大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α   作:形のない者

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   続・大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α 

 これは大崎甜花のクローンが「生き抜く覚悟を決める」物語。

「甜花……甜花は────っ!! この世界()、生き抜く『覚悟』を決めた……!!」



第二部①(②ではない) 無人島サバイバル編!

 

 ワールド・ポケモン・マスターズで準優勝を果たした大崎甜花は、帰りに乗っていた飛空船が嵐に巻き込まれて墜落した。大崎甜花は運良く無人島の浜辺に流れ着いたようで、謎の科学者に拾われる。培養液Aの中に漬けられて、その後、謎の科学者が連れていたケーシィによって、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一方、培養液Bの中から取り出された()()()()()()()()()()は、謎の科学者に運ばれて、元いた場所・流れ着いた浜辺に置いて行かれた。

 

 しばらくして大崎甜花は目を覚ます。どうやら飛空船が嵐によって墜落したようだ。砂浜に流れ着いている。口の中に砂が入っていた。ぺっぺっと吐き出す。ふと腰周りにモンスターボールがないことに気づく。というか、そもそも。

 

「え────て、甜花……服を、着てない……!?」

 

 まさかの全裸。衣服はどこに消えたのか。すかさず大崎甜花は、そこらへんに落ちていた貝殻や葉っぱで秘部を覆い隠す。どうしようどうしようと辺りを見渡す。とにかく人を捜したいが、とにかく今は捜したくない。出会いたくない。右往左往。そうしていると、一匹のスライムと遭遇した。

 

「……えっ?」

「スラ?」

 

 それはポケモンではなかった。明らかに別作品のモンスターである。モンスターはモンスターでもポケットではない。ドラゴンクエストという作品に登場する、あの青いスライムである。

 スライムは、初めて人間を見たことで驚いたのか、密林の奥に逃げ去ってしまう。とにかく大崎甜花は、一旦休憩することにした。

 

 仲間はいない。孤独。ドラゴンクエストのモンスターがいる。でも海の向こうでコイキングが跳ねている。ポケモンもいるらしい。どういうことだろう。そして、待てども待てども人が通りかからない。そもそも人工物が見当たらない。もしやここは無人島か。

 

「……あれ、甜花、もしかして……これから、サバイバルとか、しなきゃ、ダメ……?」

 

 いきなりの絶体絶命。朝に起きたが、既に昼。お腹がすいた。行動が遅すぎる。夜はどうしよう。裸で砂浜で眠るのか? 砂は気持ちよさそうだけど、どうだろう。大崎甜花はパニックに陥る。

 

「────テンカ……?」

 

 その時、言葉が聞こえた。大崎甜花は期待して振り返る。やはりゲームなら、最初はチュートリアル用のガイドさんがいるべきだ。危うく飢え死にするところだった。喉が渇いた。水はどこで飲めるのか聴かなければ。

 

「あ、あの! たすけて、くだひゃい……!」

 

 大崎甜花は疲れきった体で走り出す。もはや全裸であれこれが見られても構わないと思った。それほど切迫した状況だ。しかし大崎甜花の目の前には、ジュプトルがいる。どこにも人間はいない。

 

「あれ?」

「……なぜ、お前がここにいる?」

 

 ジュプトルが喋った。大崎甜花はぽかんとする。そもそも彼はなぜ大崎甜花の名前を知っているのだろうか。もしやダークテンカが捨てたポケモンなのだろうか。

 

「……お前のことだから、おそらく素っ頓狂なことを考えているのだろうが……なんとなく俺たちの置かれている状況は理解できる。俺は、おそらくアルセウスに呼ばれた」

「────……えっ!? アルセウスに……?」

「あぁ。そして、ここがゲームの世界であることも知っている。俺の世界ではないことも」

「……世界では、ない?」

 

 大崎甜花はちんぷんかんぷんだ。ジュプトルは端的に説明する。

 

「俺は《ポケモン不思議のダンジョン》の世界から来た。大崎甜花は、空の探検隊をプレイしたな? 俺はその個体のジュプトルだと思え。ヨノワールを連れて未来に帰るため、別れたとき以来だな……」

「────────」

 

 本当に、あの時のジュプトルなのだろうか。ゲーム画面越しだったが、あの時の大崎甜花はショックを受けていた。信頼できた兄貴分のジュプトルが居なくなって悲しかった。だから頑張って追加エピソードもクリアした。ジュプトルが住む未来の世界も平和になって、良かったね、と思った。

 

「その時のお前は、たしかクルマユになっていたか」

「えっ」

 

 そんなポケモン、主人公キャラとして用意されていない。明らかに記憶が異なる。これはどうしたことか。

 

「まぁそれはどうでもいい。ここは原作の世界か。念能力だかスタンドだか、色々と混じっている様子だが……」

「あ、う、うん……! さっき、スライムも、見た……!」

「それはドラゴンクエストか? なるほど……さっぱりわからん」

 

 大崎甜花は、がくっと滑る。

 

「アルセウスは、ただ俺をこの世界に召喚しただけだ。しかし満身創痍だったように感じる。それより甜花。また会えて嬉しい。俺はお前の相棒だったからな。お前にとっては、いくつかやったゲームの中の、何気ないキャラクターだったのだろうが……」

「あ、えと……でも! 甜花、ジュプトル、好きだよ……! 兄貴分として、見ていました……! あれから、別ゲーでキモリ捕まえても、ジュカインまで進化させなかったり、した……!」

「ふっ。そうなのか……不思議なものだな。兄貴分か……オレたちは対等だったぞ?」

「う、うん……でも、プレイヤーの甜花からしたら、兄貴分……!」

「それもそうだな。俺もクルマユが甜花だと気づかない間は、兄貴ヅラをしていた」

 

 大崎甜花もジュプトルも、それぞれ違う経験をした世界から来た。ならば多少の誤差があるのは仕方ない。そして再会を懐かしむのも、そろそろ切り上げどきだ。

 

「さて、俺がここに送り込まれた理由はさっぱりだが、俺は俺のやりたいようにやる。甜花、どう見てもこのままだとお前、野垂れ死にするよな?」

「うん! うん……! たすけて……!」

「まったく。ならば水と食料集めを始めよう。寝床も必要だな。密林の中は危険だ。かといって砂浜に放置するのも心配だ。甜花を守りつつ物資を揃えるとなると大変だが、付いてこられるか?」

「え……甜花、砂浜で待ってたいけど……」

「俺が戻ってきた時に死んでいないと約束できるなら、そうしてもいいぞ」

 

 そう言ってジュプトルは、容赦なく密林の奥に進んでいく。そんなことを言われた大崎甜花は、死ぬのは嫌なのでジュプトルに付いていく。どうやらジュプトルは、大崎甜花の性格を熟知しているらしい。さすがは相棒ポケモンである。

 

 そしてジュプトルは、事前に見つけておいたヤドンの休息地から、一匹のヤドンを捕まえて連れて行く。リーフブレードで尻尾を切って、大崎甜花と分けて食べる。しばらくすればヤドンのしっぽは生えてくるため、緊急の食料として最適だ。

 

「寝床は、ウツボットを殺して胃液を摘出し、その中で寝るか?」

「──!? えっ……なんでそんな、ひどいこと……するの?」

「……なるほど。俺もここに来てから、なんだか自分の思考回路がおかしいと思っていた。そして今の甜花の反応を見て思う。──どうやらこの世界は、殺伐とした思考が当たり前になっている世界観なのかもしれない」

「……!」

「普通なら……不思議のダンジョンの世界にいた頃の俺なら……そこらへんの葉っぱを集めて寝床を作る。そうだな?」

「う、うん……! そんな感じ……!」

「まったく、我ながら危なっかしい。この世界がゲームの世界だと自覚していなければ、この殺伐とした思考になんら疑問を持たなかったぞ……」

「……ジュプトル、怖いポケモンに、なっちゃった……?」

「そうならないように気をつけている。だが、甜花も気を付けろ。お前も例外ではないかもしれない。そしてもう一つ注意点がある。俺がこの思考になるということは、ほかの奴らも同じかもしれないということだ」

 

 つまり、簡単に相手を殺して何かをしようとするような存在が、あちこちにいるということか。それは怖い。大崎甜花は、なるべくジュプトルの近くにいるようにする。そのジュプトルは木陰に入って草木をかき分け、水を飲める川を探す。大崎甜花は一生懸命ついていく。そしてジュプトルの背後に追いついた。

 

「ぜえ、ぜえ、ジュプトル……甜花、もう、疲れた────」

 

 次の瞬間、ジュプトルは振り返り、威嚇するような鋭い目つきでリーフブレードを放ってきた。直感した大崎甜花は、咄嗟にのけぞって首を切り落とそうとした刃を躱す。そして尻餅をついた。

 

「────え────?」

「甜花! そいつは俺じゃない!! 野生のジュプトルだ!!」

 

 木の上から跳躍した相棒のジュプトルは、大崎甜花を庇うように臨戦態勢。そして相棒のジュプトルと野生のジュプトルが激突、リーフブレードの剣戟が交差する。さらにほかの野生ポケモンも虎視眈々と様子を窺っており、今にも大崎甜花に襲い掛かりそうだ。彼らも晩飯を求めて必死ということか。

 

「甜花! このジュプトルは強い! 自分の身は自分で守れ!」

「え……そ、そんなこと、言われても……!」

 

 メガリボルバーを具現化。四方八方に光る赤い目。どれを狙えばいいのかわからない。一斉に襲いかかられたら、それだけで死んでしまう。そして、草むらから多数のポケモンが飛び出した、群れをなす五匹のマンキーが、大崎甜花を殺すべく攻撃する。計五回のみだれひっかき。それを受けた大崎甜花の全身は、ボロ雑巾のように見るも無残な姿になる────

 

「甜花ぁああああ! ────っッ!!?」

 

 ────はずだった。大崎甜花の体は頑丈で、五匹のマンキーに引っかかれてもかすり傷しか付いていない。そんな大崎甜花はしゃがみこんで怯えており、「ひぃいん! たすけてぇ~! なぐらないで~!」と情けない悲鳴を上げていた。そして恐怖は臨界点に達し────大崎甜花の全身から、ゴーストタイプのエネルギーが交じる電撃が迸る。

 

 五匹のマンキーは痺れて驚き逃げ出す。相棒のジュプトルが呆然としていると、野生のジュプトルは大崎甜花に本能的な恐怖を覚えて跳躍。脱兎のごとく逃げていった。

 

「……甜花、今のは、なんだ……?」

「……え? あれ? ジュプトル、追い払ってくれたの?」

「いや……甜花が追い払ったんだ。それより、お前────」

 

 ジュプトルは目を疑う。今、大崎甜花は、現在進行形で、進化している。現実世界の言葉を借りるなら変態すると言ったほうが正しいのか。それとも変身、急成長。なにはともあれ、鏡が必要だ。

 

 突として大崎甜花の全身から、ゴンベのような体毛が伸び始めた。胸元と股間はそれで覆い隠すことができている。そして全身からロトムの電撃と同じ色の電流が迸っていた。さらにハクリューのような流麗の肌ツヤ、こちらはガンリュードの皮膚が再現されている。なにより背中には、チルットのような翼が小さく生えていた。

 

「────ポケモンに、なっている……」

「……ふぇ?」

「甜花。まさか、人間とポケモンの融合実験でも、されたのか……?」

 

 密林に仕掛けられた監視カメラで大崎甜花を見守る謎の科学者は、今のジュプトルの発言に対してぼそりと呟いた。

 

 ────勘のいいポケモンは嫌いだよ。

 

          §

 

 それから大崎甜花とジュプトルは、たびたび襲ってくる密林剣豪と死闘を演じる。

 

 最初はヒトツキが襲いかかってきた。ジュプトルが斬り合い、大崎甜花がメガリボルバーで倒す。するとヒトツキは起き上がり、仲間になりたそうな目で見つめてきた。ジュプトルは危険だと忠告するが、大崎甜花はヒトツキを受け入れる。それから別のポケモンと戦闘になるが、なぜかヒトツキは何もしてくれない。ジュプトルが通訳すると、どうやらヒトツキは、自分を剣として扱ってほしいと、大崎甜花に言いたいそうだ。ポケモンを道具のように扱うのは、なんだか気が引けるものの、本人(?)……本ポケモンがそうしてほしいというのなら、特に断る理由もない。大崎甜花は武器をゲットした! ヒトツキというソードと、メガリボルバーというガンの、二刀流。なんだかカッコいい。しかし使いこなせるかどうかは別。しかもヒトツキは、おとなしく大崎甜花に握られているわけではない。大崎甜花が反応できない攻撃に対しては、自ら動いて迎撃することもある。そのため大崎甜花は、握りしめたヒトツキに振り回されることが多い。

 

 そんなこんなで大崎甜花とヒトツキとジュプトルは、剣士としての戦いが習熟していく。

 

 野生の辻斬り斬馬刀ジュプトル。それは途中でジュカインに進化する。

 ハッサムとストライクの兄弟剣士。

 サイコカッター使いのエルレイド。

 多頭殺しのキリキザン。

 ウォータージェットの忍者刀ダイケンキ。

 遍歴騎士ネギガナイト。

 そして巨獣芋虫タイラントワームとの激闘を制する。

 それからポケモンとドラクエのモンスターが融合したような、おかしなコバルオン・テラキオン・ビリジオン・ケルディオのような、魔獣系モンスターと戦闘した。

 

 かくて大崎甜花は思い出す。

 

「ここ────ドラクエジョーカー2の世界だ……」

 

 密林の生活にも慣れてきた頃。大崎甜花は平原に出ることを決意する。ウイングタイガーとの鬼ごっこ。平原でも、なにかと好戦的なポケモンが襲いかかってくる。飛翔乱破グライオン、無骨槍兵ルカリオなど。

 

 それは雪山でも同様だった。斬魄刀使いのゴーストタイプがわらわらと出てきて、鬼道まで使ってくる。大崎甜花はロトムの電撃を使うと、髪が金色に変わって、パワーアップした。その強大な力で、なんとか勝利を収める。

 そしてブオーンとの激闘。闘争心が発露すると金髪になれるため、なんとか渡り合える。まるでスーパーサイヤ人みたいだ。

 

 ようやく断崖に到着。二刀裁縫ハハコモリ、水弾銃撃ブロスター、山のように巨大なドタイトスなどと戦闘。頂上にたどり着いて神鳥レティスと出会う。彼女は異世界を渡る能力を有しているが、特に大崎甜花のために力を貸してくれるわけではない。そもそも現実世界へ帰す力は持っていない。ただしアンダーワールドには連れて行けると語る。アンダーワールドとは何か。それは少し先の未来で分かることらしい。

 

 ともあれ海岸へ。最初に流れ着いた海岸とは異なる場所。クラーケン的なモンスターと戦い、さっさと突破する。

 

 寂れた遺跡。なんだかポケモンの数が減ってきた。バトルレックスやガーゴイルなどと戦い、ケンタウロス的なメカメカしいモンスターと死闘。

 

 遺跡地下。りゅうおうやデュランとの戦い。ポケモンの姿は一切見かけない。そして最深部に到着する。そこには邪神レオソードがいるはずだが誰もいない。

 

 魔界。いよいよ恐ろしいところにやってきた。手ごわいモンスターたちと戦い、なんとか切り抜ける。最深部では、裏ボスのオムド・ロレスがいるはずだが、やはり誰もいない。その代わり大きな井戸があった。大崎甜花は試しに落ちてみる。

 

 かくして大崎甜花は、鋼の王国に辿り着いた。

 

 

 

 そこはポケモンの楽園。遺跡や魔界とは打って変わり、緑あふれる密室の神殿には、ベイビィ系のポケモンが多く暮らしていた。空間の奥には巨人が座る用の玉座があり、そこにはレジギガスを模した石像が鎮座していた。────と思いきや、地響き。石像がひび割れて、中から本物のレジギガスが姿を現す。

 

「────ようやくきたか、大崎甜花……」

「し、しゃべった……!」

「驚くことではないだろう。お前は半分ポケモンとなった。ポケモンの言葉が分かるのは至極当然」

 

 そしてレジギガスは、真実を知りたければ、研究所の奥に行けと命じる。どうやらここは研究所らしい。苔むしているが、たしかに苔をはがせば金属の壁や床、天井や扉が顔を出す。電力は通ってないのかボタンを押しても開かないため、ヒトツキやジュプトルの斬撃で強引に扉を切り開く。

 

 探索していると、人の気配。ジュプトルが追い詰めると、謎の科学者が立っていた。ここに来て初めての人間である。しかし謎の科学者のそばにはケーシィがおり、テレポートで逃げてしまった。大崎甜花は、謎の科学者が出てきた研究室を探索する。そこでレポートを発見した。

 

《エーテル財団はアルセウスを元に、タイプ・ヌルを創り出した。それを参考にしたロケット団は、人造の神を創ろうとした。名を、タイプ・ゼニス》

《しかし、この実験は失敗に終わった。タイプ・ゼニスを作るため、1000種類を超えるモンスターを創り出したが……いつの間にか力をつけていたゼニスの怒りに触れた。研究所は破壊され、多くのモンスターが無人島に流出してしまった。これではポケモンの生態系に甚大な被害が生じる》

《だがこの世界には自浄作用がある。この世界の動鉱植物は、気づけばポケモンに変わっている。インド象や東京タワーだって、いつの間にか存在しなくなり、大勢の人から消失物に関する記憶が消えて、消失物に因むポケモンが当たり前のように誕生している。まるで太古の昔から、そこにいたかのように》

《しかしゼニスは、その自浄作用に影響されない世界を作り出そうとしているようだ。間桐臓硯とプルートの会話記録を盗み聞きしていたが、妙なノイズが走った。これはゼニスが他者から他者へ憑依する際の信号パターンだ。いつの間に私の中から逃げ出していたのか》

《ゼニスの狙いは大聖杯だ。偉大なる願望機を使って、グランゼニスになろうとしている。そうなればアンダーワールドに、グランゼニスの世界が創られる。そうやって地上と地底に垣根を作り、永遠の楽園を作ろうとしている》

《それだけなら良かった。それだけでやめておけばよかったのに。つい先ほどグランゼニスは大聖杯を手に入れた。だが奴は欲を出したようだ。地上世界の侵略を企んでいる。ポケモンとモンスターの戦争だ。3000年前のカロス戦争の悲劇を繰り返すつもりか》

《そして、それを予見していたかのように、今しがたレジギガスが復活した。ただの石像と思っていたのに。アルセウスはどこまでお見通しなのか。なんにせよ、これからはレジギガスがポケモンの旗印となり、地上と地底をつなぐ井戸を境界線として、地上世界の防人となるのだろう》

《足音がしてきた。大崎甜花がやってくる。私は一抜けさせてもらう》

 

 そこでレポートは終わっている。

 

「……なんてことだ。創造神グランゼニスと、大陸神レジギガスの睨み合いか……だがこの世界がどうなろうと俺には関係ない。俺の目的は、甜花を元の世界に帰すことだ。どうする、甜花?」

 

 大崎甜花は、わからない。でも、なにか、いやな予感がする。

 机の上を荒らすように探す。すると引き出しの中に、メタルコートを発見。金属の外套を羽織ることで防御力がアップ。さらに、もうひとつレポートを見つけた。

 

《WPM準優勝の大崎甜花を浜辺で発見。昨夜の大嵐で飛空船が墜落したのだろう。運のいい女だ。サカキ様の報告によれば、大崎甜花は見透かす力(ブラッド・オブ・ボンゴレ)を持っているという。これは良い標本となる。そのため培養器の中に浸けて、クローン人間を作成した。オリジナルは地元の浜辺に送っておいた。クローンは、オリジナルが流れ着いた浜辺に置いておいた。これから監視カメラで動向を観察する》

《人間とポケモンの融合。なんて面白い技術だ! フジ老人とカツラはミュウツーを作ったことを後悔していたが、こんな面白いことをして何を後悔する必要がある! クローン甜花は初の成功例だ。最初は人間そっくりの姿のままだったから不安だったが、マンキーに襲われたら覚醒した! ポケモンの力に目覚めたのだ! これは生存本能や恐怖心が覚醒へのヒントということだろうか。まだまだ研究がしたい!》

《あのヒトツキ、どう考えてもレジギガスの差金だ。あれは私が“進化しないポケモン”且つ“人間が道具として扱うことを前提に開発したポケモン”だ。故に、人間の道具に過ぎない象徴として“ICBM”と名付けた。そして進化しない理由も同じことだ。人間の手によらない独自の方法で進化を遂げるなど、技術的特異点の到来で人工知能が人類に反逆することを許すようなものだ。既に電脳ショック事件で、大量の人間がやられた事件がある。やはりポケモンは危険な存在だ。きちんと管理する必要がある》

《どうしたことか。よくて雪山あたりで死ぬかと思ったが、なかなかしぶとい。クローン甜花は生き残っている。実験体の寿命は一ヶ月もなかったはずだが、そろそろ寿命を迎えるはずだ。なのに衰えがない》

《なるほど、念能力のせいか! ポケモン化したことで、自然と纏が使えているのだ! それでもきちんと習ったわけではないオーラの精度で、完璧な纏ができているとは思えない。伸びた寿命は、せいぜい二ヶ月か》

《あれから三ヶ月が経過した。奴らは今、魔界を歩いている。寿命は近い。そろそろ死ぬはずだ。クローン甜花の技術は、インキュベーターと名乗る奴らの技術を借りている。寿命を迎えた実験体は死亡し、宝石となる。その宝石は、死ぬ気の炎を灯す原石となる》

《とうとうレジギガスの間にやってきた。私はお暇させてもらおう。その前に、もうひとつのレポートに、一抜けすることを書かなくては……記録は大事だ。ふへっへっへっ! この記録を見たとき、クローン娘はどんな顔をしているのだろうか!》

 

 刹那、ジュプトルがレポートを切断する。怒り心頭という顔つきだった。

 一方の大崎甜花────否、クローン甜花は、もうすぐ自分は寿命を迎えて死ぬのか、とだけ思っていた。

 

「────か────んか────甜花!」

「!! え、あ、なに……?」

「……甜花。…………っ……」

「……甜花、平気、じゃない、けど……でも……なんとなく、そんな気が、してたから……あんま、おどろいて、ないかも……?」

「……そんな気がしていた、だと?」

「う、うん……だって、ジュプトルも、思ってた、はず……甜花、ひとりじゃ、なんもできない……のに……この無人島では、甜花、ヒトツキを握り締めて、ジュプトルと背中合わせで、がんばって戦って……すごく、かっこよかったと、思う……!」

「……────たしかに、のろまな甜花では考えられないほど、活躍していた。音速で飛んで、雷速で斬り合って……いくらポケモン化したことで身体能力が向上しているとしても、その反射神経や、なにより闘争心は────」

「そ、そう! 闘争心! ジュプトル、殺伐とした思考回路になってるって、最初の密林で、言ってた……! あれ、実は……甜花も、同じだった……それで、直感して……もしかして、甜花────」

 

 クローン甜花は言葉に詰まる。それでも、どうしようもないことだから、諦めた笑顔で言ってみた。

 

「────この世界のキャラクターに、なっちゃったのかなって……っ!」

「っ……ッッ!!」

 

 ならば、今ここにいるクローン甜花は、ゲームのキャラクターであるため、現実世界に帰ることはできない。

 

「おぉ……なんか、テイルズ・オブ・ジ・アビスのルークみたい……」

「……そんな悠長なことを言っている場合か……いやまて。まさかそのゲームもジョイステーションに……?」

「たぶん……? とりあえず色々なものを入れてみたから……にへへ……」

「笑い事じゃないだろ……」

 

 ならばとジュプトルも覚悟する。

 

「甜花。残りの余生、どう生きる」

「!」

「俺は、どこまでも付き合うぞ。俺は甜花のパートナーだからな」

「……」

 

 クローン甜花には闘争心がある。それはポケモンが持ち得るものを肥大化させた闘志。おそらくサイヤ人の細胞も入っているのだろう。ボス戦をする時は、いつもロトムの電撃で髪色が黄金に光ることがあった。それはロトムの細胞のせいだと思っていたが、今にして思えば髪が逆立ってスパークを発するのは、スーパーサイヤ人の描写である。そしてインキュベーターの単語も出てきた。もはやなんでもありだ。

 

「そっか……甜花、なにしよう……」

「なんでもいいぞ。眠るか? お菓子でも食うか。甘いものは、ヤドンのしっぽくらいしかないが」

「……オリジナルの、甜花なら、そうした、けど……」

 

 クローン甜花は、最後の命の使い道を決める。

 

「甜花────レジギガスと、戦いたい……」

「……まったくもって意味不明の論理だが、実は俺も同じ気持ちだった。もしかしたら俺にも、サイヤ人の血が流れているのかもしれないな」

 

 クローン甜花とジュプトルは、レジギガスの間に戻る。

 

「……真実を知ったか。では、闘おう────」

「おいおい。そっちもサイヤ人なのか?」

「たしかに大崎甜花の中に、サイヤ人の細胞はあるだろう。だがこの闘争心は、ポケモンにも生来備わっているものだ」

「なるほど。じゃないとポケモンバトルなんてスポーツは生まれないか。現実世界じゃ闘犬とかは禁止なんだろ?」

 

 レジギガスとジュプトルの会話。一方のクローン甜花は、ヒトツキを握り締め、メタルコートを羽織り、さながら勇者のように仁王立つ。

 

「甜花、直感した……」

「ほう……聞かせろ、大崎甜花のクローン人間よ」

「甜花、死んだら、宝石になる……なら、それを本物の甜花に渡す……そうすれば、甜花はパワーアップするはず……きっと甜花は、この事態をなんとなく直感して、今ごろアサギシティからこっちに向かってきているはず……なんか、全部いいように誘導されているような気がするけど……きっとアルセウスのせい。でも、そんなのどうでもいい。これから甜花がドラゴンクエストの世界で生き残るためには、インフレについていかなきゃいけない。だから、甜花は────この力を、甜花に託したい。そのために────甜花は、誰とでもいいから戦って、経験値を稼がなきゃならない。甜花が元の世界に帰れるように、甜花にレベルアップさせてあげたい!」

「……よろしい。私でよければ付き合おう。私も大崎甜花の力を試したかったところだ」

「ジュプトル。手は出さないで。これは、甜花の戦いだから────!!」

 

 クローン甜花とレジギガスの死闘が始まる。それは神話大戦に匹敵する熾烈な激闘だった。斬撃、研究所が両断されて、スロースターターの打撃、魔界と地下遺跡が爆発して崩落する。逃げ惑うポケモンとモンスターたち。そんな弱者を意に介さず、クローン甜花とレジギガスはしのぎを削り合う。

 

「甜花のために、限界を超えろ、甜花────!!」

 

 自らを鼓舞するクローン甜花は、穏やかな心を持ちながら、非業の運命を背負わされた怒りによって、伝説のスーパーサイヤ人となる。茶髪が金色に染まり、ボサボサの髪がさらに刺々しく逆立つ。そして、クローン甜花が“怒り”を覚えたことで、スタンドは次の段階へと進化する。

 

「ミッドナイト・(ハート)! ACT2!! わたしは大崎甜花の永眠を守るもの! それを邪魔するものは殺しても許さないッ!!」

 

 クローン甜花が覚醒状態でも発現するようになったミッドナイト・❤は、大崎甜花のスタンドではなく、クローン甜花のスタンドとして猛威を奮う。遠隔自動操縦型であることは変わりなく、クローン甜花とヒトツキの斬撃に合わせて、クローン甜花のダメージを回復させつつラッシュを叩き込む。

 

 轟然震撼、怒濤の爆撃。

 刹那、クローン甜花は直感した。もう、最期の時が来たことを。

 

 脱力して空中落下するクローン甜花。その体をジュプトルが抱きとめる。レジギガスは停止。戦闘をやめて玉座に戻る。

 そして天井の穴、魔界の井戸から、オリジナルの大崎甜花と、杜野凛世とプロデューサーが降ってきた。

 

『……!!』

 

 大崎甜花は、なんとなく直感する。詳細は不明だが、今すぐ、もうひとりの自分に駆け寄らなければいけないと察した。

 

「あ……やっと、来た……」

「……!! て、甜花が、もうひとり、いる……?」

「……甜花、この無人島で、いっぱい、戦って、強く、なった……から……」

「……────」

「だから、甜花の経験値、もらって……? それで、おうちに、帰ったら……なーちゃん、抱きしめて、あげてね……」

「────うん……でも、まず、甜花は……もうひとりの甜花に、がんばったねって、褒めて……そして、抱きしめてあげたいな……」

 

 クローン甜花の体がひび割れる。みるみると全身が砂となって風に吹かれて散っていった。コアとなる部分から、一個の宝石が落ちる。その色は紫。大崎甜花が触れると、大いなる雲の炎が灯った。

 

「……甜花。その宝石を持っていれば、お前はスーパーサイヤ人になれるだろう」

「……?」

 

 大崎甜花は、ジュプトルが何を言っているのか分からない。ポケモン語は使えない。それでも、クローン甜花が遺した宝石が、とても大事なものであることは直感していた。その宝石は自分自身であって自分自身ではない。それでも、自分のことのように大切な代物であるはずだと。

 

 しかしてレジギガスは、人語を使って語る。先ほどクローン甜花とジュプトルが知ったレポートについて語り、元の世界に帰るためドラゴンクエストの世界に挑む気概はあるかと。そこではグランゼニスとの死闘が待っている。

 

「でも……グランゼニスを倒しても、甜花たち、もう……元の世界に、帰れないんじゃ……」

「それは違う。グランゼニスを倒して、その力をアルセウスが取り込めば、奴はお前たちを現実世界に帰すだけの力を手に入れるだろう。だがそれは同時に、現実世界へ侵攻する力を手に入れることでもある。どちらかに一度使えば、アルセウスは弱体化する。つまり、お前たちがグランゼニスを倒したとき、アルセウスの選択次第で、どちらかの結果が待っている」

 

 アルセウスは、大崎甜花たちのために、グランゼニスから奪った力を使ってくれるだろうか。それとも大崎甜花たちを見捨てて、現実世界への侵攻を始めるのだろうか。

 

「あるいは、聖杯を手に入れることができれば、もしや。万能の願望機。アサギシティではグランゼニスに邪魔をされたが、これほど救済措置に使える設定はないだろう」

「……でも、もう、サーヴァント戦は、甜花、こりごり……」

 

 それでもやらねば元の世界に帰れない。大崎甜花一行は覚悟を決めた。

 レジギガスが玉座を退けると、玉座のあった場所には、また井戸があった。そこから落ちれば、ドラゴンクエスト(ナイン)の天空に行けるらしい。

 

「じゃあ、行こう!」

 

 かくして大崎甜花は、天に堕ちた。

 





第0話『目覚め!』
【第二部 無人島サバイバル編 密林剣豪の章 ~Over time Grovyle~】
第1話『ICBM 1102k(ヒトツキ)
第○○話『密林剣豪・七番勝負 勝負・一番目 草葉斬刀・樹賦執流』
第○○話『密林剣豪・七番勝負 勝負・二番目 兄者挟武・弟者打断』
第○○話『密林剣豪・七番勝負 勝負・三番目 念力旋刃・L零奴』
第○○話『密林剣豪・七番勝負 勝負・四番目 螺旋錐撃・切吏刻無』
第○○話『密林剣豪・七番勝負 勝負・五番目 水波切流・大剣気』
第○○話『密林剣豪・七番勝負 勝負・六番目 無双遍歴・葱牙騎士』
第○○話『密林剣豪・七番勝負 勝負・七番目 四闘獣・聖剣士』

【第二部 無人島サバイバル編 平原闘技の章 ~????~】
【第二部 無人島サバイバル編 雪山斬魄の章 ~????~】
【第二部 無人島サバイバル編 断崖決戦の章 ~????~】
【第二部 無人島サバイバル編 海岸制圧の章 ~????~】
【第二部 無人島サバイバル編 遺跡攻略の章 ~????~】
【第二部 無人島サバイバル編 魔界神殿の章 ~Truth answer~】
【第二部 無人島サバイバル編 鋼の王国の章 ~Heaven's Fall~】
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