大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α   作:形のない者

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玉虫色の章 ~Rainbow Chapter~
第31話 バッジのちから! これからの課題!


 地下通路での激闘から一週間後。

 平凡な少女の目覚めは、草木も眠る丑三つ時であった。

 

「────、…………。……?」

 

 目が覚めた。しかし体が起こせない。首に力が入らない。眼球も僅かしか動かせない。手足の感覚は薄く、微かに呼吸はできている。

 

「…………っ」

 

 金縛りにあったかのような恐怖を覚える。咄嗟に助けを求めるが、周囲に人の気配はない。

 

「────落ち着いてください……大丈夫です……」

「……?!」

 

 周囲には誰もいないと思っていたのに。突然、何もない空間から現れたように、モリノリンゼが覗き込んできた。

 

「驚かせてしまい……申し訳ありません……甜花さんが入院されてから、ずっと絶を使っており……見張っていたものですから……」

「……?」

 

 首をかしげる。────ように瞬きをする。

 

「今は体が動かせないでしょう。肉体の生命エネルギー全てを放出してしまったのです。無理やり精孔を開いた代償……本来なら生きていたのは奇跡……なのですが、実は甜花さんの場合は、やや特殊な例と言えます。それについては、子守唄の代わりに……ご説明いたします……」

「────────」

 

 ここはタマムシの病院。寝台に臥せているのは大崎甜花。徐々に地下通路での顛末を思い出してきた甜花は、現状の理解に努めるため耳を澄ませる。

 

「ありがとうございます……しかし無理に聴く必要はなく……眠い場合は、寝てもらっても構いません……とにかく今は、速やかな体力の回復を、優先してください……」

 

 甜花は頷く。────ように瞬きをする。

 

「……では、甜花さんが生き残った理由を……語り聞かせましょう。リンゼから説明できることは、その程度のものですので……」

 

 リンゼは語る。

 マタドガスによる大爆発が起きた、あの一瞬。確かにテントロトムの内部は、人間が生きてはいられない超高温の世界に支配されていた。それなのに大崎甜花が生き残った理由は、考えられる限りで、ただひとつしかないという。

 

「ほかの地方のバッジについて、あまり詳しくはありませんが……少なくともカントー地方のバッジには、装備者の念能力を補助する効果がある……と言われています。

 エリートトレーナーの間で、よく知られているのは……纏を活性化させるグレーバッジ。当初はポケモンの攻撃力を高める能力がある、と考えられてきましたが……実際は念能力の修得の有無に関わらず、トレーナーの無意識化における纏の発動を補助しており、トレーナーの闘志・オーラを、自身のポケモンに分け与えることで攻撃力を増していた……それがバッジの本質であるというのが……最近の研究によって、明らかにされてきました」

 

「……………………」

 

「この新事実により、ポケモン協会はバッジ効果の説明を改めることにしました。

 グレーバッジ。其は強化系を助ける巌のシンボル。

 ブルーバッジ。其は放出系を助ける水滴のシンボル。

 オレンジバッジ。其は変化系を助ける太陽のシンボル。

 レインボーバッジ。其は全ての系統を助ける極彩色のシンボル。

 ゴールドバッジ。其は操作系を助ける金貨のシンボル。

 ピンクバッジ。其は具現化系を助ける神髄のシンボル。

 クリムゾンバッジ。其は特質系を助ける執念のシンボル。

 グリーンバッジ。其は全ての系統を助けつつ、得意系統とその対系統を助ける覇者のシンボル。

 そして、更なる追加効果として。

 グレーバッジは、纏を助ける証として。

 オレンジバッジは、練を助ける証として。

 ピンクバッジは、絶を助ける証として。

 クリムゾンバッジは、発──更に特質系を──助ける証として。

 ……このように各バッジには、不思議な効果があると判明したのです」

 

 つまり甜花は、あの大爆発の最中。

 無意識にグレーバッジを握り締めていたことで、自動的に纏が発動した。

 

 能力者ではない甜花にとって、それは強制的な精孔の開放だったろう。その後、オーラを出し尽くした甜花は全身疲労により気絶。バッジの力で精孔を開放したため、バッジから手を離せば精孔が閉じ、甜花は“念能力者ではない以前の状態”に戻っていた。

 

 それゆえ現在、甜花の精孔は閉ざされているものの、全くの絶を使っているわけでもないため、生命エネルギーの回復には、以前と変わらない十分な休養が必要であると、リンゼは語る。

 

「……リンゼの見立てでは、あと一週間……それまでは、どうか十分に休まれてください。敵襲に関しては、ご安心を。……必ずやリンゼたちが、甜花さんをお守りいたします」

 

「…………、────」

 

 ────ありがとう。そう言いたげに、瞬きをして……

 

「……──」

 

 ……自然と、少女のまぶたは落ちていった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 一週間後。その日は曇り空の雨だった。

 

「────、……うっ……」

 

 雨の日特有のペトリコールの匂いに、鼻腔を刺激されながら目を覚ます。

 

「……あれ、甜花……」

 

 まだ夢の中に居るような心地。しかし内心では、病院で起きるのは何度目だろうと、諦観に満ちた辟易の気持ちが漏れていた。

 

「……甜花……どう、なったの……?」

 

 虚空に語りかける。なぜそうしたのかは分からない。ただ、ぼんやりと夢の中でリンゼに話された内容を覚えており、話しかければ姿を現してくれると思ったから。

 

「────おはようございます……甜花さん……」

 

 視界の中で、突然リンゼが姿を現す。

 もはや驚かなくなった。

 

 この世界では────特に高レベルのトレーナーとポケモンの世界では。

 念能力を使うことは、なんら不思議なことではないのだから。

 

「詳しい話は、甜花さんのロトムから聞き及んでおります……。なんでもロケット団の小隊長の暗殺に見舞われて、その窮地をなんとか突破したとか……」

 

「あ……うん。でも、それは……みんなが甜花を、助けてくれたおかげ……だから……」

 

 ────ありがとう。

 何度でも甜花は、助けられてばかりな自分を、それでも助けてくれる皆に向けて、礼を言った。

 

「…………」

 

 リンゼは会釈すると、みやびな所作で扉を開き、個室から去っていく。

 

「……?」

 

 首をかしげる甜花。なぜリンゼは退出したのか。

 その理由は、すぐに開かれた扉の向こうを見て、明らかとなる。

 

「メロォ!」

「ゴン……」

「ロト! ロトロト!!」

 

「あ……みんな……!」

 

 寝室に入ってきたメロエッタ、ゴンベ、ロトムの三匹。

 彼らは甜花の目覚めを嬉しがっており、各々その気持ちを表現する。

 

 甜花の頭上周囲を旋回するロトム。

 壁際のソファに腰掛け、目に付いたフルーツバスケットの果物を頬張るゴンベ。

 甜花に頬ずりしてくるメロエッタ。

 

「……あれ? まーちゃんは……?」

 

 ────アメモースがいない。

 その時、頭上を回っていたロトムがピタリと止まり、落ち込んだ様子で鳴き声をあげた。

 

「ろとぉ……」

「え? むーちゃん……?」

 

 ────次の瞬間。勢いよく寝室の扉が開け放たれた。

 

「て、甜花さん! ……っ! ──お、おはようございますっ!」

「おっ……! お、おはよう、ございます……!」

 

 元気いっぱいなカホの挨拶に押され、思わず甜花も意気込むような挨拶を返す。

 

「……っ! ホントに無事で良かったです! 一時はどうなることかと思いましたけど、もう体力は満タンみたいですね!!」

 

「あ……うん……! 甜花は、元気になったよ……。……本当は、もうちょっとだけ……お昼寝、していたいけど……」

 

 しかし、その暇はなさそうだ。

 甜花は、カホに話を聞く。

 

 地下通路での激闘の顛末は、はたして如何なるものだったのかと。

 

「……えっと、それを説明するにはですね……まず甜花さんは、念能力について詳しいですか?」

「う、うん……! 詳しい……! 甜花……自分の念能力は、何にしようかな? って……考えたこと、あるくらいだから……!」

 

「そうなんですか? やっぱり甜花さんは不思議な人ですね……? 念能力を使えないのに、念能力のことを知っているなんて……普通は四つのバッジを集めるまで、一般トレーナーは念能力の存在にすら気付けないのに……」

 

 とにもかくにも事の顛末を説明する為の念能力に関する知識の前提条件はクリアしている。ならば難しい専門用語を駆使して語っても問題はないと、カホは説明を始めた。

 

「あたしも途中から駆けつけたので、詳しい相手の能力とかは判別つかなかったんですけど、少なくともあの結界は、マルマインがブラフで、本命がマタドガスであることは確定だと思います」

 

 ロトムとの情報共有から推測した形で、カホは語る。

 まずは、それぞれの系統を暴く。

 小隊長は操作系。バリヤードは強化系。マタドガスは変化系。マルマインは具現化系。

 

 それから『自粛すべし密室殺人』の仕組みを暴く。

 まず小隊長は、バリヤードに光の壁とリフレクターを使わせた。作り出された神秘の障壁を具現化系の要領で融合させて六枚の障壁を作製。それを操作系で操り、対象を閉じ込めるように展開させた。

 次にバリヤードは、他者の念能力を強化させる能力を持つため、最初はマルマインの時限爆弾を強化させていた。おかげでマルマインが強力な時限爆弾であると見せかけることができ、実際カホがバリヤードを倒さなければ、強化されたマルマインの大爆発は甜花とテントロトムを消し飛ばしていただろう。

 

 しかし小隊長は、バリヤードが倒された時のことも考えていた。それがマタドガスである。彼は変化系の使い手で、自身の姿を偽っていた。マタドガスの強化系は80%しか出力を引き出せないが、それでもバリヤードに強化されたマルマインの次に強力な爆弾となる。

 バリヤードが倒された時、具現化系のマルマインが生成する異次元の穴を通って結界内部に侵入し、80%の強化系で大爆発を起こす。たとえマルマインの大爆発を防ぎきっても、畳み掛けるようにマタドガスが大爆発をすることで、確実に相手を葬り去る二段構えの自爆特攻となる。

 

 しかし、この能力の問題は二つある。

 一つ目は、バリヤードが強化すべきものが二種類あること。それはマルマインの時限爆弾と結界障壁の硬さ。

 二つ目は、マルマインが大爆発または戦闘不能に追い込まれた時、異次元の穴が閉じてしまう為、マタドガスと息のあったコンビネーションができなければ、土壇場で二段構えの大爆発が間に合わないこと。

 

「これだけでも、よく訓練されているポケモンたちだと分かります。相互協力(ジョイント)型の念能力使いで、互いをカバーし合うような能力は、それほど珍しいものではありません。そして、この念能力を打ち破る為には、最低二名の念能力者が必要でした」

 

 そこまでの話を聞いた甜花は、今度は自分の考えで『自粛すべし密室殺人』の攻略法を口にする。

 

「それは……甜花の手札の場合、結界の突破役と、爆発を抑え込む役目……だね。

 結界の外にはゴンベとメロエッタがいた……先にバリヤードとマタドガスを倒すことができれば、あとはマルマインだけ……外から結界を壊してもらって、マルマインが爆発する瞬間……ゴンベとメロエッタの技で爆発を一瞬でも抑え込むことができれば、甜花はテントロトムと一緒に爆発から逃げることができたはず……」

 

 でも、それは二匹の喧嘩で出来なかった。故に甜花は、ゴンベとメロエッタに頼らず、解決法を模索したが、最後はカホたちの救援を待つしかなかった。

 

「…………」

 

 俯く甜花を見たカホは、すぐに彼女の気持ちを察することができた。

 

 甜花はそこまで分かっていながら、自分が『結界の突破役』も『爆発を抑え込む役目』もこなせないため、どうすることもできなかった事実に、内心でとても歯噛みしていたことを。

 

「……そうですか。そこまで分かっていたんですね……甜花さん、すごいです!」

 

「ううん……いろいろ考えたけど、これくらいしか分からなくて……でも……分かっても、何もできなかった……」

 

 手数は揃っていた。手札も整っていた。

 しかしゴンベとメロエッタのケンカにより、この作戦は使えなくなって、没となった。

 

「……だから、転送システムを応用した救援要請を……あたしたちに送ってきたんですね?」

「うん……」

 

 うなずいた甜花は、ふいにハッとした表情をする。

 

「あ! そ、そうだ……カホちゃん! まーちゃんを、見なかった……?」

「え? まーちゃんって、甜花さんのアメモースのことですか……?」

「て、甜花……まーちゃんに、レトロメールを持たせて……カホちゃんの携帯電話に転送したはず、なんだけど……」

「え……? で、でも、それはおかしいですっ! だって、あたしが受け取ったモンスターボールは────“中身がカラ”だったんですから!」

 

(────っ!?)

 

 アメモースが入っているはずのボール。その中身がカラだった。けれどレトロメールだけは残っており、転送自体はきちんと完了されていた。

 

(……これは、いったい……どういう、ことなの……? まーちゃん……どこに、行っちゃったの────!)

 

「……あ、そうだ。タマゴは……!?」

 

 甜花はリュックの中から保育器を取り出し、シロナから預かったポケモンのタマゴに傷一つないことを確認する。

 

「……よ、良かった……無事で……」

 

「きっとそのタマゴ、甜花さんがグレーバッジのちからを使った時に、同じオーラに包まれていたから無事だったんですね! ホントによかったですっ!」

 

 我が事のように喜ぶカホは、ふいに何かを思い出したように懐から一通の便箋を取り出した。

 

「あ、それと。これ、お返しものですっ!」

 

 甜花に手渡されたのは、一通のレトロメールと空のモンスターボール。それは大崎甜花がプロデューサーから受け取った大切なもの。そしてアメモースが入っていたはずのモンスターボールだった。

 

「あ! ありがとう……カホちゃん……!」

 

「えへへー。なんだかとても大事そうなものだったので、しわくちゃでも大切に保管しておきました!」

 

 大切なレトロメールを返してもらい、皆の無事を確認できた。

 しかしアメモースだけ所在が知れない。

 

(…………)

 

 暗い顔で俯く甜花は、どうにかしてアメモースを探し出そうと知恵を凝らす。

 

「……あの、ところで甜花さん。アメモースについてのことかは分からないんですが……いったいどうやって、あたしのスマホにボールを転送させたんですか……?」

 

「────え?」

 

「いえ、あの……知らないナンバーから送られてきたメールだったので、少し開けるのに躊躇してしまって……あたし宛なのは確かなんですけど、もしかすると同姓同名の誰かに送られたメールなんじゃないかとも思ったりして……」

 

 そのせいで到着が遅れたことを、カホは謝罪する。

 それに甜花は構わないと返した。しかし、もっと詳しい説明を聞く。

 

「えっと……普通、転送システムでやり取りする番号は、全部で10桁のIDで通信を行うんですが……今回甜花さんから送られてきた不思議なナンバーは、IDが11桁のIDだったんです!」

 

 この世界のIDが『×××××‐×××××』である場合。

 現実世界のアドレスは、その種類によって多岐に渡る。

 

 甜花が入力したのは後者で、カホにとって通信番号といえば前者が常識。本来なら通じ合う事のない回線。それが仮に通じた場合、何か“世界のバグ”のようなものが発生したのではないか。

 

(────だとすると、まーちゃんは…………)

 

「……!」

 突然布団を翻した甜花は、寝台から降りようとする。

「……っ!?」

 しかし、突然の体の痛みに驚き、片目の痙攣の後、動けなくなった。

 

「あ! い、いきなり動いちゃダメです! 生命エネルギーは回復しても、肉体の傷は、おそらく、まだ……!」

 

 転びそうになった甜花。その体を支えるカホ。

 

「……デパート……」

 

 その時、甜花が呟いた。

 

「……え?」

 

「甜花……タマムシデパートに、行きたい……!」

 

 ────きっとそこに、アメモースがいる。

 

 それは漠然とした思考。それはすがるような奇跡。されど甜花は、この世界における一つの弱点を知っていた。

 

(……この世界が、本当にゲームの世界であるのなら──

 甜花はひとつだけ……ある“重大な欠陥“を知っている!!)

 

 入院着から普段着に着替えた甜花は、さっそく雨の中、タマムシデパートに出発する。

 

「え、あ、甜花さん!?」

 

「行こう、カホちゃん……! まーちゃんを見つける方法が、たぶんあるかもしれない……!」

 

   ◇

 

 病室から出た甜花は、ふと────廊下でばったり、リンゼと出くわす。

 

「あ、モリノさん……」

 

「……どこか、お出かけに……?」

 

「あ、うん……タマムシデパートに、ちょっと……」

 

「……ならば、ひとつだけ忠告がございます。リンゼが街を空けていた間、タマムシシティのあちらこちらで、ロケット団の姿が確認されており……おそらくは────」

 

「……うん。甜花、それ……たぶん分かってた。

 でも、大丈夫。ロケットゲームコーナーには、近付かないから……」

 

「……?」

 

「と、とにかく、甜花……先を急ぐね?

 ────あ、それか……モリノさんも、一緒に行く……?」

 

「……いえ。リンゼは、今は……遠慮しておきます。

 それより、甜花さん……少しだけ、大事な話が……」

 

「……?」

 

 突然真剣な面立ちとなったリンゼは、甜花に『大事な話』とやらを始める。

 

「────それは、“これからのこと”についてです。甜花さんは、ロケット団に命を狙われている身……ならば身を守るため、今よりもっと強くなる必要がございます」

 

「…………。それは、そうだけど……でも、甜花……念能力なんて……修得できないよ……」

 

 大崎甜花は、この世界の人間ではない。才能に溢れたこの世界の住人なら、念能力の修得は、そう難しいものではないのだろう。

 しかし甜花は、ただの凡人。超能力なんてオカルトが存在しない常識的な世界で生まれ、生きてきた、ただの人間である。故に念能力の才能は皆無。修得しようにも、素養がまるきりなければ話にならない。

 

「────ならば、バッジのちからを借りればいいのです」

 

「……え?」

 

「今、甜花さんの手には……グレーバッジとブルーバッジ……二つのバッジがあります。

 これは強化系と放出系の発を助けるアイテム。その上、全ての系統を助けるレインボーバッジを手に入れることができれば……」

 

 まっすぐとリンゼは、どこか試すように甜花の瞳を見抜く。

 

「たとえ念能力の素養がなくとも……能力者相手に一矢報いる程度の活躍はできるはずです」

 

 それは、つまり。

 

「リンゼは、タマムシのジムでお待ちしております。そして……甜花さんに提示するバトル形式は、主に二種類。一つ、それは通常のジム戦。命の危険のない、トレーナーとしての力量を確かめるバトル。二つ。それはトレーナーへのダイレクトアタックを許した戦い。ルール無用。あらゆる手を尽くして勝利をもぎ取る。まさに命を賭した猛修行」

 

「……っ!」

 

「どちらを選択するかは、甜花さん次第でございます。……それでは、リンゼはジムで準備がございますので……」

 

 そう言ってリンゼは踵を返し、一足先に病院を後にする。

 

「……甜花さん……」

 

 その時、病室の中から会話を聞いていたカホが、ひょっこり顔を出してきた。

 

「……行こう、カホちゃん。まずはデパートに行って、まーちゃんを助けなきゃ」

 

 ────リンゼの目は本気だった。

 おそらく彼女は、甜花が前者を選んでも……問答無用で後者の戦い方を強制してくる。そんな気配さえ感じられた。

 

 その気配を感じたのは、カホも同じこと。

 故にカホは、“これからのこと”を自分なりに考える。

 

「……ごめんなさい、甜花さん。ちょっと、あたし……用事ができちゃいました!」

 

「え?」

 

「用事が終わったら、すぐに追いつくと思うので、先に行っててください! それでは!」

 

 たたたっ! とカホは、小走りで廊下を走り去る。

 

「…………」

 

 ひとり残された甜花は、若干の心細さを感じたが────

 

「ロトォ!」

「ゴン……」

「メロォ!」

 

 リンゼの宣戦布告を受けてやる気満々の三匹を見て、かなりの頼もしさを感じていた。

 

「……うん。そうだね! 早くまーちゃんを助けに行って……あと、モリノさん、ちょっと強そうだから……ほかのトレーナーとバトルして、レベルアップしたあと、ジムに挑もう!!」

 

「ロトォッ!」「ゴンッ!!」「ララァッ!!」

 

「うん! 行こう、みんな!!」

 

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