大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α   作:形のない者

34 / 44

 これは大崎甜花が「トレーナー」として成長する物語。

・第一部
┗四つのバッジ編
【真白色の章 ~White Chapter~】
【鈍色の章 ~Glay Chapter~】
【縹色の章 ~Blue Chapter~】
【朽葉色の章 ~Orange Chapter~】
【玉虫色の章 ~Rainbow Chapter~】
【山吹色の章 ~4Ever Chapter~】
┗聖地巡礼サブウェイ編
【グリーンフィールドの章 ~Cute Chapter~】
【フウラシティの章 ~Wise Chapter~】
【アルトマーレの章 ~Sturdy Chapter~】
┗大崎甜花の覚醒編
【ガンリュードの章 ~Advance TENKA~】
┗伝説のナナシマ編
【是・神話大戦の章 ~Ragnarok Chapter~】
【序・神話大戦の章 ~Team Rocket&Elite Four~】
【破・神話大戦の章 ~Hoenn Ragnarok~】
【急・神話大戦の章 ~Sinnoh Ragnarok~】
┗ポケモンリーグ編
【セキエイ高原の章 ~Region Pokemon Battle~】

※編部章節の編と部が逆なのは内緒(昔の筆者は間違えて覚えていた。武辺小説と覚えていたのが良くなかった。なのでこれからは変態武将説項目と覚えよう)



粗筋の章
第一部① 四つのバッジ編!


 

   第一部 四つのバッジ編 玉虫色の章 ~Rainbow Chapter~

 

【第35話 VS印象派リンゼ!】

 開幕、モリノリンゼが日本刀を抜刀。斬りかかる。大崎甜花はテントロトムで防御。鋼刀と鋼帳が火花を散らす。

 

 ロトムのむーちゃんvsキュウコンの念バトル。キュウコンの鬼火と念のオーラを組み合わせた炎渦の密室空間に閉じ込められる。内部空間の酸素がみるみると燃焼していく。窒息死まで時間がない。モリノリンゼは改めて忠告する。本気で殺しに行くと。ならばと大崎甜花は、ロトムのむーちゃんの知恵を借りて、突破口を直感した。

 

 大崎甜花はラルトスのすーちゃんを繰り出す。特性トレースにより、大崎甜花の心情をキャッチ。相互協力(ジョイント)型の念能力開発に着手。ラルトスは、大崎甜花の思考と感情を読み取って“オメガリボルバー”を作製した。この世界には“メガシンカ”の概念が浸透していない。大崎甜花はそれを逆手に取ることで、モリノリンゼとの知略戦・心理戦に対し、情報戦でアドバンテージを取ろうと考えたのだ。

 

 大崎甜花はリボルバーを構えて、メガシンカさせる念弾をゴンベの体に撃ち込む。しかしゴンベは“メガシンカ”しなかった。その代わり世界の法則が乱れて“ダイシンカ”した。ダイマックスとは似て非なる効果を発揮したゴンベは、姿が変わってダイゴンベとなり、メガシンカと比べて一段階劣る一時的な進化を発揮。ダイゴンベの体毛にあらゆる進化の石が突き出して、図鑑上では“ノーマル・いわ”タイプとなる。進化の石からタイプエネルギーを吸収することで、全てのタイプエネルギーを操れるようになっていたダイゴンベは、炎に強いタイプエネルギーを全て用いて、炎渦結界を強引に突破。

 

「ゴンベの体は、無限の岩で出来ている────!!」

 

 ダイゴンベの拳坤一撃、地割れを起こす。轟然と震撼するバトルフィールドは断割され、キュウコンが敗北。さらに大崎甜花は、砂塵に紛れて移動し、モリノリンゼの背後の取って、メガリボルバーを背中に突きつける。メガリボルバーは、対象を強制進化させる念弾だけではなく、ただの破壊力を持った念弾も発射可能。

 モリノリンゼは、ここからいくらでも巻き返しを図れる奥の手を有していたが、これ以上は互いに大怪我をするため降参を選択。なにより大崎甜花が──ラルトスの力を借りたとは言え──念能力を開発したのだ。大崎甜花強化計画の目的は達成している。

 

 かくして大崎甜花は、モリノリンゼの試練をクリアして、念能力者との戦い方を学び、メガリボルバーを使いこなし、レインボーバッジを手に入れた。

 

          §

 

 

 

   第一部 四つのバッジ編 山吹色の章 ~4Ever Chapter~

 

 タマムシジムを後にした大崎甜花は、ポケモンセンターで仲間たちを回復する。次はヤマブキシティに行きましょうと、コミヤカホと談笑しながらポケモンを出た瞬間、目の前に黒いワゴン車が急停止。ポケモンの技で車の中に吸い込まれたコミヤカホは、そのまま急発射した車によって連れて行かれてしまった。あまりにも突然のことに放心する大崎甜花。するとロトムが《これは誘拐事件だ!》と騒いだことで、ようやく何が起きたのか理解した。そういえば黒いワゴン車のドアには、デカデカと赤いRの文字が記されていた。さらに思えば、次に行く街のイベントは、まさしくロケット団との戦いが待っている。大崎甜花はモリノリンゼに助けを求めるため、ポケセンに戻って電話する。するとポケセンの大画面テレビからニュースが流れた。

 

 シルフカンパニー占拠事件。ビルの上空を飛ぶヘリコプターから撮影された映像には、ちょうど今さっきコミヤカホを誘拐した黒いワゴン車が映り込んでおり、シルフカンパニーに入っていった。大崎甜花とモリノリンゼは、急いでシルフカンパニーに向かう。

 

 モリノリンゼの抜刀剣術。キュウコンとの連係プレーで、群がるロケット団の下っ端を瞬く間に蹴散らす。その間に大崎甜花はテントロトムの中で身を守り、浮遊するテントロトムと共に廊下を移動。敵と遭遇した場合、速やかにゴンベが殴り倒し、恫喝。ゴンベは人語をしゃべれないため、敵は何を言いたいのか分からず謝り倒す。そこで大崎甜花が通訳した。「カホちゃんはどこ!?」

 

 一階。二階。三階。四階。五階。階層を上がるごとに、念能力を使えるロケット団の下っ端やポケモンが現れる。

 そして七階に到達した時、敵の戦闘スタイルが激変した。不可視の攻撃。念能力とは似て非なる攻撃方法。ロトムは凝を使うことで、なんとか輪郭を捉えることができる。不可視の存在にはあらゆる攻撃が効かない。ロトムの念のオーラさえ無効化される。大崎甜花は直感する。まさかとは思うが、そんなことがありえるのかと。

 

 強靭な壁を作成するプロテクト・アーボ。まもるのわざと組み合わせることで無敵の防御能力を誇る。

 空気中の窒素を鉛玉に変えて高速射出するマシンガン・ドガース。どくガスのわざと組み合わせることで無限に弾丸を補充可能。

 死体を操るアンコール・コラッタ。

 触れた場所から毒針付きの茨を生やすグラスフィールド・サンド。毒針に触れたものは鋼タイプのエネルギーであろうと腐蝕させる。

 触れた物質をポップコーンに変えて撃ちだすホップバレット・メノクラゲ。ポップコーンに触れたものは必ず溶ける。

 固体と液体が自身の体を透き通るリバーサイド・ベトベター。物理技を無効化し、特殊技の大半を無効化する能力だ。

 他者の命令語を鍵に変えて保持するパラダイス・ゴース。鍵を生物・非生物問わず差し込んで回すことで、鍵に宿る命令語を実行する。それにより、大崎甜花が「むーちゃん、放電!」と叫んだ命令口調を鍵に変えて、なんでもない壁に差し込んで回す。すると壁が放電を発動し、ロトムの放電と相殺した。その代わり鍵を差し込んだ壁は自壊する。

 

 これら不思議な能力のポケモンたちを倒していき、ビルの中層に到着した頃。モリノリンゼは地下を捜索しており、コミヤカホを発見し、今から脱出するとの報告を受ける。大崎甜花も脱出するため、ビルの窓を割って外に飛び出した────瞬間。

 体が空中で停止する。全身の輪郭にエスパータイプのエネルギーが桃色に光っている。大崎甜花は直感した。「サイコキネシス!?」テントロトムが慌てて絶叫する。《テンカ! グレーバッジを握りしめろ────!!》 テントロトムは壁に叩きつけられた。テントロトムの中にいる大崎甜花も引きずり出されて、天井、床、壁に叩きつけられる。頭部と全身を強打。ぐったりと倒れる。

 

「あら、また不運な事故が起きちゃったわね? 私のサイキック・フーディン!」

 

 頭から血を流す大崎甜花は、明滅する視界の中、フーディンを従えるナツメを見つける。ロケット団の三幹部。ヤマブキジムのジムリーダー・エスパー少女のナツメ。

 

「私のフーディンは、いつも不運な事故を呼び寄せてしまうの。ごめんなさいね?」

 

 謝る気のない嘲笑混じりの見下し。大崎甜花はむくりと起き上がる。驚くナツメ。念能力さえ使えない大崎甜花が、なぜこれだけのダメージを食らって起き上がれるのか考察する。話は単純。グレーバッジが纏の役割を果たしてくれた。否────大崎甜花は、ブルーバッジを握り締めている。間違えて別のバッジを握り締めてしまったのだ。すると纏での防御は出来ていないことになる。ならば大崎甜花は、なぜ頭から血を流す程度で済んでいるのか。生身なら死んでいてもおかしくない。そもそもフーディンのサイコキネシスには────

 

幽波紋(スタンド)……」

「っ!! 貴様、なぜその単語を……!」

 

 大崎甜花は直感していた。七階より上にいたポケモンたちは、みんなスタンド使いだった。“スタンドはスタンドでしか倒せない”……故に、本体への攻撃以外で倒すことができなかった。

 だからどうした。大崎甜花が軽傷で済んでいる理由にはならない。それは大崎甜花にも分からない。次の瞬間、怒り心頭のメロエッタが、自らボールから出てきた。全身には念のオーラを纏っており、それは初めから大崎甜花の全身を覆うようにして守っていた。ナツメは驚愕する。

 

「まさか……なんて恐ろしいオーラの操作精度だ……! ボールの中から、他者に対して“周”を使うことで、大崎甜花を纏の状態にしたというのか……!?」

 

 生身の人間がオーラに触れたら精孔が開いて最悪死亡する。だが大崎甜花の精孔は開いていない。メロエッタは大崎甜花の皮膚には触れないように、その外周をオーラで覆うことに成功していた。ナツメは、これほどの強いポケモンをサカキ様に献上すれば喜ばれること間違いなしとほくそ笑む。だがここまで強いと生け捕りは難しい。ナツメ自身が返り討ちに遭って殺される可能性が高い。故にナツメは即断した。

 

「今すぐお前たちを、この世から消し去る」

「やれる、ものなら────やってみろ……!」

 

 血を流しすぎて意識が朦朧とする大崎甜花は、メガリボルバーを取り出して戦闘開始。刹那、大崎甜花の頭上にジムリーダーのキョウと、サムライ・ゴルバットが止まっていた。いつの間に、天井に立っていたのか。暗殺斬撃。大崎甜花の首が刈り取られる────代わりに、メロエッタが大崎甜花の体を突き飛ばして身代わりとなった。床をコロコロと転がるポケモンの生首。

「サムライ・ゴルバットのスタンド能力は、首以外に攻撃は効かないが、首に命中すれば掠っただけでも素首を落とすことができる能力────」

 大崎甜花は目を見張る。立て続けにキョウの忍者刀が大崎甜花を狙う。ゴンベの一撃。ゴルバットが一撃で死亡。キョウは一時撤退。ナツメとフーディンが放出系の念弾を飛ばす。ダメージを受けて倒れていたテントロトムがようやく起き上がり、自らを盾として大崎甜花を庇い守る。そしてフーディンの念弾がテントロトムに当たった瞬間、不運な事故が起きた。

 大崎甜花のモンスターボールから、ラルトスが飛び出してくる。ラルトスは戦いの邪魔になることは理解しているため出てくることはない。つまり不運な事故によって、モンスターボールが故障し、“逃がされた”状態になっていた。大崎甜花はラルトスのすーちゃんを守るため、グレーバッジを手にしてラルトスを抱きしめて庇う。念弾の一撃が大崎甜花を吹き飛ばし、再び不運な事故が起きた。大崎甜花の腕の中で動かないラルトス。どうやら大崎甜花が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ゴン!」

 ゴンベが叫ぶ。フーディンの念弾に触れてはならない。念弾にスタンド能力を乗せて攻撃している。テントロトムはテントを捨てて全力回避。レオも電光石火で遁走。ゴンベは床を殴って破壊し、大崎甜花と共に下層へ転落。すかさずレオが大崎甜花のもとに駆けつける。

 大崎甜花は放心していた。メロエッタとラルトスのすーちゃんが死んだ。自分のせいで死んだ。すぐに動けなかったから死んだ。大崎甜花がのろまなせいで死んだ。

 レオがビンタする。「泣くのも反省も後だ! 今は死ぬ気で生き残るぞっ!!」

 

 上階からナツメが追撃してくる。念弾の豪雨が降り注ぐ。それは計三階を貫通して、シルフカンパニーが傾く。大崎甜花はレオに突き飛ばされて射程圏外に転がっていたが、そのせいでレオが重傷を負った。このままでは全滅する。大崎甜花は、この最悪の状況を切り抜けるべく、直感した。

「う、うわああああ────!!」

 突貫。ゴンベとロトムは驚く。ナツメは嘲笑った。「精神が崩壊して血迷ったか!」

「ゴンベ! むーちゃん! 援護、おねがい……っ!!」『!!』

 

 大崎甜花はメガリボルバーを構えて、ナツメの体を掠るように念弾を発射。彼女の善性が邪魔して、どうしても人を狙えない。ふとフーディンのサイコキネシスがメガリボルバーの念弾を破壊。すかさずナツメが放出系の念弾で、大崎甜花の心臓を撃ち抜く。大量の血を流す大崎甜花は、グレーバッジを握り締めていたが……その程度の纏では防げなかった。グレーバッジのほかにもブルーバッジを握り締めていたが、それは放出系を助ける効果しか持たないため、大崎甜花が念能力を使えない以上、持っていても意味がないものだった。結局、大崎甜花は錯乱しており、無意味なことをした。

 

 大崎甜花は糸の切れた人形のように倒れた。「死んだか」ナツメは冷たく言い捨てて踵を返す。

 ────刹那、ナツメの背筋に悪寒が這い上った。最初はゴンベとロトムの殺意と判断した。だが、それとは異なる。殺意のような刺々しさはもちろんあるが、それとは別に、もっと、何か、強大な、何かが────ナツメの背後で、ゆらりと()()()()()()()()()()()

 

 ナツメとフーディンは振り返る。血の池の上で倒れる大崎甜花の傍らに、明らかに“スタンド”が寄り添っていた。それは誰のものか。無論、大崎甜花のスタンドである。ナツメは目を疑った。この土壇場でスタンドに覚醒する確率は天文学的だ。ありえない。その思考を()()()()ように、大崎甜花のスタンドが語る。

 

「私は大崎甜花。大崎甜花は私。スタンド名は“ミッドナイト・(ハート)”ッッ!! 大崎甜花の意識がない場合のみ発現する、遠隔自動操縦型の幽波紋!! 大崎甜花がグレーバッジを握り締めているだけなら、私は近接パワー型のスタンドとして発現していたでしょう。しかし大崎甜花がブルーバッジも握り締めていたおかげで、放出系すなわち遠隔操作型のスタンドとしても発現した!! 近接パワー型と遠隔操作型、この二つを組み合わせれば、すなわち近接パワーに匹敵する遠隔操作型、つまり────自動追跡遠隔パワー型となる!!」

 

 つまり大崎甜花は、それを狙ってやったとでもいうのか。

 

「だが、まて……それはおかしい! 大崎甜花は、私の念弾を受けて精孔が開き、死んだはずだ! その上で彼女が生きていたなら、念能力に目覚めるはず! スタンドが発現するわけがない!」

「いいえ。このゲームの世界は、ポケットモンスターと、ハンターハンターと、ジョジョの奇妙な冒険といった作品が、いっしょくたになった世界。そこで大崎甜花は直感した。《もしかしたらスタンドは、念能力に置き換えると変化系か放出系になるのではないか?》と……」

「っ?!?!」

「そして、彼女の超直感は大当たり! この世界の真理を見抜いた! スタンド能力は、必ずしも念能力の放出系と()()()()()()が……大崎甜花は《大雑把でマイペースであり神経質》であるため、放出系と操作系と具現化系の才能が有る! つまり特質系に寄った操作系!」

「な、何を言っている!?」

「まだ分からないか? 私は、念能力で作られたスタンドだということだ!!」

 

 ミッドナイト・❤は具現化していないため、凝が使えないゴンベには姿が見えない。そこまで再現されている。

 

「さぁ、覚悟はいいか? 私は、大崎甜花の安眠を守る者だッ!!」

 

 ミッドナイト・❤とナツメ&サイキック・フーディンの肉弾戦。

 

「ドォオオル! ドルドルドルドルドルドルドルドルドルドル……!!」

 

 ナツメの念能力は変化系。その念弾を受けたことで、力ある(ヴィジョン)を作った。あとは放出系の力を持つブルーバッジで、遠隔操作型の方向性を強め、さらに強化系のグレーバッジで、近距離パワー型に匹敵する力を与えた。それゆえの遠隔自動操縦型。

 

 本体からどれだけ離れても落ちないパワーと耐久力。ナツメとフーディンのふたりがかりでも、ミッドナイト・❤は傷ひとつ付かない。しかも遠隔自動操縦型のため、ミッドナイト・❤に与えたダメージは、大崎甜花にフィードバックされない。

 

「ドルドルドルドルドルドルドルドル────I am?」

 突然の質問。ナツメは格闘しつつ、ぽかんとした顔で答えた。

「? み、ミッドナイト・❤……?」

「|No! No! Yes! No! I am!!《そう! そう! そうだけど! ちがう! わたしは!》」

 

 かくしてミッドナイト・❤は、圧倒的な決着をつけた。

 

「────I❤DOOOOOOOOOOOOOL(アイラブドォオオオオオオオオオル)!!!」

 

 ミッドナイト・❤のラッシュによって、ナツメとフーディンは吹き飛ばされる。あらゆる不運な事故は、ミッドナイト・❤の癒しの力で打ち消されており、大崎甜花もいつの間にか、頭部の切り傷が治って、心臓も修復しており、血の池の上で健やかな寝息を立てていた。

 

「ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル……テメェの血潮をブルーミィ(花満開)ッ!!」

「ぐわああああああ!!」

 

 ナツメとフーディンが吹き飛ばされる。

 その時ミッドナイト・❤は、ナツメの胸元に光るゴールドバッジを抜き取っていた。

 ナツメたちは窓ガラスを叩き割って外に放り出され、地上へと落下。おそらく死んではいない。ナツメは余力は残していた。まず間違いなく着地するパワーはあるだろう。

 

「わたしは安眠の守護者! 大崎甜花の安眠を邪魔するものは────殺しても許さない!!」

 

 そのままミッドナイト・❤は、ナツメたちにトドメを刺そうと追いかけようとした。

 その時、大崎甜花が目覚める。

 

「────……あ、あれ……? 甜花、なんで、寝て……」

「ハッ!」

 

 ミッドナイト・❤はゴールドバッジを投げた。ゴンベがキャッチする。そしてスタンドは消失した。

 彼女は“大崎甜花の意識がない時しか出てこない”という制約と誓約を自発的に結んでいるようだ。

 

 そして戦闘は一旦終了した。ゴンベもロトムも、レオも、何があったのか皆目見当がつかない。大崎甜花が死んだと思ったら、スタンドとやらを発現し、圧倒的な大逆転勝利を決めた。その凄まじさは、まさにダークテンカに引けを取らないスゴ味があった。

 そこでレオが言う。「いや、まだ安心するのは早い! あの忍者野郎がいる! すぐに脱出するぞ!!」

 

 すかさずゴンベが動いて大崎甜花を抱える。ロトムもテントの中に憑依して、ゴンベが放り投げた大崎甜花をテントの中に収納し、窓ガラスを叩き割って外に飛び出す。レオも飛び込んで、テントロトムの屋根にしがみついた。一方のゴンベは、メロエッタとラルトスの亡骸を抱いて、一拍遅れて飛び降りる。

 

 刹那、恐れていたことが起きた。キョウの背中には、サムライ・ゴルバットの鉤爪が食い込んでおり、彼らは高速で空を飛翔している。空中戦が始まった。忍者刀がテントロトムを攻撃する。サムライ・ゴルバットのスタンドもラッシュを決めるが、テントロトムに首の概念はない。ゴンベは地上に着地した瞬間、アスファルトを踏み砕いて跳躍。キョウの腹部に一撃を蹴り込んで、テントロトムの屋根に着地。そのままシオンタウン方面へ脱出を図る。

 

 無論、キョウは逃がさない。首に当てればゴンベとレオだけは殺すことができる。

 その時、雲居の空から大炎が躍り出た。

 

「お従兄(にい)ちゃん! 甜花さんを助けて!!」

「リザードン! 大文字!!」

 コミヤカホの声。上空からリザードンに乗って現れたトレーナーは、なんとオーキド博士の孫のグリーンだった。彼はコミヤカホが誘拐されたことを、モリノリンゼから知らされており、急遽ポケモンリーグから駆けつけていた。

 

 グリーン&リザードン&コミヤカホVSキョウ&サムライ・ゴルバット。ロトムはグリーンの図鑑に電波を送信。サムライ・ゴルバットのスタンド能力について警告する。コミヤカホは片手にスマホを持っており、モリノリンゼにも警告を送る。次の瞬間、モリノリンゼは地上から瞬歩を使って駆け上がり、日本刀に語りかけた。

 

「鳴れ……鞦韆(よもびとしらず)

 

 解号と始解。キョウはひと目で見抜く。其はレジ系の死神と歌われたレジソウルが編み出した斬拳走鬼の斬。いわゆる斬魄刀の能力。本来は死神しか扱えないが、タンバシティ近くの隠れ里に居を構える退魔家の人間は、生身のまま魂魄を磨り減らすことで斬魄刀を扱えると聞いたことがある。

 

「卍・解────童々蘭无令堂(こいびとしらず)

 

 雨が降る。風が唸る。風が泣いて、啼いて、モリノリンゼの心が哭いている。仰げば青い空はなく、灰色の天に乙女は落つ。

 

「死覇装・華傳の型────汝の虚魂を、頂戴します……」

 

 卍解によってあまごいの技を再現し、始解の流水操作能力を強化する。

 全員の喉周りに圧縮した水の塊をマフラーのように巻く。

 サムライ・ゴルバットの斬撃が水に阻まれて、首に到達する前に避けられてしまう。

 

「妖刀・喰霊山水(かれいさんすい)

 

 モリノリンゼは念能力によって日本刀を具現化。そしてレインボーバッジを装着し、全系統の能力を発揮。ただの日本刀は、斬魄刀に進化する。

 

蜂吹(はちぶ)け、心恋(うらごい)────」

 

 それはひとりでに飛翔する二本目の斬魄刀。蜂のように俊敏に飛び回り、敵の背後を取って刺突する。

 

「今のうちに、甜花さんたちを連れて、脱出を……この敵は、リンゼが相手取ります……!」

 

 キョウ以外にも、何人かのロケット団がシルフカンパニーより飛び立って追撃してくる。グリーンは承諾し、コミヤカホを連れてリザードンと共にシオンタウンへ脱出。リザードンはテントロトムを抱えて速度を上げる。

 

 キョウとモリノリンゼの激闘。絶技と絶技の応酬。キョウは四大行の応用技をふんだんに駆使して渡り合う。モリノリンゼが大技の極意なら、キョウは小技の極意でしのぎを削り合う。派手と堅実の殺し合い。

 

 やがてモリノリンゼは二本目の斬魄刀を卍解する。

「卍解────不透明虚感情(みとおせぬからおもい)

 さらに鬼道を詠唱。双火墜を発動。爆焔に紛れてキョウの胴体を袈裟斬りにする。すると心恋はキョウの心を斬り伏せ、ホロウ化を促した。

 

「ッ!?」

 

 なんという殺意の攻撃か。サムライ・ゴルバットのみがわりのわざによって脱出していなければ、今の一撃でキョウはホロウ化して死んでいた。

 

「これ以上、リンゼに邪道を使わせぬよう、お願い申し上げます……」

「……フッ。恐れ入った。だが次は殺す」

 

 キョウの任務は、サカキの護衛。追撃はヤマブキシティの中まで。戦いのさなか、既にモリノリンゼは街の外に出ていた。街と道路の境界線上で、キョウはとんぼ返りするようにシルフカンパニーへ帰っていく。ロケット団もシルフカンパニーで用事が済んだのか、警察と戦いながら脱出を図っている模様。

 モリノリンゼは卍解と死覇装を解く。今の戦いで寿命十年分を費やした。それだけ消耗が激しいのだ。モリノリンゼはキュウコンに乗ってシオンタウンへ急ぐ。

 

          §

 

 シオンタウン上空。多数のロケット団の下っ端の追撃を受けながら、なんとかグリーンとコミヤカホは、リザードンとマメマルを駆使して撃退することができた。しかし、諦めの悪いロケット団の下っ端の最後っ屁によって放たれた破壊光線が、テントロトムに直撃する。ロトムにノーマルタイプの技は効かないが、なんとテントが耐久限界を超えて壊れてしまった。大崎甜花は上空から落下する。慌ててリザードンは下降するが、大崎甜花の落下先はタワーの屋上。着地点が近すぎる。地上に落ちるかどうかならギリギリ間に合うかどうかだが、このままでは大崎甜花はタワーの屋上に落下死する。

 

 その時、大崎甜花のリュックサックから不思議な光が放たれた。殻を割るような音。もこもこの白いわたあめのようなものが二つ飛び出す。それは元気よく羽ばたこうとし、間一髪、大崎甜花は緩やかに着地した。リュックサックの中で、何かが苦しそうにもごもごと動く。慌てて大崎甜花は中身を検めると────そこには、タマゴから生まれたばかりのチルットが泣いていた。

 

 大崎甜花はチルットを抱っこして、あやして泣きやます。

 リザードンが着地。グリーンとコミヤカホも降りてくる。底が破れているテントロトムも着地。テントの屋根に乗っていたゴンベとレオが降り立つ。ロトムも憑依をやめて外に出てきた。お気に入りのテントは修理に出せば直るだろう。それより────ゴンベは、メロエッタとラルトスの死体を差し出す。

 

 大崎甜花は、腕の中で何も知らず笑うチルットをあやしながら、ポロポロと涙が止まらなくなる。

 大雨の中、少女の声にならない号泣が叫ばれる。グリーンは、ちらりとラッタの墓を見やる。

 

「ポケモンは、怖くて強い生き物だ。いつかは死ぬ。だからトレーナーは、ポケモンを大切に育てる責任がある」

 

 コミヤカホは苦しむ。自分を助けに来たせいで、メロエッタとラルトスが死んでしまった。

 

 やがてモリノリンゼが合流する頃、大崎甜花は腫れた目で土を掘っており、メロエッタとラルトスをシオンタワーに埋葬した。チルットは、なぜ二匹を土に埋めるのか首をかしげる。生まれたばかりのため、死の概念について、まだ分かっていない様子。

 

「なんで……メロエッタと、すーちゃんが、死ななきゃ、ならなかったの……?」

 

 大崎甜花は初めて口を利いた。吐露したどうしようもない疑問に、グリーンが冷徹に返す。

 

「エスパータイプは、念能力やスタンドを生まれつき持っているほど強力な存在だ。故に、最初に潰すならエスパータイプが鉄則。ロケット団は、その戦いの流儀に則っただけだ」

 

 ならば大崎甜花は、そのことを念頭に置いた上で、エスパータイプのポケモンを扱わなければならなかった。

 

「……じゃあな。俺は帰る。カホ、この女と旅をしているのか? ……好きにしろ」

「あ、うん……ありがとう、おにいちゃん……」

 

 グリーンとリザードンは飛び立つ。

 それからコミヤカホは、自分のせいで二匹が死んだことについて謝罪した。しかしコミヤカホは何も悪くない。全て自分の責任だ、と大崎甜花は返す。泣き出す大崎甜花に、コミヤカホとモリノリンゼが寄り添う。チルットも寄り添い、ゴンベは背中を見せて俯いた。ロトムは落ち込んでおり、レオは歯噛みする。

 

 今回は手痛い一日となった。それでも大崎甜花は、前に進まなければならない。元の世界に帰るため。ロケット団も追撃してくるだろう。おちおちしてはいられない。それでも大崎甜花は、もう旅をする元気がなかった。

 

 すると大崎甜花は、あることに気づく。ポケットの中に何かがある。それを取り出すと、なんとメガリボルバーがあった。ラルトスは死んだのだから、ラルトスが具現化したこのアイテムは消えているはず。それについてコミヤカホとモリノリンゼが考察・解説した。

 

 死後の念。ラルトスは、大崎甜花のために、これからの殺し合いを戦い抜く武器を、遺していってくれたのだ。

 

「……っ! すーちゃん……!!」

 

 ラルトスのすーちゃんは、こう言いたいのだろうか。その武器を持って、元の世界に帰るのだと。

 大崎甜花は、ポロポロとこぼれ続ける目を拭い続けながら立ち上がり、コミヤカホに支えられながら歩き始めた。

 

 おなかがすいた。しぬほどねむい。はやくかえりたい。つらい。いたい。かなしい。さびしい。もういやだ。

 

 そんな絶望の中で、大崎甜花は旅を続けるしかなかった。

 





 プロット段階の節

第33話『バッジのちから×これからの課題』
第34話『初代裏ワザ! デパートの釣竿!?』
第35話『まーちゃん無双! VS理論武装トレーナー!』
第36話『飛べ、テントロトム! カホちゃんのリオル!』
第37話『vs印象派リンゼ』
第38話『vsキュウコンの狐火! メロエッタVSドタイトス!』
第39話『先制概念!? ゴンベVS最強ポッチャマ!』
第40話『コミヤカホ誘拐事件!』

第41話『ロケット団の暗躍! カントーチャンピオン・グリーン出動!』
第42話『シルフカンパニー突入!』
第43話『大崎甜花VSナツメ! 仲間の死!?』
第44話『カホvsマチス! タンバ流波紋疾走と界王拳!』
第45話『リンゼvsキョウ! 斬拳走鬼と血継限界!』
第46話『甜花vsナツメ②! 幽波紋と念能力!』
第47話『vsサカキ! 絶体絶命の殺戮技巧!』
第48話『空中戦! フジ老人のバトルサブウェイチケット』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。