大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α 作:形のない者
夕方。大崎甜花の自室。
ふと気づけば、そこには大崎甜花、小宮果穂、杜野凛世、プロデューサー、芹沢あさひ、田中摩美々、浅倉透たちが立っていた。現在の日付と時刻を確認。どうやら数時間しか経っていない様子。ゲームの中では一年以上の旅路をしてきたので、なんだか不思議に感じる。
「────あぁっ! 甜花ちゃん! みんなも! 今までどこに行ってたの!? 甘奈、心配したんだよぉ~っ!!」
息も絶え絶えな大崎甘奈が現れる。どうやらみんなが消えてから、街のあちこちを探し回っていたようだ。心配させて申し訳ないことをした。
大崎甜花は妹を抱き締める。クローン甜花との約束だ。自分がどうしてもやりたかったことでもある。
それから大崎甜花たちはやるべきことがあるため、ジョイステーションの電源を引っこ抜いて、さっさと例の露店に足を運ぶ。すると一夜しか経過していないのに、例の露店はどこにもなかった。ジョイステーションの返品をしたかったのだが、どうしよう。二度と電源を点けないようにすればいいとは思うが、それでも家に置いておくのは怖い。けれど捨てるのも嫌だ。
なぜならこのゲーム機の中には、コミヤカホやモリノリンゼ、ゴンベやむーちゃん、アルセウスやグランゼニスなど、色々な思い出が息づいているのだ。
つまり、これはもうひとつの世界。人生。宇宙。
────ひとつの心なのだ。
結局、大崎甜花は“電源つけたら死ぬ!!!! でも壊したらダメ!!!! だいじなもの!!”という注意書きを貼って、押し入れの奥にしまうことにした。なんだかワケありアイテムのように感じるが、実際そうなのだから仕方がない。
それから大崎甜花には、元の日常が戻ってきた。いつも通り学校に通って、事務所に通ってレッスンして、アイドルのお仕事をして。すると周りから『なんだか甜花ちゃん、ちょっと変わった?』『ちょっと成長した?』などと言われるようになった。ゲームの世界で大変な冒険をしてきたのだ。そりゃあ成長している。そうでなければ困る。大崎甜花は褒められることが多くなって嬉しくなった。
それでも、ひとりじゃなんもできないことには変わらない。だからこそ周りの人には感謝している。仲間は大切な存在だ。仲間がいなければ、大崎甜花は今こうして生きていない。だからこそ、なにかお返しがしたいけど。みんなは『生きていてくれるだけでいい』と言っていた。ならば、こうして生きていよう。
「……みんな、元気に生きてるかな……生きてるよね……じゃあ、もうこれ、言って、いいよね……?」
かくして大崎甜花の奇妙な冒険は幕を降ろす。
「甜花、クリア、おめでとう……!
────にへへ……誰も言ってくれないから、自分で言っちゃった……」
最後に大崎甜花は、ほにゃほにゃした笑顔で、物語の決まり文句を言って締める。
それから部屋の電気を切り、いつものベッドで、おやすみなさいと、ひとりごつ。
「めでたし、めでたし……! にへへ……!」
また明日。そのまた明日も、マイペースに生きていこう。
完