大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α 作:形のない者
第一部 伝説のナナシマ編 是・神話大戦の章 ~Ragnarok Chapter~
ロケット団がナナシマで悪さをしているニュース速報が流れてくる。なんでもロケット団は各地方で暗躍しており、ホウエン地方のアクア団とマグマ団、オーレ地方のシャドーなどを傘下とし、伝説のポケモンを乱獲して、何かを企てている様子。その規模は、もはやスーパーロケット団と言っても差し支えない巨大組織と化していた。
このままではカントー地方が破壊の限りを尽くされる。ポケモンリーグは一時中断。カントー地方のチャンピオンや四天王、ジムリーダーたちがこぞってナナシマに集まり、ロケット団と戦闘を開始する。
その話を聞いたコミヤカホとモリノリンゼは、正義のためにナナシマに向かうと決意。大崎甜花は恐怖こそあるが、仲間を見捨ててのうのうと過ごすこともできない。自分もナナシマに行くと決意する。そして大崎甜花一行は、のちに“神話大戦”と呼ばれるほどの死闘激闘の渦中へ飛び込んでいく。
クチバシティのサントアンヌ号に乗って、一の島に向かう。船内には、大崎甜花がバトルサブウェイで出会った283のアイドルと瓜二つのトレーナー達が揃っており、再会を果たす。彼女たちもロケット団との戦いに赴くようだ。心強い味方である。だがその中に、大崎甘奈と瓜二つのトレーナーはいなかった。少し残念に思う。
そして事件は突然に。ロケット団の破壊工作によって、サントアンヌ号が爆破された。海に沈む船。人命救助はチユキさんたちに任せて、大崎甜花一行は一足先に一の島へ降り立つ。すかさずロケット団が襲いかかってきた。念能力やスタンドを駆使した殺し合いが始まる。
それだけならまだいい。二の島から執拗に狙撃を受けている。さながらFPSで言うところの芋スナだ。常に背後と側面を守っていなければ、次の瞬間に頭を撃ち抜かれて死んでいる。ポケモンバトルに銃器を持ち出すとは何事か。そう思いながら大崎甜花は、メガリボルバーで対抗。ダイゴンベの圧倒的パワーで快進撃を始める。島ごと粉砕する勢いで、二の島へ。狙撃手を倒し、三の島へ。ロケット団の下っ端を一掃し、
嵐の前の静けさ。
突として上空から三鳥が飛来。ダークポケモンと化したファイヤー・サンダー・フリーザーの背中には、ロケット団の三幹部が跨っていた。ナツメはダークポケモンのエムリット・アグノム・ユクシー・ラティアス・ラティアス・クレセリアを繰り出す。マチスはダークポケモンのライコウ・ゼクロム・ボルトロスを繰り出す。キョウはダークポケモンのキュレム・トルネロスを繰り出す。
さらにジョウト四幹部のアポロ・アテナ・ランス・ラムダも襲来。それぞれダークポケモンのコバルオン・テラキオン・ビリジオン・ケルディオを繰り出す。
さらに新三幹部ののクリフ・シエラ・アルロも出てきて、ダークポケモンのレジロック・レジアイス・レジスチルを繰り出す。
さらにマツブサとアオギリも、それぞれダークポケモンのエンテイ・イベルタル・ボルケニオンとスイクン・ゼルネアス・カイオーガを繰り出す。
ラブリナも現れて、ダークポケモンのレックウザ・ダークライ・ゲノセクト・レシラム・ビクティニ・ゼルネアス・シェイミ・ディアンシーを繰り出す。ダークポケモンとして傀儡化したことで六匹以上のポケモンでも操れることが可能。そもそもダークポケモンに均等の愛情を注ぐ必要はないのだから。
大崎甜花はガンリュードを繰り出す。図鑑説明によれば600族。伝説ポケモンと渡り合える存在。ゴンベとロトムをダイシンカ。リュックサックから翼だけ出して必死に羽ばたくチルットのおかげで、吹き飛ばされても打ち上げられてもなんとか着地できる。それでも多勢に無勢。必殺の一撃が全方位から叩き込まれる。四面楚歌の絶体絶命。
「ミュウツー、我は此処に在り!」
嵐の中の神話大戦。
ミュウツーが助太刀に現れた。今まで念能力を修行していたミュウツーは、なんとスタンド能力にも目覚めていた。
そしてレオが指揮を執る。伝説のポケモンを各個撃破していくのはさすがに分が悪い。ここは敵トレーナーへのダイレクトアタックしか生き残る道はない。言われるまでもないと、既にコミヤカホとモリノリンゼとミュウツーは、一人ずつ殺すつもりで戦っている。しかし大崎甜花だけは、未だに殺人の覚悟を決めきれていなかった。
その間隙を突くように、ナツメは念能力を、マチスは波紋疾走を、キョウはスタンドを繰り出す。
そしてダークレシラム使いのラブリナが勝ち誇る。
「お前たちはここで死ぬ! それが我らの理想であり、お前らにもたらされる真実だ────!」
ならばとミュウツーは問いただす。
「甜花! ゼクロムとレシラム、どちらをストーンに戻す!」
「────っッ!!!」
大崎甜花は、その言葉の意味を直感した。
「ゴンベ! むーちゃん! 真実を覆せ────!!」
ミュウツーとダイゴンベとダイロトムのZワザが発動する。ほかのポケモンには目もくれず、ただ一匹を倒すためだけに三匹は突貫した。そしてレシラムを討ち果たす。レシラムはホワイトストーンとして自らを封印。その白い石を────ゴンベが、飲み込んだ。
『────っっッ!!?』
ダイゴンベは、レシラムの専用技や特性を獲得。ターボブレイズで超加速し、青い炎────否、ダークパワーすら取り込んだのか、青黒い炎の拳で、大地粉砕。獄炎の突進は敵トレーナーを一人ずつ殴り飛ばし、トレーナーを失って暴走するダークポケモンを一撃で地に伏す。
上空ではガンリュードとレックウザの死闘。
地上では幹部たちの過半数が敗北したため、アオギリが味方もろとも敵を潰すべく、カイオーガになみのりを命令。津波の如し大水が四の島を飲み込んだ。
ロトムは、そこらへんにあった小型ボートに憑依してスイムロトムへとフォルムチェンジ。大崎甜花を乗せて海上を走行。コミヤカホとモリノリンゼはオーラを練り、常に走り続けることで水上を移動。それは敵幹部も同様だった。
イベルタルの破壊の力によって、コミヤカホの左腕が消し飛ぶ。その代わりコミヤカホは渾身の硬を込めて右拳を繰り出し、イベルタルの腹を抉り抜いた。人間が伝説のポケモンに勝利する。そんな前代未聞の光景に、悪の幹部たちは言葉を失う。
モリノリンゼは五十年分の寿命を使い果たす勢いで卍解。ドタイトスのハードプラントを攻撃兼足場とし、ポッチャマのスタンドたるアクアジェットで先制概念を獲得、キョウやラムダ、ダークライやゼクロムを屠る。
やがて大崎甜花たちに多くの助太刀が現れる。サクラギマノをはじめとする二十数名のトレーナーたち。彼女たちは相棒ポケモンを繰り出し、チームごとに別れてスタンドを発現する。さらにチームごとに念能力やスタンドを組み合わせることで、
「スタンド、
「スタンド、
「スタンド、
「スタンド、
「スタンド、
「スタンド、
『チーム・ステラの合体スタンド攻撃、
それは天体の運行を操作する能力。ダークレックウザの特性を無効化し、全員のスタンドエネルギーを一点収束。恒星のごとし熱量を生成。さながら元気玉のような光球が出現。白く光る翼が背中より生えたサクラギマノは、大空まで飛び上がり、あらゆる伝説を吹き飛ばす。
四の島の近海が消し飛ぶ。しばらく海底が垣間見えて、やがて周囲の海水がなだれこんで大渦を巻く。神話大戦の前哨戦は決着した。大崎甜花たちは先へ進む。
五の島へ。そこにはロケット団のボス・サカキが待ち構えていた。彼はダークポケモンのグラードン・ヒードラン・ランドロス・デオキシスを繰り出す。ほかにも自慢の相棒たる六匹の一般ポケモン──スピアーやドサイドンなど──を繰り出した。そしてサカキは大地の奥義を発動。圧倒的な火力でチーム・ステラを吹き飛ばした。さらに大地の奥義を極めたサカキは、立て続けに奥義を発動できるのか。すぐに二発目が飛んでくる。そこでチーム・ルナが動いた。
「
「
「
「
「
「
「
それぞれのスタンド能力を効果的に活用することで、回避不能の状況を作り上げ、必中必殺の一撃を放つ。
『チーム・ルナの合体スタンド攻撃、
それは逆境を跳ね返す能力。大地の奥義を跳ね返すカウンター技は、サカキを消し飛ばすと思ったが────サカキがグラードンを盾にしたことで、グラードンだけが倒された。
サカキの猛攻撃。チーム・ルナの面々が次々と壊滅していく。倒れていく仲間たち。
大崎甜花はこれ以上の犠牲を出させないため、サカキとの一対一を申し込む。ほかの仲間に手出しはさせない。するとサカキは、ひとりのトレーナーとして承諾した。ボロボロの上着を脱ぎ捨て、伝説のポケモンとの戦いを生き延びた大崎甜花を一人前のトレーナーとして尊重、敬意を払う。故に、ひとりのジムリーダーとして、グリーンバッジを賭けて戦うことを約束する。
大崎甜花とサカキの決闘。その一方でヒードランやランドロス、デオキシスといったダークポケモンは、サカキの命令なくとも暴走しているため、チーム・ルナやチーム・ソルは、これの撃退に当たる。
死闘の最中、サカキの緻密な攻撃に対し、大崎甜花は間一髪の直感で切り抜ける。
そのことにサカキは、ふつふつと疑念を募らせていた。最初に大崎甜花の報告が上がった時は、運のいい愚鈍な少女と思っていた。ロケット団の重要機密たる三幹部の情報について知っていたために暗殺者を派遣したが、なぜか刺客のことごとくを撃退している。ただ運がいいのか、それとも何か力を秘めているのか。
サカキのポケモンの攻撃で地割れが起きる。大崎甜花は対策を直感し、ゴンベが更なる地割れを引き起こして対抗する。一撃必殺の応酬。その中でサカキは、大崎甜花の思考瞬発力を見て、ある可能性を浮上させた。
「そうか! そういうことか……!」
「……?」
「茶髪。ボサボサの髪型。美貌。そして────“見透かす力”」
カントー地方の最大手マフィア・ロケット団。一方、ボンゴレ地方の最大手マフィア・ボンゴレファミリーには、今、ボンゴレ
「同じマフィアとして危険視していたため、ボンゴレの情報を集めていた時期もあったが……なるほど、大崎甜花! 貴様は似ている!」
「?」
「平時は愚鈍。運動も勉強も平均以下。自分ひとりでは何もできなくて、まさしく愚の骨頂! しかし────戦時となると話は変わる。たぐいまれな思考瞬発力。物事の真実どころか人の心までもを見透かす力! 単騎で軍団を屠るほどの強さ!! そうか、貴様は────サワダツナヨシの姉だったのか!!」
「……っっ!!?」
沢田綱吉。家庭教師ヒットマンリボーンという漫画を原作とする主人公。そういえばジョイステーションに、その漫画のデータを入れていた気がする。というかジャンプ系列の漫画は軒並み入れてしまった覚えがある。そしてサカキの言い分によれば、大崎甜花は超直感という能力を有しているらしい。それもまた沢田綱吉の強さの一部である。
そして直感力の高さについては、大崎甜花も疑問に思わなかった日はない。なぜか土壇場で窮地を脱出できる閃きを得ることが多々ある。もしかしたら自分は野比のび太みたいに、戦闘における隠れた才能があるのだろうかと思っていたが────なるほど、そういうことかと、ある程度は納得した。
「この世界では、甜花、その設定になってるって、こと……!?」
「どういう意味だ? ──ともあれ、そうと分かれば……いいだろう。私の死ぬ気の炎を見せてやる!」
サカキの指輪から大地の炎が灯る。
「感じるぞ、大崎甜花! お前からは雲属性の波動を感じる! そのためにボンゴレボスの継承者には選ばれなかったのだろう! もとよりマフィアになるつもりはなかったという情報も拾っていた。さぁ、お前の覚悟を見せてみろ! 大崎甜花!!」
そんなことを言われても、大崎甜花は死ぬ気の炎を灯すためのリングを持っていない。その時、今の話を聞いていたゴンベが、何か思うところがあったようで、懐をまさぐり、なんてことのない石を取り出した。それを大崎甜花に投げ渡す。大崎甜花は石を受け取ると、突として石に亀裂が入って光が漏れ出し、紫色の宝石が出てきた。宝石からは紫色の炎のようなエネルギーが燃え盛り、それは雲の炎だということを察する。
「ご、ゴンベ……! こんなの、持ってたの……!?」
「ゴン!」
ゴンベは死ぬ気の炎の存在を知っていた。時折、赤っぽい宝石を食べると、全身から嵐の炎が発生するのだ。しかしほかの色の宝石を食べても、微弱な炎しか灯らない。そのため赤い石を拾い集めていたのだが、たまに赤なのか紫なのか曖昧な色も石もある。とりあえず嵐属性のストーンかもしれないので持っていたが……今ゴンベは、雲属性のストーンかもしれないと思い、投げ渡したら、ドンピシャだった。
雲の炎は増殖。大地の炎は重力的な何か。
大崎甜花は雲の炎で、仲間の力を増殖させてパワーアップを促す。
大地のサカキは超重力を駆使して、敵全体に重圧の効果を与える。
超直感。大地の奥義。メガリボルバー。死ぬ気の炎。ありとあらゆる能力を用いて互いの命を削りあう。
やがてサカキは切り札を繰り出した。
「我がスタンドは、|レイド・オン・ザ・シティ・ノックアウト・イビルタスク《町々を襲いつくせ、撃ちのめせ、悪の牙達よ》────!!」
それはシンプルに、町一個を壊滅させる破壊的なパワーを秘めた、近距離パワー型のスタンド。唸る拳、咄嗟にアメモースが庇い、大崎甜花を突き飛ばした。アメモースと森林一帯が消し飛ぶ。爆風で吹き飛ばされた大崎甜花は、しなる木の幹に全身を強打。グレーバッジを握り締めていたが、纏では耐え切れないダメージによって気絶。背骨も折れていた。このままでは死んでしまう。故に────
「うおおおおお! ミッドナイト・
「なに!? 大崎甜花のスタンドか!!」
「yes!! 大崎甜花を苦しめる者は、殺しても許さないィイイイ!!」
イビルタスクとミッドナイトの激突。イビルタスクの一撃、大地が消し飛び、それを耐えるミッドナイトの一撃、大崎甜花の体を回復させながら、敵にラッシュをかける。
「本体の意識不明時に発現するスタンド……! 遠隔自動操縦型のため、スタンドへのダメージは本体にフィードバックされない! だが、その程度では勝てないぞ! スピアー、大崎甜花にトドメを刺せ!!」
「
大崎甜花は気絶する直前、掠れる声でロトムのむーちゃんに指示を飛ばしていた。大崎甜花のリュックサックから、紫色の物体が飛び出す。雷速の如しスピードで動き回り電撃を放つことで、メガスピアーの絶対捕食回転斬撃を食い止めた。
「なに!? あ、あれはなんだ!? 新種のポケモンか!?」
「no!! あれはポケモンではないが今はポケモンだ! そう、あれは大崎甜花の相棒────現実世界から持ってきた、デビ太郎のぬいぐるみ!! そして、デビ太郎にロトムが憑依したことで、新たなフォルムを手に入れた────デビロトムだァアアアアア!!」
《デビロトム。あく・でんきタイプ》
それだけではない。ロトムは大崎甜花の指示にはないことを実行した。
《僕の念能力は────
それは憑依した物体に意思を持たせる能力。物体が持つ性格は、その物体が経験した出来事、特に持ち主の気質に左右される。
ロトムは、デビ太郎のぬいぐるみから抜け出して、ダイロトムとして戦闘に参加。一方、デビ太郎のぬいぐるみは、ただの物質として転がるだけだが────ロトムの念能力によって意思を持って動き始める。
「────ぼくのなまえは、デビ太郎! 大崎甜花と大崎甘奈の「弟」だ!! ふたりのおねえちゃんをまもるために、ぼくはたたかう! いいか、サカキ、スピアー!! ぼくの姉に! 手は出させない!!」
ロトムとデビ太郎の共闘。大崎甜花にトドメを刺そうとするメガスピアーと戦い、伝説ポケモンの攻撃の余波からも守り抜いてみせる。
「────面白い。面白いぞ、大崎甜花!!」
やがて大崎甜花が目覚める。ミッドナイト・❤によって全身の治癒が完了したため覚醒した。ミッドナイト・❤は消失する。瞬間、大崎甜花は現状を直感し、アメモースが死んだことに歯噛みして、迷うことなく戦闘に復帰する。
「レオ! サカキにクロスサンダー!!」
「────ハァ!? 頭でも打ったか!?」
とにかくレオは十万ボルトを繰り出す。それを雲の炎で増殖させて────クロスサンダーに匹敵する火力を実現。
「ゴンベ! クロスフレイム!!」
「!! ゴォオオオオオオオオン!!」
ホワイトストーンを飲み込んでいたダイゴンベは、クロスフレイムを繰り出す。クロスフレイムとクロスサンダーは交互に出すと力を待つ技。大崎甜花とレオが繰り出した電撃は紛い物だが、そこに
夜の炎とは、絶望の到達点。
「なんで、そんな簡単に、命を奪えるの……?」
なぜ誰かの命を、たやすく殺してしまうのか。
「ここは、ゲームの世界じゃ、ない……」
みんな一生懸命に生きている。心がある。ならば、ここは現実の世界だ。
「エネミーをキルして喜ぶのは、ゲームの中だけにして……!」
メロエッタ。ラルトスのすーちゃん。アメモースのまーちゃん。
彼女たちとの思い出を振り返り、大崎甜花は覚悟を灯す。
「もう────甜花、怒った、から……!! 勝負だ、サカキ────!」
大崎甜花は走り出す。のろまな走りだ。砲煙弾雨の中、震撼する大地の上を、何度も転びながら駆け抜ける。対するサカキは、クロスサンダーを特性避雷針とじめんタイプで無効化し、ダイゴンベのクロスフレイムもスタンドパワーで相殺に持ち込む。
その間にサカキの懐まで潜り込んでいた大崎甜花は、デビ太郎と共にトレーナーへのダイレクトアタックを敢行。サカキはイビルタスクで、デビ太郎より大崎甜花のほうが危険と判断。大崎甜花を消滅させるべくラッシュを叩き込むが、代わりにデビ太郎が庇ってラッシュを受けたことで、デビ太郎が跡形もなく消し飛ばされる。
それは大崎甜花にとって、悪魔的な判断だったに違いない。
「そっちが『悪の牙』を使うなら! 甜花は『悪魔』
大崎甜花はブルーバッジを握り締めた拳で、サカキの胴体を殴り抜いた。放出系の念が発動して、サカキは吹き飛ばされる。木の幹に激突し、ぐったりと倒れた。サカキのポケモンたちは、司令塔を失って困惑する。サカキは明滅する意識の中、大崎甜花に最後の言葉を残した。
「────グレーバッジで殴れば、殺せたものを……」
「ハァ、ハァ……て、甜花、ゲームの敵は、殺しても……生きてる命は、あんま、殺したく、ないから……」
「…………持っていけ────完敗だ」
サカキはズボンのポケットからグリーンバッジを取り出すと、天高く掲げて────脱力。横に倒れた。地面を転がるグリーンバッジが、大崎甜花の足元に来たところで横に倒れる。それを拾い上げた大崎甜花は、決着の合図として、グリーンバッジを天高く掲げた。
それは全てのポケモンの言うことを聞かせるジムバッジ。ダークな伝説ポケモンも、サカキのポケモンも、野生のポケモンも────その全てが、大崎甜花が《勝ち取った威光》にひれ伏す。
「決着……」
そう呟いた大崎甜花は、ゆらりと倒れた。すかさずコミヤカホとモリノリンゼが飛んできて支える。ボロボロのデビ太郎のぬいぐるみも拾ってきてくれた。
しかし戦いは、まだ終わっていない。大崎甜花は直感していた。これだけの伝説ポケモンが出てきた中で、まだ登場していない悪の組織とポケモンがいる。
「────テンガン山……やりの、はしら……!」
ギンガ団と、時空の覇者。
サカキがラスボスなら、アカギは裏ボスといったところか。裏ボスまで倒さなければ、真の平和は訪れない。
大崎甜花の予想は的中する。スマホから速報が流れて、シンオウ地方のテンガン山上空に暗雲が立ち込め、時間が加減速したり、時が消し飛んだり、空間が歪んで道を渡れず、ほかの地方に行ってしまう者まで現れた。そして、この異常現象はギンガ団によるもので、ロケット団の隊服も確認されたとのこと。
「ガンリュード!!」
大崎甜花一行は、ダイガンリュードに乗って、急ぎシンオウ地方に向かう。チーム・ステラとルナも付いていきたかったが、戦いの被害を受けて戦闘不能者が多数。そのためチーム・ソルのみが引き続き、大崎甜花を援護するためついていく。
大空の上にて、大崎甜花一行は、各地方のチャンピオンと合流。既に四天王が槍の柱に向かっているが、応答がないとのこと。もしかしたらディアルガがパルキアにやられてしまったのかもしれない。そこでホウエンチャンピオンのダイゴと、その妹ナツハは、一足先に敵地を偵察してくると言って速度を上げた。
大崎甜花一行とチーム・ソルは、槍の柱に到着する。ダイゴとナツハや、ほかの四天王やジムリーダーが、血の海に倒れていた。神殿の中心にはアカギが立っており、ディアルガとパルキアを従えている。すかさず大崎甜花は臨戦態勢。時間を消し飛ばし、空間がねじ切れて、コミヤカホたちが困惑する中、唯一大崎甜花だけが超直感で時空能力に対処。アカギに殺し合いを挑む。
「この世界をやり直す! そして世界を救う! その邪魔はさせないぞ、大崎甜花!」
「アカギさん……甜花は、この世界が、大好き……! 好きな人たちがいて、好きなポケモンがいる! だから、絶対に────この世界は、壊させない!」
「ならば────とことんやり合うまでだ!! そうだろう、ロトム!!」
「うん……! 勝負だ、アカギさん……! 行くよ、むーちゃん────!!」
感情を排しているくせに、ポケモンを愛しているアカギと。
稚拙な感情のままに、ポケモンを愛している大崎甜花の死闘が勃発する。
一方、ロトムのむーちゃんは、かつてアカギのポケモンであり、何者かに取り上げられたあと脱走し、オオサキテンカに拾われたことを回想していた。あの時の友達が、今は愛するが故に世界を壊そうとしている。それを“友達”として止めるため、ロトムは限界のそのまた先にある限界を超えることで、今のトレーナーである大崎甜花の気持ちに応えようとした。しかしてダイロトムのZわざ“ブラックホール・ギガンティックゼタボルト”は、あまりにも強すぎるプラズマの力で時空を歪ませていく。さながら時空歪曲合戦。
時空が歪むことでアカギへの攻撃が無効化される中、大崎甜花だけがロトムの
やはり大崎甜花だ。彼女だけが頼りである。コミヤカホやモリノリンゼ、チーム・ソルは、大崎甜花の戦いを邪魔させないため、ギンガ団幹部のサターンやマーズ、ジュピターやプルートと戦闘開始。
しかし大崎甜花は、サカキとの戦いで既に満身創痍。チーム・ソルも、これ以上神話大戦についていける余力がない。そのため最後の大技を披露した。死んだふりをしていたナツハも、口から血反吐を吐きながら、兄ダイゴの体を担ぎ上げつつ、スタンドを繰り出す。
「
「
「|ブリーチ・ハイパーピュアリティ(真っ白に燃え尽きろ!》!!」それは圧倒的なパワーとスピードを“本体に与える”能力。本体がスタンドを身に付けて戦うタイプ。その上、追い風が吹く中では効果が倍加し、向かい風の中では持続力と精密動作性が上昇していく。
「
「
「
「
「
『チーム・ソルの合体スタンド攻撃!
それは範囲対象に生命エネルギーを振りまいて、戦意を鼓舞する能力。
大崎甜花一行の心身が全快。するとチーム・ソルは、シャドーダイブで姿を隠していたギラティナの不意打ちで吹き飛ばされる。ディアルガのときのほうこうと、パルキアのあくうせつだんにより、コミヤカホとモリノリンゼも片手、片脚を失う。
大崎甜花によってアカギのポケモンが全て倒された。するとアカギはダークポケモンのフーパを繰り出す。
サターンはダークディアルガを、マーズはダークパルキアを、ジュピターはダークジラーチを、プルートはダークミュウを繰り出す。ミュウツーはダークミュウを執拗に攻撃。だが一番危険な存在はダークジラーチである。アカギは、ディアルガとパルキアによる新世界創生が失敗した時のため、ジラーチの短冊に《新世界の創生》をしたためていた。今すぐダークジラーチを止めないと、この世界が
大崎甜花はアカギからジラーチに標的を変更するが、それをアカギとフーパが許さない。大崎甜花はミュウツーにお願いする。ミュウに執念を燃やす理由は理解できるが、今はジラーチをなんとかしてくれと。
「断る」
「え……」
ミュウツーはにべもなく断る。それはなぜか。大崎甜花は直感した。そういえば、この世界には、神と呼ばれるポケモンがいた。新世界の創世? そんなもの────超越者が許すはずもない。
天の笛が鳴り響く。天界から天使の階段が降りてきて、神々しいポケモンが降臨する。紅い瞳で一瞥。それだけで、やりのはしらが消し飛んだ。ミュウツーはサイコキネシスを繰り出し、爆風を無効化、大崎甜花を守る。ゴンベとロトムたちは吹き飛ばされてしまった。そして神殿のバトルフィールドに、大崎甜花とミュウツー、そして超越者アルセウスの三者が揃った。
「────この世界を乱す者は、許さない」
「……! て、甜花……悪いこと、してないよ……? というか、早く家に、帰してください……」
「無駄だ、大崎甜花。奴は殺意の塊だ。俺たちを殺すことしか考えていない」
「────さばきのつぶて」
神の鉄槌が下る。ミュウツーがサイコキネシスでなんとか防御し、大崎甜花が理由を問いかける。
「な、なんで……!」
「無論、奴もダークポケモンのように、闇に飲まれているからだろう。プロデューサーの言葉を借りれば、アルセウスは
そしてアルセウスは語る。ロケット団の動向と目的を。まずロケット団は、各地方の悪の組織を傘下に置いた。従わなかったフレア団からはその技術力を簒奪し、現在確認されている全ての伝説ポケモンや幻ポケモンのメガシンカまたはゲンシカイキを画策。その実験として伝説ポケモンを投入し、プラズマ団は壊滅した。しかし実験は失敗。伝説ポケモンはダーク化するだけに留まった。それでも戦力としては十分。このままロケット団は世界を支配しようとするが、土壇場でアカギが裏切った。アカギは賢かった。もしロケット団の傘下に入ることを拒んでいれば、フレア団のように技術力だけ盗まれて始末されていた。感情を排して虎視眈々と機を窺っていたからこそ、新世界創造のチャンスが巡ってきた。
しかし、彼らの目的は間違っている。こんな世界は狂っている。全てはアルセウスの御心のままに。
大崎甜花&ミュウツーvsアルセウス。神話を塗り替えんとする熾烈な戦いは、すぐさま地上では収まりきらず、成層圏まで飛び上がる。ゴンベやロトムたちも合流。凍りつくような寒さの中、大崎甜花はテントロトムの中で指示を飛ばす。ダイガンリュードに乗ったダイゴンベがアルセウスと殴り合い、ミュウツーとアルセウスの念能力が激突する。
「私は神だ! 最初は、この世界がゲームの世界などとは認めたくなかった……しかし、ようやく覚悟した。諦念した。諦観した。諦めた。この世界はすべて偽物、まやかしだ!」
「それはちがう! だって、みんな、がんばってる……! たとえ、ゲームだからって、偽物でも……それを、
「どんなに優しい心で取り繕おうと、我らは偽物の存在だ! ならば、偽物は全て消し去ってやる! そして現実世界に侵攻し、真の世界と生き物を創造するのだ!」
大崎甜花とアルセウスの口論。それをミュウツーが一蹴する。
「くだらん。齢一歳に満たぬ俺でも乗り越えた自己認識の話を、長命の貴様が乗り越えられないでいるのか。矮小な神だな」
「────なに?」
真贋。それはクローンポケモンのミュウツーの命題でもあった。
しかしオオサキテンカとの出会いで、それを乗り越えた。
「だが貴様の葛藤も理解できる。納得は全てに優先するからな」
今の世界を滅ぼそうとするアルセウス。
それに対して大崎甜花は、自らを奮起させるため、覚悟を語り、決め台詞を言ってのける。
「甜花、未来に憧れてた……この世界の未来を、甜花は見てみたい……だから、それを奪うアルセウスは、止めてみせる……!」
「無駄だ! 貴様のような軟弱者が、神に勝てる道理がない!」
「たしかに甜花は、軟弱で弱い……! でも、相手が神様でも……それがポケモンなら、ポケモンバトルで倒してみせる!!」
「ならば証明してみせろ!! 大崎甜花ァアアアア────!!」
激突。
ダイゴンベの鬨の咆哮と、ディアルガのときのほうこうがぶつかる。
ダイロトムの異次元ホールと、パルキアのあくうせつだんがぶつかる。
時空が戦意とプラズマで歪み、バトルは神速の域に達していた。
地上ではコミヤカホとモリノリンゼが、ダークジラーチの願い事の成就を防ぐため戦っている。
上空では大崎甜花たちとミュウツーが、アルセウスの世界消去と現実世界侵攻を防ぐため戦っている。
正直どちらも劣勢だ。このままではアルセウスもダークジラーチも止められない。故にミュウツーは覚悟した。
「大崎甜花。プロデューサーによれば、お前はアイドルだそうだな。ならば、今からレッスンをしよう」
「────え?」
「俺はアルセウスを宇宙まで連れ出して“自爆”する。お前は地上に戻ってダークジラーチを止めるのだ」
「──……っ!!」
大崎甜花は直感した。それが、最悪の中の最善であると。
「ッ……ミュウツー……!」
「さらばだ、大崎甜花! お前が元の世界に帰れる事を願う! そのためには、こいつらを倒さなければならない!!」
ミュウツーはエスパーのタイプエネルギーに、念能力のオーラやスタンドパワー、死ぬ気の炎といった、あらゆる作品の熱量を込めて、アルセウスに猛攻撃を始める。その首根っこを掴んで放り投げて、宇宙空間で死闘を繰り広げる。
ジラーチが願い事を叶えるまで、あと七秒。大崎甜花はテントロトムから飛び降り、ガンリュードに着地を任せる。
六秒。大崎甜花はガンリュードに跨り、ダイゴンベはライトストーンを飲み込む。
五秒。ダイロトムはデビ太郎に憑依してダイデビロトムに。
四秒。ダークジラーチの念動力で、コミヤカホとモリノリンゼが吹き飛ばされて瀕死に追い込まれる。
三秒。大崎甜花は「むーちゃん! トリック!」と指示。短冊と、レオがロトムに渡したスナッチボールを交換。
ダークジラーチがボールの中に捕獲されかかる。その間、世界再創成までの秒読みは止まるが、だからといって捕獲率を考えると悠長なことは言っていられない。
二秒。ダークジラーチがボールから飛び出す。あともう少しだったのに。大崎甜花は短冊を死ぬ気の炎で焼ききったが、直感する。意味はない。ダーク化したことで願い事が強まっている。ジラーチ自身の願いで、この世を消すつもりだ。それほどジラーチは、この世界を憎んでいる。自分を痛めつけてダーク化させたことを恨んでいる。大崎甜花の表情が歪む。
一秒。大崎甜花は着地ざまに「ごめん……っ!!」と叫び、ダイゴンベに命令。偉大なる白炎の拳が、ダークジラーチの第三の目を貫いた。血しぶきが大崎甜花の顔面に掛かる。しかしダークジラーチは、どこかお礼を言いたそうな目で、ふわりと地に斃れた。大崎甜花はガンリュードから飛び降りて、ダークジラーチを抱きとめる。そして、ジラーチは息を引き取った。
上空から極光。宇宙空間で太陽爆発に匹敵するほどの熱量が放出された。ミュウツーの自爆である。アルセウスの断末魔がテレパシーとして響いてくる。狂ったように泣き叫んでおり、この世界が嘘偽りであることを認めたくない絶叫を遺して────ジラーチ、アルセウス、ミュウツーは、この世から消え去った。
エスパータイプの、ミュウツーとジラーチ。
またも大崎甜花は助けられなかった。神話大戦の最後は、少女の号泣と共に幕を降ろす。
§
大崎甜花は世界を救った。救世主としての功績が認められ、ポケモン協会やハンター協会から表彰を受ける。
しかし大崎甜花は、殺す必要のない相手を殺して、死なせる必要のない相手を死なせてしまった。全ては自分が弱いせいだ。何もできなかった。そうするしかなかったのかもしれないけど、頭では分かっていても、心が犠牲を容認できない。
そして世界が落ち着きを取り戻した頃。ポケモンリーグ開催が告知される。大崎甜花の出場を待ち望むファンが大勢いる。なぜなら世界を救ったのだ。彼女がどのようなポケモンバトルを見せてくれるのか期待に膨れ上がる。
しかし大崎甜花は、あまり感謝されたくなかった。あまりにも苦渋の決断が多すぎた。
そんな悩める大崎甜花に対して、レオやロトム、コミヤカホやモリノリンゼが寄り添う。
かくして、修行が面倒でチャンピオンロードをロープウェイでスキップした大崎甜花は、なんだかんだ図太いことをしつつ、最強の祭典・ポケモンリーグの会場に足を踏み入れた。
【第一部 伝説のナナシマ編 是・神話大戦の章 ~Ragnarok Chapter~】
第??話『甜花vsサブウェイマスター・ヒオリ!』
第??話『四天王カリンとヘルガー!』
【第一部 伝説のナナシマ編 序・神話大戦の章 ~Team Rocket&Elite Four~】
【第一部 伝説のナナシマ編 破・神話大戦の章 ~Hoenn Ragnarok~】
【第一部 伝説のナナシマ編 急・神話大戦の章 ~Sinnoh Ragnarok~】
第??話『みんな生きているんだから、本物だよ!』