大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α 作:形のない者
第一部 聖地巡礼サブウェイ編 グリーンフィールドの章 ~Cute Chapter~
ヤマブキシティからロケット団は去った。モリノリンゼはカントー地方から離れるべきだと提案。ならばとコミヤカホがバトルサブウェイに乗りましょうと提案する。ヤマブキシティの鉄道機関からバトルサブウェイに乗車。大崎甜花は失意の中、乗客たちとタッグバトルを繰り返して、次の停車駅に向かっていく。
コミヤカホとモリノリンゼは、未だ元気を取り戻さない大崎甜花を慰める。それでも最終的には自力で立ち直るのを待つしかない。
そしてスタンド使いとスタンド使いは惹かれあう。
グリーンフィールドでは、シンオウ地方はクラウンシティから輸入された、ポケモンスポーツ・ポケモンバッカーが流行していた。チヨコ、ジュリ、ナツハの三人は、ポケモンバッカーのチャンピオンを目指しており、今回グリーンフィールドで開催される大会に優勝するため、カントー地方から修行がてらバトルサブウェイに乗車してグリーンフィールドに向かっていた。
そんな三人から、腕試しのトリプルバトルを申し込まれる。大崎甜花&カホ&リンゼvsチヨコ&ジュリ&ナツハ。バトルフィールドとなる車両が爆発するほどの大激戦となる。
一方の大崎甜花は調子が出ず、半ばポケモンバトルにトラウマを刻みつけられていた。スポーツとしてのポケモンバトルだとしても、当たり所が悪ければ死ぬかもしれない。その恐怖が邪魔をして、なかなか攻撃を命令することができず、大崎甜花はいの一番に敗北した。
チヨコたちは、いったいどうしたのか質問する。暗い顔をしていたからバトルに誘ったのだが、それで元気が出ないということはトレーナー向きの性格をしていないのか。ということは悪いことをしてしまった。てっきりバトルサブウェイに乗っているものだから、好戦的な性格と誤解してしまった。チヨコはチョコレートをあげて、ジュリは何があったのか問いかける。そこで大崎甜花は、友達がいなくなったことを語る。具体的に死について言及しなかったが、ナツハは察した。
「そろそろグリーンフィールドに着くわ。そこでは今ごろ、ポケモンバッカー大会に向けて、お祭り騒ぎよ! そこで美味しいものを食べましょう? あなた、ちょっと痩せてるし、最近あまり食べてないんじゃないかしら? ならお祭りの食べ物を探しに行きましょう? きっとそれが一番の特効薬よ!」
グリーンフィールドに到着。色々な食べ物を頬張って観光を楽しむ一行。大崎甜花もお腹がすいていたので、あまり食欲はないが、元気を出したい気持ちもあるので、頑張って食べる。そしてメロエッタやラルトスと美味しいものを食べた日のことを思い出す。ポロポロと泣き出す中、事情を察した一行は空気を読み、さりげなく大崎甜花を次の店に誘っていく。
プクリンのおうふくビンタマッサージ。プリンのうたのお昼寝屋さん。ペラップと芸人の漫才屋さん。
笑って泣いて、思い出して落ち込んで、美味しいものを食べてよく寝て、そこらへんの子供達と目が合ってポケモンバトル。気づけば大崎甜花は、いつもの調子が戻りつつあった。
そしてスタンド使いとスタンド使いは、やはり惹かれあう運命にある。
大崎甜花は手洗いに向かい、それを済ませて便所から出てくる。人気のない廊下。なんだか違和感がある。突としてゴンベが臨戦態勢を整えた。すかさずレオは「マジか! ゴンベが“何かいる”って言ってる! まさかロケット団の刺客か!?」
大崎甜花は恐怖した。ロトムがボールから出てくる。テントは修理に出しているため、テントロトムになって大崎甜花を中に入れて庇い守ることはできない。生身での殺し合いとなる。
分裂していくチルドレン・ベトベトン。
攻撃を本体に到達させないモーメンツ・ゴースト。
対象に到達するまで無限に加速していくベリード・サイドン。
三匹のスタンドポケモンが登場。ロトムが凝を使ってスタンドの位置を知らせて、その情報をもとにゴンベがスタンドのラッシュを回避して本体に攻撃を叩き込む。レオは敵スタンドの能力を考察し、その情報をもとに大崎甜花が直感。活路を見出す。
なんとか三匹のスタンドポケモンを倒す。だがこのポケモンをボールに入れていたトレーナーがどこかにいるはず。すぐに騒ぎを聞きつけたコミヤカホとマメマルが駆けつける。マメマルのかぎわけるで、絶を使っていたロケット団員を発見。するとロケット団員は、何かのスイッチを具現化。スイッチをポチっと押してから、全力で逃げていった。途端、苦しみ出すベトベトン、ゴースト、サイドン。大崎甜花は、何かがヤバいと直感する。コミヤカホを庇って跳躍。次の瞬間、三匹のポケモンは自爆した。
轟然と震撼する回廊。天井のがれきが崩れ落ちて、ちぎれかかる蛍光灯がぶらんと垂れ下がり、光が明滅する。
大崎甜花たちは、ロトムの放電によって自爆を相殺したため無事だった。一方、ベトベトン、ゴースト、サイドンは瀕死状態。だが今すぐポケセンに連れて行けば助かるかも。そう思ったのも束の間、大崎甜花は危険を直感する。何かがヤバいと思ったのは、爆発することではない。そのあとのことだ。でも何が危険なのか皆目見当もつかない。
そこへチヨコ、ジュリ、ナツハ、リンゼが現れる。そしてスタンドを発現。
「
「
「
「
「
大崎甜花を守るように臨戦態勢。中でもコミヤカホとモリノリンゼは凝を使い、円を使用。近くに敵の気配はない。だが────大崎甜花が叫んだ。
「ちがう! ここから離れて!!」
『っ!?』
ゴンベはその命令を受けて、大崎甜花を投げ飛ばす。放クラも跳躍して退避。すると、苦しみ出すベトベトン、ゴースト、サイドンが────大爆発を引き起こした。肉体も残らぬほど木っ端微塵となり、回廊が完全に崩壊する。どうやら二段構えの時限爆弾だった様子。
大崎甜花は爆風で汚れた顔をわなわなと震わせて、ふつふつと怒りをあらわにする。
人の命を、ポケモンの命を……なんだと思っているのか。生き物の命を何も考えていない、まさしく悪の所業。
「……甜花、お祭りは、もういい……」
『え?』
「ジムは、どこ……」
ジョーイさんたちが集まる中、その相手は放クラに任せて、大崎甜花はぶらりと姿を消す。
数時間後。大崎甜花は、グリーンシティのジムリーダーに挑んでいた。レベル差で圧勝。五つ目のバッジをゲットする。
「ゲームは、敵がいるから、面白い……でも、甜花のせいで、敵が出てきて、みんなが死んじゃうかも……だから、この世界に、主人公は、要らない……甜花は、早く────元の世界に、帰らないと……いけない……っ!!」
だからといって焦っても良いことはない。大崎甜花はシオンタウンから、ろくに寝ていないし、食べてもいない。このままではレオの知るダークテンカに一直線だ。
そして大崎甜花は、とうとう精神的に追い詰められたのか、妄言を吐いた。
「だから、みんな……甜花と一緒にいたら、死んじゃうから……死ぬの、嫌なら、甜花から、離れていいよ────」
「ふざけんなっ!!」
レオのしっぽが、大崎甜花の顔をビンタする。
「ひぃん!? 痛い……なんで……?」
「なんで? じゃねぇ! ポケモンなしでどうやってリーグに挑むつもりだよ! オレたちがいないと何もできねぇくせに! オレたち仲間だろ!?」
レオは情熱を吐く。それも大事だが、ロトムのむーちゃんは、まず大崎甜花を肯定する。
《そうだね。死ぬのは嫌だよ。君といたら危険なことがいっぱいだ。それでも僕たちは、君が好きだから一緒にいる。それを忘れないでほしい》
ゴンベは一発、大崎甜花の頭を軽くどついてから、どこかへ行く。それは離れたわけではなく、ただの単独行動だろう。いつものことだ。
「……────うん……ごめんなしゃい……甜花、もう、つかれちゃった……」
「なら休めばいいさ」
《そろそろテントも修理してもらえた頃だ。ジムリーダーから貰った賞金で修理費を払って、余ったお金でお菓子でも食べよう! ちなみに僕は、マフィンがいいな!》
大崎甜花は、ようやく微笑む。それはどこか拙いものがあったが、少しずつ回復している様子だった。ゆっくりでいい。マイペースでいい。少しずつ、少しずつ、大崎甜花は大崎甜花として、前を向けるようになればいい。
「んじゃ、そのあとはどうする?」
「えと……ソノダさんたちのバッカー大会を見終わったら……バトルサブウェイ、また乗ろうかな……」
《違う街に行くわけだね。それでバッジを八個集めたらシロガネ山だ。マイペースに行こう、大崎甜花》
§
第一部 聖地巡礼サブウェイ編 フウラシティの章 ~Wise Chapter~
チヨコ、ジュリ、ナツハと別れて、大崎甜花一行はバトルサブウェイに乗車。
バトルサブウェイの車掌・カザノヒオリと挨拶。
ほかの乗客は、マノ、コガネ、アサヒ。マミミ、ユイカ、メイ。
ヒオリの提案によって、スタンド有りルールのポケモンバトルが始まる。
三人VS三人のトリプルスタンドポケモンバトル。大崎甜花は最初怖がっていたが、様々なスタンドと戦うことで、対スタンド戦の経験値を積んでいく。
フウラシティに到着。駅から出ると、ロケット団の別働隊ラブリナが現れて、大崎甜花に宣戦布告する。今からダークルギアを召喚して街を破壊する。それが嫌なら降伏するか、見事ダークルギアを止めて見せろ、と。わけのわからない要求だ。次の瞬間、フウラシティのランドマークが爆発した。真っ黒のダークルギアが現れて、ハナダシティのときのように、一気に街が焼け野原になっていく。
ロケット団によって解き放たれたスタンドポケモンの数々。それを蹴散らしながらダークルギアに接近。倒すために戦う。そこでレオが「俺の秘密兵器を使う」と言って、なんとスナッチボールを取り出した。「これでハナダの時、サイドンを捕まえたろ」と言われる。大崎甜花は混乱した。たしかハナダでサイドンに襲われた時は、ユウコクキリコがキャプチャーしたはずだ。記憶が二つある。
とにかくダークルギアを倒すのは難しい。だが削ることはできる。そしてゴンベとロトムにメガリボルバーの念弾を打ち込んでダイシンカ。
「最強の戦士よ、今こそ極限の力を解き放て!」
続けて大崎甜花は叫ぶ。
「電離の幽体よ、今こそ銀河の理を解き放て!」
大崎甜花は気づいていないが、メガリボルバーには別の能力が追加されていた。ラルトスと共にメガリボルバーを作った際、大崎甜花はZ技も再現できないか考えていた。しかし欲張ればメモリが足りなくなると判断し、取りやめた。しかし舐めてもらっては困る。ラルトスのメモリは充分にあった。大崎甜花を驚かせたくて、内緒でZ技の概念とやらも再現させていた。それを伝える前に死んでしまったが、大崎甜花とポケモンの間に絆の力があれば、それは自然と効果を発揮する。
ダイゴンベは、ダイZ技たるウルトラ超絶螺旋剣舞を繰り出す。全身から突き出す岩石を剣先として相手にぶつける。全てのタイプエネルギーを網羅しているため、相手は必ず効果抜群となる。
ダイロトムは、同じくブラックホール・ギガンティックゼタボルトを繰り出す。都市を飲み込むほど膨張したロトムのパワーは、銀河を引き裂くプラズマの雷霆。
二匹の一撃でダークルギアは瀕死に追い込まれる。エアロブラストの一撃で都市が吹き飛ばされる。大崎甜花とレオは、コミヤカホとモリノリンゼの助けを得て踏ん張り、チルットのちーちゃんと共に空を飛ぶ。そしてダークルギアに接近。レオがスナッチボールを投げた。ダークルギアがボールに入る。すぐに飛び出してきた。すかさず大崎甜花はメガリボルバーの念弾で攻撃し、よろけたところをレオが捕獲。またダークルギアが飛び出してくる。次エアロブラストを撃たれればこちらは全滅する。ダイゴンベとダイロトムが追撃をかけて、ダークルギアを押していく。再びレオがスナッチボールを投げて、ボールがコロコロと三回転がり────ダークルギアが飛び出してきた。あと少しのところで捕獲できない。
ダークルギアはエアロブラストを放とうとする。このままでは大崎甜花たちは遥か彼方まで吹き飛ばされて死亡する。それを避けるためには────殺される前に、殺すしかない。
レオの電光石火。大崎甜花のメガリボルバー。撃ち込まれた念弾は、やはりダークルギアの眉間から逸れていた。それをレオのアイアンテールで叩いて軌道を修正。ダークルギアの額に命中し、念弾が貫通する。ダークルギアは死亡した。大崎甜花は絶望顔で歯噛みする。
「いいか。殺したのは俺だ。甜花じゃない」
ダークルギアを殺さなければ、フウラシティは跡形もなくなっていた。既に壊滅しており、犠牲者は何千人に昇るのだろうか。ダークルギアだって、ロケット団に改造されて暴走していただけで、被害者なのに。助けることができなかった。
なぜ助けられなかった? それは大崎甜花が弱かったからだ。
残酷な現実。大崎甜花は自らを責める。殺す判断を下したのは自分自身だ。そのために念弾を撃った。なのに覚悟が足りなくて、レオに汚れ仕事をさせてしまった。レオは気にするなというが、大崎甜花はトレーナーとして、自らの実力不足を痛感する。このままでは、守りたいものを守れない。
(やっぱり、甜花……なんも、できない……)
ここにラルトスがいれば、その気持ちを読み取って、寄り添ったことだろう。
そして、大崎甜花はフウラシティの人々を救った。それだけですごいこと。そう言うかもしれない。
その後、大崎甜花一行は、フウラシティの市長から、街を救ってくれたヒーローだと讃えられる。それでも大崎甜花は納得していない。フウラシティの市長は、大崎甜花に贈りものがしたいという。ならばと大崎甜花は、おいしいお菓子と、フウラジムのジムバッジが欲しいと頼んだ。
かくして大崎甜花は、六つ目のバッジをゲットした。
§
第一部 聖地巡礼サブウェイ編 アルトマーレの章 ~Sturdy Chapter~
バトルサブウェイ。乗客は、トオル、マドカ、コイト、ヒナナ。ほかにはシーズやコメティックなど。
ふいにノクチルから、トリプルバトルを超える、四匹での同時バトルを求められる。大崎甜花は今までの殺し合いで集団戦闘に慣れているため、トレーナーとして1対4の状況でも、なんとか勝利した。
アルトマーレに到着。
水上レースがあり、ロトムは小型ボートに憑依してスイムロトムへとフォルムチェンジした。どうしてもロトムが水上レースをやりたがるため、大崎甜花は付き合うことにする。
その水上レースで、大崎甜花は、ある人物と出会ってびっくりした。それは世界チャンピオンのサトシと、一緒に冒険していたコハルである。ふたりの水上レースを楽しんでおり、大崎甜花が一位でゴール、サトシは二位でゴールした。悔しがるサトシは、大崎甜花にバトルを挑む。
大崎甜花VSサトシ。サトシの手持ちはピカチュウ、リザードン、ゲッコウガ、ジュカインなど、御三家が揃いつつ、マイナーなポケモンまで使ってきて、その上で最強。大崎甜花は僅差のところで負けてしまった。
「すごいや、甜花さん……めちゃくちゃ強いじゃん! もしかしてリーグ目指してるの!? 俺もまたリーグに挑戦するんだ! そこでもう一度バトルしようぜ!」
サトシと別れる。今の話でわかった事は、どうやら大崎甜花が挑むポケモンリーグは、チャンピオンクラスが集う、まさしく最強の祭典らしい。四天王レベルでは太刀打ちできない、というわけか。それでも参加資格はバッジが8個あればいいらしい。これはどうやら、リーグ優勝は一筋縄ではいかないらしい。
その後、大崎甜花はアルトマーレジムに挑む。難なく勝利。7個目のバッジを獲得。
帰り道。ロケット団の刺客が差し向けられる。スタンドバトル。殺し合いの末、だれひとり犠牲者を出さず、敵を倒し尽くした。
そこで大崎甜花は、とある赤毛の少女と出会う。映画で見た女の子だ。サトシにキスをした子だ。名前は忘れた。口を効かないあたり、ラティアスなのだろうか。ある方角を指さしたあと、女の子はどこかへ行ってしまった。そのあと、別の道から、その女の子が現れる。大崎甜花はびっくりした。またやってきた女の子は口を利いたので、おそらくラティアスではない普通の人間なのだろう。
大崎甜花は、ラティアスから教えてもらった方角には何があるのかと問いかける。すると赤毛の少女は、そこにはガンリュードの里があると答える。だが、あくまで伝説であり、本当にその集落があるかはわからないとのこと。ただし伝説では、その里で修行した人は、とても強くなって、ポケモンリーグで優勝したのだとか。
これはもしや、パワーアップイベント!!
大崎甜花は、必ずガンリュードの里はあると信じて、ラティアスから教えられた方角に向かう。コミヤカホとモリノリンゼを連れて、野を越え山越え森越えて。そして────秘境に辿り着いた。
§
第一部 大崎甜花の覚醒編 ガンリュードの章 ~Advance TENKA~
ガンリュードの里。ランドマークは、断崖から降り注ぐ瀑布。巨大な滝の滝壺には、野生のミニリュウやハクリュウが涼んでいる。上流近くには人里があり、脱皮したミニリュウの皮を使って衣類を整え、田んぼを耕して暮らしている。時折、ミニリュウの皮を狙ってポケモンハンターなどの悪党が襲来する時があるものの、里の人間はイシツブテやドロバンゴ、イワークやハガネールの使い手であり、圧倒的なイシツブテの物量と、山の如し不動のドロバンゴ、そして巨体の津波となり濁流するイワークとハガネールの群れ攻撃によって、悪者を寄せ付けない強い里として君臨している。
そんなガンリュードの里長は、外からの客人である大崎甜花一行をひと目で善人と見抜き、おもてなしをする。そして夜のキャンプファイアーで里の者が月光の踊りを見せる中、ガンリュードの伝説を語り聞かせた。
あるところに。
ガンリュードの里には、年端もいかない青年とイワークがいた。
青年は里長の孫で将来を期待されていたが、念能力の才能がないことから周囲の期待は離れつつあった。
イワークは青年から『くーちゃん』と名付けられていたが、唯一“たきのぼり”を覚えられないイワークとして、仲間のイワークから馬鹿にされていた。
というのもガンリュードの里には“イワークの滝登り”という成人の儀式が存在する。これに成功すれば、村の人間はイワークと共に一人前として認められる。また、成人の儀に参加するためには、少なくともトレーナーが念能力の“纏”を修得している必要があった。なぜなら滝登りに失敗すれば、イワークの下敷きとなって死んでしまうからだ。そのため纏で体を守っていれば、大怪我程度で済む。
そして、いよいよ儀式の時が来た。青年は一回で成功すれば死ぬことはないと豪語するが、それは蛮勇というものだった。不安げなイワークをよそに、青年は周囲の反対を押し切って、イワークの滝登りに挑んだ。
結果は、言うまでもないだろう。悲劇が起きた。それだけだ。
しかし話は、ここで終わらない。
これは、トレーナーを圧殺してしまった、イワークの物語である。
青年は居なくなった。それでもイワークは、自分ひとりの力で滝登りを成功させようと努力した。もはや滝登りが使えるようになっても、乗る者が既に居ないから、意味がないのに、イワークは毎日毎日、滝登りの練習を繰り返した。やがて周囲の人間は、あのイワークはトレーナーを失った悲しさで狂ってしまった、と頭を悩ませた。
そこで里長の話が終わる。その後、イワークはどうなったのか。
「気になるなら、滝壺に行ってみるとよろしい」
────まさか、今の話は、現在進行形の話なのか。思えば『むかしむかし』とは言っていない。伝説と言うからには昔話だと思っていたが……ともあれ大崎甜花は、滝壺に向かった。
夜。月明かりが綺麗な川辺。滝壺に轟音が鳴る。水底から盛り上がる巨体。苦手な水をものともせず、滝を登ろうと身をよじる。しかし降り注ぐ滝の勢いに負けて、再び落下。滝壺に水柱が立つ。
「……ひとりでがんばっても、うまくいかないよ……」
大崎甜花がそう言っても、イワークは滝登りに挑み続ける。
「……くーちゃんは、甜花と、同じだね……」
イワークは落下する。轟音。だが起き上がる気配がない。大崎甜花はどうしたのだろう。まさか溺れちゃった!? と心配そうに水面を見つめると────水底からゆっくりとイワークが起き上がってきた。水に濡れた岩石の顔で、じっと大崎甜花を見つめている。
「……もしかして、何が同じなのか、だって?」
イワークはキレ気味に鳴いた。
大崎甜花は絶望しているため、恐怖心もなく、ただただ思いの丈を吐露した。
「甜花……甜花のせいで、メロエッタと、すーちゃん、死んじゃったんだ……それでも甜花は、頑張らないといけない」
「……」
「でも甜花の近くにいたら、またみんな、死んじゃうかもしれない。むーちゃんも、ゴンベも、ちーちゃんも。レオも、カホちゃんも、モリノさんも……みんな、みんな……」
「……」
「だから、甜花……みんなと、離れたかった。ほんとは、離れたくないけど……甜花のせいで、死んでほしくないから……そしたら、レオに、ビンタされた……ひとりじゃ、甜花なんもできないから……だから、仲間を頼れって……」
大崎甜花は、イワークに問いかける。
「甜花、どうやったら、パワーアップするのか、分からないけど……くーちゃん、ほっとけないから……まずは、くーちゃんのこと、手伝いたいと、思う……だって、ひとりは────死んじゃうみたいに、さびしい、から……」
それから大崎甜花は、イワークの背中に乗ることに成功する。あれからイワークは、青年以外を背中に乗せることはなかった。しかし何を思ったか、大崎甜花には心を許したらしい。
「よし────いけ、くーちゃん!」
「ガリュウウウウウウ!!」
イワークの滝登り。真ん中までは登っていける。だが、そこからは────勢いに負けて落下してしまう。滝壺に水柱。イワークはすかさず浮上し、焦ったようにキョロキョロと見回して、大崎甜花の姿を探す。すると大崎甜花は「ぷはぁ!」と水面から顔を出した。手元にはグレーバッジ。纏で身を守っていたので体は大丈夫だった。イワークはホッと胸をなでおろす。
「甜花は、大丈夫……! ……だから、くーちゃんは、甜花を信じて……! そして、まずは自分のことだけを、がんばってみて……!」
「……!」
イワークは思う。あの時は、背中に乗る青年のことが心配で、滝登りに集中できていなかった。もし集中していれば成功したかはわからない。元々出来損ないとして馬鹿にされていた。それでも、あの時、青年の言葉を信じて、集中していれば────たとえ滝登りには失敗したとしても、最悪の結果だけは避けられたかもしれない。
イワークは覚悟する。大崎甜花のことを信じる。月光を浴びるイワークは、知らず知らず月光からタイプエネルギーを吸収していた。再び大崎甜花を背中に乗せる。だが、背中には誰も乗っていないかのごとく、これから滝登りを始める。大崎甜花は振り落とされない。たとえ自分が失敗しても大崎甜花は自分で何とかする。だから、大丈夫。
「くーちゃん────たきのぼり!!」
「ガァアアアリュウウウウウッッ!!」
草葉の陰で、青年は見守っていた。イワークの目端に、いないはずの姿が映る。目から流れる水は、滝のせいか、幻覚を見たせいか。そんなことはどうでもいい。今は、滝の向こうにある月まで飛び上がらんと────イワークは、空を飛んだ。
「────やった……くーちゃん、たきのぼり、できた……!」
次の瞬間、イワークの全身が発光する。あとは落下するだけだと思っていた大崎甜花は、満月に沿って弧を描くイワークの飛行を見て困惑。そして────進化が完了した。ポケモン図鑑が鳴り響く。
《ガンリュード。みずへびポケモン。みず・ドラゴン。イワークの別進化系。ハクリューに憧れたイワークが滝登りによって岩石の体を研ぎ澄ました結果、月光のパワーで空を飛べるようになった姿。ガンリュードの里でしか見られないリージョンフォーム。オレンジ諸島のクリスタルイワークや、がちりんポケモン・ルナアーラとの関係性が示唆されている》
「……甜花、こんなポケモン、知らない────なんか、モンハンのモンスターに、似てる……? でも……今は、いいや……。それより、やったね! くーちゃん……っ!! おめでとう……!」
「ガンリュウウウウウウウウド────!!」
ガンリュードは勝利の雄叫びを上げる。そして大崎甜花に感謝の咆哮を上げた。すると大勢のハクリューが空を飛び、ガンリュードを祀るように弧を描いて空を飛ぶ。里の者たちは、伝説のガンリュードが誕生したことに驚いており、里長は人知れず涙を流した。コミヤカホとモリノリンゼも、一部始終を木陰で見ていたらしく、川辺で手を振ってきている。
「あ、カホちゃん! モリノさん! ねぇ、ガンリュード……甜花、ふたりも、乗せてあげたいな……!」
ガンリュードは任せろと言いたげに川辺に降りる。そしてコミヤカホとモリノリンゼ、ゴンベやレオたちも乗せて、雲より高く飛んでいく。後ろに続くハクリューの群れ。まるでハクリューたちの王様となったかのようなガンリュードは、イワークの頃と異なり、丸みを帯びた流麗な体で、荘厳、神々しく、優雅に、月の夜空と一体化する。
やがて思う存分、夜空を飛んだガンリュードは、地上に大崎甜花一行を下ろす。そしてガンリュードは、大崎甜花を見つめた。大崎甜花は首をひねる。するとロトムのむーちゃんが通訳した。
《どうやら、ガンリュードは、仲間になりたい、みたいだね!》
「え、でも……いいの……?」
ガンリュードはうなずく。大崎甜花はモンスターボールを取り出すと、それに頭突きして、ガンリュードはゲットされた。
「や、やった……! なんか、よくわからないポケモン、ゲット……! ……あれ? でも、もしかして、これが、パワーアップイベント……?」
てっきり大崎甜花自身が強くなるものだと思っていた。その考えを見透かされたのか、レオが笑って言う。
「だから言ったろ。甜花の強さは、仲間との絆の強さだ。自分で解決するのがそりゃ一番かもしれないが、それができない場合はオレたちも協力する。それだけの話だろ」
強い仲間。信頼できる仲間。ならば、もっと仲間には強くなってもらい、自分を信頼してもらえるように高みを目指さなければ。大崎甜花は心機一転、ようやく前を向けるようになり、ガンリュードの里を後にした。
構想段階の予定表
【第二部 聖地巡礼サブウェイ編 グリーンフィールドの章 ~Cute Chapter~】
第49話『深い悲しみの眠り姫』
第50話『ヒオリ車掌!? 全国鉄道のバトルサブウェイ!』
第51話『初めてのタッグバトル! 甜花&リンゼvsチョコ&ジュリ!』
第52話『済美の都グリーンフィールド!』
第53話『vsジュリ! ゲットバッカーズ!』
第54話『ポケモンコンテスト・かわいさ部門!』
第55話『コガネとエムリット! アンティー仮面参上!』
第56話『vs炎帝ポケモン! 遠吠え大噴火!?』
【第二部 聖地巡礼サブウェイ編 フウラシティの章 ~Wise Chapter~】
第57話『甜花&カホvsマノ&メグル!』
第58話『恵風の都フウラシティ!』
第59話『甜花とロトムのゲットレース!』
第60話『インテリロトムでかしこさ部門! VSコガネ&ユクシー!』
第61話『VS雷公ポケモン! 雷速の戦闘!』
第62話『暗躍する影! 悪の組織シャドー!』
第63話『命を懸けてかかってこい!』
第64話『誰も悪くない?』
【第二部 聖地巡礼サブウェイ編 アルトマーレの章 ~Sturdy Chapter~】
第65話『海底トンネルはマリンチューブ? カホ&リンゼvsサクヤ&マミミ!』
第66話『水上レース!』
第67話『ゴンベでたくましさ部門! VSコガネ&アグノム!』
第68話『VS水君ポケモン! 清涼なる煌きの武闘会!』
第69話『ケンカ×ト×サヨナラ』
第70話『甜花の帰るべき場所!』
第71話『打ち明けたから親友!』
第72話『ゲームの世界でも、友達だから』
【第二部 甜花覚醒編 ガンリュードの章 ~Advance TENKA~】
第73話『タンバシティ! キリコとガンリュードの里!』
第74話『甜花、精孔を開く』
第75話『ミュウツーの修業! 絞られる甜花!?』
第76話『甜花、髪を切る!』
第77話『イワークの滝登り!』
第78話『現実世界からの贈り物』
第79話『果穂とカホ! スタンド・ヘビーサウルス!』
第80話『凛世とリンゼ! 石仮面とセイントドラゴン!?』