大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α   作:形のない者

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第25話 巨大観覧車でダブルバトル!?

 クチバシティの遊園地に入場した甜花とゴンベは、ほかのアトラクションには脇目も振らず突き進むメロエッタに連れられて、巨大観覧車の前に到着した。

 

「えっと……この観覧車に、乗りたいの……?」

「Raaa~!」

 

 それは頷きの歌。

 しかし甜花は冷や汗を流し、眼前の巨大観覧車の“異質さ”に嫌な予感を覚える。

 

「で、でも…………これ、ほんとに観覧車……?」

 

 本来、観覧車のゴンドラとは籠状である。しかし甜花が見上げる巨大観覧車のゴンドラは、屋根のない長方形。つまり、バトルフィールドの形をしていた。

 

「…………」

 

 甜花はチラリと、看板の注意書きを見やる。

 

『巨大観覧車! それはポケモンバトル用のゴンドラとして造られた、まったく新しい遊具! 高所のバトルは常に強風が吹き、スリリングなバトルが楽しめるぞ!

 バトルのあとは互いの勝負論について語り合うも良し! 純粋に観覧車を楽しむも良し! ぜひトレーナー諸君には、今までにない環境でのポケモンバトルを楽しんでほしい! ちなみに落下防止のため、常に数十匹の鳥ポケモンが交代制で巡回しているから安心してくれ!

 では、心ゆくまでのハイプレースバトルを! ────ベストウィッシュ!!』

 

「…………、……あ! め、メロエッタ……!」

「Raaaaa~!」

 

 不安な面持ちで二の足を踏んでいた甜花だが、思ったより強引なメロエッタに引っ張られて列に並んでしまう。

 

 それから次々とバトルフィールド型ゴンドラに乗り込んでいくひと組のトレーナーたち。それはカップルであったり、親子であったり、初対面同士であったり……様々な組み合わせで、巨大観覧車のバトルが始まっていく。

 

(あうぅ……甜花、今はバトルする気分じゃ……)

 

 現在の甜花の目的は、クチバジムへの挑戦。

 それ以外のバトルで体力を消耗したくない甜花は、別の案を提示する。

 

「ね、ねぇ……メロエッタ? 観覧車に乗りたいなら、あっちの観覧車じゃ、ダメなの……?」

 

 甜花が指さした先には、普通の観覧車が回っている。

 『普通』といっても、それはポケモン世界にとっての『普通』であり、ゴンドラの形がポケモンの顔を模している。ピカチュウ柄のゴンドラやリザードン柄のゴンドラがあり、トレーナー以外の一般客──特に子供──に好評の模様。

 

 しかしメロエッタは首を横に振る。

 どうやら彼女は、甜花と一緒にバトルする気満々のようだった。

 

「そ、そうなの? ……──なら、甜花……がんばる……!」

「♫~!」

 

 意を決した甜花は、自分の番が回ってきたため、ゴンドラ乗り場に足を踏み出す。

 それと同時に対戦相手も姿を現し、二人は受付員の言葉に耳を傾ける。

 

「──では、トレーナーカードをお出しください」

 

「……え?」

 

 瞬間、甜花は凍りついた。

 

(甜花、まだトレーナーカード持ってない!)

 

 わたわたと焦り、狼狽える甜花。

 一方の対戦相手は、トレーナーカードを受付員に手渡す。

 

「──はい。確認が取れました。では、そちらの方も」

 

 トレーナーカードの差し出しを要請される甜花。しかし彼女はトレーナーカードの発行を済ませていないため、返すべき言葉はひとつしかない。

 

「……も────持って……ません」

「はい?」

「……え、えぇっと……」

 

 滝のような汗を流す甜花。ともすれば追い返される事を覚悟で、受付員の言葉を待つ。

 ────その時、彼女の懐からポケモン図鑑の起動音が鳴った。

 

(……?)

 

 おそらくロトムだろう。もしかすると、この窮地を突破できる方法があるのか……甜花は期待を込めて図鑑を開く。

 

 その時だった。

 

「あぁ、図鑑所持者の方だったのですね。それならトレーナーカード提示は不要です。どうぞ」

「──……へ?」

 

 すんなりと乗車を許可された甜花は、あれよあれよという間にゴンドラへ乗り込む。

 彼女の傍らには『かんこうきゃく』の姿をしている対戦相手の青年が立っており、彼は勝負前の挨拶として握手を求めた。

 

「俺はホウエン地方ミシロタウンの『あああああ』と言います。よろしくお願いします!」

「────!?」

 

 一瞬、聞き間違いかと耳を疑った甜花だが、握手を交わした後、あああああは何事もないようにバトルフィールドの白線に向かう。

 

「どうやら此処のルールは3vs3のダブルバトルが恒例のようだけど……それでいいかな?」

「え、あ、はい……!」

「それじゃあ、良きバトルを楽しもう!」

 

 戸惑う甜花も遅れて白線の内側に立ち、三匹のポケモンを用意する。

 そしてあああああの一声により、ダブルバトルが始まった。

 

「────行け! エンペルト! サンダー!」

「エンペェエエエ!」

「ダァアアア!」

 

(え……! さ、サンダー!?)

 

 昨日の今日で同じ伝説の鳥ポケモンを相手にする事となった甜花。

 サンダーのプレッシャーを浴びてわずかに臆する甜花だが、それを応援/叱咤するようにメロエッタとゴンベがバトルフィールドに駆け出した。

 

「Raaaaaa~!」

「ゴォオオオンッ!!」

 

(メロエッタ……ゴンベ……!)

 

 二匹の力強さに勇気をもらった甜花は、今一度意を決して、闘志に燃える瞳を見開く。

 

(────まずは、ポケモン図鑑!)

 

 懐から図鑑を取り出した甜花は、相手ポケモンの力量を推し量る。

 

 

 

全国図鑑:No.395 分類:こうていポケモン 名前:エンペルト

タイプ:みず・はがね 特性:げきりゅう・まけんき

レベル:74

種族値:耐久B 攻撃B 防御B 特攻A 特防A 素早C

習得技:レベルアップで覚える技すべて

持ち物:しんぴのしずく

詳細:2008年シンオウ地方201番道路でLv.5の時に出会った。

 

全国図鑑:No.145 分類:でんげきポケモン 名前:サンダー

タイプ:でんき・ひこう 特性:プレッシャー・ひらいしん・せいでんき

レベル:55

種族値:耐久B 攻撃B 防御C 特攻A 特防B 素早A

習得技:レベルアップで覚える技すべて

持ち物:せんせいのツメ

詳細:2004年カントー地方無人発電所でLv.50の時に出会った。

 

 

 

(ちゃんと道具を持ってる……!……でも、あれ? これって、もしかして……“ほかのプレイヤー”のポケモン……?)

 

 ────まさか、と甜花は思う。だが、それ以外に考えられない。現状を取り巻く環境の正体。それは────

 

(も、もしかして……甜花、今────“通信対戦“を、しているの……!?)

 

 思えば、多機能互換機ジョイステーションはネットに繋げられたままであり、その可能性も十分考えられる。しかし相手の挙動はプロデューと異なり機械的ではなく、この世界で生きている人間のように感じられた。……ともかく、今はそのことについて考察している時間はない。

 

 時は待ってくれず、対戦相手のトレーナーが命令を繰り出した。

 

「エンペルト! 波乗り!」

「エンペラァアアアアア!」

 

 エンペルトの首に飾られたペンダント・神秘の雫がキラリと輝く。

 次の瞬間、水のないところから膨大な水流が巻き上がり、フィールド全体を覆う津波と化す。

 

「サンダー! 空を飛ぶ!」

「ダァアアアアアアアア!」

 

 刹那、味方をも巻き込む波乗りから逃れるため、サンダーは雲を切り裂く上昇力で離脱。

 

(……っ!)

 

 コンマ数秒、甜花の中で戦術が組み立てられる。

 

(波乗りと空を飛ぶのコンボ! それは小学一年生が考えつく、最も安易で有り触れた連携戦術! 対戦相手のアバターは青年だけど、中身は子供と見た! なら────)

 

「ゴンベ! メガトンパンチで壁を作って!」

「ゴンッ!」

 

 右手に力を溜め、大地を割る豪腕を足元に叩きつける。

 亀裂が迸るフィールド。ゴンベの眼前に土塊の壁が跳ね上がり、その背後に立っていたゴンベ、メロエッタ、甜花たちは、怒涛の波状攻撃を凌ぎきる。

 

 水浸しとなったフィールド。

 甜花は膝より下が濡れる事を意に介さず、咄嗟に図鑑をかざした。

 

(今のうちに、メロエッタのステータスを見ておかないと……!)

 

 

 

全国図鑑:No.648 分類:せんりつポケモン 名前:メロエッタ(ボイスフォルム)

タイプ:ノーマル・エスパー 特性:てんのめぐみ

レベル:85

種族値:耐久B 攻撃D 防御D 特攻A 特防A 素早C

習得技:レベルアップで覚える技すべて・ほか、人から教えてもらえる技など、様々

持ち物:なし

 

 

 

(──よし、この強さなら……!)

 

「メロエッタ! エンペルトにインファイ────」

「Raaaa~! ────ラァ!」

 

 指示を飛ばそうとした甜花。しかしその直後、メロエッタは『いにしえのうた』を歌い、ステップフォルムにチェンジする。

 

「え? メロエッタ……?」

「サンダー! そのままドリルくちばし!」

 

 ────ゴンベの耳がピクリと反応する。

 遥か東の上空から、音速を超えて迫り来る一匹のポケモン。

 

 電撃散らす鳥ポケモンは主の命令に従い、その身を旋回させてクチバシの鋭さを高める。

 

「……ラァアッ!!」

 

 一方のメロエッタは、その音速の攻撃に対応するため、甜花の指示を無視していた。

 

「────ダッ!?」

 

 刹那、目にも留まらぬ速さでフィールドを通過し、メロエッタを狙い打とうとしたサンダーの体が、無防備にも空中で急停止する。それはメロエッタが右手を掲げた瞬間に発動していた、サイコキネシスによるパワーだった。

 

「──ラァアアアアッ!!」

 

 雄叫びを上げて跳び上がったメロエッタは、渾身のインファイトで相手の全身を打ちのめす。

 

「──ダッ!? ガッ! グエッ!! ……ザァアアアアアッッ!!?」

 

 最後は延髄斬りで決められたサンダーは、後頭部にタンコブを作り、涙目でフィールドに落下。目を回しながら地面に激突し、戦闘不能状態に陥った。

 

「メロッ!」

 

 クルクルと回転し、着地と同時にポーズを決めたメロエッタは、次の戦いを待ち望む。

 

「す、すごい! メロエッタ……!」

「…………」

 

 メロエッタの思わぬ強さに感心する甜花。だがゴンベは、どこか気に食わない表情で、メロエッタの横顔を見つめていた。

 

「……?」

 

 ふと、ゴンベの意味ありげな視線に気付いたメロエッタは、肩を並べる仲間としてウインクを送る。しかしゴンベは“興味なさげ”にメロエッタから視線を逸らして、眼前の“興味ある”エンペルトに意識を移した。

 

「くっ。戻れ、サンダー! よくやった! ────次はお前だ、バクーダ!!」

「ヴォバァアアアアア!」

 

 

 

全国図鑑:No.323 分類:ふんかポケモン 名前:バクーダ

タイプ:ほのお・じめん 特性:マグマのよろい・ハードロック・いかりのつぼ

レベル:53

種族値:耐久B 攻撃A 防御B 特攻A 特防B 素早C

習得技:レベルアップで覚える技すべて

持ち物:もくたん

詳細:2008年シンオウ地方ハードマウンテンでLv.53の時に出会った。

 

 

 

 エンペルト、サンダーに続く三匹目のポケモンはバクーダ。

 おそらくエンペルトの波乗りと同様、バクーダの地震や噴煙を、サンダーの空を飛ぶで回避する戦法だったのだろうと甜花は推測する。

 しかし肝心かなめのサンダーは早々に倒れた。更に炎と地面タイプの登場により、もはや波乗りは使えない。相手の戦術が完全に瓦解した以上、あとは猛攻撃で各個撃破を決め込むのみ。

 

「────バクーダに水の石! エンペルトにインファイト!」

 

 甜花の指示を受けた二匹のポケモンは、それぞれの強敵に向かって走り出す。

 かたやゴンベは水の石を呑み込み、その手に水の波動の応用たる水遁・螺旋丸を発動。

 かたやメロエッタは守りを捨てた特攻で、剣の舞を踊るエンペルトに突撃する。

 

「エンペルト、メタルクロー! バクーダ、噴火!!」

 

 研ぎ澄ました鋼の腕……否、鋼の刃を以て、エンペルトは迎え撃つ。それはメロエッタの華奢な体を切り刻まんとする斬撃の猛攻。しかし、その全てを掻い潜ったメロエッタの体術が上回り、エンペルトの腹部に苛烈なキックの一撃が入った。

 

「ルトッ!? ────ペルゥゥゥゥウラァアアア!!?」

 

 それと同時に────味方をも巻き込みかねない大噴火を繰り出そうと、バクーダの背中のコブが盛り上がる。……接敵まで二秒。巨大観覧車を轟然と軋ませる噴火まで、あと一秒。水遁・掌底螺旋丸をぶつければ一撃で倒せるが、その前に大噴火の一撃で場に存在するポケモン全てが瀕死に追い込まれる可能性が高い。

 

「ゴンッ!」

 

 そう判断したゴンベは急遽、新技を披露した。

 

 接敵まで二秒、噴火まで一秒。

 疾走では間に合わないなら、それ以外の方法で間に合わせればいい。

 

「ごぉおん……ベェエエエエッ────!!」

 

 そしてゴンベは、右手に螺旋回転する水の波動を全力で投擲した。

 

「バグウッ!?」

 

 驚いたバクーダは、その大技を浴びれば一撃で倒されると踏む。故に、倒される前に噴火だけでもしておこうと渾身のパワーを解放する。

 

「ヴォ、……バァアアアアアア────!!」

 

 ────激突と噴火。

 水遁・投擲螺旋丸により一撃で意識を刈り取られたバクーダは、しかし根性で特大の噴火を間に合わせた。

 

『……っ!?』

 

 大気を切り裂く爆発と振動。

 熱を帯びる突風が吹き荒び、無数の溶岩群が四方に散らばる。

 

「今だ、エンペルト! アクアジェットで蹴散らせ!!」

「エン……ペェラァアアアアア!!」

 

「メロッ!?」

 

 倒したと思っていたエンペルトが立ち上がり、絶対先制の概念を持つアクアジェットで水浸しのフィールドを縦横無尽に滑走する。

 

「──ゴンベを攻撃!」

 

 エンペルトは噴火によって降り注ぐ溶岩を躱しつつ、ゴンベの背後に回り込む。

 

 一方のゴンベは、膝下まで溜まる水に足を取られながら、飛散する溶岩の回避に専念していた。

 

(まずい! このままじゃゴンベが────!?)

 

 エンペルトを倒し損ねたことで、特性の激流が発動している。さらに神秘の雫の効果も相まって、今のエンペルトのパワーは計り知れない。

 

「ゴンッ!?」

 

 先制の概念を持つ攻撃。それに対抗する手段は限られている。咄嗟に両腕を守りに当て、防御の構えを取ったゴンベ。だが、エンペルトは両腕の隙間から三本のツノを差し込む勢いで突貫した。

 

「っ……! ゴンベ……!?」

 

 ────激突。大きな水柱が立ち上がる。

 さらに噴火による溶岩が次々と着弾し、水溜りが蒸発してフィールドが白い蒸気に包まれた。

 

「──エンペルト、続けてアクアジェット!!」

「……っ!?」

 

 刹那、甜花は驚愕と同時に理解した。

 

(そ、そうか……! 相手の目的は、最初から“コレ”だったんだ! しんぴのしずくの力を借りた波乗りでフィールドを水浸しにした後、バクーダの炎技で水溜まりを蒸発させる! そうして視界が悪くなっている間に……決着をつけるつもりだったんだ!)

 

 しかし、疑問が残る。

 

(それでも、視界が悪いのは相手も同じ……どうやってゴンベやメロエッタを見つけるの……?)

 

 その時、甜花は思考に集中して、無意識に耳を澄ませていた。

 ────そのおかげで、アクアジェットを発動する際の“滑走音”が聞こえない事に勘付く。

 

(……そうか! “潜水”……っ!?)

 

 ポッチャマやエンペルトは泳ぎが得意で、餌を取るため十分以上も潜水していられると言う。ならば、水上が蒸気で覆われている場合、エンペルトなら水中で標的を探している可能性が高い。

 

「ゴンベ! メロエッタ! 水中に気をつけて……!」

 

 膝下までの水面の高さといえど、エンペルトにとってはそれで充分かも知れない。

 そう思っていた矢先────

 

「……メッ!? メロォッッ?!」

 

 メロエッタの叫びが響き渡り、その体が大きく空に突き上げられた。

 

「め、メロエッタ……!?」

 

 甜花のそばに落下してきたメロエッタは、傷だらけの体で着水する。

 

「め、めろぉ……」

 

「メロエッタ、戻って! ────お願い、まーちゃん!」

「アメモォオオオオス!!」

 

 甜花の三匹目はアメモース。

 

「蒸気を払って! かぜおこし────!」

 

 やる気満々で飛び出したアメモースは、四枚の羽を使って蒸気を払う風を送り込む。

 切り払われた蒸気。フィールドに視界が戻る。甜花の推測通り、エンペルトは背中のヒレ以外の部分は潜水しており、今まさにゴンベを背後から突き上げようとしていた。

 

「ゴンッ──ー!」

 

 背後からの殺気に気付いたゴンベは、再び防御の構えを取る。

 そこに二度つけ込まれる隙はなく、なんとエンペルトのアクアジェットを真正面から防いでみせた。

 

「な、なにぃ────!?」

「エンペェ!?」

 

 ……先制の概念を持つ攻撃への対処法・その壱。

 先制攻撃より先に行動できないのなら、先制攻撃を受け止めて────袋叩きにすればいい。

 

「ゴンベ! そのままエンペルトを抑えて! まーちゃん! エアカッター!」

「アメモォオオオオス!」

 

 しかして、ゴンベに羽交い締めにされたエンペルトは、

「エ……エンペェエエエエエエエエエ────!!?」

 気絶するまで全身にエアカッターの猛打を喰らい、戦闘不能に陥った。

 

   ◇

 

 ゴンドラの外周には排水口が設置されている。よってバトルが終わると同時に、水浸しのフィールドは少しずつ水位を下げていく。

 

「対戦ありがとう! いいバトルだったよ!」

 

「て、甜花の方こそ……ありがとう、ございます……」

 

 バトルが終わり、甜花とあああああは握手する。

 その頃にはもう、彼らが乗るゴンドラは、巨大観覧車の頂点に位置していた。

 

「アァッ! アメモォオ!」

「♫~!」

「え? まーちゃん? メロエッタ? どうしたの……?」

 

 ──綺麗な景色だよ。

 そう伝えたがっていたアメモースとメロエッタは、甜花の服を引っ張ってゴンドラの端に連れて行く。

 

「────うわぁ……!」

 

 巨大観覧車の頂点から遠望できる景色は、賑やかなクチバシティと広大な海原を映している。

 

「──ロトォ!」

 

 勝手にボールから出てきたロトムは、甜花と一緒に景色を眺める。

 一方、ゴンベは景色には興味ないのか、高所特有の強風に毛並みを靡かせて、気持ちよさそうに座り込んでいた。

 

「────出てこい! ジュプトル! パチリス! ウインディ!」

「ジュパァ!」「パチィッ!」「ガオオォ!」

 

 あああああは手持ちを回復させた後、六匹すべてのポケモンを外に出して自由に遊ばせる。

 エンペルトとジュプトルは互いの剣術を競い合い、ウインディは背中に主を乗せてフィールドを駆け回り、バクーダはのんびりと昼寝を始め、サンダーは空を飛び回り、パチリスは誰に電気ショックのイタズラを仕掛けようかコソコソしている。

 

(……そうか。この巨大観覧車って、バトルの後はポケモンを遊ばせる場所でもあるんだ……)

 

 地上に着くまで、まだ数分ある。

 その間、甜花もポケモンたちの好きにさせようと考え、その旨を伝える。

 

 その後、ロトムとパチリスは何らかの仲間意識を感じたのか、互いに悪巧みをして、お昼寝中のバクーダを如何にして驚かせて噴火させるかを話し合い、アメモースはメロエッタの歌に合わせて踊り始め、ゴンベはうたた寝をしていた。

 

「……あ、そうだ。タマゴも出さないと……」

 

 リュックサックから取り出したポケモンのタマゴ。

 筒状の機械に入ったそれを大事に抱える甜花は、一緒に景色を眺める。

 

「……ここから見える景色、とてもきれいだね。……早く生まれてくれば、一緒にこの景色を見れたのにな……。あ! で、でも……早く生まれすぎると、危ないかも知れないから……や、やっぱり、ゆっくりと、焦らないで、ちゃんと元気に……生まれてきてほしいな……」

 

 ────ふと、タマゴが揺れる。

 

「わっ……!」

 

 それは頷きの合図だったのか、どうなのか。

 

「…………」

 

 ──いったい、どんなポケモンが生まれてくるのだろう。

 その日が待ち遠しく感じられる甜花は、しかし焦らず逸らず、一歩ずつ着実に進んでいこうと、これからの冒険を乗り越えていく決意を改める。

 

「今日はもう疲れちゃったから……ジム戦は明日にしようかな……。あ、でも、そうだ……コンテストがあったんだ……」

 

 ふと、甜花はあることを思い出す。

 

(そういえば、コンテストの参加にもトレーナーカードは必要なのかな……?)

 

 少し不安になってきた甜花は、明日、トレーナーカード発行の手順をジョーイさんに聞いてみようと思った。

 

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