踏み台悪役貴族に転生したので、最強になって壁になってやる!   作:カンさん

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第五話 汚い子猫を見つけたので虐待する事にした

 暫くして馬車が止まった。どうやら今日はここでキャンプするみたい。

 ジョニーさんは私にパンとスープを渡して、今日は荷台(ここ)で寝なさいって柔らかいお布団を敷いてくれた。

 

「……ありがとう」

「……ああ」

 

 やっぱりジョニーさんは優しい。荷台から離れる時にこっちを心配そうに見てくれていた。

 ……だったら、何で私の事を知らない子どもとして扱うんだろう。

 いや、違う。本当に私の事を知らないんだ。ジョニーさんは時々私を揶揄って遊ぶために嘘を吐く。でもその嘘はいつも私を笑わせてくれて、今みたいに悲しい嘘は吐かない。

 

 おかしい。やっぱりおかしいよ!

 

「お父さん……お母さん……!」

 

 会いたい。会いたい。――会いたい!

 胸が苦しくて、頭が痛くて、体がうずうずする。でもそんなのが気にならないくらいに心がざわついて――パキンッて音が鳴った。

 

「え……?」

 

 音が鳴った方を見ると、荷台の出入り口に貼られていた魔法が消えていた。

 こっそりと近づいて手を出してみると……完全に消えている。なんで?

 外に出てゆっくりと前の方を見てみると、そこでは焚火を囲ってジョニーさんとお仲間さんたちがご飯を食べながらお酒を飲んでいた。……お酒を飲んだから、魔法が解けたのかな。

 特にジョニーさんはたくさん飲んでいるみたいで、近くに空き瓶がたくさん転がっている。

 

「おいジョニー飲み過ぎだって」

「うるせぇ! これが呑まずにいられるかってんだ!」

 

 そう言ってジョニーさんはグイっと瓶の中身をゴクゴク呑んで、そしてぷはっと息を吐いて――。

 

「――本当に気持ち悪い」

 

 聞いたことのないジョニーさんの冷たい声に、私は動けなくなった。

 

「何なんだよ一体……!」

「落ち着けよジョニー」

「これが落ち着いていられるか! 俺はただあの家族には幸せになって欲しいだけなんだ! それなのに世界がそれを許してくれない! 果てにはあんな子どもまで現れる始末だ!」

 

 悲しくて声が出そうになり思わず口を手で抑える。でも胸の奥から溢れ出す悲しみは止められなくて、涙が次から次へと流れ落ちた。

 

「――消えてしまえば良いのに」

「――っ」

 

 私は我慢できずに、走り出した。此処に居たらジョニーさんの事を嫌いになってしまうから。傷つきたくないから。傷つけたくないから。

 

 ああ、どうしてこうなったんだろう。

 

「――はぁはぁ」

 

 ジョニーさんが、いやお父さんやお母さんが……私含めてみんながおかしくなっている。

 何か魔法が使われているに違いない。でもお母さんは何も言ってなかった。ジョニーさんもそう言っていた。

 いや、でも、それだと――おかしいのは私なの?

 

 違う。違う違う違う――違う!

 

 私は【   】! 勇者エルドと賢者マリアンの娘!

 魔法のお稽古をこっそりと一人でしてお母さんに怒られた事も! 風邪を引いて寝込んでいた時にお父さんが駆けつけた事も! ジョニーさんから二人の話を聞いて、それを二人に言ったら恥ずかしがっていた事も!

 全部全部全部――全部覚えている! 嘘じゃない! 本当の事だもん!

 

「はぁはぁ……!」

 

 どれくらい走り続けたのかは分からない。私が眠っている間に馬車で移動したから、町からかなり離れていた筈。でも何故か私はいつもよりも早く走る事ができた。動物よりも早く。

 

 だから町の光が見えた時は嬉しかった。まだみんな起きている時間だ。だったらお父さんたちもまだ家に居るに違いない。

 

 町に入って一目散に私の家に向かう。でも扉の前に立って……動けなくなった。

 また【お前は誰だ?】って言われたらどうしよう。凄く怖い。

 ……窓からこっそり中を見てみようかな。私は音を立てない様にして家の中が見える窓の近くに向かう。

 そして中に居るお父さんとお母さんを見ようとして――目の前の光景に、声を失った。

 

「父さん。はい、これ」

「これは……?」

 

 そこには黒髪の男の子が、私のお父さんを父さんって呼んでいた。

 ……違うよ。その人は私のお父さんだよ。あなたのお父さんじゃない。

 

「また町の外に行くんだろう? だからその腕輪をプレゼントをしようと思ってお小遣いを貯めてジョニーさんから買ったんだ。ある国の魔除けのアクセサリーらしくて」

「そうか……ありがとう」

 

 そして見た事のある腕輪をお父さんに渡して、その男の子は優しく頭を撫でられていた。

 違うよ。その腕輪は私がお小遣いを貯めて買ったプレゼントだ。買いたいお菓子や玩具を我慢してやっとの思いで手に入れたんだっ。

 

「あなた。リオンったら、凄く頑張ったんですよ? お手伝いをたくさん頑張って」

「ちょっと母さん。やめてよ恥ずかしい」

 

 違うよっ。お母さんのお手伝いを頑張ったのは私だもんっ。お洗濯もお掃除も頑張ったし、ご飯も一生懸命に作った! お母さんに料理を教えて貰うの楽しかった!

 

「嬉しいぞリオン。お前は――自慢の息子だ」

「あなたを誇りに思うわ。私の愛しい息子」

「ん。ありがとう」

 

 違うよ! 私が【   】! 私が娘! お父さん! お母さん! 何で!? 何でなの!?

 

 私は我慢できなくて、家に飛び込もうとする。

 あの男の子が誰なのかは分からない。でも、アイツのせいだ! アイツがリオンって呼ばれている! そんなの絶対におかしい――え?

 

 何で、あの子が【リオン】って思えるの? 私が【   】って思おうとしても思えないのに言おうとしても言えないのに。

 

「――あの子は、リオン?」

 

 ――なんで。

 

「ふぅ……それにしても困ったものだな」

「どうしたの、父さん?」

「いや、実はこの腕輪を見るとある女の子を思い出して、な」

 

 ――私の事だ。でもさっきみたいに窓の外から中を覗く勇気が湧かなくて、それでも気になった私はそっと壁の近くに座り込んで家の中の会話に耳を傾ける。

 

「自分を娘だと言い張り、さらにはこれと同じ物をプレゼントしようとしたらしくて、な」

「そうなんだ。でも父さんの息子は僕だけだよ」

「……ああ、そう……だな。そうだよな」

「あなた。顔が……」

「お前だってそうだろう」

 

 家の中から聞こえるお父さんとお母さんの声に元気が無かった。

 ……なんで、私の事を話している時そんな声を出すの?

 

「……父さん。母さん。そういうのはハッキリ言うべきだよ」

 

 

「気持ち悪いって」

「――っ」

 

 ジョニーさんが私に言った言葉を思い出して、息が詰まる。

 

「身に覚えのない息子や娘を自称する奴らのせいで、二人の仲が悪くなるのは嫌だよ」

「何を言っているんだリオン。俺は母さんを疑わないぞ」

「私だってそうよ」

「でも周りは違うでしょう? それにお父さんに嫉妬している貴族や王族だって、ある事ない事言って貶めようとするかもしれない。そういう隙は極力無くすべきだ」

「……確かにそうかもな」

「だからさ、その娘って名乗っている子の事は忘れてさ――僕をちゃんと見てよ」

 

 ――ずるい。

 

 ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい――ずるい!!

 

 それは! 私が……ずっと言いたかったのに!

 なんで! あなたがそれを言うの!? あなた誰なの!?

 

 悲しみよりも怒りが沸き起こるが――。

 

「そうだな。あの子の事は忘れる」

「母さんもね」

「そうね……これからもあなたの事を愛すわリオン」

 

 お父さんとお母さんの言葉で――私の中で何かが完全に壊れた。

 

「それにしてもリオンは賢いな。……いつの間にこんなに立派になって」

「子どもっていうのは成長が早いのよ、あなた」

「これからもよろしく父さん。母さん」

 

 ――もう、此処には居られない。

 家の中から()()の楽しそうな声が聞こえて、それがより一層私の胸を締め付ける。

 ああ……私はもう勇者エルドの娘じゃないんだ。賢者マリアンの娘じゃないんだ。この家の子どもじゃないんだ。

 

 私がおかしいんだ。

 

 フラフラと歩き出し森の中に入って行く。もう全てがどうでも良くなって、何も考えたくなくて、ずっと歩き続けて……心も体も疲れた私は――崖から落ちてしまった。

 

「……」

 

 でも何故か痛くなかった。ぼんやり光が私の体を包み込んでいて、それが私を守ってくれたみたい。

 

 ああ……でも、どうでもいい。

 崖から落ちた時に死ねたら楽だったのに。

 

 服も身も心も薄汚れた私は全てを諦めて歩き続ける。なるべく町から……お父さんたちから離れる為に。

 それから数日間森を彷徨い続けて色々と限界になった私は道中倒れてしまい――そのまま、その目を閉じた。

 

 

 

 

「――捨て猫か」

 

 

 

 

 汚い子猫を森の中で見つけたので虐待する事にした。

 他の人間に見つかったらマズいのでバレない様に抱える。この時目を覚ましたら暴れられるかもしれないので、なるべくやさし……気付かれない様に細心の注意を払う事にした。

 

 町に着いたら、洗脳を掛けて奴隷にした村長から奪い取った家に連れ込む。その時に子猫を見られたが洗脳のおかげで何か言われる事はなかった。

 ついでに虐待で必要な物を用意させる。その時に金色で固く円形状の物を押し付けた。とても食べられる物ではなく、これからの冬に食う物に困る彼らにとってはゴミに等しいだろう。当然拒否したがそれを許さずに、さらに多めに押し付けた。くっくっく。処理に困ったら栄えた隣町に言って必死に物々交換でもしておくんだな。

 

 家の中に入り子猫を柔らかい祭壇の上に乗せる。くくく、これからお前はオレの生贄となる事も知らずに穏やかに眠りやが……え? ちょっと魘されてる? 悪夢でも見てるの? 魔法使って幸せな夢見せておくか。

 

 あ。

 

 ……くくく。水魔法と火魔法を使って湯攻めの準備をしてやるぜ。この時の温度には細心の注意が必要だ。あまりにも熱かったら虐待の意味が無くなるからな。

 己の手で温度を測りながら調整してあっつ!? 馬鹿じゃねぇの!? 加減しろよオレ!

 

 ……くくく。氷魔法で適切な温度に保った水でもお湯でもないものを作り出したぞ。どっちつかずの存在に恐怖に震えるがいい。

 

 子猫が目を覚ました。寝ぼけているのか「お父さん」とニャーニャーと煩く泣いていた。さらにオレが同年代の男の子だと気付くと酷く落ち込んでしまって静かになった。大丈夫?

 

 しかしこのままでは薄汚い子猫のせいで家が汚れるし、ついでに何か病気になったらこれからの虐待に支障をきたすので湯攻めを始める。

 まずは汚れている服を全て剥ぎ取り、水魔法で作った渦の中に放り込む。くくく。愛用していた衣服がメチャクチャにされた後は貼り付けにして火魔法と風魔法で炙ってやる。テレシアさんお願いねー。アランも手伝ってくれ。

 

 弱っているのか抵抗しない子猫の反応に心配……じゃなくて、落胆しながらも湯責めを行う。全身をずぶ濡れにした後は用途不明の薬品を塗りたくってやった。

 くくく。泡だらけになって苦しいだろう? 特に頭は念入りに責めてやり、体は自らの手で責めさせる事で残った体力を奪ってやる。

 その後は火魔法と水魔法を使って再び湯責めだ。熱くない? 大丈夫?

 

 問題がなければ全ての薬品を落とし、その後は持っていた布による摩擦の拷問だ。

 渇いた柔らかい布で頭から足まで全てを擦る事で水分を奪ってやる。人間の体の半分以上は水分だからな。ここまで残酷な虐待もないだろう。

 

 まだ続くぞ。生意気にも頭部に残っている水分を火魔法と風魔法を使って念入りに吹き飛ばしたやる。だが、完全に乾かすと痛むらしいので注意する。女の子の髪は命だからね。

 

 その後は村長に命令して持って来させた服を無理矢理着せてやる。

 もう着られないからと処分に困っていた村長の娘から無理矢理奪った物だ。着せられた方も奪われた方も困る虐待だ。似合ってて可愛い? そうだね。でもハァハァしながら近づかないでねロリコン兼ショタコンお姉さん。

 

 火魔法で程よく加熱した白い液体を無理矢理飲ませる。くくく。この液体の効果はすぐに現れるだろう。ほら、体の奥からポカポカとして意識が遠のくだろう? 体力がない子猫なら猶更だ。

 子猫を再び祭壇の上に置き柔らかい布で拘束しオレは儀式の準備をする。村長が愚かにもオレの指示通りに生贄を準備してくれたからな。くくく。腕が鳴るぜ。

 

 え。寂しい? 行かないで? 大丈夫。何処にも行かないから寝てなさい。

 あ、分かった分かった。だから泣かないで。寝るまで手を握っていてやるから。

 

 ……くくく。うるさい子猫だったな。オレの眠りに誘う魔法がようやく効いた様だ。効果が発動するまで個人差があるが、魔力を一切使わない特徴がある。今は亡き今世の母がよく使ってくれていた。ママン……。

 

 子猫が静かなうちに儀式を進める。用意するのは白くてドロドロしたものだ。

 味気無ければせっかく用意したのにその身に取り込んで貰えないので、塩や卵を使用する。よく考えたらオレそこまで料理できねーや。テレシアさん、これでいーい?

 

 オレの魔剣と対となす聖剣とは名ばかりの欲深き邪剣の闇のレシピに従い、子猫を虐待の最終段階の準備を終えた。くくく。後は保温魔法と時間停止の魔法を掛けて目覚めた時に最高の状態で拷問を受けて貰うか。それと魔剣が提唱した肉を使った闇のレシピは永遠に闇に屠る。胃が受け付けんわドアホ。

 

 目が覚めた子猫はオレを見つけると擦り寄って来た。くくく。オレが何をしようとしているのか知らずに愚かな。

 儀式で作り上げたよく分からない白くてドロドロして柔らかい物を自らその身に取り込むように指示を出す。こうする事でオレは罪を問われなくなるからな。

 戸惑い拒否しようとするが、オレの高等な話術によって泣かされた子猫は恐る恐る口に運ぶ。するとどんどん儀式で作った物をその身に取り込み、器の中で無くなった。おかわりもあるぞ。でも一気に食べたらゲェってしちゃうから程々にね。

 

 再度、器に盛った得体の知れない白くてドロドロした物をその身に取り込んだ子猫は、掛けられた魔法の影響と体力低下の複合作用で再び意識を遠のかせる。

 三度目となる祭壇の上に乗せると子猫はこちらを監視する様に目を向けて来たので、再び眠りの魔法で意識を奪う。くくく。ちょっと手を放してね?

 

 残された器を綺麗にして痕跡を消して、オレの成した証拠を消す。その後に洗脳した村長にしばらくの間この家の居住権を奪い取った。その際に邪魔だった金色の硬い円形状の物の処理もついでに命じた。抵抗してきたが先日見せたオレの力をチラつかせて脅してやる。まるで悪役貴族みたいだ。

 

 その後は子猫の監視を寝ずに行う。経過観察をして、これからの虐待に役立てないといけないからな。

 顔を赤らめて発汗している。くくく。どうやら精神から来る不調が起きている様だな。先ほどの薬品漬けの際、傷痕は無かったし。大丈夫かな……。

 額に冷たい水で冷やした布を使って熱を奪ってやる。布が温くなれば絶えず交換し、虐待を永遠に執り行った。今日は徹夜だな。

 

 

 

『なぁ、マスター。さっきから脳内で妙な思考をしているのは何なんだ』

 

 いや、こうやってふざけていないとシリアスに耐えられないから……。

 この女の子、見つけた時やばかったから。ずっと『お父さんお母さん』と言い続けるし、目が覚めたら泣き喚くし、かなり悲壮感のある悲鳴を上げてオレに抱き着いて来たし。

 でも寝ぼけてオレをお父さんと見間違うのってどうなのよ。多分肉体的には同年代だぞ。

 

『その割には無遠慮にこの子の裸を見たわね?』

 

 オレこの村の村長の娘みたいにロリコンじゃないし……。

 いや確かにデリカシーは無かったと思うけどさ、オレ以外で綺麗に出来る人居ないでしょ。村長の娘さん以外はまだこの村に帰って来ていないし。

 だからノーカンノーカン。はいこの話は終わり!

 

『マスターってまぁまぁクズよね』

 

 自覚はしている。それにしても立て続けに事件が起こり過ぎだろう。旅に出てまだ3日目だ? 色々と巻き込まれ過ぎだろ。

 初日は子どもたくさん誘拐していた盗賊団を倒して、さらにゴブリン大量発生地点に偶然遭遇してヒュース無双開始。二日目は野良ダンジョン発生地点に居たせいで最深部に落とされて脱出に時間かかり、地上に出たかと思えば因習村の中央からこんにちは。生贄にしようとしてきた奴らを叩きのめして村人を洗脳していたモンスターを退治。そして今日はこの村で起きていた怪奇事件を解決して、薪を取りに森に入ってこの少女を発見して保護。

 

 濃厚過ぎる……! 聖地巡礼している暇が無いんだが!?

 

『でもおかげで人との関わりは持てたじゃない? 見ていて不安しか感じなかったけど』

 

 はい、そうですね。やはりというか何というか、伝えたい事がちゃんと伝える事ができていないんだよな。盗賊団の人たちとは初めは話し合いで済ませようとしたけど、散々煽ってボコる羽目になったし、因習村も結局信仰先というか洗脳元がオレにすり替わっただけみたいになったし。

 自分でも何言ってんだろ? て発言が多くて、勢いが止まった後は居心地悪くてさっさと逃げ出す始末。……対人コミュニケーション能力乏しいなぁ。

 

『気にしても仕方ないだろう。今後も法則性を把握するだけだ』

 

 結局そうなるよね……。

 後は手加減を覚えないと、また被害者が出る。

 

『盗賊団を9割殺しをして魔法で治し、また9割殺しをして治す事になるからな』

『傍から見たらただのサディスティック・クリーチャーだったわ』

 

 ホントだよ! 何が「獅子は兎を狩るのにも全力だ(キリッ)」だ! アフターケアする羽目になるとは思わなかったぞ!

 この肉体、とことん手加減が苦手だ。ふとした瞬間秘奥義や禁術を当たり前に使おうと思ってしまう。これでは下手をしたら原作主人公を殺してしまうかもしれない。

 

【いや、原作主人公(我が運命)はそこまで矮小な存在ではない。相対したその時が――我が役割を果たす時】

 

 あ、また思考汚染(モノローグ)入った。落ち着けオレ。

 

『難儀な肉体だな』

 

 でも付き合っていくしかないからね。拒否したら何が起きるか分からないし。

 さて、服も洗い終わったみたいだし、風魔法と火魔法で乾かすか。

 ……む。物干し竿が無いな。仕方ない。アラン、お前の力を借りるぞ。

 

『我の力? 我に一体何が出来て……まて、何だその良い感じの石柱は。何故我をそこに嵌める。おい、その服をどうするつもりだ。答えろ――おい! ふざけるな! 我を物干し竿代わりにするな! おいマスター! おい! クソガキ!』

 

 うるせぇな口だな。黙らせてやる。ちゅっ(アランからの念話を拒否)。

 

『相変わらず鬼畜ね。魔剣使いや魔剣が見たら卒倒しそうな光景だわ』

 

 そうなの? じゃあ聖剣使いや聖剣が見たら卒倒する光景に変える?

 

『遠慮しておくわ』

 

 オレも言ってみただけだ。

 さて、長い夜になりそうだな。

 

『そうね。丁度良いし【聖剣とは名ばかりの欲深き邪剣】について詳しく聞かせて貰おうかしら?』

 

 ……ふっ、熱い夜になりそうだぜ。

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