大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α   作:形のない者

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第27話 vsサクヤ! ブーケポケモン!!

 サント・アンヌ号。甲板のコンテスト会場にて。

 

「ゴンゴン! ゴンッ!」

「うわっ! な、なんだ、このゴンベ!? 野生のポケモンが、なんでここに……?」

 

「キャー!? な、なにこのゴンベ! なんで私とダーリンの間に割って入ってくるのよー!」

「ゴォオオン! ゴンゴォオオ!!」

 

 甜花とはぐれた後、コンテスト会場の最前列に辿り着いたゴンベは、一組のカップルが座る席の間にどっしりと座り込み、なに食わぬ顔でどこからか持ってきたポップコーンを頬張り始めた。

 

「……? もしかしてこのゴンベ、俺たちと同じでコンテストを見たいんじゃないのかな……」

「はぁ?! うそー! こんな寸胴なポケモンに、コンテストの美しさの何がわか────」

 

 ────……ギロリ。

 ゴンベのひと睨みにあった男女は、あまりの恐怖に額から滝のような汗を流して黙り込む。その威圧感は周囲の観客席にも影響を与えており、もはや誰も警備員を呼んでこのゴンベを追い出そうと考える者はいなかった。

 

「…………────ごがぁあああああ…………」

 

 ポップコーンを平らげたゴンベは、なんとその場で居眠りを始める。

 周囲の人間は、そのあまりのいびきのうるささに顔をしかめるが、どうすることもできない。

 

「……ごがぁ……ごがぁああああああ……」

 

 彼が見たいものは、ただ一人の出場者。

 ポケモンコンテストなんか、そのへんのゴミより興味はない。

 しかし、あの“バトルとは違う迫力”を、もう一度体感できるなら……見てやってもいい。

 

 誰もその名を知らない出場者。この世界では馬の骨とも言える無名の新人。

 その最初のファンになってやってもいいと……ゴンベは思っていた。

 

 どうせ今頃、緊張でガタガタ震えているだろう少女のため。

 彼は、その登場を期待せずに待っていた。

 

   ◇

 

 コンテスト会場を映す複数のカメラに、たびたび映る爆睡ゴンベ。

 ポケモンとそのコーディネーターは舞台に上がった瞬間、その爆睡ゴンベを間近で目にする事になる。目の前で爆睡しているゴンベを見て、ある者は気が萎え、ある者は苛立ち、ある者は素晴らしい踊りを披露する事で目に物見せようと張り切る。

 

 しかしゴンベは、そのどれにも反応を示さない。

 いよいよ出場者が残り二名となり、一気に会場を沸かせた麗人が出るまでは……。

 

『────さぁて! 皆さんお待ちかねのエントリーナンバー15番!

 シラセサクヤとロズレイドの登場だァアアアアアアアアアアア!!』

 

『FOOOOOOOOOOOOOOOOOOO────────!!!』

 

「ご、ごん……!?」

 

 ひと組のコーディネーターとポケモンが舞台に上がっただけで、全ての観客が立ち上がり拍手と声援を送り出す。

 

 その事態に驚いたゴンベは────

「……!」

 ────観客に手を振るロズレイドが、只者ではない“強者”である事をひと目で見抜いた。

 

「──ありがとう! ファンの皆さん! けれど、今は静まってほしい。このままではライブバトルができないからね?」

 

 美貌を隠す仮面をつけた麗人。サクヤの一言により、コンテスト会場を震撼させる拍手と声援が一斉に鳴り止む。

 

「どうもありがとう。それでは、ここで今大会のルールをおさらいしよう」

 

 サクヤは語る。

 従来のポケモンコンテストには、一次審査と二次審査が存在する。しかし、サント・アンヌ号で開催されるポケモンコンテストにおいては、新たなルールとして、一次審査と二次審査が融合した形の『ライブバトル』が行われる。それはコーディネーター同士がポケモンバトルをしつつ、如何に自分のポケモンを輝かせる事ができるか競い合うライブバトル。

 

「……以上を踏まえて、全16名の参加者のうち、1番から14番の参加者にはライブバトルをしてもらった。そして15番の私と、皆さんが待ち望んだ16番とのライブバトルの後……審査員が判定を下し、今大会の優勝者を決定する!

 ──だが、ここで皆さんに残念なお知らせがある。なんと、私とライブバトルを行うはずだったミクリさんが、急遽ここに来られなくなってしまった。しかし、肩を落とさないでほしい。代役として、期待の新人……無名のダークホースが登場する予定だ!

 ぜひ皆さんには、私と彼女のライブバトルを、最後まで見届けてほしい……!」

 

 サクヤの懇願。

 次いで、ざわざわとするコンテスト会場。

 

「えー? なにそれー? ということはー、ミクリ様のライブバトル、見れないわけー?」

「ならもう帰るか? いやでも、サクヤさんのライブバトルを見逃すのは惜しいしなぁ……」

 

 徐々に席を立つ者が増えてくる。

 やや気後れしてしまうサクヤだが、すぐに気を取り直し、舞台袖にウインクの合図を送る。

 

「……!」

 

 その合図に反応したのは、16番目の参加者。

 彼女こそ、コンテスト開催の土壇場で、急遽起用された無名の新人────大崎甜花。

 

 控え室から出てきた甜花は、最初サクヤの存在に「あっ!」と驚いたものの。

 今はライブバトルに集中するため、サクヤの合図を受け取り、舞台に歩き出す。

 

「……そ、それじゃあ、よろしくね? むーちゃん……メロエッタ……!」

「ロトォ!」

「メロォ!」

「作戦は、こうだよ。むーちゃんは、オーディオ機材に入り込んで、さっき甜花が聴かせた鼻歌のリズム通りに音楽を奏でる。そしてメロエッタは、さっき甜花が見せたダンスに合わせて踊るように戦う。たぶん……これで、大丈夫なはず……!」

 

 顔を見合わせて頷いた甜花とメロエッタ、ロトムは、それぞれの役割をこなすため移動を開始。甜花とメロエッタは舞台に上がり、フィールドの白線の内側に立って、サクヤと相対する。一方のロトムは、誰にもバレないようにオーディオ機材に入り込み、DJロトムにフォルムチェンジした。

 

 その時、コンテストの司会者がマイクを握りしめて実況を始めた。

 

『さて! ここで細かいルールのおさらいを!

 ライブバトルでは、ふた組のコーディネーターが用意した曲が同時に流れ始めます! 

曲の音量の強弱はバトルの趨勢によって変化し、より有利になると音量が高まり、不利になると音量が低くなってしまいます! その中でコーディネーターとポケモンは、歌って踊ってバトルして、審査員にアピールをしなければなりません!

 これはコンテスト史上、最も苛烈でいそがしい競争形式と言えるでしょう! もしかすると今までにない、ハイレベルなポケモンコンテストと言えるやもしれません!

 ────さぁ、この新ルールに戸惑わず、うまく立ち回れるものなのか!?

 

 エントリーナンバー15番! アンティー仮面 シラセサクヤ!

 エントリーナンバー16番! 無名の新人 大崎甜花!

 いざ────レディ……ライブ・ファイト!』

 

「優雅に舞え、ロズレイド!」

「ロズゥウウウ!!」

 

「いけ、メロエッタ!」

「Raaaa~!」

 

 バトルフィールドに飛び込んだロズレイドとメロエッタ。

 どちらも美しいポケモンであるため、審査員と観客の目を釘付けにする。

 サクヤの後方から『バベルシティ・グレイス』の曲が流れる。

 甜花の後方から『アルストロメリア』の韻を踏むエレクトリックな曲が流れる。

 

「ロズレイド! グラスフィールド!」

「ロズゥ!」

 

 バトルフィールド全体に広がる草エネルギーの波動。

 瞬く間に瑞々しい草地が出来上がり、そこに一輪の薔薇が舞い踊る。

 

「メロエッタ! うたう!」

「Raaaaaa~♪」

 

 会場全体を包み込む歌声。そこに甜花の歌声も乗っかり、脳を蕩かせる甘い声が響き渡る。心地よい歌により眠気を誘われ、片膝をつくロズレイド。

 

『おおっと! ロズレイドのダンスが途切れてしまった事で、甜花選手の曲が大ボリュームに!』

 

「くっ────やるね! ロズレイド、眠気をこらえろ!」

「ろ、ろず……」

 

「メロエッタ! 歌いながらフラフラダンス!」

「Raa!」

 

 必死に眠気をこらえるロズレイドに対し、メロエッタは超高速の回転ダンスを披露する。

 

「ろ、ろず……れい……?」

 

 その回転ダンスを注視してしまったロズレイドは、眠気に続いて目を回し、混乱してしまう。

 

「────ロズレイド、よく耐えた。そこでアロマセラピーだ!」

「ろ……ロズゥウウウ!」

 

 ロズレイドの両腕の薔薇から、心地よい香りが放出する。その香りはあらゆる状態異常を癒し、ロズレイドは眠気にやられることも、目を回すこともなくなった。

 

『おぉっと! ロズレイドのアロマセラピーにより状況は改善! サクヤ選手の曲が盛り上がりを見せてまいりましたー!』

 

「ここからだロズレイド! リーフストーム!」

「ロォオオオオオオズ!!」

 

 グラスフィールドの草葉、その全てを巻き上げる突風が発生する。

 

「続けて、花吹雪────!」

「ロズレィイイイイ!」

 

 ロズレイドの直上に巻き上げられた新緑のリーフストーム。

 その中に赤と青の花々が混じり、三色の竜巻を形成する。

 

『おぉっと! なんと美しい花吹雪か! 今やサクヤ選手が優勢! 素晴らしい楽曲が大ボリュームで流れています!』

 

「メロエッタ! ハイパーボイスからのアクロバット!」

「RAAAAA~!!」

 

 大きな歌声を上げたメロエッタにより振動する会場。その音響はリーフストームとぶつかり合い相殺。その直後、軽やかに跳躍したメロエッタは、ロズレイドにライダーキックを食らわせようとアクロバットに宙を舞う。

 

「迎え撃て! パワーウィップ!」

「ロズレイィイイン!」

 

 両腕の薔薇からツルを伸ばし、空中にいるメロエッタを狙い撃つ。

 しかし────

 

「いにしえのうた!」

「Raa~……ラァ!!」

 

 アクロバット中にボイスフォルムからステップフォルムへとチェンジしたメロエッタは、向上した身体能力を駆使して華麗にパワーウィップを躱し、ロズレイドの顔面に蹴りを入れる。

 

「ロズッ!?」

 

『おおっとクリーンヒットォ! 甜花選手の楽曲が大きくなるが────!』

 

「めろ……っ!」

「え、メロエッタ!?」

 

『いきなり顔色が悪くなったメロエッタ! これはロズレイドの特性・どくのトゲによるものだ! 一転してサクヤ選手の楽曲が勢いを取り戻す────!』

 

「……ロズレイド! 畳み掛けるんだ、ベノムトラップ!」

「ロォオオズ!」

 

 両腕の薔薇を重ねあわせ、一条の毒液が射出される。

 それは放物線を描いてメロエッタに直撃した。

 

「メロォ!?」

「────っ!」

 

『おおっと! メロエッタの調子が下がったー! これはまずいぞぉおおお!?』

 

 サクヤの楽曲の音量が際限なく上がって行き、

 甜花の楽曲の音量が最外なく下がっていく。

 

 審査員も観客も、今やバックグラウンドに流れるアンティー仮面たちの歌声に聞き惚れている。

 

「…………」

 

 一方、甜花のバッググラウンドミュージックは、エレクトロな音楽が奏でられるだけで、甜花が収録した歌声が存在しない。

 歌詞なしの楽曲では、審査員と観客の興味を引くのは難しい。さらにロトムは、今も必死に甜花から聴かされたリズムの通りに音楽を奏でているが……やはりアルストロメリアの曲調にエレクトロなカバーは、あまり似合わない。

 

 ────収録されていない歌声と、不釣合いなエレクトロ。

 この二つの問題を解決する為には、甜花自身が歌う必要がある。だがそれは────

 

「……っ! め~~~ロォオオオッ!!」

「えっ? メロエッタ……!?」

 

 突如、甜花からの指示を待たず、毒に侵されたメロエッタがインファイトを繰り出した。

 

「ラァアアア! ラララララララララ────ラァアッ!!」

 

「なにっ!?」

「ロズッ!?」

 

 それに驚いたサクヤたちは反応できず、ロズレイドは全身を無数の乱打で打擲された。

 

「ロッ!? ロズッ!? ロズウウウウウッ────!!?」

「なっ……! まだそんな力が残っていたのか……!?」

 

『おおっとロズレイド大ダメージぃ! 甜花選手の曲が音量を取り戻していくー!』

 

「……! メロエッタ! エコー────」

「ラァア!」

 

 雄叫びを上げたメロエッタの拳に火が灯る。

 それは炎のパンチとなり、グラスフィールドを殴りつけた。

 

「……!?」

 

 またもトレーナーの指示を無視したメロエッタに対し、甜花は動揺を示す。

 燃え盛るフィールド。その中で仁王立つメロエッタは、続けて右腕の拳に“気合”を溜め始めた。

 

「まずい! あのポケモン、あんな奥の手を隠し持っていたのか……!?」

「ロズ! ロズレイ!」

「あぁ……ならばロズレイド! 大技で決めに行こう! ────ギガインパクト!!」

「ロォォォォ────ズッッ!!」

 

 大規模なエネルギーを全身に身に纏い、ロズレイドは吶喊する。

 対するメロエッタは微動だにせず、眼前より迫り来る破壊の一撃を受けきるつもりでいた。

 

「そんな! だめ、メロエッタ……!」

 

 思わず静止の声を上げる甜花。

 その時、彼女の図鑑が振動する。

 

「────ロォオオオオオズ!」

 

 直後、ロズレイドのギガインパクトが命中した。

 

『これは入ったぁああああ! 一気にサクヤ選手の楽曲が響き渡るぅうう!』

 

「……っ!」

 

 ギガインパクトが命中した爆発により、フィールドが煙で覆われる。

 その中で激しく振動を続ける図鑑に気付いた甜花は、咄嗟に画面を見た。

 

『てんか! うたうんだ!』

 

「……え?」

 

『きみが うたえば ぼくも きみの うたごえに あわせられる!

 そうすれば あいての きょくだって おしかえせる はずだ!』

 

「……で、でも……そんなことしたら……メロエッタに、技を出せなくなっちゃうよ……」

 

『それでも なぜかは しらない けど!

 メロエッタは きみの いうことを きかない!

 なら ぎゃくに これは チャンスだ!』

 

「……っ。で、でも……」

 

 突然言うことを聞かなくなったメロエッタ。

 ロトムの言うことはもっともでも、メロエッタを放っといて歌を披露するのは気が引ける。

 

(うぅ……どうすれば……)

 

「────ゴォオオオオン!」

 

 その時、観客席からポケモンの鳴き声……否、怒号が響き渡った。

 

「ひゃん……!?」

「ゴンゴン! ゴォオオン!」

 

 それはゴンベの怒号。彼は何かに怒り狂っており、甜花を指差して何かを訴えている。

 その発言内容を────ロトムがオブラートに包み、甜花に伝えた。

 

『ゴンベも きみの うたを ききたいと あんなに いっている!

 ……まぁ ちょっと いいかたが あれだけど……

 でも! それに きみだって!

 ────ゴンベが きみを まっていると…… テレビで みて しったから!

 こうして ここに いるんだろ……!?』

 

「──……!」

 

 コンテスト開始まで二十分もないのに、あれほど悩んでいた甜花が、今ここに居る理由。それは“自分を待ってくれているファンが一匹でも居たから“にほかならない。

 

『おぉっと! ようやく煙が晴れてきたぁああ! さて、ギガインパクトの一撃をモロに受けたメロエッタの様子は────な、なにぃい!!』

 

「な、なんだって!?」

「ロズレイ!?」

 

「────っ!」

 

 甜花にロトム、サクヤにロズレイド、実況者に審査員、観客までもが目を見開く。

 

「……メロォ?」

 

 ────覚悟はいいか?

 ロズレイドのギガインパクトを一身に受けて、額から血を流すメロエッタは、そのように問いかける。

 

「メェエエエ────ッ!」

 

 一歩、足を引き、一手、握り締め。その右腕のこぶしに、ありったけの気合を込めて振り抜いた。

 

「ロズ────!?」

「────ッロォオオオオオッッッ!!!」

 

 刹那、大技の反動で動けないロズレイドの腹部が、メリメリと音を立てて打ち抜かれた。

 

『っ……!?』

 

 それは音速を超える一打。技の接触点からソニックブームが広がり、突風が会場全体を襲う。

 

『こ、これは、なんということだぁああ! とんでもないメロエッタの執念! 泥臭さ! これには甜花選手の楽曲が、一気に音量を盛り返すぅううううう!!』

 

(……メロエッタ……っ!)

 

 なぜ、彼女が命令を聞いてくれなくなったのか。甜花には分からない。だが甜花は「いま自分にできること」をやるため────強風の中、姿勢を正し、喉に触れた指先から、聴く者の脳髄を蕩けさせる歌声を披露した。

 

 

 

『────、────────』

 

 

 

 不意に、会場全体が静まり返る。

 

「ろ、ロズレイド……!」

「ロズ……ッ!」

 

 そして、あれほどの打撃を受けてなお立ち上がるロズレイド。

 

「────……ラァ~~~♪」

 

 それを目にしたメロエッタは、最高潮に盛り上がった舞台で『滅びの歌』を口ずさむ。

 

 ────甜花の歌声とメロエッタの美声。

 ただそれだけでロトムが奏でるエレクトロな楽曲が鮮明に彩られていき、

 ただそれだけで甜花の後方に流れるミュージックがボリュームを上げていく。

 

「これは……素晴らしい歌声だ……」

「ロズ……」

「────ロズレイド。私たちも、負けていられないね?」

「ロズ!」

 

 歌って踊る甜花とメロエッタ。

 それと対峙するように────サクヤとロズレイドも歌って踊り出す。

 

「ロズレイド、天空にスピードスター!」

 

 フィールドの頭上に集まる彗星の群れ。やがて、それは三日月を象り────

 

「総仕上げだ! マジカルシャイン!」

 

 打ち上げられた光弾によって三日月は砕け散り、会場全体に星の光が散りばめられた。

 

「……さぁ、次で決着だ。どちらの技が強く美しいか……勝負だ! メロエッタ!

 

 ────ロズレイド、ソーラービーム!!」

 

「ロォオオオオオッズ!」

 

 掲げた両腕の薔薇に収束していく膨大な草エネルギー。

 

「ラァアア~~~♪」

 

 対するメロエッタは、滅びの歌を歌いながら────テレキネシスを繰り出した。

 

「ロズ!?」

 

 突如としてロズレイドの体が浮かび上がり、無重力状態になる。踏ん張りを利かせる地面が消失したため、なかなかソーラービームの照準が合わず、ロズレイドは焦りを見せる。

 

「ロズレイド! 緊張せず、狙いを定めることに集中するんだ!」

「ろ……ろず!」

 

 照準を合わせることに成功したロズレイドは、収束する光のエネルギーを一気に解き放つ。だが────

 

「ラァアア~~~♫」

 

 対するメロエッタは、滅びの歌を歌いつつ────

 

「ラァッ!!」

 

 ────電光石火の速さで駆け出した。

 

 迫り来る極太のソーラービーム。

 それをひらりと躱したメロエッタは、空中で無防備に漂うロズレイドめがけて────

 

「ロズッッ!?」

 

 ────延髄蹴りでトドメを刺した。

 

「ロズレイド!?」

 

 テレキネシスが解かれたロズレイドは、力なく地面に倒れる。

 

「メロォ♪」

 

 後方回転しつつ華麗に着地したメロエッタは、最後に観客へ向けてウインクした。

 

 そして、司会者のジャッジが叫ばれる。

 

『────勝負あり! ロズレイド戦闘不能! メロエッタの勝ち! かのアンティー仮面から勝利をもぎ取ったのは────大崎甜花とメロエッタだぁああ!!』

 

『FOOOOOOOOOOOOOOOOOOO────────!!!』

 

 両チームの曲が鳴り止み、ライブバトルが終了する。

 

「ロズレイド、よくやった……今はゆっくり休んでくれ」

 

 目を回すロズレイドをボールに入れたサクヤは、フィールドの中央まで足を運び、メロエッタに声をかける。

 

「君のパフォーマンス、素晴らしかったよ。ただ────」

「……メロ?」

 

 途中で言葉を切ったサクヤは、目があった甜花にウインクして「こっちに来てほしい」と手招きする。

 

「あ……」

 

 それに気付いた甜花は、とたとたと歩き、サクヤと肩を並べた。

 次の瞬間────サクヤによって甜花の腕が天高く掲げられた。

 

「わっ!」

「皆さん! この素晴らしいライブバトルをしてくれた甜花選手に、盛大な拍手を!」

 

 ドッと沸き立つ会場。

 しばらくその興奮が冷めることなく、サクヤと甜花は一足先に控え室へ移動した。

 

   ◇

 

 全てのライブバトルが終了した五分後。控え室で待機していた全てのコーディネーターとそのポケモンたちがフィールドに揃い、採点の時を待つ。

 

『……お集まりの皆さん。サント・アンヌ号ポケモンコンテストの優勝者が決定いたしました。その優勝者の名前は────』

 

 長いドラムロール。

 その直後、司会者が叫んだ名は────

 

『────大崎甜花と、メロエッタのチームです!』

 

『FOOOOOOOOOOOOOOOOOOO────────!!!』

 

 再び沸き立つコンテスト会場。観客の中でも、一二を争うのはサクヤのロズレイドか、甜花のメロエッタと思っていたようで、惜しみのない歓声と拍手が上がる。

 

『惜しくもサクヤさんは優勝を逃してしまいましたが、それも僅差でした! 観客席の皆さん。今大会に出場したコーディネーターとポケモンたちに盛大な拍手を!』

 

『そして優勝者には、さらに一曲。独占ライブを披露できる機会が与えられます! 大崎甜花さんとメロエッタは前に! リボン贈呈のあと、一曲お願いします!』

 

「……え? ……え……?」

 

 これでコンテストは終わりだと思っていた甜花は、観客席からのアンコールにあたふたする。無論、甜花にとってアンコールは初めてではないが、今の彼女は完全に気が抜けていた。

 

「あ……でも、甜花……ひとりじゃあ……」

「メロォ!」

 

 不意に甜花の腕を引っ張るメロエッタ。

 それと同時に、ロトムの仕業か『アルストロメリア』の曲が流れ始める。

 

「っ……!」

 

 ────それから、甜花とメロエッタによるコンサートが始まった。

 

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