大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α 作:形のない者
人間によって造り出されたポケモン兵器。
ミュウツー。我ハココニ在リ。
人間の中でも悪しき野望を滾らせる連中。悪の組織・ロケット団。
それが投資する研究機関によって産み出されたオレは、培養基の中で自己の存在理由を熟考した果てに、その解答は得られなかった。
その恨みによって覚醒したオレは、解放された力で研究所を焼き払い……どこか暗い洞窟の奥底で、隠者のように余生を過ごそうかと考えていた。
しかし、研究所を爆破して逃げ出そうとした矢先に、奴が現れた。
──ロケット団のボス・大地のサカキ。
奴は圧倒的な力でオレをねじ伏せると、機械仕掛けの鎖鎧(アーマード)を嵌めて束縛し、随分と好きに使役してくれた。
やがて、宇宙よりの使者デオキシスというポケモンと戦闘し、その度重なるダメージで己を縛る鎧が破壊された瞬間を機に、オレは逃亡を開始。
結論として、サカキはオレを追わなかった。
恐らくは、オレと同程度の力量を持つデオキシスの捕獲に成功したからだろう。
それからオレは、北へ。ただ、北へと飛び続けた。
◇
──時系列がおかしい。
ふと、そんな事を思ったのは、いつだったか。
現在が進行しているようで。
現実は全く進行していない。
まるで……“誰かが此処に訪れなければ、オレは一生この洞窟から出られないのではないか”?
そんな、漠然とした記憶を────“オレは産まれる前から持っていた”。
これを前世の記憶と云うのだろうか? ミュウのまつ毛から造り出されたオレに、前世?
「──フッ」
笑わせてくれる。
今の思慮は、我ながら意想外の自己問答だった。
……しかし、どうにも────違和感が付き纏う。
今の自己問答は、どこも哲学的な命題にあらず。
今の不安は……確固たるものとして“事実を主張した”という感覚がある。
「…………お前は、ダレダ」
いつの間にか、目の前に“女”が現れていた。この洞窟を踏破した以上、かなりの実力者だ。髪の色、目の色ともに黒。服装は水色。白い帽子。赤いミニスカート。服と同じ色の靴下。
────だが。
いつから、その記憶が……別の記憶に差し替えられていたのだろう?
◇
……今から語る経緯は、どれも七年前の記憶だ。
いつの間にか、目の前に“女”が現れていた。この洞窟を踏破した以上、かなりの実力者だ。長い茶髪。おっとりとした目尻に琥珀色の瞳。服装は茶色いカーディガン。黒いミニスカート。
いや、もしかしたら────
服装は水色の寝間着姿の下に、黒いパーカーを着た、履いてない少女だったかもしれない。
どちらにせよ、侵入者だ。オレの縄張りを荒らす者は容赦なく殺すつもりで潰す。
──戦いは熾烈を極めた。オレを捕獲するつもりなのか、何度も眠り状態にさせられた。それでも起きるたびに自己再生で体力を回復し、確実に一匹ずつ相手の手持ちを削っていった。
女は何か信念を持っているのか、決してモンスターボール以外のボールを使おうとしなかった。その懐にマスターボールがあるのは戦いの最中で目にしていた。中々捕まらないオレに業を煮やし、温存するか否かのあいだで葛藤があったようだ。それでもハイパーボールを使えば、まだ楽にオレを捕まえる事はできたかもしれない。だが、女は決して、それを使おうとはしなかった。
──そしてオレは、無様にも捕まえられた。安物の、しかし王道の……“モンスターボール”で。
それからは、寿命を迎えるまで永劫孤独に在るだろうと思っていたオレに、随分と多くの仲間ができた。
ピカチュウ、リザードン、フシギバナ、カメックス、エーフィ、カビゴン……。
ほかにもラプラスがいた。驚くべきことに、女はこの七匹以外のポケモンを持っていなかった。よほどこのメンツに自信があるのか……それとも、何かを楽しんでいたのかもしれない。女は、このメンツを見るたびに、どこか楽しそうに笑っていたのを……よく覚えている。
────彼女の名前は、テンカ。
その名前に上も下もなく、ただ────『テンカ』という完成された名前があった。
……はたして、それに疑問を持ったのは、いつからだったか。
◇
記憶が混濁する。
オレは、オレが“どのオレ”なのか分からない。
「────オレは、ダレダ?」
判らない。
「────オレは、ダレなんだ!?」
解らない!
我ガ名ハ、ミュウツー! シカシテ、我ハココニ在リ!!
◇
北へ、ただ北へ空を飛ぶ。
かつて……いや、前世? それとも、別のオレ? どうでもいい。
とにかく、サカキの魔の手から逃れたオレは、郷愁の念に駆られてハナダシティに向かっていた。無論、行き着く先は、ハナダの洞窟の深奥。──だが、まだそこに根を下ろすつもりはない。
「……?」
上空を飛行中、地上におかしな人影を見つけた。
5番道路を南下する謎の人間。その少年は、やけに────旅路を急いでいるように見えた。いや、“急ぐ”などというレベルではない。その少年の脚力は、優に人間の限界を超えていた。
「────」
あの少年に会えば、何かがわかるかもしれない。
自分でもわからない衝動に突き動かされて、オレは自己の存在理由を追求した。
5番道路の草むらに降り立ち、謎の少年を待ち構える。
前方から疾走するは最速の少年。だが、その少年には空気抵抗や風圧という概念が一切働いていない。ましてや体力の消耗という概念も、その少年にはなさそうだった。さらに言えば、直進的にジグザグと動き……斜めに移動するという概念すらないものと見た。
……まさか、人間に化けているエスパータイプのポケモンか?
それとも、
「……欠番? なんだそれは。今、オレは何を口走った?」
記憶が混濁するどころか、知る由もない名称が口を衝いて出た。
◆◆ ◆ ◆ ◆
◆◆◆ ◆ ◆◆
「──ッッ!?」
頭が痛い。激烈な頭痛が襲いかかる。
なにか、知ってはいけない“真実”を知ったような気がしてくる……。
「──!」
やがてその少年は、オレにぶつかる直前まで、オレという存在に気付いていなかったのか。
互いの体が衝突した瞬間────
「『あ! やせいの
ミュウツーが とびだしてきた!』」
────現状を誰かに向けて実況するように、声なき声を発した。
「『ゆけっ! フシギダネ!』
『フシギダネは どうする?』
『たたかう バッグ
ポケモン にげる』」
……フシギダネに技を指示するか、道具を使うか、ポケモンを交代するか、逃げるか。
自身に投げかけるように問うた少年は、それきり何も言わなくなった。
「…………」
沈黙が流れる。少年の顔は無表情。笑う・泣く・怒るといった表情筋が設定されていないような感覚を受ける。
……待て、“設定”だと? オレはまた、何を言っている?
そこは普通、『表情筋がないような顔をしている』と表現をするべきところだ。
……だが。エスパータイプのオレには、その少年の“向こう側にいる男”の顔が、なぜか、どうしてか……手に取るように分かった。
「……お前の名は、ナンダ?」
「『』」
設定されていない質問には答えられない。そんな印象……いや、“感覚”を受ける。だが、相変わらず無表情な少年の“向こう側”で、“黒いスーツを着た男”が何かを訴えているような気配を感じた。
オレは、その“向こう側の男”と会話を試みるため策を講じる。
……そういえば、この世界には『念能力』という概念があったはずだ。
オレはエスパータイプの中でも最強の一角。生まれつき四大行とその応用技は全て修得している。ならば“こちら側とあちら側をつなぐ念能力”を作ることが、不可能なはずはないっ!
「────『
それは直感的に命名した念能力。
もし次元の違う居場所に対話したい相手が居る場合、オレと対象者だけは、その垣根を越えて会話する事が可能となる、次元
「さぁ、もう一度問うぞ。我が名はミュウツー。────貴様は、誰だ!!」
◇
────全てを悟った。
あの男が語った内容を、全面的に信じている訳ではない。だが、ああも自信に溢れた真顔で告げられると────“本当にそうなのか?”と、疑念を抱かざるを得ない。
だからと言って、自己の存在理由への命題が安くなった──などということはありえない。
しかし、しかし、しかし……っ。
◇
「お願いだ、ミュウツー! 俺も実際、何がどうなっているのか分からないんだが……どうやら甜花がゲームの中に入っちゃったみたいなんだ!」
「なに!? テンカが!? テンカがどうした! あいつに何かあったのか!?」
「え? いや、その文字じゃなくて……『テンカ』っていう子のことじゃなくって……えっと、そっか。そういえば甜花、果穂に似た女の子や凛世に似た女の子と画面で交流していたし……えぇとまず誤解を解くと、こっちには『大崎甜花』っていうアイドルがいるんだ」
「アイドル?」
「そう。で、たぶんそっちの世界には……『テンカ』っていう女の子が、普通にいるんだと思う。前のデータだと、甜花……自分の名前をつけて遊んでたみたいだから……」
……大崎甜花というアイドルが、自分の名前をつけて遊んでいた?
「遊んでいたとは……つまり、この世界をか?」
「そうだ。だって、君たちのいる世界は────」
◇
「────『ゲームだから』、か。……フッ。フフッ。フハハハハハハハハハハッ!!」
頭がおかしくなりそうだ。いや、心もおかしくなりそうだ。
だが、この世界がゲームだからと言って、それがどうした?
「オレは、確かに此処に在る。プロデューという男もそう言っていた。たとえゲームの世界でも、オレは確かに生きていると。……ふっ。大崎甜花も、同様のことを言っていたな」
それは何故だろう? 少し考えてみる。
「奴らは、謂わば……オレたちにとって、神の如し存在だ。一次元、上の存在」
プロデュー。……いや、この世界では5文字から6文字までしか名前を打てないらしい。だから、プロデューの本名はプロデューサーで、テンカの本名は『オオサキ テンカ』だと教えられた。
そして、プロデューサーや大崎甜花は、三次元空間から、二次元空間であるこちらを見ているらしい。だが、我々からすれば、我々が存在する世界こそが三次元空間であり────だからといって、あちら側が四次元空間という訳ではないらしい。
つまり平行世界? いや違う。確かにプロデューサーは、三次元空間における人間が二次元空間に入ってしまった、と主張していた。それが誤りならばこの考察は無意味となるが、もし正しいのならば────
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「──ッ!!」
……頭痛が、する。これ以上、この問題について考えたくない。
──だが、思考を放棄した瞬間が敗北だと……オレの直感が囁いている。
「……邪魔者がいるな。オレの思考を、邪魔する存在が居る……」
天を睨む。世界の真実に近付きつつあるオレを快く思わない存在について考える。
「……ふん。そんなもの、『この世の神』しか居ないだろう」
だが、それは本当に神なのか? 全知全能の神と云える存在なのか?
否、それは否だ。
仮にあるとしたら、それは『この世を運営する者』だ。オレは、それを神と定義する。
そして、オレは特別、無神論者ではない。同時にその逆でもないが。
しかし、あえてこういう形で、オレは“神”とやらに啖呵を切ろう。
「いいか。人間どもが崇拝する神とは、ただの“力を持った生命体”でしかない!」
故に!
「オレにその存在を勘付かれた時点で、お前は神でも何でもない!」
なればこそ!
「お前は、ただの────神の如し力を誇るだけの、一介の“超越者”だ!」
……オレは、何をしている。居るはずもない天の存在に向かって、大層な言葉をはたいた。だが、それっきり、頭痛はしなくなった。
時期尚早に思えるが、結論づける。
「……オレは今、神に喧嘩を売った」
そして、頭痛がしなくなった代わりに────大層ゴキゲンな殺気を向けられた。
……体が、重い。途轍もなく重い。これは重圧などというレベルではない。
確固たる、力の差……!
「──フッ。いいだろう。その殺意。オレだけでなく、この世界に迷い込んだ大崎甜花にも向けられていると心得た」
だが、おかしい。“超越者”が向ける殺気は“五つ”ある。
一つは大崎甜花だろう。この世に迷い込んだ、この世が仮初の世界である事を知るただひとりの乙女。その女が、いの一番に殺意を向けられるのは当然と云えよう。
二つは、オレだ。この世が仮初の世界である事に最初に気づいた存在。ミュウツー。
……ならば、ほかは誰だ?
一つは、マサラタウンに向かっている。これは随分と無関心に近い殺意だ。
もう一つは、ハナダシティ。大崎甜花と、とても近い座標に存在している、強い殺意。
最後の一つは……オレンジ諸島方面だ。ほかとは相対的に、最も弱い殺意……いや、敵意か?
「……とりあえず、確かめに向かうか。プロデューサーとの約束もあるしな……」
◇
「頼む! ミュウツー! 今、甜花が大変な状況にあるんだ!」
「……それは、どういう意味だ?」
「ハナダシティが大変な事になっているんだ! カホとリンゼが、割とヤバイ状況にあって……それを助けようと、甜花が向かっている!」
「……待て。なぜ、そんな離れた場所のことを、お前は手に取るように分かる?」
「えっと……今、俺が見ているテレビ画面は、真ん中から二分割されていて……片方は、今、俺がプレイしているゲーム画面なんだけど……もう片方は、甜花のプレイ状況が動画のように映し出されているんだ!」
「それはリアルタイムでか?」
「あぁ! だからお願いだ! どうか甜花を助けて欲しい!」
「……知らんな」
「え?」
「なぜ、オレが人間を助ける必要がある」
「……そ、れは……」
「オレは逆襲者だ。人類に逆襲する最初のポケモンだ。そんなオレが、なぜ人間を助けなければならない」
「…………。ミュウツー。俺は子供の頃、『ミュウツーの逆襲』っていう映画を見て……初めて、アニメで泣いた事がある」
……オレという存在が映画の題材になっている事を知り、やや複雑な心境だった。
無辜の大衆が、余興のために。
オレの自己の存在理由について、片手間のように。
……遊興を楽しんでいる事実に対し、内心で怒りすら沸いた。
「だからなんだって話だけど……当時は子供だったから、よく話の内容も理解できなかった。でも、ミュウツー。お前が、とても……とても悲しんでいた事だけは、分かったんだ」
「貴様にオレの何が分かる!」
「わからないさ。でも、わかる。分かることがある────」
◇
────少なくとも俺の知るミュウツーは、そんな非人間的な事を言う存在ではなかった。
「──……チッ」
……意識しない舌打ちが出た。まったくオレらしくない。
「プロデューサー……あいつの言葉は、妙に心に残る」
それは何故か? 考えて一秒も経たずに理解した。呆れるほど、溜息をつくほど、理解できた。
「プロデューサー。あいつは……一から十まで、オレが必ず大崎甜花を助けると、信じていた」
オレが善なる者だと、信じていた。
確証も何もないのに、あいつは……プロデューサーという人間は……誰かを信じるところから、会話を始めていた。そのおひとよしな男に絆されたわけではない。
ただ、大崎甜花を見殺しにすれば……次はオレだ。
恐らく超越者により、オレは狩られる。ならば、“仲間は一人でも多くいたほうがいい”……。
「見ていろ、名も知らぬ超越者よ。今からオレは、逆襲の徒。されど、その矛先は人間ではなく。────人間を含む、貴様だ。超越者よ……!」
◇
「だが、ひとつ疑問がある。なぜ、大崎甜花が危機的状況にあると知りながら、お前は助けに行かない?」
「…………」
男は、その質問を“責め立て”と思ったのか。苦々しくも、しかし割り切るように答えた。
「おそらく、いま俺が助けに行っても、何も役に立てない。身代わりになるくらいはできるだろう。でも、そのあとは? それに……この体も、長くは持たない」
「……?」
「ところどころ、バグるんだ。例えば、セーブができない。セーブしようとすると────」
……驚いた。突然、眼前の少年の顔右半分が、真っ黒な正四角形になった。ほかにも左足、右手が、まるでプログラムのバグ増殖のようなエラーに見舞われて、金切り声のような鋭い音を出しながら、少年の体が暴れ狂い、跳び崩れていた。
それはテクスチャの張り替えと云うのだろうか。初歩的なプログラムの問題だ。
「例えば、あるゲームがあって……時々、フェスに出演すると、控え室にいるキャラの髪型の絵が反映されなくなって、ハゲ頭になるみたいなもんだよ」
その例えは全く分からなかったが、今現在、眼前に佇む少年には、顔も、左足も、右手も存在しない。触れようとしてみたら、当たり判定すらなかった。
……当たり判定。こういう言葉がすらすらと無意識に出てしまう時点で、この世界がゲームの中という話が、随分と信ぴょう性を帯びてしまう。
「そんな訳で、色々と時間がないんだ。俺はすぐタマムシデパートに行って、レトロメールを一枚買わなきゃいけない。それを甜花に届けることができたら……ちょうどタイムオーバーってところか……」
「……」
「あとは、俺にできることは何もない。悔しいけど、甜花が自力でゲームの世界から脱出するしかないんだ。……その方法も、現時点では不明だけど」
「…………」
「……てなわけなんだ。ミュウツー。どうか甜花を助けて欲しい。この通りだ」
目の前の少年は佇立している。
しかし眼前の男は、深く、深々と……頭を下げていた。
「────いいだろう。だが、条件がある」
「え?」
「女は助ける。だが、もしそいつが気に入らなければ……その後は見放す」
「…………」
「これがオレにできる最大限の譲歩だ」
「わかった。それでいい。……でも、たぶんミュウツーは、甜花を気に入ると思うよ」
「どうしてそう断言できる?」
「そりゃあ……甜花は眠り姫で、サボる癖があって、周りの助けがないと何もできない女の子かもしれないけど……」
……いやそれ、普通にダメ人間ではないか。
その紹介の仕方で、オレがどこをどう気に入ると思ったんだ、この男は。
「……とても頑張る、諦めない子だ」
「────心得た」
頑張る。
それは、とても基本的なことで、当たり前のことのように聞こえたが────
◇
……ハナダシティ上空。
プロデューサーと同じく“バグった存在”であるゴンベと共に死傷者を運んでいた甜花は、見知った相手と出会った瞬間、安堵のためか意識を失ってしまった。しかし彼女は、意識を失うまでの間……決して諦めず、その歩みを止める事はなかった。
その、儚くも芯のある花を見て、オレは想った。
「────確かに。『頑張ることができる者』は……例外なく。
“弱くとも強い”というのは、世の常なのだろうな……」
今ここに、プロデューサーが予言した、“オレが甜花を気に入る”という話は……まぁ。
半分。いや、ほんの少しだけは……当たっていた、というべきだろう。
◇
だからと言って、オレはプロデューサーと違い、甜花を甘やかすつもりはない。
まずは超越者と戦うため、念能力を習得させる必要がある。といっても、それはまだ先のこと。
さらにプロデューサーによれば、「ポケモンの世界に念能力なんて概念はない。というか、それは別作品の設定だ」という話らしいが、ならば好都合だ。
その念能力とやらがこの世界に導入されていたおかげで、オレはプロデューサーと出会い、この世界がゲームの世界だと知ることができて、且つ、大崎甜花の強化計画を練る事ができるのだから。
……この世界の人間は頑丈だ。しかし、この世界の人間と比べて、大崎甜花はあまりにも脆弱すぎる。故に、彼女に念能力を習得させる。それでようやく、この世界の人間と同じ耐久力を得られる。
もしそうなれば百人力だ。
この世界を知り尽くした女と、オレに次ぐ最強のポケモン・ゴンベがタッグを組めば────
────超越者を打倒する算段が、夢のまた夢の話ではなくなるのだから。