになれそうだ。

 

「んじゃ、これからよろしくなアラン! テレシア!」

『ああ』

『はい。永遠に』

 

 白と黒の光がオレ達を包み込み、こうしてオレは聖剣と魔剣の使い手に選ばれた。

 

 

 

 

 さて、先ずは此処から脱出しないとな。

 ここはラストダンジョンの最下層である。シロ助と一緒に来た時は運良くモンスターに遭遇しなかったが、地上に向かう道のりにうじゃうじゃとモンスターの気配を感じ取れる。

 聖剣と魔剣の使い手に選ばれたからか? このダンジョン自体がオレに対して脅威と捉えているのかもしれない。

 

 最も、聖剣と魔剣の力を試すのに都合が良い。

 

「グルルルル……ギャオオオオオオ!!」

 

 一歩最下層から出てみれば、巨大な蛇の化け物が現れた。首元に悪魔の羽根が生えているから、デーモンスネークだな。このダンジョンで最強枠に位置するモンスターだ。

 最下層の一つ上だからコイツが現れるのは当たり前である。ダンジョンボスの一歩前のボスモンスターと言えば分かりやすいか。

 

「カロロロ」

 

 蛇なのにこいつには手足が存在する。これが本当の蛇足ってか?

 さらに伸び縮みする為、ダンジョン内という閉鎖空間では脅威度が増す。単純に回避しずらい。

 ギュムギュムと一度長く太い胴体に無数にある手足を沈めさせて、そして一気に解放してオレに向けて伸ばしてくる。ゴムみたいな挙動だな。

 

「――はッ」

「――!?」

 

 生半可な斬撃では傷一つ付かない筈のデビルスネークだが、光の聖剣の力によって容易く両断する事ができた。さらに体が勝手に動き、殺到する無数の手足を斬り落としていく。

 

 やっぱり凄いな【光】の力は! 予想通り、この光の聖剣は魔王の持つ魔剣と同じ力を持っていた!

 この世界に置ける光の魔法の特性は、他の属性の魔法を無効化する力を有している。原作主人公も光属性の魔法を操り、ピンチの時はその力を使って幾度も己や仲間を救っていた。

 さらに言えば魔王もこの光の力を使い、主人公以外の聖剣の力を無効化していた。唯一主人公だけが魔王を倒せるんだよな。だから厄災に乗っ取られるシーンの絶望感は凄かった。

 

「やはり、ダンジョンのモンスターは厄災の魔法扱いか」

『そうね。だからこそ得られる魔素が多いのよ』

 

 つまりダンジョンのモンスターにとって光属性は天敵なのである。主人公は光属性の攻撃魔法を持っていないからレベリングに苦労するんだよね。

 しかしオレは違う。

 光の聖剣を振るえば振るう程デビルスネークの腕を斬り裂き、どんどん距離を詰めていく。デビルスネークの腕は斬り裂かれた場所から魔素へと変換されて徐々に消滅していた。

 

「ギュオウム!」

 

 あとは両断するだけだと聖剣を構えた瞬間、突如デビルスネークが口を閉じて喉の奥から音を立てる。すると体の奥から何かが逆流したのか顔付近が膨らみ始めた。

 こいつ水魔法(ゲロ)発動させる(吐く)つもりだ!

 すぐさま地属性の防御魔法を発動させる。地属性は水属性に強いからな。

 

『マスター。地属性ではなく、火属性の魔法を使用してください』

「――ああ」

 

 え? なんで? と問い掛ける前にオレは素直に従っていた。

 頭の中で思い描いていたイメージを書き換え、赤い魔法陣が描かれる。

 

「フレイム・シールド」

 

 眼前に業火で作られた渦上の盾が形成されると同時に、デビルスネークの水魔法が放たれる。

 するとジュワワッと音を立てて蒸発した。

 あれ? 普段よりも魔法の威力が上がっている? それに相手の水魔法がこっちの火魔法を掻き消さなかった。有利属性だとその効果を半減させる筈だが……。

 

『渦上で形成されるのなら、消される度に衝突して防いでくれます。我が主の規格外の魔力があってこそですが』

 

 そういえばレベルを上げて魔法で殴れば、不利な属性でもモンスターを倒せるな。それと同じか。

 

『加えて先ほどの水魔法は固体を溶かす特性がありました。地属性だと確かに有利ですが、流動していない分ダメージが通る可能性が高いのです』

 

 そう言えばゲームでも防御魔法使っても完全には防げず、ダメージ軽減されていたな。

 なるほど……こういう事もあるのか。

 魔法に対してまだ理解が足りていなかったな。

 

「カロオオオオオオ……!」

 

 感心していると、デビルスネークが新しい腕を生やし始めた。オレが聖剣で斬った腕は再生できない故の行動だろう。

 さらに生やした腕を起点に魔法陣を描いて魔法の発動準備に取り掛かっていた。

 地水火風だけではなく、2、3属性の複合魔法もあるな。モンスターは時々魔法を同時に複数発動させるが、こうして実際に見ると厄介だな。

 

「ギャオオオオオオ!」

 

 そして放たれる数多の魔法。多種多様な属性の魔法弾が弾幕となって解き放たれる。

 

『マスター。我で指示する魔法を斬れ』

「分かった」

『そして動きはリンクさせた意識で直接見せる』

「頼むぞ」

 

 理由を聞く前に口が勝手に従う。いや、別に拒否するつもりなかったけど。

 ……おぉ? 頭の中で剣をブンブン振り回している自分の姿が見える! なんか、こう、ゲームのキャラが動いているのを画面越しに見ているみたいな感じ!

 

『火。風。雷。砂。岩。水。氷』

 

 アランの言葉に従い、魔剣で言われた魔法を斬り裂く。すると次々に分解、吸収されていき、斬らなかった魔法は綺麗にオレだけを避けて後方に流れていく。

 というより、イメージ通りに動いたら踊っているみたいになっているんだけど? 大丈夫?

 

『問題無い』

 

 その言葉と同時に、デビルスネークの弾幕が止む。おー、ノーダメ。

 そして魔剣さんちょっと大きくなってない? それに色んな光が灯っているけど……これってもしかして。

 

『闇は全てを飲み込む原初の恐怖。蛇ごときの魔の力なぞ腹の足しにもならん』

 

 やっぱり! 主人公も闇の聖剣を持っていたんだけど、ヒュースの魔法を悉く吸収しては倍返ししていた。他にも仲間の魔法を一度受け止めて、増幅して打ち出すチームプレイもしている。

 闇の魔剣も同じ力があるみたいで、アランはそれを狙っていたのか!

 

『我が指示を正確に実行できるマスターの身体能力あってこその芸当だがな――さぁ、マスター。後は何も考えず一太刀浴びさせろ』

「ああ。そうだな」

 

 魔剣の中で暴れ回っている数多の魔法をギュッと一つに濃縮させる。すると様々な色を発していた光が、どんな暗闇よりも黒い光へと変貌した。

 

「ギ、ギュルルルァア……!?」

 

 力の奔流を感じ取ったのか、ここで初めてデビルスネークが後ろに退がった。恐らく自分の死をようやく感じ取ったのだろう。

 だが、もう遅い。

 お前の敗因は、聖剣と魔剣を手に入れてテンションがハイになっていたオレの前に出た事だ……!

 

 思いっきり踏み込み――次の瞬間、オレはデビルスネークの背後にいた。

 

「――カロ?」

 

 ピット器官でオレを探知したのだろう。すぐに振り向いたデビルスネークは、一見何もされていない自分の身に戸惑いつつ、しかしすぐにこちらに向かって大きな口を開けて襲い掛かって来た。

 しかし、その牙がオレの身を貫く事は無かった。

 バリッと音が鳴ったかと思うとデビルスネークの上顎と下顎が分かれて、襲い掛かった勢いのままオレを通り過ぎていき――魔素となって消え失せた。

 

「――我が糧となれ。悪魔の大蛇よ」

 

 キンッと音を立ててアランを鞘に戻しつつ、カッコいいセリフを言う自分に、少し照れつつも気持ちよかった。

 今のオレならシロ助にも刃を当てる事ができるかもしれない。

 

 それにしても――これが聖剣と魔剣の力か。

 

『ああ。そうだ』

『マスターの願い(欲望)はそれだけの内容って事よ』

 

 オレの【原作主人公に相応しい最大の壁となるライバルキャラとして役割を全うする事】を叶えて貰う際に二人に送ったイメージには、かなり細かくリクエストしていた。ふんわりとした願いや欲望では思っていたのと違う、と後に大きなズレが生じてしまうからな。

 

 そのリクエストの一つの中に、オレの強さについて言及した事がある。それは【オレがこの先死ぬまでの人生の中で、最も最高潮の状態をずっと維持し続ける】だ。

 初めは【最も強い時期の状態を維持する】とリクエストしようと思ったが、それだと限界を定めてしまい成長できないと思った。

 故に最高潮の状態を維持する事で戦闘中オレの才能が最大限に発揮される。先ほどの様に指示があったとは言え、本来格上である筈のレベルカンストしているモンスターを圧倒する事ができた。さらに経験値(魔素)も大儲けだ。美味すぎる。

 

『それができるのは、あのリクエストのせいだがな』

 

 何処か呆れた声を出すアラン。まぁ普通正気を疑うよね。でもオレは役割を全うするって事は、そういう事だと思っているんだ。

 

『もはや何も言わんさ。それを含めて我はマスターに惚れ込んだのさ』

 

 いやん。イケボに惚れただなんて男なのにドキドキしちゃう。

 でもオレ普通に女の子が好きなのでアランの気持ちには応えられませんごめんなさい。

 

『勝手に勘違いしてそのまま我をフるな!』

『ふふふ。楽しいわね。短い間だけど、マスターとの時間を楽しませて貰うわ』

 

 おけおけ。オレも君らには感謝しているよ。おかげでオレは最強に絶対になれると確信したからな。

 あと、君ら光と闇の力抜きにしても凄くない? 

 テレシアは魔法の事をよく理解している。伝説の賢者クルテリア以上では?

 アランもあの動き何処かで見たと思ったら、1000年前の勇者クラウディウスとそっくりだった。アランの動きの方が洗練されていたけど。

 

『あら、それは当然よ。元々この世界の魔法を作ったのは私。そしてクルちゃんは弟子1号ね』

『ふん。あのハナタレ小僧も現代(いま)では勇者か。時代は移ろうものだな』

 

 ……もしかして二人って物凄く偉い人?

 

『今はマスターの闇の魔剣だ。それ以上でもそれ以下でもない』

『だから変に意識しなくて良いわよ?』

 

 オッケー、そうさせて貰うわ。あと君らも変に畏まらなくて良いからね?

 ぶっちゃけ手伝って貰っている時点で二人は同志判定しているから。主従関係とかめんどいし。

 あ、でも剣技と魔法は教えてよ。二人に師事すればもっと強くなれるのは確定だからさ。

 

『……ふっ。ああ、分かった』

『私たちのシゴキはキツイわよ? 耐えられるかしら?』

 

 役割を全うするまで絶対に死なないから問題ないな!

 

 ……さて、そろそろ次のモンスターがやって来たな。

 感じる気配から、さっきのデビルスネークと同じくらいに強いな。だが、餌になるつもりは無い。

 

「行くぞ、アラン。テレシア」

『うむ』

『ええ』

 

 今度は光の聖剣と闇の魔剣を片手ずつに構えて、オレは正面から現れたモンスターに飛び掛かった。

 

 

 

 

 無事に異界の箱庭を脱出したオレは、そのまま帰路に着いた。辺りは暗く、夜行性のモンスターが活動的になる時間帯だ。

 それにしても結局シロ助は現れなかった。まぁ、また明日現れるだろう。その時には今の状態のオレと本気で戦って貰うか。今なら結構イイ線まで行けそうだ。

 

「――ヒュース!」

 

 街に入り、カルタルト家の屋敷に辿り着くと同時に怒気が含まれた声がオレに投げかけられる。

 やっべ。そういえば門限とっくに過ぎているじゃん。

 声のした方向を見れば、そこには顔を真っ赤にさせてこちらに向かって走って来る銀髪の男性が居た。

 マグナス・カルタルト。カルタルト家の現当主にしてオレの親父だ。

 

「貴様! こんな時間まで何処をほっつき歩いておった!!」

 

 カルタルト家に父の怒声が響き渡る。

 やれやれ。親父どのはオレの事好き過ぎだろう。親馬鹿にも程がある。いくらオレが可愛いからって束縛は良くないぜ。

 

「ああ。また貴様がいらん騒ぎを起こしていないのかと思うと……いっつ」

 

 そう言って親父殿は腹を抑えた。

 

『マスター。おそらくお前の父親は貴様を溺愛しているのではなく、ただ単にトラブルメーカーに頭を悩ませているだけだと思うぞ』

 

 そんな事ないって! 原作のヒュースがあんな残念なキャラになったのは、この親父殿が甘やかしていたからなんだって!

 まぁ根は善人だから、後にヒュースの所業を知って平民である主人公に土下座したんだよな。後、ヒュースは追放される。悲しきモンスターよ。

 

『十分マスターも悲しきモンスターだと思うわ』

 

 だまらっしゃい。オレの方が可愛げあるだろうが!

 ……そこ! 何故二人揃って首を傾げるイメージを送るんだ! 器用な事をしやがって!

 

「ヒュース! 何とか言ったらどうなんだ!」

 

 さて、なんて言い訳しようかな。もっとも、下手な嘘を吐いてもすぐにバレるから、本当の事を言ってみるか。普段の行いでどうせ信じてくれないだろうし。

 

『自覚はあるのか』

 

 ノーコメント。さて、何処から話そうかな。

 

「――オレは異界の箱庭の最深部に辿り着いた」

 

 ……あれ? また意識よりも早く言葉が出たんだけど?

 いや、それよりも……親父殿の様子がおかしい。

 先ほどまで真っ赤にさせていた顔が、青く染まっている。よく見たら体も震えてね?

 

「な、何を言っているのだお前は……?」

「事実だ。そして――オレは全てを手に入れた」

 

 ――空を仰ぎ見る。まるで、自分がこの世界の中心の様に。

 目の前の自分よりも背の高い大人である筈の親父が、この時だけはとてもちっぽけに見えた。

 ……いや、何このモノローグ!?

 

「父上」

「――」

 

 目を合わせた親父の目は――恐怖に染まっていた。とても実の息子に向ける目ではない。

 

「お、まえは……」

「……」

「お前は――誰だ?」

 

 いや、誰ってそんなの。

 

「ヒュース・カルタルトですよ――実の息子の顔をお忘れですか、父上?」

 ヒュースだって! んもう愛する息子の将来を約束された美貌を忘れるだなんて。ショックだよ、親父殿!

 

 

 

 

 

 ……うん。ナニコレ?

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