大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α   作:形のない者

25 / 44
朽葉色の章 ~Orange Chapter~



朽葉色の章 ~Orange Chapter~
第24話 せんりつポケモン!


「コミヤカホさんとモリノリンゼさんは、全治一週間の大怪我です。面会はできますが、手術後も目を覚まさず、眠りに就き続けておりますので、お見舞いの際は静かにお願いします」

 

 看護婦から退院の許しを得た甜花が、カホとリンゼの容体について訊いた時。

 淡々と返された言葉が、それだった。

 

「……え、えっと……お邪魔、しまぁす……」

 

 二人が眠っている病室にお邪魔した甜花は、白い寝台の上で眠り続けているカホとリンゼを目にする。

 額に包帯を巻いているリンゼ。

 腕を折ったのかギプスを巻き、点滴を打たれているカホ。

 

「カホちゃん……モリノさん……」

 

 心配するように呟く甜花は、眠り続けている二人に向けて、ある決意を語る。

 

「……ごめんね、二人とも……甜花……先を、急がないと……だから……」

 

 申し訳なさそうに謝罪した甜花は、花瓶の横に置き手紙を残す。

 

「────……っ……て、甜花……さん……まって、ください……!」

「──!」

 

 その時、曖昧とした意識の中でカホが目を覚ました。病室を去ろうとする甜花に手を伸ばすが、起き上がる力がなく、伸ばした手はぐったりと落ちる。

 

「あ……カホちゃん……動いちゃ、だめ……!」

「お……おいてかないで、ください……あたしは、まだ……っ!」

 

 それは甜花に向けて言った台詞か、それとも夢を見てうなされているのか。無理やり起き上がろうとするカホを抑えるため、甜花は乱れるシーツを直しながら語りかける。

 

「お、置いてかないよ……! ……──でも、甜花……早く、このゲームを、クリアしないと、いけないから……っ」

 

「いや、です……あたしも、いっしょ、に……

 やだ────……おにい、ちゃん……」

 

「……!」

 

 ──お兄ちゃん。

 確かにカホは、そう言った。

 

(お兄ちゃん……? そういえば、果穂ちゃんにはお兄ちゃんがいるから……じゃあ、こっちのカホちゃんにも……?)

 

「ぁ……あの、甜花、さん……」

「な、なに……?」

 

 今にも気を失いそうな状態のカホは、それでも訊きたい事を質問する。

 

「あたし、たちは……仲間、ですよね……?」

「────!」

 

 ──仲間。

 その言葉の意味は多岐に渡るが……この場合は、『旅を共にする仲間』だと、甜花は解釈した。

 

「うん……! 甜花と、カホちゃんと、モリノさんは……仲間! だから……ちゃんと怪我を治して、退院できたら……絶対に、追いついて来て……!」

 

「……──えへへっ……それが聞けて、よかった……です……────すぅ……」

 

 嬉しそうに微笑んだカホは、そこで力尽き、眠りの世界に落ちていく。

 一方の甜花は、カホが風邪を引かないようシーツを掛け直し、二人を起こさないよう抜き足差し足で病室を後にした。

 

 そして、花瓶の台に残された置き手紙。

 その内容は────

 

『カホちゃん。モリノさん。ごめんね。甜花、先に行きます!!!

 でも甜花、ふたりが好きだから……できれば一緒に旅がしたい!!!!!

 だから……もし、怒ってないなら……追いかけて来てほしいです!!!!!!!』

 

   ◇

 

 早朝。ポッポのさえずりで目を覚ますポケモンセンターの一般トレーナーたち。

 しかし甜花は、隣の二段ベッドで爆睡するゴンベの大きないびきのせいで寝不足であり、誰もが目を覚ます喧しい鳴き声に意識が浅くなる事もなく、むにゃむにゃと眠り続けていた。

 

 そうして、彼女が目を覚ました時刻は……なんと、お昼の一時ごろだった。

 

「あうう……」

 

 今までカホと寝起きを共にしていた甜花は、しっかりもののカホのおかげで朝早くに起き、食事をはじめとする規則正しい生活を営んできたが。一人になった途端、元の生活リズムに逆戻りしてしまい、朝限定の定食を逃してしまっていた。

 

   ◇

 

 腹ごしらえを済ませた甜花とゴンベは、クチバシティをさまよい歩く。

 食堂から拝借した爪楊枝で歯ぐきの間を磨くゴンベと、キョロキョロと周囲を観察する甜花。

 

「……い、いないよね……? ロケット団、とか……」

「ゴンゴン!」

 

 必要以上に怯える甜花に対し、ゴンベは────だいじょぶ、だいじょぶ。

 そう言いたげに、適当な鳴き声を上げる。

 

「……だよね。それにゴンベがいれば、下っ端程度なら安心だろうし……」

 

 甜花も、ゴンベの言うことを汲み取れるようになってきたのか相槌を打つようになる。そうして一人と一匹は、ジム探しのついでにクチバシティの観光を始めた。

 

 まずは露店販売に乗り出していたフレンドリィショップで特売のキズぐすりや状態異常なおし、それと耳栓など最低限の道具を買っておく。ゴンベの寝息がうるさいためだ。

 そして、ふと気づけば露店の棚にあった木の実が全部なくなっており、なんとゴンベが一息で全部丸呑みにしてしまった事実が、誰の目から見てもその膨れた腹で判明してしまう。

 何度も店主に頭を下げた甜花は、道中のトレーナーバトルで貯めたパンパンの財布から札束を取り出し、あまりの大金に目を丸くする店主をよそに支払いを済ませて、なおも痩せることのない財布をリュックサックにしまう。そのまま──食べ物のあるエリアから──逃げるように、ゴンベの手を取って逃げ出した。

 

「……はぁ、はぁ……焦った……。もう、ダメだよ……ゴンベ……? もう二度と、黙ってお店のものを食べないでね……?」

「ご~ん」

 

 毛の中に隠し持っていた二本目の爪楊枝で歯の掃除をするゴンベは、上の空で返事をする。

 

「……えーっと、ここ……どこだろ……」

 

 無我夢中で大通りを走っていたら、一通りの少ない小道に入ってしまっていた。しかし大勢の子供たちが騒ぐ声の方向へ歩いていけば、公園に出られることが容易に分かるため、甜花はそちらへ進もうとする。

 

「……ゴンッ」

 

 しかしその歩みは、ゴンベの呼びかけで止められた。

 

「……? ゴンベ、どうしたの……?」

「ゴン! ゴンゴン!」

 

 細道の先を指差して怒鳴るゴンベは、突然なにかを追いかけるように走り出す。

 

「あ、待って、ゴンベ……!」

 

 慌てて追いかける甜花。

 入り組んだ路地裏を右に左に疾走する。

 

 やがて煉瓦の家と家との間に設けられた、小さな憩いの場。中央に一本の若木が生えており、両隣に木製のベンチが置かれた場所に、甜花たちは辿り着く。

 

「い、行き止まり……ど、どうしたの? ゴンベ……」

 

 息を切らしながら呼びかける甜花だが、当のゴンベは空中の一点を注視して動かない。

 

「……そ、そこに……何か、居るの……?」

「ゴン!」

 

 頷くゴンベ。

 彼は相手がポケモンであるためバトルする気満々なのか、首の骨を鳴らして腕を回す。

 

 だが、その戦意を飄々と受け流すように────

 透明状態を解除した一匹のポケモンが、軽やかに地面に降り立った。

 

「────あ……」

 

 その姿を見た甜花は、あまりの流麗さに目を奪われる。

 流れるようなエメラルドグリーンの長髪。黒いドレスを思わせる容姿。艶やかな白い生足。

 

「Raa~」

 

 さらに、聴く者すべてを魅了する、気高くも美しい歌声。

 

 そのポケモンの名は────

 

「────メロエッタ……!」

 

 ……まさか、こんなところで幻のポケモンと遭遇できるとは。

 自身の幸運に歓喜するより先に、甜花の心はメロエッタの歌声につかまれる。

 

「ゴンッ!!」

「……っ!?」

 

 ふと、知らぬ間に微睡んでいた意識。

 半目になりかかっていた瞼をパチリと起き上がらせたのはゴンベの一喝。

 

(あ、あぶない……! もしかして甜花……いま、あの歌声で操られそうだった……!?)

 

 ぶんぶんと首を振り、意識を強く保つ甜花は、そんな歌声なんて聴こえないと耳を塞ぐ。

 

「Raaaaa~────、……。……」

 

 やがてメロエッタは、耳を塞いでしまった甜花を見て、悲しそうに歌をやめてしまう。

 

(……あ、あれ? 敵意は、ない……? もしかして、ただ歌を聴いてほしかっただけ、なのかな……?)

 

 だとしても、ただの歌唱で意識が奪われかけたのは事実である。

 細心の注意を払って、甜花はメロエッタと相対する。

 

「ゴン! ゴンゴン!」

 

 メロエッタに対して宣戦を布告するゴンベ。

 しかし彼女に戦意はないのか、バトルの拒否を示すため、首を横に振り続ける。

 

「……。──……Raaa~……!」

 

 だが、次の瞬間。

 突然メロエッタは歌唱を始め、美声に合う舞のダンスを始めた。

 

「ご、ごん!?」

「え……? ゴンベ、どうしたの……?」

 

 何が起きているのか分からない甜花。

 そんな彼女の為に、ポケモン図鑑が振動する。

 

「……? あ、むーちゃんからだ……」

 

 モンスターボールの中にいるロトムは、甜花の腰から外の状況を把握していたのか、簡潔に状況を説明する。

 

『どうやら あの メロエッタ……   バトルは バトルでも

 ポケモンバトル ではなく…… ダンスバトルを したい みたいだよ?』

 

「……え? ダンスバトル……?」

 

 まさか、それは俗に言う……ストリートで行うダンスバトルのようなものだろうか。

 ならば、音楽を流すDJは自前の歌唱で、勝敗を決めるジャッジは誰になるのか。まさか甜花なのか。

 

 そんな事を思う甜花は、いざゴンベとメロエッタのダンスバトルを見守ることにする。

 

「ゴンベ、がんばって!」

「ご、ごん……!?」

 

 背後から思わぬ激励を受けたゴンベ。目の前では優雅に歌って踊るメロエッタ。

 彼女はくるくると回りながら、ゴンベに対して流し目で挑発し、ダンスバトルを誘う。

 

「……ごん!」

 

 たとえ慣れないバトル形式であっても、売られた喧嘩は買う以外に道を知らないゴンベは、自分が思う最高のダンスを披露する。

 

「ゴンッ!」

「おぉ! ブレイクダンス……からのタップダンス! ゴンベ……すごい!」

 

 一体どこでそんなダンスを覚えてきたのか。ゴンベは抜群の身体能力を活かして、まるで月を跳んで歩くような浮遊感のあるジャンプをし、次に短足のハンデを高速の足踏みでフォローする軽快な踊りを見せつける。

 

「……!」

 

 それを目にしたメロエッタは、ボーカルとダンスに懸ける誇りに競争心の火が付いたのか。彼女はゴンベに勝るとも劣らぬ身体能力で、空中半ひねりからの連続ジャンプからの着地そして逆立ち回転からのコイキングの滝登りの如し跳躍を披露する。

 

「うわぁ……! なんか、メロエッタも……すごい!」

 

 どちらをも褒める甜花のせいで、なかなか決着は付かないが。

 実際プロダンサー顔負けのダンスを披露する二匹を見ては、アイドル活動の傍らダンスの経験がある甜花としても、感心する箇所が山のように湧いて出てきて困るほどだった。

 

「Raaaa~……♪ ────、」

 

 やがてメロエッタの歌唱が終了し────

 両者、ガラル地方のチャンピオン・ダンデが取る、かの決めポーズで終幕を飾った。

 

 ──ぱちぱちぱち。

 やわらかい甜花の拍手が広間に響き渡る。

 

「……! Raaaa~♪」

 

 ふと、メロエッタは、拍手を寄せてくれた甜花の肩に止まり、その頬に感謝の頬ずりをする。

 

「わ、わっ……!」

 

 可愛らしいポケモンが急接近してきたことに戸惑う甜花。

 その一方で、どこか疲れきった表情をするゴンベは、ふと我に返る。

 

「……ごん……」

 

 ──いったい自分は何をやっているんだ。

 そんな愚痴が聞こえてくる鳴き声を発して、彼は甜花に物申す。

 

「ゴン! ゴンゴンッ! ゴンッ!」

「え? ……も、もしかして……甜花にも、やれって……?」

「ゴン!」

「Raa~!」

 

 ──お前もなんか恥ずかしい思いをしろ。

 そう不貞腐れるように言い放つゴンベだが。

 その動機とは裏腹に、メロエッタも甜花の才能を感じ取っているのか、ぜひ踊りを見せて欲しいと両手を合わせて懇願する。

 

「えっ……で、でも……甜花……────い、一応……踊れるのは、踊れるけど……」

「──……ごんっ!?」

「──! Raaa~!!」

 

 まさかの「甜花は踊れる」発言に、口をあんぐりと開けて驚くゴンベと、楽しみに待つメロエッタ。

 

「え、えと……じゃあ……周りに、誰もいないし……────……ら、ライブとはちがうから、ちょっと恥ずかしいけど……い、行くよ? ……ワン、ツー……!」

 

 そこからは────本当のリサイタルの始まりだった。

 彼女はもとより本物のアイドルである。

 

 聴く者の脳を蕩けさせる甘い歌声。

 見る者の心を奪う抱擁の踊り。

 そして何より……にへっとした天使の微笑。

 

『──……!』

 

 呆気に取られて聞き惚れるゴンベ。目を輝かせるメロエッタ。それは人間もポケモンも目を奪われ、その道を目指す者なら誰もが憧れる、ひとつの輝き。歌、踊り、容姿。全てに於いて、一度は頂点に立った者が放つ……トップアイドルの貫禄。

 

「────ふ~ふんふふふふ~ん~……」

 

 大崎甜花はショートバージョンのライブを披露し終わる。

 

「……ど、どうかな……?」

 

 その後、ゆっくりと羞恥心がこみ上げてきたのか、指をもじもじとする甜花は、照れ隠しに視線を逸らす。

 

「……ご、ごん……」

「────Raaa~!」

 

 その答えは……

 目を丸くしつつ、満更でもない感じで頷いたゴンベと。

 歓喜のあまり甜花に飛びついたメロエッタの行動で、認められたようなものだった。

 

「うわっ……! め、メロエッタ……くすぐったいよ……!」

 

 メロエッタにじゃれつかれたことで、甜花は振動するポケモン図鑑に気付かない。

 それでも良しというように、ロトムは再通知のアラームを鳴らさなかった。

 

『きみは すごいね   そんな とくぎを もっていた なんて

 あの メロエッタも アイドルとして なら じぶんと ごかくだ ってさ』

 

「Rraaaaa~♪」

「……に、にへへ……!」

 

 思わぬ幻との遭遇。

 そして、思わぬダンスバトルから得られた友達。

 

 甜花に懐くメロエッタは、ふいにその手を取って宙を舞い、彼女を街に連れ出そうとする。

 

「あ、ま、待って! メロエッタ! そんなに引っ張っちゃ……!」

「ご、ごん!?」

 

 路地裏を飛ぶメロエッタと、駆けていく甜花。

 また置いてけぼりにされてたまるものかと、必死に追いかけるゴンベ。

 

 それから彼女たちは、クチバシティの観光を再開した。

 

   ◇

 

 メロエッタに導かれて到着した場所は、ポケモン大好きクラブ。

 そこの会員は可愛いポケモンを持ち込んで、日夜ポケモンの可愛さをほかの会員と議論したり、可愛いポケモンと触れ合ったり、可愛い尽くしの毎日を送っている。

 

 しかしメロエッタは、ここに何の用があるのか。彼女は人目に触れやすい街中に出たら、すぐに体を透明化させて隠れてしまった。それでも甜花の手は引っ張り続けて、ポケモン大好きクラブまでやってきた。

 

 甜花は、その理由を考える。

 

(やっぱりメロエッタって珍しいポケモンだから、人前だと姿を隠すのかな……? あと、ポケモン大好きクラブに連れてきた理由も……よくわかんない……)

 

「──おや、可愛いゴンベをお持ちですねー!」

 

 突然、黒いシルクハットにサングラスを掛けた白髪の老人が、紳士的に挨拶してくる。

 

「あ、えと……お、おはようございます……っ!」

 

 反射的に挨拶を返した甜花だが、

 

「今はおやつの時間ですけどね?」

 

 思わず口にした挨拶が業界用語だったせいで、わたわたとする。

 

「──ロトォッ!」

 

 その時、勝手にモンスターボールからロトムが飛び出してきた。

 すると紳士は興奮した様子で、ロトムの全身を舐め回すように見つめる。

 

「おぉ……! これまたプリティでゴーストなポケモンをお持ちで……!

 お嬢さん。もしかしてポケモン大好きクラブに入会する気が……!?」

 

「あ、その……て、甜花……そんなつもりは…………ない、です」

 

 おどおどとしながらも、はっきりと甜花は口にする。

 否定された事に落ち込む紳士だが、すぐに気を取り直して自己紹介を始めた。

 

「それは残念です……あ! ところで申し遅れました。私はポケモン大好きクラブの会長です!」

「あ、や、やっぱり……性格がちょっと違うけど……漫画そっくりの見た目だったから……」

「……? ──コホン。さて、お嬢さん。入会するつもりがないのに、ここに訪れたということは……もしや、“アレ”に関する情報を求めておいでですかな?」

「……あ、アレ……?」

 

 何を言っているのか分からない甜花は、首をかしげる。

 だが、その首傾げが了解の合図だと誤解したのか、会長は意気揚々と語り始めた。

 

「そう! アレです! 近日開催されるサント・アンヌ号の────ポケモォオン! コンテストォオオオオオオ!」

「……!?」

「──こほん。失礼。興奮のあまり叫んでしまいました。もう落ち着きましたので、そんなに怯えないでください。トユーカ傷つきます。──いえ、逆に怯えさせてしまってスミマセンでした。どーもポケモォオン! コンテストォオオオオオオ! のことになると、冷静ではいられなくなってしまうのです……ワタシ……」

「……、……」

「あ、その冷めた目つき。分かりますぞ。なんかこいつヤバイから早く離れたいって顔ですな? だがそうは問屋が卸さないンッッッ!! ゴンベやロトムといった可愛いポケモンを引き連れているあなたには────特別に! ポケモォオン! コンテストォオオオオオオ! の挑戦資格を与えまぁす!」

 

 甜花の目が丸くなる。

 それからゆっくりと事態を咀嚼していき、やがて言われていることの意味を悟った。

 

「え……えぇっ……!?」

 

「素晴らしいリアクションをありがとうございますンッッ! 実は近日サント・アンヌ号で開催されるポケモォオン! コンテストォオオオオオオ! の参加者は、通常のポケモンコンテストとは異なり、我がポケモン大好きクラブが主催であるが故に、この会長自らが参加者を選抜しているのです! そして、残る枠はあと一人、だがそれがなかなか見つからない……どうしようかな~……と途方にくれて路頭に迷っていた────その時! 目の前に天使が現れた!! 容姿は抜群! ちょっと頼りなさそうな感じが玉に瑕だけど、きっとやる時はやる顔をしているであろう、そんな感じがするかもしれないオーラがなんかいいネ! そういうわけであなたには、サント・アンヌ号のポケモォオン! コンテストォオオオオオオ! の挑戦資格を与えます! ──いいですか? 挑戦資格ですよ? 資格。……つかぬことをお伺いしますが、資格という意味、お分かりで?」

 

 その時、ポケモン図鑑が振動する。

 思わず手に取った甜花は、そういうことかと了解した。

 

『ようするに…… しかくが ある いじょうは さんか しないと

 さんか できない ひとたちに しつれいだから

 さんか しろ っていう…… どうにも すじの とおらない おどしもんく だね』

 

「……な、なるほど……? そうなの、むーちゃん……?」

 

「お分かりいただけましたかな? では、当日にお会いしましょう。アデュー!!」

 

 相手の気が変わらないうちに逃げおおせるつもりか、颯爽と地平線の彼方に去っていった会長。それを見送るほかない甜花は、近くに居るメロエッタに向かって声をかける。

 

「……メロエッタ……もしかして、メロエッタは……ポケモンコンテストに、参加したいの……?」

 

「♪~」

 

 頷きの歌が聴こえてくる。

 

「そっか……じゃあ……」

 

 ポケモンコンテストは、ゲームのクリアには必ずしも必要ではないイベントである。

 しかし甜花は、メロエッタと共に歌を歌い、ダンスを踊った。その出来事を思い返していると、気付けば笑顔になっている。

 

「……甜花、メロエッタとなら────参加、してみてもいいかな……?」

 

「──! ♪~!」

 

 感謝、感激、そして歓喜。喜びに満ち溢れた歌が聴こえてくる。

 その歌声を耳にする甜花は、心地よさのあまり頬が緩み、透明で目には見えにくいが、たしかにそこにいるメロエッタと見つめ合い、微笑み合っていた。

 

「Raaaa~♪」

「あ! め、メロエッタ……!」

 

 また甜花の腕を引っ張るメロエッタは、今度はどこに連れて行こうというのか。

 先を行く彼女たちの後を、慌てて追いかけるロトムとゴンベ。

 

 彼らの行く先には────クチバシティで最も有名な遊園地。

 ポケモンバトルOKの巨大観覧車が回っていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。